ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『それでも生きる子供たちへ』

2007-04-27 22:48:11 | 新作映画
(原題:All the Invisible Children)

----この映画もオムニバスだよね。
しかも日本でも人気の監督たちがずらり。
「うん。それぞれが描いているのは
“いまを生きる”子供たちの話。
少年兵士の物語もあれば、盗みを働く少年少女たち、
戦場の子供たちにストリートチルドレン、
さらにはHIV胎内感染した少女の物語もある」

----どれが印象に残ったのかニャ?
「やはり知っている監督の作品は入りやすかったね。
たとえばエミール・クストリッアは
いつもどおりのにぎやかなタッチ。
葬式と婚礼の行列から始まり、
少年院や窃盗団家族のけたたましい騒ぎが
映画を覆いつくす。
そのタッチは悪ふざけすれすれ。
予想がつくとは言えオチもブラックだ」

----リドリー・スコットは共同で
監督しているようだね。
「うん。ジョーダン・スコット。
彼女はリドリー・スコットのひとり娘。
この映画は少し気どっている。
主人公は中年にさしかかったフォトジャーナリスト。
戦場での悪夢から精神のバランスを崩し始めている。
そんな彼がある日、森の中を散策していると、
突然子供たちの声が聞こえてくる。
その声を追いかけていると、
なんと自分自身も少年の姿に戻ってしまう……」

----へぇ~っ。それはオモシロそうだね。
「あとスパイク・リーも見逃せないよ。
主人公は、両親がHIV感染者の上、麻薬常習者、
そして自分もHIVに感染している少女。
そのことを知った周囲は彼女をいじめるんだけど、これがまた残酷。
イジメの構造は日本だけでないことを思い知らされたね。
このエピソードのラストショットは
ある短いセリフで締めくくられる。
おそらく観た人誰もの目にいつまでも焼き付くこと
まず間違いないだろうね」

----ふうん。ニャんて言ったんだろう?
「それは内緒(笑)。
自分の目で確かめて。
でも実は、いちばん泣かされたのは
ラストを締めくくる中国のエピソード。
これは裕福だが、いがみ合う両親のもとで暮らす桑桑(ソンソン)と、
貧しい老人に拾われた孤児の小猫(シャオマオ)の話。
ふたりのエピソードが、
桑桑が捨てたフランス人形を軸に絡み合う
脚本の妙もさることながら、
このシャオマオを演じたチー・ルーイーの表情が実にいい。
彼女の愛くるしい顔に涙を誘われない人は、
まずいないんじゃないかな。
そして何よりも驚くのが、
この映画があのバイオレンスの巨匠ジョン・ウーの手によるものだと言うこと。
ぼくは、アクション映画以外の彼の作品を観たのは初めて!」

----確かにチェン・カイコーとか、
チャン・イーモウあたりが撮りそうな話だよね。
そう言えばジョン・ウーって
中国本土で撮ったの初めてじゃニャい?
「うん。それも見どころのひとつだね。
でもこのエピソード最大の特徴は、
子供によって大人が救われること。
少しジョン・ウーの言葉を引用しよう。
『我々は世界の子供たちを救う話をしているが、
本当は子供たちが我々を救っているのだ。
彼らの強さと愛が世界を変えていくだろう』。
まさに、この言葉どおりの映画だったね。
もともとは<世界中の子供たちの窮状を救うための映画>を作ろうと
いうことから始まった企画だけど、
ジョン・ウーはその企画に乗りながらも、
自分独自のスタンスを鮮明に打ち出している。
今後の彼の作る映画が、実に楽しみだ」


     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「“小猫”って猫じゃないのニャ」身を乗り出す


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猫ニュー

『雲南の少女・ルオマの初恋』

2007-04-24 23:24:26 | 新作映画
(英題:When Ruoma Was Seventeen)

----雲南の棚田って、ユネスコの世界自然遺産になってるんだよね。
何かで見たことあるけど、日本の段々畑とは規模が違うよね。
「そうだね。この映画の監督チアン・チアルイは、
その世界遺産申請の動きに連動した、
棚田を題材とするテレビ番組制作の依頼を受け、
雲南省紅河州を訪問。
実際の風景を目にし、これぞ映画の素材だと直感。
かくしてこの『ルオマの初恋』が生まれたらしい。
以後チアン監督は『雲南三部作』を製作するというから、
彼にとってまさに運命の地となったわけだ」

----へぇ~っ。ニャるほどね。
でもタイトルに“初恋”なんて付いていると
想像がついちゃうよね。
手垢のつかない大自然に生きている少女と
街からきた青年の恋-----。
「あっ、それは当たっているな。
でもただそれだけではなく、
この映画では雲南のハニ族の文化や風習といった、
ぼくなどがまったく知らない世界が細かく紹介される。
たとえば男女の相聞歌とか、
愛を告白する泥玉の投げあいとか、
竜樹の下での巫女の祈祷とか……。
この映画はその中の一人、ルオマが
漢民族のキャメラマン、アミンと知り合うことから
物語がスタート。
この地で写真館を開こうと思っていたアミン。
ところが彼のお金は底をついていた。
そんなアミンの目に止まったのが
外国人観光客たちが民族衣装も可愛いルオマと
一緒に写真に収まろうとする風景。
それを見た彼は、
彼ら観光客からお金を取ることを提案するわけだ」

----ニャんだか、不純じゃない?
「でも、意外とこれってリアルかもよ。
この映画を観ると、
遠い異民族に感じていたハニ族が
実際にはぼくらとそうは変わらず、
ただ民族衣装によって
別世界の人のように見えていただけだということが分かる。
だれだってお金がたくさん、
しかも楽に稼げれば嬉しい」

----ふうん。でも、最初からそうなのかニャあ?
なんか複雑?
「そうだね。
ぼくたちはこういう大自然とともに暮らしている人たちを見ると、
勝手にピュアなものをイメージし、押し付けてしまう。
この映画では、
昆明での出稼ぎから戻ってきたルオマの友だちは
エレベーターがないことを嘆くし、
ルオマも初めて手にするヘッドホンステレオに驚く。
つまり、先進の文化が徐々に
この海抜2000mの地に入り込んでくるわけだ。
アミンが棚田と隣り合わせにバイクで駆け抜けるのも、
その象徴と言えるかも」

----ニャるほど。
そのヘッドホンでルオマが何を聴いたのか、
これも気になるニャあ!
「う~ん。あかしていいのかな。
これがエンヤの『カリビアン・ブルー』」

----中国の高地にエンヤってのもニャあ…。
『冷静と情熱の間』も『スウィート・ノベンバー』も
『ロード・オブ・ザ・リング』もエンヤ。
これぞグローバル化だよね(笑)。
「だから言いたくなかったんだ。
さて話を元に戻すと、
このルオマを演じたリー・ミンは
映画の仕事の関係で、昆明、北京、ベルリンと
新しい都市に行くたびに、
元のところには
もう戻りたくないと言ったらしい。
と言うことは、もしかして
この映画の撮影はとんでもないことを
この地にもたらしたのではないか?
ヘッドホンステレオやエレベーターの存在を
ハニ族に教えてたのも彼らではないかと……」

