ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『V フォー・ヴェンデッタ』

2006-03-31 19:30:46 | 新作映画
----タイトルのヴェンデッタってどういう意味ニャの?
「字幕やプレスでは“血の復讐”となっていた」
----と言うことは、これは復讐譚ニャんだ?
「うん。一応はね。
復讐の理由は観て確認してもらうことにして、
まずは映画の概略を話そうかな。
舞台は独裁国家と化した近未来のイギリス。
放送局に勤めるイヴィー(ナタリー・ポートマン)は、
絶体絶命の危機に見舞われたところを
“V”と名乗る仮面の男に命を救われる。
Vは恐怖政治に抑圧された市民を暴君の手から解放しようとする救世主。
しかし一方では、怨念にかられた血の復讐鬼でもあった。
放送局をジャックした彼は、『11月5日を思い出せ』と民衆を煽動する」

----「11月5日を思い出せ」……?
それってジョン・レノンになかった?
「『リメンバー』だね。それにマザーグースの一節にもある。
でも、もともとは1603年に起こった“火薬陰謀事件”に端を発しているらしい。
当時、英国教会の弾圧に耐えかねた13人のカトリック教徒が
国家を転覆しようと国会議事堂の爆破を計画。
しかし11月5日未明、
火薬の点火係として貴族院の地下に潜んでいたガイ・フォークスが逮捕。
このレジスタンスは事前に計画が洩れて失敗に終わるんだ。
映画は、その過去のエピソードから始まり、近未来へと続いていく。
このVの仮面も、そのガイ・フォークスの顔がモデルになっているようだ」

----ニャるほど。
だから、あんな親しみのわかない顔になってるんだ。
そう言えばこの映画は、
脚本がウォシャウスキー兄弟と言うことがウリになっているよね
「うん。引用好きのウォシャウスキー兄弟らしく
キーワードが至るところに散りばめられている。
爆破の際のBGM、隠れ家の壁の画、Vが観るビデオ…。
ただ、それらは主人公たちの言葉で語られるから、
『マトリックス』に比べて分かりやすいけどね」

----ウォシャウスキー兄弟と聞くと、
どうしても斬新なビジュアルを期待しちゃうけど…。
「監督はこれが第一回作となるジェイムズ・マクティーグ。
ウォシャウスキー兄弟の映画ほどじゃないけど、
独特の雰囲気を作ろうとはしているよ」

----でも舞台がロンドンだから、
それだけでもオモシロそう。
「地下鉄は閉鎖。
夜は外出禁止令が布かれて無人。
まるでゴーストが出てきそうな
どんよりとしたロンドンの空気は
第二次世界大戦直後のイギリス映画の記憶を呼び起こす。
ただ、それが行き過ぎて、逆に近未来と言う感じが失せていた」

----Vのコスチュームも古めかしいしね。
そう言えばナタリー・ポートマン、坊主頭になっていたね。
「うん。これはメイクとかではなく、本当に頭を丸めたらしい。
でも髪がなくても目を見張るほど美しい。
ナタリーにとってはいいアピールになったかも」

----Vの仮面を被った人がたくさんいる
ビジュアルを見たことあるけど……。
「それが何かは言えないけど、ここがクライマックスと考えて間違いないよ。
この映画では最も異様というか、とんがっているシーンだ。
そうそう、言い忘れていたけど、
このVに扮しているのはヒューゴ・ウィービング」

----『マトリックス』のエージェント・スミスや
『ロード・オブ・ザ・リング』のエルロンドをやった人だよね。
あまりヒーロー顔じゃないけど、素顔は見せているの?
「それも観てのお楽しみ」
         (byえいwithフォーン)


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『僕の大事なコレクション』

2006-03-30 21:26:57 | 新作映画

----これはまた分かりやすいタイトルの映画だね。
あれっ、イライジャ・ウッドが出ている。
しかも眼鏡だ。
「うん。最近の彼は
「エターナル・サンシャイン」にしろ
「シン・シティ」にしろ、
“目”に狂気を漂わせた映画が多かった。
今回は、その“目”を牛乳瓶の底のように厚いレンズの眼鏡で強調。
映画の持つ異様な雰囲気に一役買っている」

----異様?タイトルだけ聞いたら
普通の少年の物語のように見えるけど
そうじゃないんだ?
「うん。主人公はユダヤ系アメリカ人青年のジョナサン。
彼は壁一面に、ジプロックに入れたいろんなものを貼付けている。
そのほとんどは、人から見たらガラクタにしか見えないもの。
たとえば祖母の入れ歯とか、兄の使い捨てのコンドームとか…」

----ひぇ~っ。趣味悪い。
「ところがそのコレクションはすべて自分の家族にまつわるもの。
この収集癖からも分かるように、ジョナサンは内向的。
ところがそこに新たに加わったのが、
祖母が息を引き取る間際に渡してくれた、
亡き祖父と謎の女性が一緒に写った写真。
その写真に写っているペンダントが
祖父が遺したバッタ入りペンダントと同じであると気づいた彼は、
そこに書かれた文字を頼りに、
今は亡き祖父の祖国であるウクライナへ向かう…と言うお話なんだ」

----でも、話はそこから始まるんでしょ?
「そう。ウクライナでジョナサンを待つのは、
インチキ英語を駆使するアメリカ文化かぶれのアレックス、
目が見えるくせに目が見えないと言い張り、
でも車を運転する彼の祖父、
そしてその盲導犬(笑)サミー・デイビス・Jr.Jr.。
“史跡めぐり”と称して“ユダヤ人の祖先捜し業”を営む彼らの案内で
3人と1匹の奇妙なロードムービーが繰り広げられることとなる」

----ははあ。ロードムービーになるんだ。
「うん。ロードムービーがオモシロくなるには、
キャラクターのユニークさが必須なんだけど、
そういう意味では、これはうまくいっているね。
なにせ犬まで加わっているんだから(笑)。
ヒップホップ大好きのアレックスに扮するのはユージーン・ハッツ。
ロマ・パンク・ロック・バンド“ゴーゴル・ボーデロ”の
ボーカルでもあるらしい」

----車もくたびれていて印象的だね。
「60年前製造のトラバント。
オンボロでスピードが出ないところもこの映画のテイストに合っている。
ゆる~い時間が流れるんだ」

