ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『大統領のカウントダウン』

2006-02-27 19:27:27 | 新作映画
----これってロシア映画だよね。
モスクワ劇場占拠事件が基になっているってホント?
「うん。でもそれだけじゃない。
主人公のスモーリン少佐という人は
チェチェンの捕虜となった実在の将校がモデルらしい。
彼は拷問の過程で向精神薬を投与され、
爆破事件に関与していた諜報機関の人間だと白状。
その後、脱出して自分と仲間の汚名をそそぐ」

----へぇ~っ。それは国民的人気があるのも分かるね。
で、その彼とこの劇場占拠はどう繋がるの?
「そこなんだよね。
この映画の特徴は、
ロシアで起こった、あるいはいま起こりつつある事件を
これでもかとばかりにたくさん盛り込み、
強引に一つの話を作りあげたところにある。
それをすべて話すと、それだけで終わっちゃうから止めるけど、
こんなに次々と話が転がり、新たな展開を見せる映画は珍しい。
最初は政治陰謀の映画かと思ったら
村上龍『半島を出よ』になり、
さらに『エグゼクティブ・デシジョン』と『スピード』になる」

----えっ、わけ分かんないよ?
「じゃあ、少しだけ噛み砕いて…。
スモーリン少佐から偽の自白を引き出したテープ。
その裏で糸を引いているのは
イギリスに亡命しているロシア人ポクロフスキー。
彼はチェチェンに劇場を占拠させ、
その交渉相手として自分を指名するよう自作自演。
つまり政府の要請により堂々と国に戻ろうと言うわけだ。
そしてその後、例の自白テープが出ることで、
いまの政府の権威を失墜させようとする」

----ふ~む。これだけでもオモシロそうだ。
「ところが劇場の観客の中には
スモーリンの娘もいた」

----まるでブルース・ウィリス映画だね
「ま、これもスモーリンをおびき出すための策なんだけどね。
さて、このチェチェンはアラブのゲリラと手を組んでいた。
ところがアラブは爆弾を仕掛けるや
女性ジャーナリストをインタビュアーとして同行させ、
劇場から姿を消してしまう」

----えっ、なぜなの?
「ここからが驚きのハリウッド的展開だから
あまり詳しくは言えない。
ほんとうは言いたくてしょうがないんだけどね。
でも見どころをいくつかあげるから、
そこからヒントを掴んで。
(1)劇場はどのような仕掛けで爆破されるのか?
(2)レーニン通りを完全封鎖した装甲車チェイスとは?
(3)『ダーティーボム』ってなんのこと?
(4)『エグゼクティブ・デシジョン』と言うからには飛行機?
(5)『スピード』での爆発のきっかけって?
いま、こうやって書いているだけでも
この映画ってハリウッドの影響大だ」

----あれっ、スモーリンの身の潔白証明は?
国に戻ってこようとしていたポクロフスキーは?
「どこかへいっちゃう(笑)。
と言うのは冗談で最後にはすべて巧く落ちつくけど、
これがけっこう強引。
映画を観るとき、
その大きな流れを楽しむのが好きで
細かい部分に目がつぶれる人だったら、
この映画は世界情勢に基づいたアクションと言うことで
けっこうノレると思うよ。
ただ人質のシーンはまだ記憶に生々しい。
ここは賛否両論あるかも」

          (byえいwithフォーン)

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猫ニュー


『風のファイター』

2006-02-23 20:37:31 | 新作映画
----格闘技の映画が続くね。
これは韓国映画なんだっけ?
「うん。『ゴッドハンド』として知られる大山倍達がモデルの映画」
----どうしてそれを韓国で撮ったの?
「大山倍達は戦時中、
朝鮮半島が日本の統治下にあった時代に、
パイロットになるために密航してきていんだ」

----えっ、日本人じゃなかったんだ。
「そう、ぼくも恥ずかしながら知らなかった。
つのだじろうの『空手バカ一代』読んでたのにね。
彼、大山倍達は日本では極真カラテを起こし、
いまでは全世界120ヵ国、1200万人の修行人口を誇る。
しかし、この映画は彼が世界に進出していく以前、
差別との戦い、孤独な修業、そして道場破りの日々などが描かれる」

----『力道山』を思い出すよね。
「うん。でも彼は監督のヤン・ユノによると、
外国で国賓級のもてなしを受け、勲章をもらいながら、
ついに韓国では暖かく認められることがなかったらしい。
でも彼の遺した業績は
『ワンチャイ』の黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)に匹敵する----
というのが監督の主張なんだ」

----でも映画として見た場合どうなの?
「そうだね。戦後の日本の再現は、
時代考証ばっちりだった『力道山』には劣るかな。
その分、こっちは韓国人の住む場所を
サーカスにするなど意図的に虚構化している。
決闘も真剣を使ったりとか、
創作としか思えない部分が多い。
もちろん映画だからそれはいいんだけどね」

----アクションの方はどうニャの?
「これは驚いたね。
ブルース・リーの香港映画みたいに
ロングに引いてその戦いを見せる。
しかもスタントなし!ワイヤーなし!CGなし!
そのためアクション俳優は全員有段者と言うことらしい」

----まるで『マッハ!』みたいだね。
「(笑)ぼくもそう思った。
そうそう、あの有名な猛牛との対決も出てくる。
あと、これもビックリなのが
国宝、姫路城での対決。
塀を横蹴りにしたり、堀に落ちたり……
『ラストサムライ』でさえ複製のセットだったのに、
よく許可が下りたものと感心。
塀の上に立つ(忍者の末裔・美輪)との対決は
まるで怪獣がにらみ合っているかのようだったよ」

----忍者?急にリアリティなくなったな……。
「だからこの物語はすべてフィクション。
大山倍達がモデルではあるけど、
彼の真実の人生を表現したものではない。
このことを頭に入れておかないと、
とんでもないことになるかもね」

          (byえいwithフォーン)

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『戦場のアリア』

2006-02-22 20:29:59 | 新作映画
-※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----この映画、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされてるね。
「うん。実にそれにふさわしい作品だったよ。
映画は1914年、
第一次大戦下で実際に起こった出来事を基にしている。
フランス・スコットランド連合軍と、
ドイツ軍が連日砲弾を鳴り響かせているフランス北部の村。
戦況は熾烈を極め、死体の数だけが増えていく。
やがて訪れたクリスマスの夜、
ドイツ軍には10万本ものクリスマス・ツリーが届けられ、
スコットランド軍の塹壕群からはバグパイプの音色が聞こえてくる。
そして奇跡は起こった-----(チラシより抄訳)」