----ニャるほど、それは微妙だ。
ところでルオマの家族構成はどうなってるの?
「幼い頃から彼女には父も母もいなく、
機を織るおばあちゃんとふたり暮らし。
この構図が映画の切なさをより強める」

----話を聞いていると
よくあるメロドラマって感じだね。
「確かにね。
でも、先ほど話した<少数民族の文化を侵食する都会の文化>という点に
思いをめぐらせると、
この映画の別の側面が浮かび上がってくる。
なんとも複雑な気持ちになったね」


     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ぼくも旅したいニャあ」小首ニャ


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猫ニュー

『河童のクゥと夏休み』

2007-04-22 22:59:12 | 新作映画
黒目川

----あれっ、これ携帯の写真だよね。
映画のシーンとは違う。どういうこと?
「うん。この前観た『河童のクゥと夏休み』が
あまりにも素晴らしくて
ちょっとロケ探訪してきたってわけ。
ここはこの映画の
重要な舞台となる黒目川」

----へぇ~っ。でも確かそれってアニメだよね?
「そう。
あの大傑作
『クレヨンしんちゃん・嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』の監督、
原恵一初の“マンガ原作ではない”アニメ。
この映画は
東久留米在住の児童文学作家・木暮正夫の原作が基になっているんだ」

----ふうん。と言うことは、
この黒目川と言うのは東久留米にあるんだ。
「そういうこと。
この映画化のため
原作者に会いに行った原恵一監督は
街の中を2本の河が流れるこの東久留米の街並みを
とても気に入ったんだね。
ロケハンにロケハンを重ね、
東久留米駅や黒目川周辺はそっくり再現。
映画の中で使われる効果音も、
実際に東久留米の街音を使ったらしい」

----ニャるほど。
で、お話の方はどういうものニャの?
河童が出てくると言うことはファンタジー?
「簡単にプロットを話すとこうなる。
夏休み前のある日、
小学校の帰り道に上原康一は大きな石を拾った。
化石のようにも見えたその石を
水で洗うと中から出てきたのはなんと河童の子供…。
その第一声が『クゥ~!』だったことから、
康一はこの河童をクゥと名付ける。
何百年もの間、
地中に閉じ込められていたクゥ。
しかし時は移り、
この時代には彼を苦しめたお侍もいなければ、
住んでいた沼もない。
見かねた康一はクゥを河童伝説の残る遠野へ連れて行くが…」

----ニャるほどね。でもそこにも河童はいなかった!
「そういうこと。
まあ、お話はここまでにしておこうかな。
実を言うとこの映画は、あまり喋りたくないんだ。
観た人とだけ、
お互いにその感動を分かち合いたい部類の作品」

----でも、それだけじゃ
観る気がいま一つ起きないニャあ。
どういうところがいいのか少し話してくれなきゃ…。
「そうだね。じゃあ少しだけ。
まず、クゥたちが住んでいた沼がなくなった理由。
それは江戸時代に私利私欲に走るお侍が干拓してしまったから…。
これって現代にもありそうな話だよね。
さて、クゥが息を吹き返した遠因となるのは
現代の小学校ではもはや普通となっているイジメが元で起こった
ちょっとしたアクシデント。
一方、康一の家にはクゥと心で会話できる犬のオッサンが飼われている。
実はこのオッサンもイジメの二重構造で
康一の元へやってきている。
ぼくは物語としては
このオッサンの話でまずやられたね」

----ニャるほど。
そういう話には、えいは弱いものニャ。
「そうなんだ(汗)。
そこには
あまりにも辛い別れがある。
この<別れ>は、
この映画にはその後、幾とおりも出てくる。
オッサンとクゥ。
康一と同級生の女の子。
そして最大のクライマックスとなるのは
やはりクゥと康一の<別れ>。
この映画を観ているうちにぼくは
寺山修司の『サヨナラだけが人生だ』という言葉を思い出してしまった。
果たしてこれはどこまでが原作で
どこからが原監督のオリジナルなんだろう?」

----ふうん。
でもそれだけだと、
普通の泣かせの映画にしか見えないけど…。
「いや。さすが
『クレしん』で場数を踏んだ監督だけある。
家族の描き方が実にリアル。
子供と一緒に無条件に
クゥを育てることを受け入れる父親。
恵一と一緒に夢中になるその姿には
監督の男性観が窺えたな。
<男はいつまでも少年>と言う感じ。
一方、妹の瞳は家族の関心がクゥの方にばかり行くことがオモシロくなく、
クゥにわざと辛くあたる。
そしてそのすべてを達観したように受け入れる母親。
父親には田中直樹、母親には西田尚美。
このボイス・キャスティングもピッタリとハマっていたね。
また、人間たちに追いつめられたクゥが登る
東京タワーのシーンも見逃せない。
だれもが普通なら『キング・コング』を思い出すこのシーンも、
『クレしん』ファンならば
それは『オトナ帝国の逆襲』となる」

----ニャんだ。結局いろいろ喋ってる(笑)。
「あっ。ヤバいヤバい。
じゃあ最後にこの黒目川で観た鳥さんを…」


白鷺

----ニャに、これ?
「これは白鷺。
まさか東京で
この鳥にめぐり逢えるとは思わなかったね。
遊歩道沿いには花があふれ、
川には鴨や鯉が泳ぎ、
空では鳥がさえずる……。
まるで小旅行をしたような気になっちゃった」

----う~ん。と言うことは映画がヒットすると
人がドッと押し寄せるかも。
ここで紹介したのも考えものかもニャ。
「mmmmm……」

     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「別れの映画はつらいニャあ」もう寝る


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猫ニュー

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』

2007-04-19 12:24:50 | 新作映画
----『コナン』と並ぶ東宝のゴールデンウイーク・アニメだね。
毎回、評判がいいけど今回はどうだった?
監督は『クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ!踊れアミーゴ』に続いて
ムトウユージが出かけているんだよね?
「そう。前作は途中、本格ホラーになっていたけど、
今回はいわばSF。
さらにはミュージカルシーンも加わる。
しかも劇場版ではこれが初めてかな、
シロが主人公になるんだ」

----へぇ~っ。いいな。
どういうお話ニャの?
「ケツだけ星人が放った一発の不発弾が地球に落下。
なんとその爆弾が
一家で沖縄旅行を楽しんでいるシロのお尻にくっついてしまう。
この爆弾が地球を丸ごと吹き飛ばす破壊力を持った爆弾であり、
シロから取り外すことができないことを知った
宇宙監視センター、通称UNTI(ウンツィ)はウンツィは
地球の安全のためシロごと宇宙へ飛ばし爆破しようとする。
そこに美人テロ集団『ひなげし歌劇団』が加わり、
激しい争奪戦を繰り広げる------。
ざっと、こういうお話だ」

----うわあっ。大変だ。
でも、みさえもひろしも
シロを守ろうとするんでしょ?
「いや、それが最初はウンツィに協力しようとする。
それに対してただひとり立ち向かうのが、しんちゃん。
シロをつれたしんちゃんが一緒に逃げ周ったあげく
夜の河原で疲れて寝てしまう。
そこでシロの頭の中にしんちゃんとの回想が浮かぶ。
ここはこの映画のハイライトかも。
名作『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』を思い出したね」