----ロードムービーって、
最初はぎくしゃくしている人たちが、
だんだん打ちとけあったりとかしてくるよね?
「ジョナサンは大の犬嫌い。
そしてアレックスの祖父がこのジョナサンを必要以上に嫌う。
その理由がクライマックスに向かうにつれ、
次第に分かるようになっているのがミソ。
ネタバレになるから、あまり詳しくは言えないけど、
この旅はジョナサンのルーツ探しであると同時に、
アレックスと祖父のルーツ探しにもなってくるんだ」

----ジョナサンとアレックスも対照的だよね?
「収集癖があるジョナサンが過去を大切にするのに対して、
アレックスは、人生は今しかないと考えるタイプ。
ところが、そのアレックスもこの旅が終わる頃には、
現在と過去は、表と裏の関係と気づくようになってくる。
このあたりの対比的構成もうまいと思ったね」

----ふうん。何があるんだろ?
「うん。それが何かは想像してもらうしかないけど、
過去のある悲劇的できごとが褪色した映像で挿入。
現代の美しいひまわり畑の後に現れるだけに、
その悲劇性が強調される」

----そう言えばイライジャ・ウッドは
『ロード・オブ・ザ・リング』でも旅していたね。
「この映画でも、
リングを地中に埋めて隠し、それを見つけてもらうことを願う、
ある女性のエピソードが語られるけど、
もしかしたらイライジャ・ウッドが出演したからかな……
なんて、これは自信がないけど」


       (byえいwithフォーン)


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『五月の恋』

2006-03-29 23:15:02 | 新作映画
----これって台湾と中国の合作ニャんだって?
「うん。映画もハルピンと台湾のふたつの地域で展開する。
主演は『アバウト・ラブ/関 於 愛』で伊東美咲と共演したチェン・ボーリン。
彼の役どころは台湾の超人気バンド、メイデイのギタリストの弟アレイ。
兄に対する劣等感から何に対しても中途半端で怠惰な生活を送る彼は、
メイデイのサイトを管理するうちに、
気まぐれからファンからのメールに
『ぼくはボーカルのアシンだ』と嘘の返信をしてしまう。
メールの相手は、中国ハルピンで京劇団の学生をしている少女シュアン。
彼女は、台湾の三義にある『五月の雪』の花を見たいと、
彼にメールするのだったが……。これで分かるかな?」

----『五月の雪』の花って?
「桐の花のこと。
花が満開になると山が雪に包まれたようになり、
また、花が散る様子も雪そのもののように見えるんだって」

----ふうん。と言うことは、
その『四月の雪』がポイントってわけだね。
「そう。ここに『悲情城市』や『?嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』でも出てきた
台湾固有の歴史、
外省人(戦後、中国大陸から台湾に渡った人とその子孫)と
本省人(戦前から台湾に住む人と子孫)についても言及される。
シュアンの祖父はかつて国民党の兵士として台湾にやってきたひとり。
その後、共産党が勝利し、大陸との断絶が決定的に。
祖父は帰れなくなり、ハルピンにいる妻と別れ別れになった言う設定だ」

----ニャるほど。ハルピンは寒く雪が降る。
でも台湾は雪は降らないものね。
う~ん。思っていたよりもヘビーな内容のようだね。
「いや、それでも
現代に生きる若者の視点から描いているだけあって、
悲劇色はかなり薄められている。
と言うより、むしろその若者ふたりを通して
未来に希望を託すような描き方となっている」

----人気のメイデイも出ているしね。
ライブシーンもあるんでしょ。
散漫な感じにならない?
「これが、実に微妙なさじ加減でうまくいっている。
外省人の望郷の念、中国と台湾の若者の恋、
それが<音楽>という共通言語でまとめられたと言う感じ。
映画としても、
アレイとシュアンが一緒に目もくらむような高い線路橋を渡るシーンなど、
みずみずしいシーンがいっぱい。
そのラストも想像はつくものの、いいところに収まったと思う。
そうそう、アレイの兄はメイデイのシートゥ。
なかなか自然な演技だったよ。
こちらの方もファンにはたまらないだろうね」


               (byえいwithフォーン)

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『アンダーワールド エボリューション』

2006-03-28 18:31:14 | 新作映画
----ケイト・ベッキンセール主演のヴァンパイア映画の続編だね ?
タイトルがすべてを語っている気がするけど……?
「『エボリューション』=進化だものね。
でも、映画は冒頭、ヴァンパイア(吸血鬼族)と
ライカン(狼男族)の始祖にまつわる過去のエピソードから始まる」

----ライカンって狼男のことだよね?
確かヴァンパイアが奴隷にして
昼の守護者としていたんじゃなかった?
「そう。長くなるから簡単に話すけど、
ライカンの君主ルシアンと恋に落ちたヴァンパイアのソニーを
彼女の父でヴァンパイアの指導者であるビクター(ビル・ナイ)が処刑。
それ以来、種族間闘争が始まったこととなっている。
家族をライカンに殺されたセリーン(ケイト・ベッキンセール)は、
ライカンに復讐するために闇の処刑人となった。
もっともこれも違っていたと言うことが後に明らかになるけど…」

----そうそう。そうだった。思い出してきた。
前回は、次から次に思わぬ真実が明らかとなり、
ちょっと油断しているとこんがらがりそうになったけど、
今回はどうだった?
「またまた凝っている。
ここで簡単に説明しておこうかな。
彼女はヴァンパイアの始祖であるマーカスから狙われている。
その理由と言うのが、ある大切な鍵をその血の中に隠し持っているから。
マーカスには双子の兄弟でライカンの始祖のウィリアムがいる。
しかしウィリアムはあまりにも凶暴なため
ビクターによって数世紀にわたって監禁されていたわけだ。
そしてそのウィリアムの牢獄を建設したのが……」

----分かった。セリーンの父親だね。
「そう。ビクター亡き今、
その牢獄の場所はセリーンの記憶の中にのみ存在する」

----そう言えば前作は
監督のレン・ワイズマンの独自の映像美も話題になったよね?
「そうだね。
ゴシック・サイバーだのダークな美意識だのと言われた。
今回はマーカスの造型が見モノだね。
悪魔のような羽が生えて空を飛ぶんだけど、
これが蝶か蛾のようにふわふわと宙を舞う感じ。
トラックで逃げるセリーンの運転席の外、
同じスピードで並走している姿は不気味ながらも
初めて見るビジョンだけに目を引きつけられる。
そのマーカスを崖に押しつけ潰そうとするセリーン…。
ここだけでもこの映画は観る価値があったね」