----つまり、それがキャッチコピーの
「その聖なる日、銃声が止んだ」。
クリスマス停戦になるわけだね。
「うん。ドイツ軍のオペラ歌手の兵士が
クリスマス・ツリーを手に塹壕から歩み出て、
美しいテノールを響かせるんだ。
バグパイプの伴奏にのせてこだまする
ドイツ軍とスコットランド軍の「聖しこの夜」の合唱。
やがてそれぞれの兵士たちがおずおずと塹壕から現れ、
ついには3ヵ国の中尉たちが集まって、
クリスマス一夜限りの休戦に合意する。
片言の外国語での挨拶、家族の写真の見せあい、
チョコやウィスキーの交換、サッカーの試合…。
そして宗派を超えたミサが行われる。
このシーンは、雪深い背景もあって
幻想的な美しさがあったよ」

----でもそこまで仲よくなっちゃうと、
戦争を再開するのが難しくなりそうだね。
「そこなんだ。
実は、奇跡はさらに続いていく。
ユーモアまじりに語られるそのシーンは、
観る人のお楽しみにして
ここで語るのは止めるけど、
ちょっと驚くような出来事が起こるよ」

----えっ、話してよ。
※じゃあ、ネタバレ注意と言うことで…。
「それは後方からの相手への攻撃を情報として教えあい、
一緒に塹壕を行ったり来たりして被弾を回避すること 。
実はここに<戦争>の持つ本質的<無為性>が語られている。
だれもいない無人の塹壕に炸裂する砲弾。
何やってんだろうって感じだね。
前線にいる個人と個人は仲がいいのに、
後ろにいる権力機構は憎しみあっている」

----ニャるほどね。
「そうそう、キリスト教も
戦争に加担していることが描かれているのも興味深い。
聖書の一節を都合よく引用しながら、
平和よりも「戦い」を勧める司祭。
彼は言う『女子供関係なくドイツ人を一人残らず殺せ』と……。
これはフランス・ドイツ・イギリス合作。
アメリカ映画じゃないところがミソかも。
そうそう、フランス軍ではネストール、
ドイツ軍ではフェリックスと呼ばれ
塹壕を自由に渡り歩いていた猫のエピソードが出てくるけど、
これもほんとうにあったことらしいよ」

----へぇ~っ、それは観てみなくっちゃ。
あれっどうしたの?
「しかし、いまの日本にこんな映画作る勇気を持つ人、
果たしているのかなと思ったら暗~い気持ちになっちゃった」

       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ネコは自由なのニャ」おっ、これは

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『イーオン・フラックス』

2006-02-21 23:17:30 | 新作映画
----あれっ、今日はジム・ジャームッシュの予定では?
「そのつもりだったんだけど
人気が高くて15分前ですでに満員。
頭を切り替えて、いくつかの候補の中からこの作品に」

----でもまた正反対のタイプの作品を選んだね。
「でも、こっちもけっこうな人気だったよ。
補助椅子も出たくらい。
やはりシャーリーズ・セロン人気かなあ。
しかもフランシス・マクドーマンドまで出ている」

----だからって『スタンドアップ』のような社会派の作品じゃないんでしょ?
「うん。180度違う(笑)。
MTVの短編アニメ映画を元にしたSF。
舞台は今から400年後。
ウィルスにより人類の99%が死滅した未来。
人類は汚染された外界と壁で隔てた
潔癖な都市ブレーニャに住み、
病気もなく、飢えもなく、戦争もない平穏な生活を送っていた。
しかし、一見完璧に見えるその生活は虚偽なのではと疑う
反政府組織モニカンが暗躍。
シャーリーズ・セロン扮するイーオン・フラックスは、
このモニカンの優秀な戦士と言うわけだ」

----シャーリーズ・セロンの180度開客の
ビジュアルが強烈だよね。
「そう、この映画の見どころは元バレエダンサーだった彼女の技術を生かした
<魅せる>アクションにあるだろうね。
跳躍から着地という慣性に逆らって静止。
凶器に形を変えた芝生を
ぎりぎりで避ける姿などは見どころの一つだね」

----でもSFXがきれいすぎない?
『アイランド』じゃないけど、
ここは清潔な都市。
それも中世時代を思わせる町づくり。
人々はカラフルな日傘を差しているし…。
町の上にはモニュメントが
まるで監視するかのように浮かんでいる。
このあたりはTV『プリズナーNo.6』にも近いかな。
クリーンという点は『スター・ウォーズ』以前のSF映画、
たとえば『2300年未来への旅』あたりに似ているかも。
これがもう一つの見どころ」

----ふうん。しかし今日は肝心のストーリーを語らないニャあ?
「そっちの方は、
イーオンがターゲットであるトレバーから別の名前を呼ばれ、
その記憶が混乱したところで、おおよその予想はつくしね。
ま、多少は予想と違ったとしても、それはたいした問題ではない。
映画は楽しんだものの勝ちと思っている自分としては、
この映画はレトロなSFビジュアルと
その中で鍛え上げられた肢体を魅せてくれる
シャーリーズ・セロンを楽しんだと言うことかな。
あっ、『ホテル・ルワンダ』で支配人の妻を演じた
ソフィー・オコネドーも出演。
彼女の<足>には驚くこと間違いないよ。
少しキモいけどね」


               (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「あのパジャマはなんなのニャ」身を乗り出す

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『SPIRIT スピリット』

2006-02-20 19:40:15 | 新作映画
----この映画、ジェット・リーが、
なんだかスゴく懐かしい格好しているよね?
「うん。彼の代表作の一つ
黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)に扮した
『ワンチャイ』シリーズを思い起こさせるよね。
内容も『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地覇王」を
思い起こさせるところがある。
もっともこのときはウィン・ツァオが演じているけど…」

----どういうところが似ているわけ?
「いずれも舞台が清朝末期の中国。
『天地覇王』では
欧米列強が中国人民の士気を下げようと「獅王戦」を持ちかける。
一方、この『SPIRIT・スピリット』では
今で言う異種格闘技戦で中国の武術家を叩きのめすことで、
彼らの誇りを奪おうとするわけだ」