----でも、そのままで終わるわけニャいよね?
「そういうこと。
しんちゃんシリーズのテーマの一つは<家族>。
どんなときにも家族を守るため
力を合わせなくては野原一家とは言えない。
シロを救うべく打ち上げ寸前のロケットに向かう野原一家。
この描写も『オトナ帝国の逆襲』を彷彿させる」

----でも『オトナ帝国の逆襲』の監督は原恵一だよね。
確か「大人も子供も笑って泣ける映画」を標榜してなかった?
「うん。彼はこのシリーズにある伝説を作ったし、
その流れは今もなお続いていると言うことかも。
たとえばウンツィ長官の声を吹き替えている京本政樹。
彼の代表作『必殺仕事人』シリーズの
組紐屋の竜をギャグに取り入れたりしているけど、
それって今の子供たちに分かるわけないよね。
だって『必殺仕事人』なんて
彼らがまだこの世に影も形もない頃のドラマ(笑)」

----そりゃそうだ(笑)。
ぼくにも分からないかも……。
そう言えば毎回、名セリフが出てくるけど、
今回はどうだった?
「ウンツィ長官は、すべて予定どおりに行なうことがいいと思っている。
そんな彼に対して『予定どおりには行かないから人生はオモシロいんだ』と、
これは父ちゃん、野原ひろし。
よく考えると、この映画、
全人類を救うと言う理由であれど
身内の一匹の犬の犠牲も許さないと言う内容。
普通はクエスチョンが付くところだけど、
野原一家はそれよりも身近な家族の方を大切にする。
全体よりも個を尊ぶこの考え方は、
『お国のためなら~』という
最近の社会風潮に真っ向から対峙する。
アニメの形を取った上、
なおかつ犬と言うことでボカしてはあるけど、
これはなかなか骨があると思うな」

----やはり「命は一つ。人生は一回」だもんね。

    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「えいもフォーン助けるかニャあ」悲しい

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猫ニュー 

『ゴール!2 STEP2 ヨーロッパ・チャンピオンへの挑戦』

2007-04-18 11:46:02 | 新作映画
(原題:GOAL II LIVING THE DREAM)

----この映画って、第一部が昨年のワールドカップの頃に
日本で公開されなかったっけ?
「うん。ぼくはその前作は観ていないんだけどね。
でも調べてみておおよそのストーリーは分かったよ。
メキシコから米国へと一家で不法入国し、
ロスに暮らす20歳の青年サンティアゴ(クノ・ベッカー)が
元英国ニューカッスル・ユナイテッドのスカウトマンに誘われて
イギリスに渡ってプロテストを受け、
ついにデビューする----ざっと、こういうものらしい。
監督が『ラストサマー2』のダニー・キャッスル。
本作はジャウム・コレット=セラ。
これまたホラー映画『蝋人形の館』の監督だ」

----へぇ~っ。これって偶然かニャあ。
「さあ、どうだろうね。
ただ、この映画を観て言えるのは
実にストレートなサクセス・ムービーと言うこと。
深い人間の心理描写があるわけでもなく、
これまでに何度となく描かれてきた
<成功物語>のパターンに、そのまま身を委ねればいい。
つまり映画で何かを考えさせるよりも
観客の心を掴むことに長けている監督が
シリーズにはピッタリと言うことは間違いないだろうね。
あっ、ただ次作はベテラン、
マイケル・アプテッドがメガホンを取るみたいだけどね」

----ふうん。そんなにシンプルなお話ニャんだ。
「うん。副題が『STEP2 ヨーロッパ・チャンピオンへの挑戦』。
ニューカッスル・ユナイテッドで活躍するサンティアゴに
『銀河系軍団』レアル・マドリードから
移籍の話が舞い込んでくるところから話は始まる。
看護士の仕事があるため『この街を離れたくない』と訴える恋人ロズを説得し、
スペインへ渡るサンティアゴ。
その彼に降りかかるさまざまなできごとを描いている」

----ニャるほど、分かりやすいね。
「でしょ。
そこにサンティアゴと生き別れになった生みの母親、
まだ見ぬ弟の話などを入れて
映画にふくらみを持たせている」

----じゃあ、現実性は薄れてきているの?
「そんなことはないよ。
サンティの移籍はマイケル・オーウェンとのトレードとなっているし、
ベッカムを始めとするスーパースターが多数顔を覗かせる。
夜な夜な開かれる乱痴気パーティや太っ腹なCM契約、
さらにはパパラッチなど、
セレブとなった彼に忍び寄る魔の手も
きっちり描かれていて、
虚実がないまぜになったオモシロさを見せてくれる。
ぼくはサッカーには疎い方だけど、
ベッカムの顔くらいは分かる。
その観点から言うと、
この映画最大の魅力は
彼らビッグネームのプレイヤーと、
この映画の俳優たちのマジカルな<共演>ということになるだろうね。
なにせクノ・ベッカーが本当に
彼らと一緒にプレイしているように見えるんだから驚きだ」

----どうしてそんなことが可能ニャの?
「うん。現場のスタッフたちの言葉を借りれば
試合を『リクリエイト=再創造』。
UEFAに特別に許可を取って、
チャンピオンズリーグのピッチに史上初めてカメラを入れて撮影。
もちろんその試合の中にはサンティアゴ=クノ・ベッカーはいない。
で、その次の日の夕方から試合にあわせて、
エキストラのサポーターとともに試合を再撮影。
そこにそっくりさんを入れてホンモノの試合とCG合成。
さらにはベッカムとGKのイケル・カシージャスも撮影協力し、
それぞれに決めのフォームを<演じて>いる。
かくしてゴールを決めたベッカムとサンティアゴ=クノ・ベッカーが
肩を抱き合って勝利を喜ぶと言う、
普通の映画では考えられない特別映像が生まれたわけだ

----ニャるほど、これならサッカー音痴のえいでも大丈夫だね。
「mmmmmm………」


    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ぼくもボール蹴りたいニャ」ぼくも観たい


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猫ニュー

画像はイギリス・オフィシャルより。



『スパイダーマン3』

2007-04-16 22:40:27 | 新作映画
(原題:Spider Man 3)

----今日は確か『スパイダーマン3』の
ワールド・プレミアin Tokyoが行なわれたんだよね。
スゴく警備が厳しかったようだけど…。
「うん。これはいままで僕が体験した中でもいちばん。
会場となる六本木ヒルズの階段には赤絨毯が敷かれ、
まず試写状チェック。
その後、荷物検査に身体検査。
携帯電話は預けなくてはならない。
空港なんて目じゃない。
実はぼくのところで警報が鳴ってしまって
上から下まで金属探査機で再チェック。
アンダーシャツまで触られてしまった。
もちろん何も出るわけはなく
『手術してますか?』だって…(笑)。
あとで胸ポケットの中を触ってみて分かったんだけど、
2mmくらいの小さなガムの銀紙が入っていたんだ…」

