ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ユメ十夜』

2006-12-24 12:22:12 | 新作映画
----最近、少し喋りすぎていない?
ストーリーばかり、だらだらやっていると
いい加減飽きちゃうよ。
「いやあ、痛いところを突いてきたね。
その反省ってワケでもないけど、
今日はストーリーを重要視しなくてもいい映画の紹介」

----ニャに、それ?
ドキュメンタリーってこと?
「それが違うんだな。
タイトルから気づかなかった?
これはね夏目漱石が41歳の時に発表した小説を、
市川崑監督や西川美和監督など
ベテランから若手まで、
日本を代表する監督が独自のアプローチで映画化したと言うものなんだ」

----どのお話がオモシロかったの?
「そこなんだよね。
このオムニバスは、
映画はストーリーじゃないと言うことを
改めて教えてくれる」

----どういうこと?
一口に夢と言ってもさまざまでしょ。
その中身を聞かなきゃ分からないんじゃニャいの?
「うん、もちろん。
でもね。ここで間違えてはならないのが、
そのストーリーだけを取り上げて、
「あのエピソードはオモシロいけど、
こっちはつまらない」という理由で、
映画の優劣を語ってはならないということ。
だって、ストーリーは夏目漱石が編み出したものであって、
映画監督のオリジナルではない。
だから、そこに、自分なりにどのようなアレンジをするか、
それが映像作家としての勝負となってくる」

----ニャんだ。そんな当たり前のことを言いたかったわけ。
「もう。皮肉らないでよ。
さて、その観点から言って、
自分の感覚にピッタリあったものをあげてみると…。
まず、第三夜の清水崇。
夜泣きを止めるため、
赤ちゃんを背負って散歩する漱石。
この映像は背筋が凍ると言う表現がピッタリ。
と言うのもこの赤ちゃんは、なぜか目がつぶれていて、
しかも父親である漱石に
彼が過去に侵した罪状に付いて話しかける……。
恐怖度では、十本のうちでこれにまさるものはない」

----でも、その恐怖って、
ストレートすぎない?
「いや。
赤ちゃんのつぶれた目のメイク、
その徹底ぶりでだけでもよくやったと思うよ。
次に清水厚監督の第四夜を紹介しよう。
これは想い出の世界に迷い込んだ男、漱石の話。
ノスタルジー色豊かな映像設計が、
二度とは帰らぬ<時間>を狂おしいほどにせつなく描く。
清水厚は実相寺明雄監督に師事したのだとか。
その実相寺監督の第一夜も
アングラ芝居を思わせる背景の中に、
けれん味たっぷりの映像を駆使し、
妻を失う作家の恐怖を描き出す」

----この十本の<夢>は恐怖ものが多いの?
監督には松尾スズキとかもいるけど?
「彼の第六夜は特別だったね。
スタイリッシュなモノクロ映像の中に、
アニメーションダンスを導入。
役者たちは、2ちゃんねる用語を喋り、
その文字絵のポーズまで取る。
『モエ』とか『ダメポ _| ̄|○ 』とかね(笑)。
今回、現代との接点を取り入れている監督は多かったけど、
その中では彼がいちばん大胆だったかも。
さて駆け足で喋るけど
市川実日子の騎馬姿が印象的な
豊島圭介監督、第五夜も要注目。
映画の中であまのじゃくが出てくるんだけど、
これをハリボテみたいに作っている。
普通はしらけるところだけど、
低予算を逆手に使った効果的な絵になっている。
後は山口雄大監督の第十夜がオススメ。
本上まなみのおならなんて
これでしか観られないよ(笑)」

----え、ええ~っ。いまなんて言った?

    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンは、こんな夢は見ないニャ」もう寝る

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