----なるほどね。ところで主人公は誰なの?
「黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)と同じく実在した武術家、
霍元甲(フォ・ユァンジア)。
彼の父親は優れた武術家。
しかし息子に同じ道を進ませることを嫌い、稽古を付けることを拒む。
ある日、その父は戦いの最中、相手にとどめを刺すことをためらい、
結果、試合に負けてしまう。
それらのことがフォの闘争心に火をつけ、
彼は武術の強者として名を轟かせるようになっていく。
しかし名声の高まりとともにうぬぼれも強くなっていくんだ。
この酒に溺れて傲慢、未熟なフォを演じるジェット・リーには驚いたね。
ぼくの中には、
武術映画の主人公は人間的にも成長して落ち着き払っていると言う
勝手に作りあげたイメージがあったからね」

----でも、まさかそのままで終わりはしないよね。
「うん。彼は弟子が名うての武術家と戦い、
大けがを負ったことから仇を取ろうとし、
結果的に相手を殺してしまう。
それはまた新たな報復を生み、
思いもよらない悲劇を巻き起こしてしまう」

----そうか、これまた<憎しみ>がテーマだ。
「そう、この点では日本もアメリカも中国も問題意識は変わらない。
さて、話に戻って……
悲しみと罪悪感で、あてもなくさすらうフォだったが、
のどかな山村に住む人々の純朴さ、やさしさに触れ、
人間性を取り戻していく。
数年後、故郷に戻った彼は
中国を“東洋の腰抜け”呼ばわりし、
そのスピリットを踏みにじる列強に対し、
自らが立ち向かうことで
同胞の民に勇気と希望を与えようとする」

----ニャるほど。そこで敵役として日本人、
中村獅童が出てくるわけだ。
「日本人=悪役と言うことから、
ぼくはブルース・リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』を思い出した。
ただ、ここで注目すべきは
中村獅童演じる武術家・田中安野を悪役にはせず、
逆にフォの思想に共鳴させているところだ」

----どんな風に?
「フォは言う。
「茶には優劣はない。飲む人の好み。
武術にも優劣はなく、
それを身につけた人の習熟の違いだけだ」(意訳)と。
その人生哲学がベースにあることもあり、
アクション監督ユエン・ウーピンの手による
二人のラストバトルは感動的でさえある。
ただ、それは映画に感情移入してしまった自分だからであって、
人によっては、このシーンで引っかかるかもしれないけどね」

----それはまた、どうして?
「う~ん。日中の関係が微妙な時期だからね。
中国の英雄に屈する日本人-----
あまりにも素直で物わかりのいいその姿に、
いろいろ勘ぐる人も出てくるかもしれないと言うことさ」

----そうか、プロデューサーが
『単騎、千里を走る。』のビル・コン。
「でもだからと言って、
悪い日本人を描けば
それはそれでいろいろ言われるのは間違いない。
実に悩ましいところだ。
もっともこの映画では、
原田真人がステレオタイプな悪い日本人を堂々の貫禄で演じ、
爽やか日本人を演じた中村獅童とのバランスを巧くとっているけどね」

----そう言えば『ドラゴン怒りの鉄拳』は
徹底した反日映画になっていたよね。
「実は、あの中で謎の死を遂げるブルース・リー演じた主人公の師匠、
それが本作の主人公フォ・ユァンジア。
『ドラゴン怒りの鉄拳』の原題『精武門』は
フォがバラバラであった武術会を
一つにまとめあげようとして創立した精武体育会の引用。
ジャッキー・チェン、ドニー・イェンなども
それぞれ精武体育会をモチーフにした作品に出演。
このジェット・リーも
『フィスト・オブ・レジェンド/怒りの鉄拳』に出ている。
それだけフォ・ユァンジアと言う人は
中国人にとって思い入れが深い人なんだろうね」

----でもなぜいま彼を映画に?
「ジェット・リーいわく
中国では自殺者が毎年28万人(!)を超えるんだって。
それを聞いた監督のロニー・ユーは、
中国史において愛国の象徴とされるフォを、
“英雄”ではなく“人間”として描くことが大切だと思ったらしい。
さすがハリウッドで活躍しているだけあって、
視野が広いと思ったな。
武術は相手を倒すことではなく
止めることに意味があると言うメッセージも胸に響いたね」

          (byえいwithフォーン)

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猫ニュー

『ファイヤーウォール』

2006-02-19 22:19:10 | 新作映画
----『ファイヤーウォール』ってコンピュータの用語だよね?
「うん。組織内のコンピュータに対する
外部からの侵入を防ぐシステム。
この映画の主人公ジャック(ハリソン・フォード)は、
銀行のコンピュータ・セキュリティ・システムの担当。
ところがある日、自分自身のプライバシーが
コンピュータを通じて侵害されていたことを知る。
それは身に覚えないギャンブルで大金を負けた上に、
支払いもしていないと言うもの。
ところがこれは単なる序の口で、
ビル・コックス(ポール・ベタニー)を首謀者とする犯人グループは、
ジャックの家に侵入し、家族を人質にしてしまうんだ」

----ふうん。彼らの狙いはなんなの?
「ジャックは銀行のコンピュータ・セキュリティ・システムの専門家。
彼らの要求は、
ジャックが作り上げた最高レベルのファイヤーウォールに侵入し、
金融資産を強奪すること。
犯人グループは、
家はもちろんのことジャックの服にまで
監視装置をつけて彼を脅迫する」

----ニャるほどね。しかしアメリカ映画って
コッポラの『カンバセーション・・・盗聴』から
ウィル・スミスの『エネミー・オブ・アメリカ』まで監視ものが多いよね。
「何よりも<個>を重んじるお国柄かもね。
家族を人質に取られたとき、
彼は自分が担っている社会的な責務を放棄するのか?
ハリソン・フォードは以前にも大統領に扮した
『エアフォース・ワン』でこのテーマは経験ずみ。
サスペンスとしてはこれ以上ない設定だ。

----でも逆に言えば新味がないとも言えない?
「だからこそ、製作側はコンピュータという
現代ならではの視点を導入している。
また、最初にジャックをビルに引き合わせる
同僚のハリー(ロバート・フォスター)が
犯罪に一枚からんでいるのかいないのかという、
ミステリー的要素も加えている。
さらに言えば、ジャックの会社は合併騒動で揺れていて
彼は自分を敵視しているゲイリー(ロバート・パトリック)とも
戦わなくてはならない」