----あらあら。それは災難だったね。
で、映画はどうだったの?
「このお話は第一作目から
スパイダーマンとなったピーターの苦悩が軸となって進んでいたよね。
今回、彼は街の英雄としてみんなの信頼と尊敬を一身に集めている。
しかも恋人MJ(キルスティン・ダンスト)との結婚も秒読み段階。
もう、これで根が単純なピーター(トビー・マグワイア)はニコニコ、気分はグルーヴィー。
ところがMJは自分が出演したミュージカルのレビューが
すべて否定的なものばかりだったことから気分はどん底。
そんな彼女の気持ちを思いやることができずに浮かれているピーターに
宇宙からやってきた液状の寄生生命体が取り憑いてしまう。
そこに父親をピーターに殺されたと思い込んでいる親友ハリーが姿を変えたニュー・ゴブリン、
ピーターの叔父ベンを殺害した真犯人マルコが変異したサンドマン、
そしてピーターにライバル心を抱くカメラマン、エディ------
この三者三様の敵がそれぞれのスーパーパワーで襲いかかる!」

----ニャんだか、ややこしいね?
噂の黒いスパイダーマンと言うのは、
そのエディのこと?
「エディも確かに謎の生命体に取り憑かれるけど、
彼はブラック・スパイダーマンとは少し違う。
プレスによるとエディの変異した姿はヴェノムと言うらしい。
黒いスパイダーマンはその生命体に取り憑かれたピーター。
ただし、彼は黒いスーツを着て出動するけど、
決定的な悪事を働くわけではない。
ただ、負の感情が前面に出てMJに嫌がらせをしたり、
些細なことで隣人に怒りを爆発させたりはするけどね…」

----へ~ぇ。トビー・マグワイアらしくニャい役だね。
「そう。
この映画のいちばんの見どころはそこ。
トビー・マグワイアって、
視点がどこにあるのか分からないような茫洋とした目線が特徴。
でもここでは目張りでも入れたかのような恐い顔つきに!
彼にもこんな悪役でができるんだとビックリ。
マグワイアの新生面が覗けた気がしたね」

----ふうん。でも最大の見どころは
やはりスパイダーマンと悪者のバトルじゃニャいの?
「それはそうだね。
ニュー・ゴブリンとの空中戦はより派手になっているし、
サンドマンとヴェノムは手を組むし…。
ただ、『2』にあった
暴走する電車を止めると言うような、
思わず手を叩きたくなるようなモノはなかった気がするな。
あっ、ビルの屋上の巨大クレーンが止まらなくなり、
部屋ごと削り取っていくシーンは息を飲んだけどね。
ただ、ここは少し9.11を思い出して辛かったな」

----そう言えば恒例のアメリカ国旗は?
「もちろん出てくるよ。
<正義と力の行使>は
『1』から続くテーマだからね。
その角度からこの映画を裏目読みすると、
なかなかオモシロいかも。
果たしてアメリカはその力を行使するまでに
成熟していると言えるのか?……
他のヒーローに比べて
このスパイダーマン=ピーターはどこかチャイルディッシュ。
ここにサム・ライミのシニカルさが
窺える気がするな」


    (byえいwithフォーン)

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『300 <スリーハンドレッド>』

2007-04-15 16:07:33 | 新作映画
(原題:300)

----『300』ってなにが300ニャの?
「うん。これはね。
侵略を目論むペルシャ帝国軍100万に対して
王レオニダス(ジェラルド・バトラー)のもとに集まったスパルタの屈強な男たちが
壮絶なバトルを挑んだと言う
ヘロドトスの『歴史』にも記されている
テルモビュライの戦いを描いたもの。
そのときの男たちの数がわずか300人。
まあ、こういうわけだね」

----へぇ~っ。
なぜそんなに少ないの?
「開戦するには神々の許しを得なくてはならない。
ところが欲と妄執にとらわれた司祭たちは、
託宣者(オラクル)のお告げであるとして、
スパルタ軍の出兵を禁じたんだね。
そこで王は、彼らは王の親衛隊であって兵隊ではないと言う形で、
300人の精鋭をつれて海岸線の狭い山道であるテルモビュライに
兵を進めたと言うわけだ」

----ふうん。
でもこれって『シン・シティ』
フランク・ミラーのグラフィック・ノベルが
もとになっていると聞いたけど?
「そうだね。
画像の黒い部分を弱め、
彩度を高めて色のコントラスト比を変えた
斬新な映像が話題になっている。
観た感じは『ウルトラヴァイオレット』が近いかな。
ただ、スケールは圧倒的にこちらが上。
それと画のタッチは違うけど、
『ロード・オブ・ザ・リング』を
思い出す人も多いんじゃないかな。
ペルシア兵によるモブシーンは言うまでもなく、
スパルタを裏切るエフィアルテスの容貌はゴラムを思わせるし、
オリファント並みの巨大象も出てくる。
あっ、不死軍団なんてのもいたな。
それと空一面を真っ暗にしてしまう
投擲された矢の写し方は
ジョン・ウーの『HERO』だね」

----じゃあ、なかなかよかったってわけだ?
「う~ん。ただね。
この選民思想がどうかな?
子供の頃スパルタの話を読み聞きして、
震え上がったことがある。
たとえば体が五体満足でない者はすぐに殺され、
生きることを許された子供たちは7歳で母親と決別し、
教練所で集団生活。
殴られ、打たれて一人前の戦士として育てられる」

----ニャんでそんなことを?
「つまり男は戦士として
国を守ってこそ意味があるというわけだね。
この映画でも僧侶たちは病で顔がただれ、
先ほどの裏切り者は体まで常態ではない。
不憫に持った親が殺すのが忍びなく
こっそり育てたと言う設定。
映画史上、最大ではないかと思われる
切り落とされる首の多さ----。
その残酷な血なまぐささもさることながら
このあたりが最後まで引っかかってしまったね。
もっとも最後まで目をスクリーンに引きつけるだけの力はあったけど…」


    (byえいwithフォーン)

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『舞妓Haaaan!!! まいこはーーーん』

2007-04-13 23:20:50 | 新作映画
----この水田伸生って監督、知らないニャあ。
せっかく脚本もキャストもオモシロそうなのに、
大丈夫ニャの?
「なに言ってるの。
『花田少年史~幽霊と秘密のトンネル~』の監督だよ。
本来ならこれは語るより前に体験するべき映画。
でも、それじゃ先に進まないから
まずはさわりだけ喋っちゃうかな。
主人公は鬼塚公彦(阿部サダヲ)。
熱狂的な舞妓ファンで
舞妓を応援するサイトまで立ち上げている彼だが、
まだお座敷遊びの経験はない。
そんな鬼塚にあるチャンスがめぐってくる。
それは京都支社への転勤。
事実上の左遷なんてことにはまったくおかまいなし。
お金を借りて、スーツを新調し、
初めてお座敷の暖簾をくぐった彼だったが、
そこに立ちはだかったのが『一見さんお断り』の壁。
しかし意気消沈して戻ってきた鬼塚に、一筋の光が…。
自分の勤める会社の社長・鈴木大海(伊東四朗)が
なんとお茶屋の常連だったのだ。
『仕事で結果を出せば、好きなだけお茶屋に連れて行ってやる…』と
言われた彼はモーレツに働き始める……」