----ふうん。じゃあやはり映画館で観た方がいいのかな?
「映画は、99%以上が夜間の出来事。
前作と同じくダークな映像の中で複雑なストーリーが展開。
これは日本の石井隆監督が言っていたんだけど、
明るすぎる昼間はすべてが写ってしまうけど、
夜だと、照明の当て方次第で、いくらでもオモシロい画が作れる。
そういう意味ではこれは映画館向き。
でもストーリーが複雑で分かりにくいから、
そちらを重視する人は、後でDVD確認した方がいいかも」


         (byえいwithフォーン)


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『笑う大天使(ミカエル)』

2006-03-27 20:09:47 | 新作映画
----これって少女漫画が原作ニャんだって ?
「そうらしいね。川原泉。
ファンの間では“カーラ教授”と呼ばれているらしいよ」

----ということはよく知らないんだニャ?(笑)
「はい。知りません(笑)。
でも送られてきた案内を見たら、
ピンクの花びらが散る中に
背中が大きく明いた制服を着た女学園生徒たち。
しかも(これも知らなかったけど)監督が
VFX界最後の大物と言われる小田一生と書いてある。
で、キャッチコピーが『ようこそ乙女の園へ』。
これはそそられるわ(笑)」

----確かに。タイトルもスゴい。
「漫画が原作だから、お話にあれこれ言ってもしょうがないけど、
簡単に説明すれば
『突然母を亡くし、生き別れになっていた大金持ちの兄と再会、
心ならずも超お嬢様学園である聖ミカエル学園に転校してきた司城史緒。
これまでとはまったく異なる世界に心休まらない彼女が、
同じく学園のアウトロー、斎木和音、更科柚子と共に、
お嬢様たちばかりを狙った誘拐事件の黒幕と戦う』と言うもの」

----確かに、ストーリーをあれこれ言ってもしょうがないね。
と言うことは見どころはCG?
「そうだね。ハウステンボスでロケしているんだけど、
ポストプロダクションに7ヶ月もかかったらしい。
舞台挨拶に来ていた史緒役の上野樹里も
茶色い芝が緑に変わり、虫まで飛んでいたと驚き、
こんな映画に出たのは初めてと、感激していたよ」

----確かに彼女のフィルモグラフィにはVFX映画ってなかったかも。
でも、そんなにスゴかったの?
「う~ん。実を言うと、
これだけCGが当たり前に使われるようになると、
観ている方も驚きが少なくなってくる。
聖ミカエル学園は湖に浮かぶ島にあり、
そこまで蒸気機関車で橋を渡っていくんだけど、
『ハリポタ』「ポーラー・エクスプレス』を経験した後では、
幻想的なその映像も
ディテイルをごまかすための省略としか……。
他にも絵や漫画で代用してしまっている部分もあるからなあ。
これをうまくやるには『下妻物語』くらい、
ドラマ部分をしっかりやらないと。
でも本来、原作が漫画なんだし、
これはこれでいいのかなと言う気持ちも片方にはあって
まだ自分の気持ちが定まらないんだ」

----そろそろジャンルとしてCG実写とか作った方がいいのかもね。
上野樹里はどうだった?
「今まで自分の出演した映画を観て泣いたことはない彼女が
今回は初めて泣いたんだって。
映画の役柄に自分自身と重なる部分があり、
そこが彼女の琴線に触れたようだ」

----えっ、そんなに暗いお話なの?
「いや、そうではなく、
母親と自分とのこととか…。
ここは個人ブログだし。
これ以上喋るのは控えておくよ。
でも彼女は明るいキャラだわ。
舞台挨拶でもサービス満点。
終始、周囲を楽しませてくれていたよ」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「黒い犬は西洋では悪魔の使いなのだ」小首ニャ

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『ブロークバック・マウンテン』

2006-03-26 12:20:54 | 映画
----この映画って昨年の映画賞のほとんどを受賞しながら
アカデミー賞を逃したと言う曰く付きの作品だね。
「うん。ゲイを扱ったことから
アカデミー会員には敬遠されたのではないかと言われている」

----実際に観てどうだった?
「その前に一言。
映画館の観客があまりにも少なかったのには驚いたな。
アカデミー賞を逃すとこういうものなのかな。
映画は確かにゲイのふたりが主人公なんだけど、
観る前に予想していた内容とはだいぶ異なっていたね」

----どう違ったの?
「ブロークバック・マウンテンで関係を持ったイニス(ヒース・レジャー)と
ジャック(ジェイク・ギレンホール)のふたりが山を下りた後、
それぞれに自分たちの結婚生活を営み、
数年経ってジャックが現れ、ふたりの関係が戻る……ここまでは予想通り。
ただ、最初思っていたのは
<ふたりは気づかないように密会を続ける。
しかし妻は次第に怪しみだし、町の人の噂にもなり、
その好奇と批判の目にさらされる>というもの。
ところが実際は
<イニスがジャックを熱く抱擁する現場を
イニスの妻アルマ(ミシェル・ウィリアムズ)はすぐに目撃>。
映画は思わぬ秘密を知ってしまった妻の苦悩にもスポットを当てる」

----夫の秘密を知った妻という映画、最近多くニャい?
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『隠された記憶』だね。
しかしそれらの映画に比べてこの映画はもっとエモーショナル。
言葉は少ないながらも、
どのショットからもそこにいる人の<想い>がにじみ出してくる。
もちろん映画はふたりの<想い>を軸に、
とりわけジャックのガラスのように傷つきやすく
また気高い<想い>が軸となるわけだけど、
この映画が魅力的なのは
登場人物すべての<想い>を映像化したところにあると思う」

----ふうん。と言うことは彼らに敵対する人たちにも切り込んでいるわけだ?
「切り込んでいると言えるかどうかまでは分からないけど、
この映画は登場人物それぞれの<反応>が印象に残る。
それも寡黙な中の饒舌な反応」

----よく分からニャいな?
「じゃあ、印象に残ったシーンをいくつか書いてみよう。
※アルマがイニスに「釣り箱」を忘れていると教え、
イニスが使いもしないその釣り箱を持ち去るときのアルマの表情。
※ジャックとラリーンの父がテレビのチャンネルのことで言い争い、
ジャックが「あなたはゲストだ」と彼を席に座らせたときの
義理の父の悄然とした姿、
そしてそれを見守る妻ラリーン(アン・ハサウェイ)の満足げな視線。
※ジャックの実家を訪れたイニスが
クローゼットから見つけたジャケットとシャツを持って階下に降りてきときの
寂しさの中にかすかに光が煌めくジャックの母親の目。
それは、つい先ほどまで「家の墓には息子の灰は入れない」と言っていた
老父の心をも溶かしてゆく。
他にもイニスの長女が父に寄せる親しみ、
ジャックが声をかけたロデオ道化師の冷たい拒否、
そしてジャックを誘う牧場主の隠れた媚態など、
それぞれに言葉は少ないながらも
主人公ふたりへの<沈黙の反応>、
その<想い>が映画を満たしていく」