----しかし、出演者はスゴい陣容だね。
「いやいや、まだまだこんなもんじゃないよ。
会社のCEOはアラン・アーキン。
妻にはバージニア・マドセン。
後半、彼と行動をともにする部下は
『24-TWENTY FOUR』のクロエ役で知られる
メアリー・リン・ライスカブだ」

----アクションの方はどうなの?。
「ハリソン・フォードのアクションは
少しやりすぎじゃないかと…。
高いビルの上から飛び降りるシーンなんて
雨と言うこともあり『ブレードランナー』を思い出した。
でもあの年齢であんなに体が動けると言うのは、
いくら彼が現代版ゲイリー・クーパー、
つまりアメリカン・ヒーローだとしてもありえない」

----と言うことは否定的に見ているの?
「いや、そう言うわけでもないんだ。
この映画は、一人の普通の男が
家族を守るために全力を尽くす映画。
そこでは普通以上のパワーが飛び出すという描き方は、
映画ならではの嬉しい嘘。
クライマックスでのポール・ベタニーとの戦いなどは、
まさにその好例。
長々とアクションを見せないからこそ
その一つひとつが印象に残る。
『ホステージ』が好きな人なら、この映画もイケるかもね」

          (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「インディも年とったなあ。フォーンも疲れるはずニャ」複雑だニャ

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猫ニュー

『水霊 ミズチ』

2006-02-18 15:56:14 | 新作映画
----これまた角川ホラー文庫の人気作が原作なんだって?
「そういうことらしいね。
でも思っていたほど怖くはなかったよ。
監督の山本清史が舞台挨拶で言ってたんだけど、
この映画には隠れテーマとして『自分の目に映っているものは、
果たして他の人にも見えているのだろうか』と言うのがあって、
最初は、そちらに引きずられすぎているのが
その理由かなとも思ったくらい」

----でもその言い方からすると、
まだ何かありそうだね?
「うん。その前に簡単に説明すると、
この映画は古代から<水霊(ミズチ)><死に水>と呼ばれ、
言い伝えられてきた呪われた水が、
いま生活しているぼくらの都市の生活する水道水の中に
混入してしまったとしたら?……というのがモチーフとなっている。
それを飲んだ者は異様なまでにのどが渇き、
おぞましい幻覚を見続けて最後には
自ら目を潰して死を迎える」

----うひゃああ~っ。目を潰すと言うのはいやだよね。
ブニュエルの昔からダリオ・アルジェントまで
まともに目を開けて観ていられない。
「うん。これはさすがにたまらなかった。
あと、自分が見る幻覚だね。
たとえば一人の少女なんて、
お岩さんみたいに髪がぼろぼろ抜けていく。
一瞬、幻覚と分かって『あ~よかった』と思ったら…」

----それもまた幻覚だったってヤツだよね。
最近の日本映画にはこの手のパターン増えてきたよね。
『呪怨』とか『予言』とか……。
「そう、入れ子構造の逃れられない悪夢。
この映画は、実はこの幻覚がベースとなっている。
たとえばヒロインの戸隠響子(井川遥)が勤める新聞社や、
彼女の離婚した夫・祐一(渡部篤郎)の働く研究室。
それが後半ではだれもいなくなっているんだけど、
これはその異変、水による感染でみんな死んだのか、
それとも主人公たちの幻影なのか、
最後になってもはっきりとしない。
果たしていつからそうだったのか……?
ま、これも監督の狙いなのかも知れないけどね」

----話、聞いていると『回路』を思い出すね。
「そうなんだ。
最初は『黄泉の沸く場所が黄泉比良坂』なんて
言葉も出てきたから、
『奇談』のようになるのかと思ったら、そうじゃなかった」

----ふうん。聞いているとオモシロそうな気もしてきた?
「監督自身、自分をオタクと言っているし、
映画の至るところに細かいヒントと言うか、
サインが散りばめられているみたい。
ただ、あれもやろうこれもやろうとしているため、
さまざまな<質>の恐怖が混在してしまった感も否めない。
そのためか、観た後はそう怖くなかったんだけど、
翌日になって考えさせられたというか、
意外と後を引いた作品だったね。
俳優の方は、渡部篤郎はいつもの汗だくの演技、
井川遥は貫禄が出てきた感じがしたよ」

              (byえいwithフォーン)

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『青いうた ~のど自慢 青春編~』

2006-02-16 23:46:08 | 新作映画
----この映画、副題が付いているね。
あれっ『~のど自慢 青春編~』って、
監督は井筒和幸だっけ?
「いや、これが劇場用一般映画デビューとなる金田敬。
ピンク映画やVシネマはたくさん手がけているらしいけどね」

----前作の『のど自慢』との関連はあるの?
「うん。赤木麗子が出ているよ(笑)。
しかも持ち歌「おしどり涙」を『6年間新曲だ』なんて言う楽屋落ちまである。
井筒監督がプレスに寄せたコメントの中に
『日本中のどこにだって歌と人生はある。
だから、ボクは舞台となる次の場所を探してもう一度、
「のど自慢」を撮ってみたかった』と言うのがある。
つまり『のど自慢』をモチーフに、
いくつでも映画はできるということだね」

----前回は金子辰雄が司会だったけど今回は生方恵一だね。
「うん。舞台挨拶でも司会をやっていたよ。
そうそう、その中で斉藤由貴が
『この映画はソーダ水みたい。
一番下まで沈んだ泡が上まで来る間の
わずかな時間を描いた』と言うような詩的コメントをしていた」

----斉藤由貴も出ているんだ?何歌うの?
まさか『卒業』じゃないよね。
「それは映画の根本に関わるから言えないな。
彼女の役柄は亡き夫のデコトラを受け継いだトラック野郎(?)。
父の面影が忘れられない娘・恵梨香は、
母親が最近新しい男と親しくしているのが許せない。
映画は、その恵梨香を含む
青森むつ市に住む4人の少年少女の一年間を
名曲『ケ・セラ・セラ』を軸に進んで行く。
町工場で働く者、中華料理店に就職する者、
東京の高校へ進学する者。
恵梨香は昼間は美容院で働き、夜は美容学校へ通う生活。
この4人に、濱田岳、冨浦嗣郎、寺島咲の
『3年B組金八先生 Part7』の同期と落合扶樹。
さらに注目すべきことに
濱田岳、冨浦嗣郎の祖母を緑魔子が演じ、
ディープな下北弁を聞かせる」