----ぷっ。ニャんニャの?
その“モーレツ”って……。
「いやあ、このモーレツという言葉が彼にはピッタリ。
さらには“C調”(これまた古い)という言葉も進呈したい。
と言うのもこの映画を観ていて僕が思い出したのが
『無責任シリーズ』『日本一の男シリーズ』といった
植木等の出世コメディ。
おそらく脚本の宮藤官太郎は
このあたりを意識しているんじゃないかな。
実際に植木等を出演させているしね」

----へぇ~っ。じゃあこの映画、
主人公は阿部サダヲってこと?
「そうだね。
阿部サダヲにはただ歌わせるだけでなく、
ミュージカル・シーンまで用意している」

----柴咲コウや堤真一の役どころはどうなってるの?
「柴咲コウは鬼塚の恋人の大沢富士子役。
三重県出身なのに京都生まれと偽っていて
彼にフラれてしまう(笑)。
で、彼女は元カレを見返すべく舞妓になろうとするんだ。
堤真一はプロ野球選手でお座敷荒らし・内藤貴一郎。
ついでに鬼塚のサイト荒らしでもある。
堤にライバル心を抱く鬼塚は
社長をおだてて野球球団を買収させ、
自ら選手になってしまう」

----ありえニャい(笑)。
「もう。ここからはクドカン節全開だね。
その後も、内藤の後を追って
俳優になったりボクサーになったり料理人になったり。
あげくは政治家にまでなってしまう!」

----そう言えば『コント55号・俺は忍者の孫の孫』でも
欽ちゃんと二郎さんが政治家同士に分かれて立候補していニャかった?
「よく覚えているね。
それはともかくとして、
この鬼塚の俳優になったときの出演作が
『THE 有頂天時代劇』と言うのだから笑わせるよね。
この明後日の方向へ走り出すのが
クドカンの天才たるゆえんだろうね。
他の人だったら収拾がつかなくなるのが怖くって、
なかなかそこまで踏み切れない。
まあ、それでいて
クライマックスには内藤貴一郎の過去、
鬼塚と富士子と舞妓・駒子の三角関係(?)など、
いくつもの見せ場を持ってきて、
物語に一本芯を通している」

----つまり笑わせっぱなしじゃないってワケだ。
「そういうことだね。
とは言いながらも、
ラストのラストには
また誰もが考えもつかない抱腹絶倒のシーンを用意。
そうそう。堤真一の悪のりとも思える演技も
『MONDAY』以来じゃないかな。
このキャスティングはお見事だったね」

いやあ、不覚だったわ」


    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これは観てみたいニャあ」ぱっちり

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『ストレンジャー・コール』

2007-04-12 20:46:05 | 新作映画
(原題:WHEN A STRANGER CALLS)

----この映画ってオリビア・ハッセー主演の
『暗闇にベルが鳴る』(74)のリメイクだっけ?
「いやあ。僕もそう思い込んでいたんだけど、
これが大きな勘違い。
実は79年の『夕暮れにベルが鳴る』の方。
オリジナルはスプラッタと違って
血が一滴も出ないことでも知られている。
今回も血の代わりに
血のような色のアイスキャンデーが
視覚的に使われている」

----全米では初登場No.1ヒットだよね。
「そう。その影響か、
『暗闇にベルが鳴る』も
昨年のクリスマス・シーズンに
リメイク作が公開されたみたい」

----ホラーで電話と言えば
ドリュー・バリモアの『スクリーム』を
思い出すよね。
確か、電話でホラー・クイズを答えてたっけ。
「うん。それだけ
この<電話>と言うのはホラーの定番となっていると言うことだろうね。
プレスに書かれている中村樹基さんの解説によると
都市伝説の『ベビーシッターと二階の男』というのが
これらの元となっているらしい。
そう言えば『ルール』の中にも
ロバート・イングランドが
この都市伝説について講義するシーンがあったらしい。
全然覚えていないけどね」

----ロバート・イングランドって
確かフレディをやった人だよね?
「そう。『エルム街の悪夢』でね。
さて、この映画だけどストーリーも何も関係ない。
基本はシチュエーション・コメディならぬ
シチュエーション・ホラー。
ひとりの若いベビーシッター、ジル(カミーラ・ベル)が
謎の電話に悩まされると言うもの」

----それって、電話取らなきゃいいだけじゃニャい?
「そこが巧く考えてあるんだね。
恋人が他の女性とキスしたことから、
ジルは彼と仲違い。
でも完全に吹っ切ることはできず、
彼からの電話を待っているんだ」

----でも舞台は現代ニャんでしょ?
携帯があるじゃニャい?
「ところがそのことで
彼と携帯で言い争いをして
あまりにも電話代を使いすぎたため、
親から止められてしまっている(笑)」

----それって無理があるニャあ(笑)。
「いやあ、これも映画を成り立たせるための手。
さて、これで物語のお膳立ては完了。
もとより、理由なき快楽連続殺人だから、
ジルが選ばれたのは偶然にすぎない。
後は、彼女が殺人者に追われる屋敷を作り込みさえすればいい」

----写真を見たところ、
あまりクラシックな家じゃないね?
「うん。外からすべてが見通せるガラス張りの家。
しかも湖の側に位置しているんだ」

----まるで『イルマーレ』(ハリウッド版)だ(笑)。
「少し離れたところにはゲストハウス。
また家の中にはアトリウムがあって、
笹などが植えられ、鳥が放たれている。
このアトリウムが、
古い日本の農家にでもありそうな庭って感じで
これはオモシロかったな。
そうそう、この屋敷では黒猫さんも飼われていたよ」

----また?
ホラーって言うと、どうして黒い猫ニャの?
で、この映画、怖いの?
「う~ん。
まあ、怖さは人によるからね。
ぼくは最初、
彼女が狙われているのには理由があるのでは?
留守にした夫婦の罠かも-----とか、
いろいろ考えてみてたんだけど、
そうではなくて
ほんとうにストレートなホラーだったね」

----その言い方だと、
オリジナルを観ていないニャ。
「えへっ。バレたか……」

    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「あまり、黒猫さん使わないでほしいニャあ」もう寝る


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『プレステージ』

2007-04-10 23:12:30 | 新作映画
(原題:THE PRESTIGE)

----あれっ?この映画って
『イリュージョンVS』(イリュージョン・ヴァーサス)とかいう
タイトルになったんじゃなかった?
「うん。そのタイトル決定の案内をもらったときに
頭の中に“?”が飛び交ったんだけど、
みんなもやはりそう思ったってことかな。
結局、原題どおりになっちゃったね」

----でも、内容は分かりやすかったよね。
この“VS”に、主人公2人の絵柄だと、
対決モノであることは間違いないものね。
「うん。舞台は19世紀のロンドン。
アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)は
共に奇術師ミルトンのところでしのぎを削りあって修業をしていた。
ところがアンジャーの愛妻であり助手のジュリア(パイパー・ペラーポ)が
水中脱出に失敗して溺死してしまう。
彼女の両手を縛ったのはボーデン。
この悲劇はアンジャーを復讐鬼に変え、
以後、ふたりはいがみ合い血なまぐさい争いを繰り返すことになる」