----う~ん?でも今日、あんまりストーリーを語ってないね?
「ぼくは早めに映画を観た映画は、
お礼の意味もあって、
その映画の内容と見どころを少しでも詳しく伝えようと
少々くどいまでに書いているんだけど、
この映画は、もうすでにいろんなところで紹介されているし、
ぼくがあえてストーリーを書く意味はないと思うんだ。
これまでにも劇場で公開された後に観た映画は
そういうスタンスで喋っている。
あっ、ただ、その目が覚めるように美しいブロークバック・マウンテンが実は最初だけで、
それ以後、ふたりが訪れるときには
楽園としての輝きを失っていたことは喋っておきたいな」

----そう言えばプログラムも買ってなかった?
「うん。これが最高のでき。
なかでも米文学者・翻訳家の米原真治さんの文章(P40~41)は読み応え抜群。
ラストのイニスのセリフ、字幕の『ずっと一緒だよ』が
どうもナマすぎて引っかかってていたんだけど、
ここは原作では『僕は誓う』となっているらしい。
これを読んで納得したね」

----『ずっと一緒だよ』だったら『輪廻』だもんね(笑)。
               (byえいwithフォーン)

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『隠された記憶』

2006-03-24 19:48:36 | 新作映画
「お・お・お・おお~っ」
----ちょ、ちょっと。そんな興奮したら恥ずかしくニャい?
「でも、これスッスゴすぎる。
『ラストカットに全世界が震撼』なんて書かれていると、
そんな大げさなと思っても少しは気になるじゃない。
でも、これは本当に嘘いつわりなし。
『ホテル・ルワンダ』は別格として、
その衝撃度に限って言えば、
今年観た中ではこれ以上の作品はなかったね。
ミヒャエル・ハネケ、あんたはスゴい。
カンヌ3部門受賞も納得」

---まあ、落ちついて落ちついて(笑)。
いったいどんなお話ニャの?
「主人公はテレビ局の人気キャスター、ジョルジュ(ダニエル・オートゥイユ)。
美しい妻アン(ジュリエット・ビノシュ)と
息子ピエロと共に幸せな生活を送る彼の元に、
ある日、送り主不明のビデオテープが送られてくる。
そこに映し出されるのは、家族の日常。
ところが回を重ねるにつれて、ビデオには不気味な絵が一緒に添えられ、
その映像は彼のプライベートの奥へとエスカレ-トしていく。
不安が恐怖へと変わる中、
ジョルジュはある遠い日の記憶を呼び覚ます。
あっ、これ以上は言わない方がいいな」

----えっ、いいところでおしまいだ…。
でもどことなくデビッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』に似てない?
「う~ん。あんなシュールな映画じゃないけど、
でも不気味なところは同じだね。
日常に根ざしている分、こっちの方が怖いかも。
夫は呼び覚ました<過去>を隠したいあまり、
現在の妻の不安、恐怖を思いやることができなくなる。
しかし、この語り口の巧さはどうだろう。
映画は、スリラーの形を借りながら、
夫婦や家族の問題だけでなく、
先進国による社会的経済的迫害、
あるいは『クラッシュ』でも見られた
異人種への潜在的恐怖など
現代にも繋がる政治的な問題、
さらには子供の悪意、
それによって左右されるひとりの人生、
そして加害と被害意識の落差と、
さまざまなテーマをあぶり出してゆく」

---ニャるほど。しかもミステリー仕立てにもなっているしね。
で、その『ラストカット』はそんなにスゴいの?
「うん。でもこの『ラストカット』というのがクセもの。
途中、思わず声を上げる衝撃の瞬間があって、
これがその『ラストカット』かと思ったら、
映画はまだまだ続いてゆく。
そして静かながらも、まさに驚愕の『ラストカット』が現れる。
でもこのキャッチコピーを考えた人は巧い。
ある意味、途中の衝撃シーンだってそう言えないことはないわけだし。
しかし、このラストはどう解釈するべきなんだろう。
ここを詳説するとネタバレになるから書けないのが残念。
観た人と話したいという気持ちがこんなに湧いてきた映画も久しぶりだ」

----と言うことは、伏線も張られているってワケ?
「そうなんだよね。
そこを他の観た人と確認しあいたいんだ。
つまり、あのラストが生まれるのは、
その前にAという伏線があるからであり、
だからこういう解釈もできるのでは?ってことをね」

----ニャに言っているのか、まったく分からないや(笑)
「いまプレスを読んだら
この映画のプロデューサーがこう語っていた。
『この作品のラストシーンには多くの解答や解釈があります(中略)。
ミヒャエル・ハネケは、
観客が「さてどこに食事に行きましょうか?」となるのでなく、
議論しながら映画館を後にする光景を見たいのです』。
つまり、ぼくはまんまと彼の術中にハマったってコトだね」

       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「どうニャってんの?」小首ニャ

ロスト・ハイウェイ PIBF-91023ロスト・ハイウェイ PIBF-91023
※このデヴィッド・リンチ作品でも、何者からか自分の家を写した映像が送られてきました。


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猫ニュー

※画像はイギリスのオフィシャルより。

『ビッグ・リバー』

2006-03-23 18:33:11 | 新作映画
----これってベルリンで話題になっていた映画だよね。
確か主演のオダギリジョーが、全編英語で喋るとか?
「うん。それってどういう意味かと思ったら、観て納得。
彼が扮しているのは日本人のバックパッカー、哲平。
彼は世界中を旅しているんだ」

----そうか、外国が舞台なんだ。
「そう。彼がアリゾナ砂漠で知り合ったパキスタン人のアリ、
そして若いアメリカ女性サラと、ひょんなことから行動を共に。
その中でそれぞれが抱えているものが浮かび上がってくるという仕組み。
つまり、これは典型的なロードムービーだ」

----でも、あまりドラマチックな映画という感じがしないけど?
「そこが現代の映画なんだろうね。
それでもこのアリだけは消息の途絶えた妻を探しにきたという
物語性のある設定になっている」