----緑魔子!うわあ懐かしいね。
「あと、団時朗もシブい喉を聞かせるけどね」
----あ~あ、『帰ってきたウルトラマン』!
それで映画はどうだったの?
「タイトルどおり、青春の光と影を描いた映画。
思ったのは音楽は強いなと言うこと。
自分の知っている曲が流れるだけで、
観る者の心をほぐす力を持っている。
冷静な判断ができなくなってしまう。
一番感じたのは、斉藤由貴の役者魂。
彼女も久しぶりの映画出演だけど、
その老けメイクと津軽弁で最初は誰か分からなかった。
でも、最後はキチっと決めてくれるよ。
何を歌うかは言えないけどね」

----もう、しつこいニャあ(笑)
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『プロデューサーズ』

2006-02-15 23:50:54 | 新作映画
----これってミュージカルの映画化なんだって?
「うん。でもそのまた元をたどれば、
68年にメル・ブルックスが手がけた映画。
それがブルックス自身の脚本と作詞・作曲で
ブロードウェイ・ミュージカルに。
2001年にトニー賞12部門受賞という
華々しい記録を作り、
そして今またスクリーンに帰ってきたわけだ」

----ふうん。メル・ブルックスって
作曲までできたんだ。
「彼の作曲の才能を最初に見いだしたのは
ブルックス婦人のアン・バンクロフト。
映画『卒業』のミセス・ロビンソンで知られる彼女も、
昨年他界してしまったけどね」

----メル・ブルックスってコメディってイメージあるよね。
と言うことは、この映画もミュージカル・コメディ?
「うん。物語自体もふざけている。
ただ、ミュージカルとしてはかなり本格的。
オープニングのニューヨーク44丁目の華麗なセットを観ただけで、
『あっ、これはブルックス本気だな』というのが
ひしひしと伝わってくる。
しかも映像のタッチは50年代のテクニカラー風味。
ノスタルジーと笑いが絶妙に絡み合って、
何度声を出して笑ったか分からない」

---へえ~っ。で、お話は?
「舞台は1959年。
落ち目のプロデューサー、マックス(ネイサン・レイン)と、
小心者の会計士レオ(マシュー・ブロデリック)は
一晩で大コケする史上最低なミュージカルを作ろうとする。
コケれば、出資者に配当金を払わなくてすむため、
プロデューサーが儲かると考えたわけだ。
そこで彼らは、史上最低の脚本、最低の演出者、
最低の出演者を探すことに。
かくして彼らが見つけた脚本が
ナチス信奉者のドイツ移民フランツ(ウィル・フェレル)による
『春の日のヒトラー』(笑)」

----アブナいアブナい(笑)
「さらに、それを演出するロジャー(ゲイリー・ビーチ)の仲間たちは、
どう見てもゲイばかり。
カースティング(キャスティング)にやってきた
スウェーデン娘ウーラ(ユマ・サーマン)も
男を挑発するような妖しい魅力を振りまく。
ほんと、ブルックスならではの下ネタ&ヤバいネタが多くて、
よくこれがブロードウェイで上演されたものだと
正直、少し驚いたね」

----ブルックスと言えば、パロディ映画が多いよね。
「そうだね。
日本では『ヤング・フランケンシュタイン』(怪奇映画)、
『ブレージング・サドル』(西部劇)
『サイレント・ムービー』(サイレント映画)など、
ジャンル・ムービーをパロディ化した彼の映画が次々と紹介された。
でも、パロディと言ってもその根底にあるのはそれら映画への愛。
この『プロデューサーズ』も、
ミュージカルのパロディであると同時に、オマージュにもなっている」

----でも、ミュージカルで完結しているのに
映画として観る楽しみってあるの?
「これはミュージカルに限らず、
お芝居全体に言えることだけど、
俳優の顔をアップできると言うのが映画ならではの特徴。
今回もネイサン・レイン、ウィル・フェレルと
顔の演技ができる俳優が勢揃い。
これは期待していいと思うよ。
後、やはり映画ならではのロケーションを生かした撮影だろうね。
舞台ミュージカル版では
マックスのオフィスの中でだけ繰り広げられる
『We Can Do It』のシーンが、
マックスのオフィスを飛び出し、
44丁目のサーディズの前、タクシーの中、
セントラル・パークの噴水の前へと移動してゆく。
パークに足を踏み入れるシーンは
俯瞰で捉えることで空間的広がりを出しているし、
最後には噴水の中でバシャバシャ。
ここなんて『雨に唄えば』を思い出したね」

----ブルックス自身は出ていないの?
「カーテンコールで姿を見せ、一発かますよ。
エンディング・クレジットが始まっても席を立たないようにね」



 (byえいwithフォーン)

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『グッドナイト&グッドラック』

2006-02-14 21:48:26 | 新作映画
----この映画アカデミー賞6部門ノミネートニャんだって?
えっ、監督がジョージ・クルーニー。本当?
「うん。共同脚本に出演も兼ねている。
で、製作総指揮が今や彼の盟友スティーブン・ソダーバーグ」

----いつの時代のお話なの?
「1950年代のアメリカ。
そこではマッカーシー上院議員による“赤狩り”旋風が吹き荒れていたんだ。
この後遺症は今でも残っていて
エリア・カザン監督はアカデミー名誉賞を授与されながら、
授賞式での反応は賛否に分かれてしまった。
当時、彼が赤狩りに協力的だったというのがその理由だ。
あの時代、根拠の有無にかかわらず嫌疑がかけられた者は、
共産党やその新派でないことを示すために
他の誰かを告発することを強いられ、
拒否すると職や地位を追われたんだ」

----先進国アメリカとは思えない話だね。
「この赤狩りは映画界にも及び、
映画でも描かれたことあるから
前から知っていたけど、
それがどうやって終結したかまではぼくも知らなかった。
ここでは国民的ニュースキャスター、エド・マローと
若き記者たちがその言葉を武器に、
マッカーシー議員と戦う姿が描かれる。
当時、上院議員への批判は、
世論の糾弾の的になるだけではなく
反逆罪にも問われない行為だったと言う。
それだけにこれは相当に勇気のいった行為。
映画は、彼らの戦いと同時に、
議員側からの圧力、
さらには最初は『今夜も明日も私は君の味方だ』と言っていた
経営のトップが社を取り巻く状況の変化に応じて
圧力を加えていくさまがシャープなモノクロ映像で描かれる」