----ほほう。これはオモシロそうだニャ。
ところでスカーレット・ヨハンソンの役は?
「彼女はアンジャーの元にやってきた助手志願の娘オリヴィア。
折しもボーデンは新しいマジック《瞬間移動》に成功。
そのトリックを見破れなくて焦るアンジャーは
オリヴィアにボーデンの助手として中に入り込み、
そのトリックを盗むように命じるわけだ。
しかしオリヴィアも奇術師の端くれ。
アンジャーとボーデン、
彼女がどちらに付いているのか?
彼らふたりはおろか観客にも分からない。
このことも映画のオモシロさを増幅させていたね」

----ニャルほど。マイケル・ケインは?
「アンジャーの協力者で
マジックの考案者カッター。
でも、今回はもっと驚くべきキャスティングがあったね」

----えっ?誰?
「デヴィッド・ボウイ。
彼はエジソンとの確執でも知られる
実在の発明家ニコラ・テスラを演じている。
そしてその部下のアレーにアンディ・サーキス」

----あっ、ゴラムをやったあの人……。
それはまた豪華なキャスティングだ。
監督は誰だっけ?
『バットマン ビギンズ』でもクリスチャン・ベールや
マイケル・ケインと組んでいるクリストファー・ノーラン。
ここでは『メメント』とまではいかないにしても
エンタメの枠組みの中で
ほどよく観る者を翻弄してくれる」

----どういうこと?
「映画のテーマとなっているトリックが
映画そのものにも使われているわけ。
つまり、観客もある大きな《罠》にかけられ、
ラストでは、そのどんでん返しに
だれもが呆然となってしまう。
まあ、これはよくある手ではあるけどもね」

----そんな大きなこと言っていいの?
ぼくはビックリしないかもよ。
第一、どんでん返しなんて言葉を聞いたら、
それだけで身構えてしまうから
「安易に使うのは反対!」------と
常々言っていたのは、えい自身じゃない?
「いやあ。この映画に限ってはいいんじゃないかな。
というのが、このどんでん返しというのが
一つや二つどころじゃない。
なかなか真のラストにはたどりつかないんだ。
正直言うと、その結末はないんじゃないのと言いたくなるけど、
まあ、そこは原作ものだからね。
130分、グッと引きつけられ、
最後まで息を飲んだと言う意味でも
久しぶりに見応えたっぷりの作品だったよ」

----ところでタイトルの意味は?
「一流のマジックは、
3つのパートからなる。
1.プレッジ=タネも仕掛けもないことの観客への確認。
2.ターン=その仕掛けのない道具で、期待に背かないパフォーマンスを見せる。
3.しかし、それだけでは観客は満足しない。
最後にもう一段、予想を超えた驚きを提供。
これを『プレステージ=偉業』と言うんだって」

----よく分からないニャあ。
「たとえば、よくある<人が消える>マジック。
でも消えただけだと、観客はざわざわ。
でも、そこに<帰還>があると拍手喝采」

----ニャるほど。
と言うことは、この映画ももしかしたら……。

    (byえいwithフォーン)

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『ハリウッドランド』

2007-04-09 11:55:46 | 新作映画
(原題:HOLLYWOODLAND)

----「ハリウッドを揺るがした《衝撃の実話》----。
オモシロそうじゃニャい。
「でも、映画はストーリーだけじゃないからね。
重要なのは、その……」

----「語り口」って言うんでしょ。
でも、これって絵柄だけ見ても
そそられるよ。
チャンドラーとかハメットとか、そんな感じ。
「確かに。
ハリウッドで実際に起こった事件を、
私立探偵が解き明かすと言う内容だからね。
全体にノワールでアンニュイな雰囲気が漂う。
しかもその事件というのが
50年代にTV版スーパーマンを演じた
ジョージ・リーブス(ベン・アフレック)の死にまつわるもの。
映画会社の重役エディ(ボブ・ホスキンス)を夫に持つ
年上の愛人トニー(ダイアン・レイン)と
若い婚約者の間で揺れ動くジョージ・リーブス。
1959年6月16日、彼は一発の弾痕を身体に残しハリウッドの自宅で死亡。
市警は自殺と断定し捜査を打ち切るが、
その死を不審に思った
彼の母親に雇われた私立探偵ルイス・シモ(エイドリアン・ブロディ)は独自の調査を開始。
ジョージの過去を次々と調べ上げていく。
かくして映画は、
セレブたちの豪奢な暮らしによって隠蔽されたハリウッドの抱える深い闇を
白昼の下へ引きずり出してくる」

----ハリウッドの闇?
ということは、これは陰謀なんだ?
「いや、この映画は
自殺、事故、暗殺と、
いくつかの可能性には言及しているけど、
断定には及んでいない。
そもそも事実に基づいているというけど、
この私立探偵自体が架空の人物だしね」

----それってエイドリアン・ブロディの役だよね?
「そう。キャスティング・ディレクターは
よくぞ彼に気づいたなと思ったね。
その垂れた眠そうな目は
ロバート・ミッチャムそっくり。
生きているのさえもめんどそうに見える。
トニー役のダイアン・レインも
50年代ハリウッド女優の何人かのイメージを
一つに取りまとめたような雰囲気だし、
ボブ・ホスキンスも元ギャングと言う
エディの過去が体からにじみ出している。
こういった俳優たちのアンサンブルによって生まれる
《空気》こそが本作最大の特徴。
それに酔えるか酔えないかで
この映画を楽しめるか否か変わるだろうね」

----あれっ、ベン・アフレックは?
「恥ずかしながら、彼がベン・アフレックとは気づかずに見てしまった。
あまりにも体格はいいし、
当時のスターの雰囲気だし……。
いったい誰だ、この役者って(笑)」

----と言うことは、それだけ役を自分のものにしているってことだね。
「うん。ヴェネチア国際映画祭では主演男優賞を受賞。
ゴールデン・グローブ賞でも同賞にノミネートされたらしい。
いやあ、不覚だったわ」


    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「う~ん。雰囲気だニャあ」複雑だニャ

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『名探偵コナン 紺碧の棺<ジョリー・ロジャー>』

2007-04-07 22:12:32 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(Dective Conan:Jolly Roger in the Deep Azure)

----これってシリーズ第11作目だよね。
記念の10作が終わって最初の作品。
何か新しい試みがありそうな気がするけど…。
「うん。まず最初に断っておきたいのが
ぼくはアニメに関してはそれほど詳しくない。
この『名探偵コナン』劇場版にしても
全11作のうち2作は未見。
だから的外れなことを言うかもしれない」

----でも、このシリーズはとても気に入っていたよね?
「うん。それはこういうこと。
主人公は謎の黒ずくめの男に捕まったことがきっかけで
体が小さくなり小学生コナンとして身を隠している高校生・工藤新一。
彼は黒ずくめの男たちの正体を探る一方で、
恋人(?)毛利蘭の父で探偵である小五郎の事件を解き、
また蘭を見守っている。
そのコナンに時折、新一の面影を重ねる蘭。
しかし、コナンは自分が新一と名乗り出るわけにはいかない。
と、このバックボーンがまず泣かせる」