----でもそれ、どこかで聞いたような気もするけど…。
「ヴィム・ヴェンダースのあの映画(『パリ、テキサス』)だね。
ロケ地はジャームッシュ映画にも出てきた
カウタウンが使われている。
アリゾナでの撮影はジャームッシュの助監督でもあり、
この映画でのチーフ助監督のコニー・ホイが活躍。
ジャームッシュはオダギリジョーが最も好きな監督なんだって。
『デッドマン』でも使われたというその場所を
感慨深げにカメラに収めていたらしいよ」

---あれっ、今日はそれだけ?
「う~ん。映画としてはそんなに目新しくもないしなあ。
ただ、旅をするうちにそれぞれの関係性が変容するという
ロードムービーの形式の中に、
異なる人種を投げ込んだ試みはオモシロかったと思う。
あと、ラストのモニュメント・バレーの空撮を始めキャメラもよかった。
とりわけ、夜のハイウェイ。
アリに置き去りにされた哲平を探しまわるサラ。
ここは真っ暗闇の空気感がよく出ていたと思う。
それとラストだね。
これは明かせないけど、長く心に残る名シーンだね」

----そう言えば今日もオダギリジョーの映画じゃなかった?
「西川美和監督の『ゆれる』だね。
舞台挨拶もあるからか、スゴい人気で満員札止め。
泣く泣く断念したけど、こちらも気になるなあ」


         (byえいwithフォーン)


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猫ニュー

『デイジー』

2006-03-22 19:00:48 | 新作映画
----この映画、監督が香港のアンドリュー・ラウ。
なのに主演は『私の頭の中の消しゴム』のチョン・ウソンに、
『猟奇的な彼女』「僕の彼女を紹介します」のチョン・ジヒョン。
しかも脚本はその『猟奇的な彼女』の監督クァク・ジョエン。
そして舞台はオランダで、音楽が梅林茂というんでしょ?
スゴく贅沢な映画だね。
「うん。これはとてもおいしい映画。
冒頭から夢のように美しいデイジー畑が出てきて、
それだけで引き込まれてしまう」

----お話はどういうものなの?
「主人公は画家のヘヨン(チョン・ジヒョン)。
彼女の元には毎週だれからか、デイジーの花が贈られてくる。
贈り主は名乗りを上げないんだけど、
あるとき、街角で彼女に似顔絵を頼んでくる男がいて
ヘヨンはジョンウ(イ・ソンジェ)というその男こそが
デイジーの贈り主に違いないと思い込む」

----ふうん。でもなぜデイジーなの?
「このデイジーというのは、
ヘヨンが絵のモチーフとしている花。
以前、ヘヨンが展覧会用にデイジーの絵を描くために、
山間の村に滞在していたとき、
丸太橋から足を滑らせて川に転落してしまったことがあって、
彼女はそれ以来、橋を渡るのが恐くなっていた。
ところがあるとき、そこには小さな橋が……。
彼女は呼びかけても返事をしないその恩人に感謝の気持ちを伝えるため、
自分の描いたデイジーの絵を橋の手摺りに残していく。
彼女の元にデイジーが届き始めたのはそれ以来なんだ」

----うわあっ。それはまた大掛かりな愛の表現だね。
「ジョンウの職業はインターポールの捜査官。
実は張り込みに便利という理由からヘヨンに近づいたわけだけど、
次第に任務を超えて彼女に惹かれていく。
しかし、それを狙撃銃のスコープで見張っている男がいた。
それこそが、彼女のために橋を作り、
また絵のお礼にデイジーを贈っていたパクウィ(チョン・ウソン)」

---それは想像つくけど、なぜ狙撃銃?
「彼は実はプロの暗殺者だった!」
----おおおお~っ。さすが“韓流”(笑)。
クァク・ジョエンらしい二重三重の凝った構成だ。
「そう。しかも裏社会の掟、そして激しい銃撃戦が絡むことで、
このせつないラブストーリーを重層的なものに変えてゆく」

---香港ノワールの名手アンドリュー・ラウにぴったりだね。
「うん。これ以上、詳しいストーリーを語るのは止めるけど、
途中で主要人物の一人が姿を消し、
彼は果たして生きているのか死んでいるのか、
と言った<ミステリー的>な要素が、
なんと2度までも立ち上ってくる」

----ニャるほどね。
デイジーの送り主が実はパクウィであると、
いつヘヨンが気づくか----こっちも興味深いよね。
「そうなんだ。
その真実を知ったときのヘヨンの気持ちの変化もね。
ヘヨンを演じるチョン・ジヒョンにとっては
久しぶりにコメディ的な要素の少ない映画だけど、
<真実を知らない中での恋><幻の相手への恋>と言う難しい役柄を
見事にこなしていた。
男優の方はイ・ソンジェに軍配が上がるね。
チョン・ウソンは、恋に臆病で名乗り出られないという設定だけど、
彼の奥手ぶりを見ていると『あんた、それはないだろうっ』て感じ。
恋に弱気な男にしてはカッコよすぎる(笑)」

----アンドリュ・ラウの演出はどうだった?
「甘いラブストーリーの舞台であるオランダの広場が
急に惨劇の場と変わるところは圧巻。
また、階段を使った銃撃戦でも
凝ったアングルと短いカッティングによって
スタイリッシュに仕上がっている。
フェイドイン、フェイドアウトも多用されていたけど、
最大の見どころは
パクウィ、ヘヨン、ジョンウの3人が初めて顔を合わせるシーンかな。
友達としてヘヨンの部屋を訪ねるパクウィ。
そこに、それまで姿を消していたジョンウが姿を現す。
ヘヨンの肩越しに目を合わせるパクウィ、ジョンウの男ふたり。
ジョンウの突然の出現にドアを閉めて表で泣き崩れるヘヨン。
と、画面は縦3分割になり、この3人3様の姿を映し出す。
部屋の中では、取り残されて気持ちのやり場がないパクウィが
どうしていいか分からずおろおろしている。
一方、部屋の外では、ヘヨンとジョンウの間に重い沈黙が流れる。
果たしてこの張りつめた空気はいつ破られるのか?
息詰まる愛の緊張だったよ」

----う~ん。それはぼくも観てみたいや。
         (byえいwithフォーン)

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『アダン』

2006-03-20 19:02:33 | 新作映画
----このタイトルのアダンって何のこと?
「パイナップルのような大きな果実を実らせる南の国特産の植物。
この映画の主人公・田中一村が愛したモチーフとかで、
映画の中では、彼の幻想として出てくる奄美の少女の名前にもなっている」