----へぇ~っ、カラーじゃニャいんだ。
「うん。まるで50年代の映画を観ているみたい。
キャメラはもちろんだけど、
当時の雰囲気をディテールまで再現した美術やコスチューム、
そしてそれを完璧に着こなした俳優の力も大きい」

----ふむふむ。総合点も高いってワケね。
アカデミー賞の可能性はありそう?
「ノミネートされた映画全部を観たわけじゃないから
なんとも言えないけど、
エド・マローを演じる主演のデヴィッド・ストラーザンは
アカデミー賞が好む演技だろうね。
昨年の『Ray/レイ』もそうだけど、
実在の人物に限りなく近く演じた場合は、
オスカーにも限りなく近くなる」

----ニャるほどね。
しかし最近は社会派映画が多いね。
「それだけ社会が病んでいるということ。
映画人たちは危機感を持っているってわけだ。
この映画だって、
社会の風潮が一色に染まりやすい
日本にとっては他人事じゃないと思う。
映画は、そのためにジャーナリストはどうあるべきかを問うている。
小さな規模での公開だけど、
『ホテル・ルワンダ』みたいな広がりを見せてほしいな」


          (byえいwithフォーン)

マジェスティック 特別版(期間限定) DHP-22119マジェスティック 特別版(期間限定) DHP-22119
※こちらはマッカーシズムを寓話的に。
フランク・ダラボン(『ショーシャンクの空に』)監督作品。主演ジム・キャリー。

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『映画 ドラえもん・のび太の恐竜2006』

2006-02-13 18:54:37 | 新作映画
----あれ?アニメはやらないんじゃなかったの?
「そうなんだけど…。
でもこの映画は少し喋ってもいいかなと…。
と言うのも、これって1980年に公開された
『ドラえもん』シリーズ第1作『のび太の恐竜』をリメイクしたものなんだ」

----前作と同じ原作を、その原作者のプロダクションがリメイク。
これって珍しいことだよね。
「うん。ただ、監督が変わっているからね。
前作の公開からすでに26年。
今回メガホンを取る監督・渡辺歩は当時まだ中学生だったらしい。
彼はその後、長編ドラえもんの併映作で
感動路線として人気を集めた『帰ってきたドラえもん』
『のび太の結婚前夜』『おばあちゃんの思い出』を監督している」

----と言うことは、今回も涙、涙なんだね?
「まあ、観る人にとってはそうだろうね。
だって恐竜の卵を自分で孵化させたのび太と、
その恐竜ピー助の別れの物語だからね。
これはつらい話だよ……」

----ありゃりゃ。それで終わりニャの?
ほら見どころとか、リメイクの意味とか…。
確か、これ藤子・F・不二雄が
『野生のエルザ』にインスパイアされたんだよね。
「今回、3Dになったというわけでもなく、
基本的なストーリーラインも同じ。
前作をそんなに詳しく覚えているわけでもない
アニメ素人のぼくから見ると、
あまり変わっているようには見えなかった。
もちろん、両者を仔細に比べるといろいろ違うんだろうし、
これは、あくまでも印象としての話だけどね。
それでもタッチは前作より柔らか。
テレビアニメのようなベタ~っとした感じじゃなかったな。
特に白亜紀のシーンは、
一億年前の海、夕陽、満天の星空など、
すべての自然が詩情にあふれていて、
のび太たちでなくても、
しばらくここで遊びたくなる…そんな感じだったね。
なかでも首長竜が現れるシーンは前作よりインパクトがあった」

----80年の作品はスピルバーグに影響を与え、
そこから『ジュラシック・パーク』が生まれたと言われているけど…。
「『E.T.』もそうだという人もいるね。
今回の映画はそれが逆輸入されたって感じ。
先ほどの首長竜のシーンなんて
実際に白亜紀に投げ出された感じに陥る。
やはり『ジュラシック・パーク』のリアルな映像が
どこかしら影響を与えているのかも…。
そうそう、今回から声優が一新。
それとは別にピー助の『ピ~』という声を
神木隆之助がやってる」

----神木“竜”之助だったらバッチシだったのにね。
「バカなこと言わないの(笑)」
       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「なんかしんみりしちゃうニャ」悲しい

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※画像はオフィシャルのプレスキット・ダウンロードより


『花よりもなほ』

2006-02-11 21:35:25 | 新作映画
----これは『誰も知らない」で
一躍時の人となった是枝裕和監督の新作。
時代劇と言うことでまたまた注目を集めているんだよね。
もうできあがっていたんだ。
でもこのタイトルどういう意味?
「『忠臣蔵』のお話は知っているよね。
これは、その中で浅野内匠頭が読んだ辞世の句
『風さそふ 花よりもなほ 我はまた
春の名残を いかにとかせむ』から採っているんだ」

----ふうん。ということは赤穂浪士のお話?
「いや、確かに彼らも幾人かは出てくるけど、
主人公は父の仇討ちをするべく、
上京して仇を探すために長屋に潜んでいる青木宗左衛門(岡田准一)。
映画は、彼とその周りの長屋に住む市井の人々の人間模様を描いていく。
当時は仇討ちが江戸幕府によって法制化され、
合法的な殺人として認められていた。
藩によっては
報奨金を出して仇討ちを奨励するケースも見られたらしい」

----へぇ~。信じられない話だニャ。
長屋の映画と言うと山中貞雄の『人情紙風船』が有名だよね。
「うん。あと黒澤明にも『どん底』がある。
この作品には、
その黒澤や溝口健二の時代劇で現場に携わった馬場正男が
美術に加わっているだけあって、
あまりにも完璧な長屋のセットには目を見張ること間違いないよ」

----ニャるほどね。で、その仇役は?
「浅野忠信がやっている。
実は、宗左衛門はずいぶん前に
この仇・金沢十兵衛を見つけているんだけど、
腕に自身がなく、しかも血を見るのも弱いものだから、
なかなか仇討ちの踏ん切りがつかないんだ。
そこで彼は長屋では、そろばんや読み書きを教えている」