----うん。それは以前にも聞いたよ。
で、その恋のお話が前面に出てくると、
えいは喜んで評価を高くしちゃうんだよね。
「あらら。
ま、それはそうかな」

----今回はどうだったの?
「すでにいろいろ言われているみたいだけど、
今回は蘭と園子の友情が強調された物語となっている。
その分、新一の話は後ろに回ってかすんでしまっている」

----へぇ~っ。あのふたりが主役ってわけ?
「いやいや、もちろん主役はコナンだよ。
ただ、キャッチコピーにもあるように、
今度の映画は推理(ミステリー)+冒険(アドベンチャー)。
南の島を舞台に女海賊ふたりが遺した財宝をめぐる
トレジャーハンターとの戦いが中心となる。
そしてコナンはその宝の在処を記した暗号を解き、
トレジャーハンターに捕われた
蘭と園子を救いに行くと言うお話だ」

----ニャるほど。これまでとは少し趣が違うね。
結局、財宝は見つかるのかニャ?
「う~ん。クライマックスは
あるハリウッドのアドベンチャー映画そっくりなんだけど、
それを言うとネタバレになるからなあ。
実はここはツッコミたい部分でもあるんだけど…」

----う~ん。じゃあ聞かないことにするかニャ。
そう言えば、海底宮殿と言うのが出てくるんだって?
「そう。日本でも沖縄にあるよね。
海底遺跡
一度、この目で見てみたいなあ……」

----でも、えいはダイビングどころか泳げないから
一生見れないよね(笑)。
「mmmmm……」

 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「海にはお魚いっぱいいるニャ」ぱっちり

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『ボルベール<帰郷>』

2007-04-06 22:56:24 | 新作映画
ボルベール 帰郷 (原題:Volver)

----アルモドバルって女性ばかり撮っている気がするニャあ。
「うん。そのイメージが強いね。
今回も男たちは一様にその生きざまは薄汚く、
反面、女たちは強くたくましい。
しかも男たちは、その行為の罰を女たちから与えられ、
早々と舞台から退いてしまう。
そして映画で語られるのは
<母親たちの深い愛>だ」

----えっ、母親たち?
<帰郷>するのはどっち?
「じゃあ。まずは物語から話してみよう。
プレスを要約すると、こうなる。
------10代の頃、ライムンダ(ペネロペ・クルス)は
母(カルメン・マウラ)を拒んでいた。
分かり合えないまま、その母は数年前の火事で亡くなってしまう。
そして15歳の娘を持つ母となったライムンダは、
死んだはずの母の姿を見たという噂を耳にする。
やがて再会したふたりだったが……」

----ニャんだか、たいしたお話には見えニャいなあ。
もしかして思いっきりはしょってニャい?
「ありゃりゃ。バレたか……。
実はこの物語には、それこそいくつも
<殺人>はあるわ<秘密>はあるわで、
取り扱いが非常に難しい。
アルモドバルの世界を特徴づける
原色の世界とは裏腹にその物語は緻密で繊細。
喋り方を気をつけないと、
それこそ観る人の楽しみを奪ってしまうことになりかねない」

----う~ん。ニャるほどね。
でも、世界広しといえども、
アルモドバルほどスチールを見ただけで、
誰の映画か分かる監督も珍しいよね。
「うん。壁の色から服の色まで
しっかりとした色彩設計がなされている。
彼の映画は、まずその色彩で観る者を酔わせる。
いつも思うんだけど、
彼がハリウッドから依頼されて撮ったら、
どんな映画になるんだろうって?」

----そう言えばそうだよね。
ペネロペ・クルスはハリウッドでも活躍しているのに、
彼女の育ての親のひとりもである
アルモドバルは故国にとどまっている。
「そうそう。
クルスと言えば、“たくましい女”を演じるために、
なんと<付け尻>を付けたらしいよ。
『ペネロペ・クルスは美の絶頂にある!』と絶賛するアルモドバル。
瞳も肩も胸も最高だけど、
この役には彼女のお尻は細すぎると言うことらしい。
こういうことまで徹底しちゃうところも
彼が巨匠と呼ばれるゆえんかもね」

----そう言えば、
彼女は本年度のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたんだよね。
カンヌでは6人の女性全員が最優秀女優賞とか?
でも、このカルメン・マウラって人、よく知らないニャあ。
「アルモドバル映画は19年ぶり。
その昔は、彼の映画に多数出ていて
アルモドバルのミューズと言われていたんだ」

----そうかこの映画は、
アルモドバル映画への
彼女の<帰郷>の意味も持っているわけだ。
ニャるほど・…・。

       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「世の中には色んな映画があるニャあ」ぱっちり

ペネロペ・クルスはスペインが似合う度
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画像はイタリア・オフィシャルより。

『歌謡曲だよ、人生は』

2007-04-05 22:02:28 | 新作映画
----歌謡曲と言うと、昭和ってイメージがあるけど…。
「うん。この映画はここ2年ほど日本映画界に吹き荒れている
“昭和”ブームのこれは決定版とも言うべき作品。
昭和の歌謡曲をモチーフに
11人の個性豊かな監督たちが
それぞれ独自のアプローチで作り上げた
歌謡曲トリビュート映画になっている」

----はい。一つ質問なんだけど
映画の舞台は昭和限定ニャの?
「いや、そんなことはないよ。
たとえば『ラブユー東京』(黒沢明とロス・プリモス)は、
なんと物語が古代から始まるし、
エアギターがモチーフの『これが青春だ』(布施明)も、
矢口史靖監督と妻夫木聡の
6年ぶりのコラボが話題となっている
『逢いたくて逢いたくて』(園まり)も舞台は現代だ。
後は、
TV『世にも不思議な物語』を思わせる
SF『小指の想い出』(伊東ゆかり)、
『人間交差点』テイストの
ヒューマン・ファンタジー『みんな夢の中』(高田恭子)など、
現代に過去の回想シーンを織り混ぜたパターンかな」

----でも、その言い方だと、
多くは昭和が背景と言うことだね?
一口に昭和と言っても60年以上あるけど…。
「うん。エンディングの
渥美二郎がカバーした『東京ラプソディ』以外は
戦後のヒット曲が使われている。
オープニングの『ダンシング・セブンティーン』(オックス)に続いて現れるのは
磯村一路監督の『僕は泣いちっち』(守屋浩)。
これは歌の内容のとおり、
東京に旅立った女性と彼女を慕う青年の物語。
フィルムの質感といい構図といい、
昭和30年代の青春映画のタッチ。
ガード下でチンピラに殴られるシーンなんて
二番館のすえた匂いを思い出してしまった。
しかしこの映画で一気に昭和に戻った後は百花繚乱。
例えば三原光尋監督『女のみち』(宮史郎)では、
宮史郎本人が現代の京都のサウナで熱唱。
蛭子能収の『いとしのマックス/マックス・ア・ゴーゴー』(荒木一郎)は
彼の漫画を思わせるシュールなバイオレンス。
これは見たところ昭和30~40年代と言う感じかな」