----奄美?えっ、舞台は奄美大島なの?。
「うん。幼少の頃から絵の天才として期待されながら
画壇から遥か遠くに身を置いた彼は50歳で奄美大島に渡り、
69歳で生涯を終えるまで
その島で極彩色の自然に包まれて絵を描くんだ」

----へぇ~っ。南の島に渡るなんて
まるでゴーギャンみたいだね?
だれが監督したの?
「五十嵐匠。前作『地雷を踏んだらサヨウナラ』の一ノ瀬泰造もそうだけど、
彼は日本人離れした生き方をしている人に共感を抱いているんじゃないかな?
どこにでもいるような人のどこにでもあるような人生を描くより、
確かに映画の素材としてはオモシロい」

----『地雷を踏んだらサヨウナラ』って、
一ノ瀬泰造がアンコールワットを遥か遠くに目にするシーンが
印象的だったよね……。
「あのような心切なくなる感動とは、
今回少し趣きが違っていたな。
この映画では田中一村が強く興味を示したと言う
<闘鶏>が血なまぐさくリアルに描かれているし…。
はっきりと言及されているわけじゃないけど、
それが彼が奄美で追いかけるアカショービンと言う赤い鳥のイメージに連なってくる」

----ところで主演は誰ニャの?
「自らも画家として活躍する榎木孝明。
キーの高いハイテンションの演技で、
最初は演技プランの計算間違いじゃないの?と思ったけど、
それがこの超個性的な人物を演じるのには意外と合っていたような気がする。
一生独身だった田中一村。
だからか彼の恋話のようなものは一切出てこない。
その夢を一生支えた姉に甘えまくり。
出品した絵が落選すると主宰者に激しく詰め寄って
自分の才能に嫉妬してるのではと言い放ち、
周囲に無礼な態度を謝罪しろと諭されても一蹴してしまう」

----ふうん。これで絵の才能に秀でていなければ、まるで子供だ。
「そういうこと。
そこにいるのはまさしく<子供>。
榎木孝明の演技プラン、
それはもしかしたらこの<子供>というところにあったんじゃないかな。
その<声>が声変わりする前のようにかん高いのも、
そういう理由からかも」

----でも、そんな<子供>がよく奄美で暮らしていけたね。
お金だって要るだろうし。
「映画では紬工場で3年働いてお金を貯めて、その後2年間絵に没頭。
たとえばキュウリ3本だけで1日暮らすとか言ってたな」

----それは、えいには無理だね(笑)。
         (byえいwithフォーン)

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『柔道龍虎房』

2006-03-18 11:45:23 | 新作映画
----ぷっ。変なタイトルだね?
えっ、これ日本映画じゃニャいの?
「うん。一部に根強い人気を持つ香港のジョニー・トーが監督。
タイトルもそうだけど、映画自体もかなり変だ」

----どういうところが?
「冒頭、香港の超高層ビルをバックにした草地で
一人の男が柔道の構えで練習している。
その前で長髪の男が日本語で『姿三四郎』を歌う」

----と言うことは、これって黒澤映画と関係あるの?
「ジョニー・トーは《黒澤監督に敬意を表して》とクレジットしているけど、
この歌そのものは
70年の渡辺邦男監督版の『姿三四郎』に使われている。
アーロン・クォックは酒場でサクソフォンを吹くし、
まるで日活の無国籍アクションみたい。
いわゆる《かっこよさ》重視の作品。
第一、まともにストーリーを語ろうとはしてないね」

----そんなストーリーを語らない映画なんてあるの?
「もちろんストーリーはあるよ(笑)。
でもその整合性より、
ひらめいたオモシロいエピソードを、
あらかじめ決めていた
大まかなストーリー・ラインの中でつなげていったと言う感じ。
物語は、トニー(アーロン・クォック)が
ある酒場に現れてそこの用心棒に
彼を投げ飛ばせるか、賭けを挑むところから始まる。
店の中では、酒場の雇われマスター兼バンドリーダーの
シト・ポウ(ルイス・クー)が酔いつぶれている。
そんな彼にトニーは戦いを挑む。
これでどうやらシト・ポウはかつての名選手らしいことが分かるんだけど、
はっきりとは呈示されない。
翌日、トニーが再び訪れると
そこには日本で歌手になることを夢見ている
シウモン(チェリー・イン)が自分を売り込み中。
と、泥酔していたシト・ポウは時間を見てあわててどこかへ」

----どこに行くの?
「なんとゲームセンター(笑)。
彼はトニーから金を借りて
それをコインに変えて遊びだす。
そこでは裏社会の大物らしき男がゲームに熱中。
次々と客に勝負を挑んでいる。
と、急に大騒ぎしてゲームを始めるトニー」

----はい??????
「実は、これはこの裏社会の男の集金カバンをすり替えるための囮作戦だった」
----なにがなんか分からないよ。
「ちょっと待ってね。
すぐ終わるから(笑)。
実はこの大物はシト・ポウの昔の顔見知りであった」

----ニャんだ、それ?
「と、まあ映画はこんな調子。
ありえないような話を次々と紡いでいく。
だから途中まではその勢いで観ていられるんだけど、
映画がどこへ向かおうとしているか
あえて説明を排除しているから、
まるで香港エンタメ版ゴダールって感じ(笑)。
でも、彼ら3人が街角を走り抜けるシーンなんて疾走感はスゴい。
見どころだったのが、
シウモンが賭場のお金をひったくり、
ごっそり両腕に抱えてシト・ポウと逃げるシーン。
彼女の腕からは次々とお札が舞い落ちる。
追いかけてきた男たちは追うのをストップ。
金を拾い始める彼らを見てシウモンも戻ってくる。
お互いにお札を拾いながらにらみ合い。
それをキャメラはローアングルで写す。
その緊張感が破れ、彼女が捕まりそうになると、
今度はシト・ポウが戻ってきてぼこぼこに殴られる。
再びシウモンに追いつくシト・ポウ。
彼の靴が片方ないことに気づいたシウモンは、
荒くれ男たちがお札を拾うところまで靴を拾いに戻る」

----それはいいや。映像が目に浮かぶね。
「このシーンは深夜の街角での撮影。
ビルの角を生かした撮影が視覚的にオモシロく、
ここだけでも何度か観てみたい気にさせてくれたね」

                  (byえいwithフォーン)