----キャスティングを見たところ喜劇色が強いようだけど?
「うん。脚本的には笑いを取ろうとしている箇所が
いくつも見受けられたね。
いわゆる緊張感やサスペンスで描くのではなく、
恋あり、笑いあり、涙ありのドラマになっている」

----恋もするの?
「主人公がいわゆるヒーロー・タイプでないだけに、
はっきりとした意思表示は見られないけどね。
彼が密かな思いを寄せる相手は未亡人で子連れの、おさえ。
これは宮沢りえが演じているんだけど、
長屋のおのぶを演じる田畑智子と二人で、
普段は絶対に口にしないような言葉『●○』を連発するのには、
少々驚いたね」

----へぇ~っ。
ところで、その腕が弱い主人公は仇討ちどうするの?
「そこがある意味、
スピルバーグ『ミュンヘン』で残された課題の回答にもなっている」

----こりゃまた大胆な…?
「つまり仇討ち=復讐の連鎖を
『貧しく。剣が弱く、逃げ足が速い』宗左衛門が、いかにして止めるか……?
だって、ここで彼が仇討ちに成功しても
また自分がその縁者に仇として狙われるわけだからね。
おさえが呟く言葉の中にも
『お父上の人生が宗左さんの残したものが
憎しみだけだとしたら、寂しすぎます…』というのがある。
もちろん、これは寓話だから
現代の世界情勢にピッタリ当てはめるのは無理があるけど…」

----ふうん。そうか意外と現代的なテーマになっているわけだ。
「そう。この映画は
『武士道とは死ぬことと見つけたり』の『葉隠』とは対極にある。
いわゆる、主義や思想に殉ずるのではなく
『どんなことがあっても生きていようよね』という考え方」

----70年代にはよくそういう歌があったっけ。
加川良、北炭夫、早川義男……。
「フォーンはいくつなんだ(笑)。
そう言えばこの映画は、
これまでの是枝作品と違ってアップがとても多い。
それも個人主義を強く打ち出したそのテーマゆえんかもね」

               (byえいwithフォーン)

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『玲玲(リンリン)の電影日記』

2006-02-10 19:34:06 | 新作映画
----これって“中国版ニューシネマ・パラダイス”とか
言われている映画だよね。
「うん。映写技師が重要な位置を占めるし、
野外映画館なんかも出てくるからね。
子供の頃からの映画ファンにとっては、
自分の映画史と重ねあわせて
たまらなく甘ずっぱい気持ちになるかもね」

----でもさあ。主人公のところに
『太陽の少年』のシア・ユイの名前があるよね。
でもメインビジュアルには載っていない。
いったい、どういうお話ニャの?
「じゃあ、さわりだけ話そうかな。
北京で働く青年ダービン(シア・ユイ)は大の映画好き。
休みの日、映画館に自転車で急いでいたところ、
通りに積んであったレンガに突っ込んでしまう。
起き上がろうとすると、
一人の少女が突然目の前に現れ、
傍にあったレンガでダービンの頭を殴りつける。
病院で目が覚めたダービンは、
少女に怒りをぶつけるが、
彼女は何も聞こえていない様子。
そして彼にアパートの鍵を渡し、
『金魚に餌をあげて』というメモを渡す……」

----ニャんだそれ?思っていたのと全然違う。
「ここまでだと、確かにそうだよね。
ところが彼女の部屋には
映画ポスターやスチールが壁一面に貼られているばかりか、
映画さえもプロジェクターで観られるようになっている。
そして、ふと見つけた日記を紐解くと……」

----もしかして彼女は自分の幼馴染みだったとか?
「大当たり。まさに映画ならではの展開。
強引と言えばこれ以上なく強引だけど、ツカミとしてはオモシロい。
さて、映画は二人の出会い、
そして映画を通して仲良くなった少年時代、
さらには悲しい別れまでを描いていく」

----ニャるほど。でもなぜ彼女は彼を殴ったの?
耳が聞こえない理由も分からない。
「うん。それは二人が別れたあとに起こった出来事に起因する。
まあ、さすがにここまで喋るのはルール違反だ。
さわりだけと言いながら、結局長くなっちゃった(笑)」

----はい、質問。
じゃあ、映写技師は少年とどういう関係?
「この辺りも説明すると長くなっちゃうんだけど……。
この少女の名前が玲玲=リンリン。
彼女のお母さんチアン(チアン・イーホン)は
田舎町の公共放送の花形アナウンサー。
戦前のスター、チョウ・シュウアンのような女優になることを夢見ている。
ところが危険な恋に落ち、身籠ったあげく男は失踪。
チアンは野外映画館で上映中に産気づき、
映写技師のパン氏の助けで玲玲が産まれたわけだ」

----まるで淀川長治伝説みたいだ。
「よく知ってるね。さすがフォーン(笑)。
さて、物語はこの野外で上映される映画を絡めながら進行していく。
子供たちも映画で育っているものだから
その遊びの背景にも抗日闘争や文化大革命が窺える。
そうそう、文革中の中国が北朝鮮と並んで唯一国交があった
アルバニアの映画が観られるのも貴重な体験だ」

----それは、えいに受けそうだ。
映画へのオマージュにノスタルジー、
そして「彼女に何が?」のミステリーの3点セット(笑)。
しかもせつなさとやさしさがありそうだし…。
「茶化さないでよ(苦笑)。
でも、この映画のクライマックスで
出てきたナレーションが実にいいんだ。
『それは映画の黄金時代。
肩を寄せあい、ともに息づき、ともに夢見る』。
このセリフが聞けただけでも、ぼくは大満足だね」

       (byえいwithフォーン)


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『THE MYTH 神話』

2006-02-09 18:13:18 | 新作映画
----これはジャッキー・チェンの武侠映画だね。
あまり似合わない気がするニャあ。
「どうしてそう思うの?」
----だってジャッキーと言えば
その最大の魅力はボディアクションだよね。
それなのにこの映画ではCGやワイヤーワークを使うんでしょ?
「うむ。いきなりポイントを突いてきたね。
それを意識してかこの映画、
現代のパートと過去のパート、
二つの話が同時進行していく」