----ニャるほどね。
えいのオススメはどれかニャ?
「宮島竜治の『乙女のワルツ』(伊藤咲子)にやられたね。
これはやはり回想もの。
喫茶店のマスターが店に現れた女性を見て
昔、自分がバンドをやっていた時代の
ファンの女の子を思い出すと言うベタな設定なんだけど
マスターを演じるマモル・マヌーが
とにかく味がある。
彼の若い頃を演じているのが山下淳弘。
ご存知『リンダ リンダ リンダ』『松ヶ根乱射事件』の監督だ。
実は観ている間マモル・マヌーとは気づかず、
ただGS風の演奏を懐かしんでいたんだけど、
あとで彼と知ってビックリ。
このエピソードのラストショットは秀逸。
絶妙のキャスティングと
それを写し出すカメラアングルの相乗効果で
これ以上は望みえないほどの切なさを醸し出す。
そうそう、このエピソードには故・鈴木ヒロミツ(元モップス)が医者の役で出演。
ヒロインが不治の病であることを主人公に告げるシーンは
あまりにも辛かったね」

----でもそれを越える映画がありそうだね?
「その話をする前に
水谷俊之監督の『ざんげの値打ちもない』(北原ミレイ)についても一言。
このエピソードの主人公は
海沿いの町で不動産業を営みながらひっそりと暮らす女。
そこに昔の男が訪ねてきて…。
この女を演じているのが余貴美子。
雨のシーンが多いこと、殺人まで起こる男と女の情念の物語と言うことなどから
一連の石井隆作品を思い出したね。
彼女と交錯する現代の若者の女性役で吉高由里子も出ていたよ」

----誰、それ?
「ほら『渋谷区円山町』で仲里依紗扮する由美をイジメていたアクの強い子」
----ああ~っ。あの子ね。
「さて、一頭抜きん出ていたのが矢口史靖監督『逢いたくて逢いたくて』。
最初は一部屋限定のシチュエーション・コメディかと思いきや
最後は外に飛び出して大感動の結末へと至る。
この監督はまさしく映画の申し子だね。
そのシナリオの妙もさることながら、
ラジオ、自転車などにの小道具による伏線、
スローモーション技法のもたらす効果など、
もう完全に映画のツボを熟知している。
しかもそれによって描かれるのが、
簡単には熱くなることがない現代の若者が人の想いの深さに触れ、
自分そのものが変わる瞬間、その奇跡--------------。
いろいろ話しているうちに、
この映画、公開されたらもう一回行きたくなったな」


       (byえいwithフォーン)

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『ゾディアック』

2007-04-04 23:00:16 | 新作映画
(原題:ZODIAC)

----これってデビッド・フィンチャー監督作品だよね。
連続殺人事件を描いたと言うと
出世作の『セブン』を思い出すけど…。
「うん。でもこの映画があれと大きく異なるのは、
ここで描かれているのが実際に起こった事件であり、
いまだ未解決と言うこと。
それと惨殺死体だけを見せた『セブン』に対して、
こちらは犯行そのものを写してゆく。
しかもこのときのカメラが容赦ない。
ナイフでのメッタ刺しシーンなど、
まともに目を開けていられなかったね」

----お話はどういうものなの?
「『俺は人を殺すのが好きだ』と、
謎めいた暗号とメッセージで世界を挑発した
全米史上初の劇場型連続殺人鬼ゾディアック。
この挑発に警察もマスコミもハマってゆく。
ところが絶対に犯人だと思われる男を
あと一歩のところで立証、逮捕することができず、
真実は深い闇の中に消えていく----」

----それって『殺人の追憶』だ!
「そうなんだよね。
ただ、刑事ふたりが事件を追った『殺人の追憶』に対して
こちらは主に4人の男が関わっている。
新聞社でトップを走る花形記者ポール・エイブリー、
暗号の解読に取り憑かれた風刺漫画家ロバート・グレイスミス、
ゾディアック事件の最前線に立つ
サンフランシスコ市警の敏腕刑事デイブ・トースキーとビル・アームストロング。
彼らはその事件を追うことに熱中するあまり、
それぞれ健康やキャリア、そして平穏な家庭までも奪われてゆく」

----ニャるほどね。
でもこれまでのデビッド・フィンチャーの
フィルモグラフィからすると、
そのシノプシスって意外と普通のような気も…。
「まあ、それは実際に起こった事件が元になっているからね。
でもそうは言っても
2時間37分、一気に見せきるだけの力がある。
USウィークリー誌は『24 Twenty-four』を引き合いに出していたけど、
ぼくは同じTVシリーズでも『Xーファイル』の方が頭に浮かんだね。
次々と有力情報がもたらされるものの、
どれも実ることはなく結局は空振りに終わってしまう…。
この描き方がドキュメンタリーとまでは言わないにしても
少し引いた目線で描かれる。
ところがそれがある瞬間、一気に身も凍るスリラーへと変わる。
この話法の転換は見事だったね」

----えっ、それってどこ?
「観てみると分かるよ。
このシーンは本当に怖いから。
ただヒントとして
グレイスミスに関わるシーンとだけは言っておこう」

----そのグレイスミスは誰がやっているの?
「ジェイク・ギレンホール。
プレスにも書いてあったけど、
彼とポール役のロバート・ダウニー・Jr.がオフィスで
事件について激論しているシーンは
『大統領の陰謀』を思い出したね」

----あれっ、このビル役のアンソニー・エドワーズって
『ER/緊急究明室』のグリーン先生だよね。
「うん。
でもぼくがここで押したいのは
デイブ役のマーク・ラファロ。
一度聞いたら絶対に忘れることのできない、
高めのハスキー・ボイス。
ぼくはこの映画の成功の要因の一つは
彼のこの<声>にあると思っているくらい。
そうそう、スティーブ・マックィーンも
実在のデイブ・トースキーをマネしたと映画の中で言っていたけど、
これって『ブリット』だったのかな。
コートの色とかそっくりだったし…。
あっ、映画と言えば劇中『ダーティハリー』が使われていたね」

----えっ、なぜ?
「あの第一作の<サソリ>は
この事件の犯人がモデルとなっているらしいんだ。
もっともあちらは捕まっているけどね」

----でも、この犯人が殺した人の数って
全米の犯罪史上では、
そんなに多い方ではないよね。
ニャんでそんなに騒がれるの?
「そこなんだ。
犯人の挑発、自己顕示欲。
それにマスコミが乗ったことで、
モンスターのようにその像をふくらませていった。
そしてそのことがまた
真実を知りたいと言う男たちの執念をさらに増幅させる。
しかしもがけばもがくほど一様に深みにハマっていく。
まさに底なし沼。
フィンチャーは、
そんな彼ら、事件に魅入られた男たちをひとりに絞ることなく複数描くことで、
この事件が生み出した不条理そのものをあぶり出しているようにも見える。
論理では決して割り切れない人間の不可解な心理と行動----。
そういう意味でもぼくにとっては見応え十分だったね」



       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「怖いけど観たいニャあ」複雑だニャ


※フィンチャー、一皮剥けた度
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猫ニュー

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