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『緑茶』

2006-03-15 22:42:19 | 新作映画
----この監督の映画って、
わりと最近観なかった?
『我愛イ尓<ウォ・アイ・ニー>』だね。
今回は『太陽の少年』『鬼が来た!』の
ジャン・ウェンを主演に、
どちらかというと
ヨーロッパが取り上げそうな設定の映画にチャレンジしている」

----へぇ~っ。どんな内容?
「どこから話そうかな。
観た後、この映画の主人公はいったいだれだったんだろう?
という一種不思議な感覚にとらわれる。
いまさっき主演をジャン・ウェンと言ったけど、
最初はヴィッキー・チャオ演じる
大学院生ウー・ファンと、だれもが思ってしまう。
というのも映画は、
彼女ウー・ファンがお店で
お見合いの相手を待っているところから始まる。
髪をひっつめにして眼鏡をかけて地味なスーツを着たファンは、
サングラスで現れた気障な男チン・ミンリャンに
嫌悪感を抱いてしまう。
ところがミンリャンはファンに心惹かれ、
まるでストーカーのように、毎日彼女の前に現れる。
しかし、ファンはなかなか彼に心を開かない。
しかも彼女が話すのは、
母親が死体に化粧を施す仕事をしていたという
友だちとその家族の話ばかり。
そんなある日、彼は
声をかけてくる男ならだれとでも寝てしまうランランという
バーでピアノを弾く女性と出会う。
彼女は雰囲気こそ異なっているもののファンそっくり。
果たしてファンとランランは別人なのか?
それとも……という内容だ」

----確かに中国映画らしくないね。
「でしょ。
またロケーションに使われている場所が、
これまでの中国映画には出てこなかった
おしゃれなスポットばかり。
映画には中国アートのカリスマ、
ファン・リジュンも出演しているんだけど、
彼のお店が画とともに使われている。
他にもグランドハイアット北京とかクンルンハンテンとか、
新しいものには目がない人にとってはたまらないだろうね」

----そう言えば撮影がクリストファー・ドイルだって?
また、彼特有の粗いタッチの原色の世界なの?
「いや、これが意外と抑えられていたね。
映画は後半、だれもがなるほどとうなずく形で
一気に大団円を迎えるんだけど、
その後のホテルでの写し方が凝っている。
飾りガラス風のテーブルの下から写される
鮮明でないふたりの映像。
これだけでもこの映画を観る価値はあると思うよ。
あと、ヴィッキー・チャオだね。
ファンの時は宮沢りえ、
ランランの時は中森明菜を彷彿させたよ」

----ふうん。でもなぜタイトルが『緑茶』?
「これはファンが友だちから聞いた話、
『一杯の緑茶で愛の行方を占える』から来ている。
以来、彼女はいつも緑茶を頼むんだけど、
これが日本とは違って茶葉がまだ青々としていて大きい。
その緑の葉がお湯の中で膨らみたゆたう姿は官能的。
これもクリストファー・ドイルのカメラに負うところが大きかったな」


               (byえいwithフォーン)

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『ロンゲスト・ヤード』

2006-03-14 18:57:05 | 新作映画
※結末に触れる部分もあります。
ご覧になってから読まれることをおススメします。


----これはロバート・アルドリッチ監督の
74年の作品のリメイクだね。どうだった?
「これはこれで悪くはないんだけど、
オリジナルが偉大すぎたからなあ。
比較するなと言ってもそれは無理。
あの名シーンはどうなっているんだろうかとか、
いろいろ考えながら観てしまった」

----前作で主演だったバート・レイノルズも出ているよね。
「うん。てっきりゲスト程度の扱いかと思ったら、
なんとこれがキーとなる役。
それだけ彼もこの映画への思い込みが強いんじゃないかなあ。
確かその後、アルドリッチと組んで
プロダクションも興したような…。
違ったかな」

----どんなストーリーなの?
「主人公は元NFLのスター選手ポール・クルー(アダム・サンドラー)。
八百長疑惑でNFLを追われた彼は、
いまは女性のヒモとして暮らしている。
ところがある日、飲酒運転で警官とカーチェイスを繰り広げ、
懲役3年の刑でテキサスの連邦刑務所に入ってしまう。
しかし、その刑務所に彼を呼び寄せたのは
看守たちのアメフトチームを持つヘイズン署長(ジェームズ・クロムウェル)。
彼は看守チームに自信をつけさせるため、
当て馬の対戦相手として
ポールに囚人たちのチームを結成するよう命じる。
果たして彼は?……というもの」

----へぇ~っ。オモシロい話だね。
でも大変じゃない?
看守チームに勝つためならともかく
当て馬のチームじゃ……。
「うん。そこがこの映画のオモシロいところだよね。
ポールには過去に八百長疑惑あり。
周囲は彼に対して冷ややか。
まず、ポールは自分を周りに認めさせなくてはならない。
ふと考えてみたらこの映画は
最近日本に増えてきた青春スポーツドラマに少し近い。
弱小チームが大きな試合に向けて
一つにまとまっていく。
ただ、70年代にこのオリジナルが作られたときには、
もう少し反権力的匂いが強かった。
もちろん時代のせいもあると思うけどね」

----さっき前作の名シーンがどうのとか言ってたけど?
「この映画はそのストーリーはもちろんのこと、
記憶に残るいくつもの名シーンを生み出しているんだ。
たとえば囚人チームが円陣を組んで作戦を練る。
このときキャメラは
輪になった選手たちの上半身を仰ぎ見、
同時に、その隙間から覗く青空を鮮烈に写す。
あ、あとキャスティングの問題もあるな。
オリジナルでは看守長をエド・ローターが演じていたんだけど、
いつもサングラスをかけて素顔を見せないため、
まるで冷たい機械のような非情さを感じさせた。
でも今回のウィリアム・フィクトナーは
ただストレートな暴力でポールを痛めつけるだけだ」

----ニャんだか、少し厳しくない?
「いや、これでもけっこう楽しんで観ていたんだよ。
最近のリメイク、
たとえば『がんばれ!ベアーズ<ニュー・シーズン>』よりよっぽどノレた。
たとえば、練習場が水浸しという所長側の嫌がらせにあいながら、
それでも決してあきらめないシーンなんか、
ナパーム弾を雨にたとえた
クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの名曲『雨を見たかい』が流れ、
あ~あ、ここでオリジナルが生まれた70年代と繋げているんだなとジーン。
バート・レイノルズ扮する老コーチが
逆転を目指してフィールドに飛び出すところも
思わず熱いものがこみ上げてきた。それなのに…。

