ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『パフューム ある人殺しの物語』

2006-12-19 00:22:18 | 新作映画
(原題:Das Parfum : Die Geschiche eines)

※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----この映画、スゴい評判だよね。
確か「衝撃のラスト!」とか言われているんでしょ?
「うん。そこまで言われると、
どんな映画だろうって…。
今日は期待に胸ふくらませて行ったんだけど…」

----ん?行ったんだけど…?
「確かに、変わった映画ではあるけれど、
やはりあまり期待しすぎると、
映画はよくないね。
思ったより分かりやすい。
もっと翻弄されるのかと…」

----う~ん。はっきりしないニャあ?
どんなお話ニャの?
「複雑に見えて説明しやすいお話。
時は18世紀のパリ。
悪臭漂うこの街で産み落とされたグルヌイユは
死んだ魚と一緒に川に流されそうになるところを
間一髪拾われて、
育児所に預けられ、そこで育てられる。
グルヌイユは、友だちができないばかりか、
赤ん坊の時には子供たちに殺されそうになる。
ところが、そんな彼にはある才能があった。
それは何キロも先の匂いを嗅ぎ分ける超人的嗅覚。
数年後、青年となった彼は、
初めて出会った香りに激しく鼓動する。
それは赤毛の少女の匂い。
怯えた少女の悲鳴を塞ごうとして
誤って彼女を死に至らしめてしまったグルヌイユは
香水調合師として働きながら、
少女の香りを再現することに自分の生きる道を見いだす」

----オモシロそうじゃニャい。
でも、香りや匂いを表現するのは難しそう。
「いや。これは素晴らしかったね。
監督は『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ。
グルヌイユが嗅ぎわける香りを、
カメラの繊細な動きによって見事に表現。
実際、スクリーンから匂いが漂ってきそうだった」

----じゃあ、問題ないじゃニャい。
「いや、ところが、
この後、物語が
彼の犯す連続殺人へと進むにつれて、
<香り>よりも<犯罪手口>を描くことに映画の比重が移っていく。
そうなると、これまで観てきた映画と、
さして変わらなくなってしまう。
ここでもあくまで<香り>の描写をキープしてくれれば、
この映画は素晴らしい傑作になったと思うんだけどね。
主人公グルヌイユは香りを捉えるべく、
特殊な技術を持つ職人たちの街グラースへ。
そこで脂に香りを移す冷浸法を習得する中で、
彼は、あの赤毛の少女の<香り>と再会する。
その香りの持ち主ローラを演じるレイチェル・ハード=ウッドが
あまりにも美しすぎるのも難。
匂い以前に、<視覚>で彼女がその運命の女性と観客に納得させてしまう」

----確かに美しい女性だね。
お父さん役はアラン・リックマン?
なんだか『アマデウス』のF・マーリー・エイブラハムに似てこない?
「(笑)映画も少し『アマデウス』に似た構造を持っているしね。
ただ、この映画でサリエリに当たる男を演じるのはダスティン・ホフマン。
彼は、グルヌイユに天才的才能を見いだす
落ち目の香水調合師バルディーニという設定だ」

----主人公はだれが演じているの?
「ベン・ウィショー。
若い頃のスティーブ・マックィーンのようでもあり、
また、テレンス・スタンプをも彷彿させる」

----そのふたり、全然違うよ(笑)。
※ネタバレ注意報発令※
さて、いよいよそこに言及するとしよう。
主人公は、クライマックスで、ある奇跡を起こす。
その姿は、あたかも別の時代に現れたキリストのよう。
これってパゾリーニの『テオレマ』(主演:テレンス・スタンプ)を想起させる。
しかもそこで繰り広げられる
集団による愛の交換はアントニオーニの『砂丘』、
さらに、その向こうにはケン・ラッセルさえもほの見える。
この映画、ぼくは決して新しいとは思わない。
それどころか、映画の表現領域を広げていた
60~70年代の映画作家たちの記憶が凝縮されていて、
懐かしくもあり微笑ましくもあった。
ただ、最近はこのような映画が作られなくなっていた。
おそらく若いファンには熱狂を持って迎えられる、
そういう気がするね」

----う~ん。確かにネタバレ注意報だ(汗)。


                                (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「でもこの映画、フォーンは話題になると思うニャ」身を乗り出す

※ある意味、刺激強い度
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

※画像はドイツ・オフィシャルの壁紙です。