----確か『グリーン・デスティニー』の
台湾の女流脚本家ワン・ホエリンが執筆しているんだよね。
「そうだね。
出来上がった映画もラブストーリー中心になっていた。
物語は現代のパートが
親友の物理学者ウィリアム(レオン・カーフェイ)と共に
インドの古代都市の遺跡へ向かった
考古学者のジャック(ジャッキー・チェン)が
滝の奥に眠る秦の始皇帝の天宮で
愛の<神話>と出会うと言うもの。
そして過去のパートはジャックの見る夢を発端として
その続きが語られる。
そこでは秦の近衛将軍・蒙毅(ジャッキー)が
朝鮮から迎える妃・玉漱姫(キム・ヒソン)の警護の任に就く。
だが、玉漱姫は蒙毅に惹かれていく……というお話だ」

----ニャるほど。クライマックスでその二つが結びつくんだね。
「そういうこと。
ここで、どうしても気になってしまうのが過去のパート。
始皇帝は地下宮殿を造ったと言う伝説の他に、
永遠の命を得るために不老不死の霊薬を
道教の方士・徐福に探させたと言う『徐福伝説』と言うのがあるらしい。
この『徐福伝説』に基づくクライマックス・シーンでは
人が空を飛びながら戦うシーンが出てくる。
ここはどうしてもグリーンバックにワイヤーワークになる」

----分かった。現代の実写パートまで
SFXじゃないかと疑ってしまうわけだ。
「そういうこと。
実際は細い山道から姫を乗せたまま転落しそうになる馬車や
インドのモンキーマウンテンの岩山でのジャンプなど、
監督スタンリー・トンは、あえて実写に挑んでいるんだけどね。
崖から落ちそうになった馬車には火まで放ち、
馬たちは火におびえて狂ったように暴れだし、
『ロード・オブ・ザ・リング』も担当したホーストレーナーが
激怒して詰め寄ったとか…。
でも“空飛びシーン”のおかげで
どうしても色眼鏡で見てしまう。
ハリウッドだとこれらのシーンはCGでごまかしちゃうからね」

----他にもジャッキーには、手近にあるものを使って
魔法のように操るコメディ的なアクションもあるよね。
「うん。今回の見モノはベルトコンベア。
ベルトの上には一面に強力接着剤が塗られていて、
その上に乗った人間の身動きが取れなくなる。
そこでお互い、靴や服を脱ぎながら相手と戦うわけだ。
しかもベルトが流れる向こうに待ち構えるのは巨大な裁断機。
果たして無事脱出できるのか?-----
このアイデアは笑えた。
おそらくツイスターゲームから思いついたんだろうな」

----その遊び心がジャッキーだね。
        (byえいwithフォーン)


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※画像は香港オフィシャルのwallpaperより


『春が来れば』

2006-02-08 19:23:43 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


----最近、チェ・ミンシクの名前よく聞くよね。
「そうだね。
でも「オールド・ボーイ」 を始めエキセントリックな役柄が多かった。
この『春が来れば』はキャッチコピーの
『傷だらけで、落ちこぼれて。
それでも人生は、悪くない』そのまま。
雪積もる厳しい冬の炭鉱町での話でありながら、
心の奥深くからじわ~っと暖めてくれる映画だ」

----監督のリュ・ジャンハという人知らないニャあ。
「ホ・ジノ監督の『春の日は過ぎゆく』の助監督を務め脚本にも参加。
これが監督デビュー作になるわけだけど、
『春の日が過ぎゆく』が
桜の散る中で恋人だった2人が別れる映画だったため、
逆に桜の花が舞う中で2人が再会し、
また関係をやり直す話をつくりたいと思った----と言うことらしい。
ストーリーをプレスを元に要約してみよう。
主人公はトランペッターのヒョヌ。
交響楽団に入って名声を得るという夢も実現しないまま、
気がつけば中年の年齢に。
愛する人を幸せにする自信もなく、
いつの間にか不機嫌で頑なな人間になっていた彼だが、
ソウルから遠く離れた炭鉱町の中学校で吹奏楽部の指導をするうちに、
人の心の温かさに触れ、ゆっくりと自分自身も成長していく」

----ニャるほど、いいお話だ。
ブラスバンドと言うと『ブラス!』を思い出すよね。
「そうだね。炭鉱が斜陽と言うのも似ている。
この映画が共感を呼ぶのは、
チェ・ミンシク演じるヒョヌが人格者どころかダメ男と言うところ。
同棲していた恋人ヨニには素直になれないし、
第一、スゴいマザコン男だ。
また<音楽家>と言う理想を掲げているものだから、
仕事面での妥協ができない。
そのためしっかり金を稼いでいる友人には苛立ちをぶつけてしまうし、
母親のために栄養剤を持ってきてくれた元恋人にもつれない。
ところがそんな彼が炭鉱町の人々と接するうちに、
彼らの人を想う心の深さ、
その悲しいほどに美しい姿に触れ、
それまで甘えの裏返しで突っ張っていた母親に電話で弱音を吐いてしまう。
『かあさん、俺、最初から全部やりなおしたい』……」

----まるで<子供>だね。金八先生とは真反対だ。
でも、そのヒョヌが出会う人たちって?
「おばあちゃんと二人暮らしの少年ジェイル、
ケニー・Gに憧れる少年ヨンソク。
そんな彼らに、
ヒョヌは理想論ではないところで現実的に対応していく」

----現実的ってどういうこと?
「たとえば彼は、
ジェイルのおばあちゃんの入院代を稼ごうと
派手な服を着てナイトクラブでペットを吹く。
あるいは、
ヨンソクが吹奏楽部を続けることをよく思わない父親を
説得しようとして反対に意見され、その考えに同調する……。
この映画の素晴らしいところは
それら一つひとつのエピソードが
後半、新たな膨らみを見せていくことにある。
なかでも少年たちが炭鉱労働者たちを讃える演奏をするシーンは、
映像的にも忘れがたい名場面。
暗い坑道からカメラが抜け出るとそこには楽団が…。
ここでは長い暗闇の向こうの<希望>が謳われ、
観る者の心にも爽やかな微風を送り込む。
また、ジェイルに渡した楽譜が
海辺でヒョヌの恋の再生に関わる<ある奇跡>をもたらす」

----ニャるほどね。でも新しい町で新しい恋とかはなかったの?
「うん。素敵な出会いはあるけれど、それも友情のようなもの。
恋にまでは発展しないところが節度がある。
ひと冬の出来事を経て<大人>に生まれ変わったヒョヌ。
そのときのチェ・ミンシクの表情が見モノだよ」


          (byえいwithフォーン)

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