----それなのに??
「それなのに、
なぜ決勝点のあげ方を
オリジナルと同じにはしなかったんだろう?-----
と、これが最大の疑問。
これは本作のネタバレにはならないから言っちゃうけど、
長い最後の1ヤード、オリジナルでは
ポールが防御に回る看守チームの上をジャンプしてタッチダウン。
しかもそれはスローモーションで感動的に映し出される。
オリジナル同様、
分割スクリーンなんかも随所に取り入れてるんだから、
ここもきっちりやってほしかったな。
もちろんこの新作が
それを超えていたらオリジナルにこだわらなくとも
文句はないんだけどね」

         (byえいwithフォーン)

ロンゲスト・ヤード スペシャル・コレクターズ・エディション PPA-111099ロンゲスト・ヤード スペシャル・コレクターズ・エディション PPA-111099
※オリジナルは人気あったよね。

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※画像はアメリカのオフィシャル壁紙より

『サージェント・ペッパー ぼくの友だち』

2006-03-12 23:58:21 | 新作映画
----子供と動物、ダブルだね(笑)?
「そうなんだよね。
でも観る前まではどんな映画か皆目検討つかなかった。
だって子供がトラの着ぐるみ着てるんだもの」

----で、結局どんな映画だったの?
第一、サージェント・ペッパーって何よ?
まるでビートルズのアルバムじゃない。
「サージェント・ペッパーと言うのは犬の名前。
サージェント・ペッパーは、ある伯爵の飼い犬だったんだけど、
莫大な遺産を相続してしまったことから、
その遺産を狙う姉弟に命を狙われてしまう。
そのサージェント・ペッパーが転がり込んだのが
トラの着ぐるみを家でも学校でも着ている
6歳の子フェリックスの家。
誕生会に呼ぶ友だちもいない彼だけど、
なぜかサージェント・ペッパーの声が聞き分けられる」

----ん?と言うことは、この犬は喋るんだ。
「そう。
だからと言って、今はやりのCGとかで口の動きを出しているわけじゃない。
考えていることがフェリックスにだけは分かると言う方法。
アナログだけど、これがこの映画のテイストには合っていたと思う。
本当に犬が考えているような顔に見えてくるんだ」

----ニャるほど。
でも、お話の方は読めちゃうな。
この少年がサージェント・ペッパーを助けるんだね。
つまりハラハラドキドキの冒険物語。
「うん。
それはそうなんだけど、
この少年が普段から変わり者と見られているため、
みんなから信用されない。
その孤立感を『トラの着ぐるみ』という
視覚的なオモシロさで見せたのが成功していると思う。
原色の黄色いトラ(着ぐるみ)が犬と一緒に
公園を走り抜けるのは、
それだけで心うきうきしてくる」

----それはいいや。
「しかも彼のお父さんが発明家で自分たちが住む借家を改造。
朝起きたら、シャワー、着替え、そして朝食と、
すべてオートメーション。
ここも子供の頃夢見たレトロなSFの再現という感じで
なかなか楽しかったな。
そう言えば、フェリックスはカウンセラーの元に通っているんだけど、
いつしか先生と一緒に寝てしまう。
なんとものどかな映画だったね」

----うん。たまにはこういうのもいいよね。。
          (byえいwithフォーン)

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※画像はドイツ・オフィシャルサイトの壁紙。

『連理の枝』

2006-03-11 23:46:53 | 新作映画
----このタイトルどういう意味?
「うん。白楽天の『長恨歌』というのにある一節
『天に在りては願わくば比翼の鳥と作らん』
『地に在りては願わくは連理の枝と為らん』。
つまり心も体もひとつに溶けあって深く結ばれた永遠の愛を
謳っているんだね」

----よく知っているね。
「だって高校のとき習ったもん。
普通では忘れるところだけど、
どんな鳥でどんな枝だろう?って想像していたから
よく覚えているんだ」

----ということは、これまた永遠の愛を描いた韓国映画?
「そのとおり。
当時、ぼくはこの詩は夫婦のことを謳ったものと
勝手に決めつけていたんだけど、
映画はそうではなく若い男女の愛を描く。
青年実業家ミンス(チョ・ハンソン)はプレイボーイ。
ある雨の日、ヘウォン(チェ・ジウ)と言う女性と出会い、
これまでとは違った感情が芽生える。
ヘウォンは長期入院しているにも関わらず、
病院を抜け出すような快活な女性。
ミンスは彼女を誘って飲みに行ったり、
ドライブインシアターや釣りに出かけたり。
そんな矢先、彼女が目の前で倒れてしまう…」

----おおっ。不治の病。これぞ<韓流>!
「そういうこと。
原発性肺動脈高血圧症だったかな。
あまり聞いたことのない名前の難病が出てくる。
ただ、この映画には疑問がいくつもあって、
まず、ミンスはなぜヘウォンの病名も確認せず、
毎日のように外に連れ出していたのか?
普通好きになったら、
まずそれを気にするものだと思う。
それをまったく無視して入院患者を動かし回る……
それって果たして愛と言えるのか?
そしてもうひとつ。
プレイボーイのミンスが
ヘウォンのどこにそんなに惹かれたのか?」

----おおっ。ちょっと手厳しいニャ。
でも見どころもあるんでしょ。
「そうだね。
ミンスのヘウォンへのアプローチの仕方がスゴい。
ヘウォンが忘れていった携帯を拾いながら
なくしたと言って同じものを買いに街に出る。
つまりこの機に乗じてファースト・デートしちゃうわけだ。
そして感心したのがこのシーン。
遠出して帰りのバスがなくなって
ヘウォンがどうしようと困っていると……
あっ、これは言えないな。
これから観る人の楽しみを奪うことになる。
ここは、これぞプレイボーイと言う<技>を見せてくれるよ」

----そう言えば、また出会いは雨の日だね。
「韓国映画は雨が定番。
情緒的に盛り上がるからね。
今回は、出会いのシーンだけではなく
要所要所に雨が出てくるからそれも要チェック。
あと、病院の先生と看護士、
ミンスの友だちとヘウォンの友だち。
この二つの愛がコミカルさと素朴さで描かれていて、
悲劇に傾きすぎないようにしているのも監督の配慮かな」

                  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンはニャかニャかったニャあ」悲しい

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※画像は韓国オフィシャルサイトのスチール。