ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『君に届け』

2010-09-26 21:50:06 | 映画
※ちょっと辛口。
ファンの方はスルーされたほうがいいかも。


----これ、もう始まっているよね。
メインビジュアル見ると、すがすがしそうだけど?
「すがすがしいと言えば言えるかな。
物語としては、クラス中から敬遠されている女の子を軸に、
彼女に出会いの瞬間、一目ぼれしてしまった男の子の想いを
日々の学校生活の中に描いたものなんだけどね」

----ニャんだか、ありきたりだニャあ。
で、その“敬遠されている女の子”を演じているのが
多部未華子ってわけ?
「そう。
昔からの彼女のファンとしては、
これは見逃せない…はずだったんだけど…」

----そうじゃなかったってわけ?
「そうなんだ。
少し言いづらいんだけど、
あの国民的連続TV小説とやらに出たからか、
彼女に備わっていた“目力”が失せてきている。
この映画も、周りから“貞子”呼ばわりされている役だし、
やりようによってはオモシロくなるんだろうけど、
なんか、妙に明るい。
古い言葉で言えば、“不思議ちゃん”のキャラも
そのためさらっとした感じ。
これだったら、誰も敬遠しないよなって…」

----もうすでに公開されているからって、
ちょっとキツすぎニャい?
でも、あえて取り上げたからには
どこか見どころあるんだよね。
「うん。
まず、この映画、
最近の東宝の青春映画にしては
悲劇のオンパレードになってない。
ちょっと前までは、ケータイ小説を基にした映画が多く、
難病からレイプまで、もうこれでもかってくらい詰めこまれていた。
この映画の場合、三浦春馬演じる男の子をめぐって、
悪役の女の子が、噂を中心に罠をかけるという程度。
昔懐かしい少女マンガの世界だね、これは。
というわけで、少しほっとしたわけ。
もちろん、だからと言って映画の出来不出来の評価とは別だよ。
ARATA演じる先生のありえなさ、
やりすぎ感も含めてね」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「冨田靖子も出ているのニャ」
気持ちいいニャ
※あら、原作は「別冊マーガレット」。やっぱりだ度


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『レオニー』

2010-09-21 23:06:05 | 新作映画
(英題:Leonie)



----レオニーって人の名前だよね。
だれのこと?
「彼女は、天才彫刻家イサム・ノグチの母親」
----えっ。外国人っぽい読み方と思ってはいたけど、
彼のお母さんって外国人ニャんだ。
でも、ずいぶん前のお話だよね。
「うん。
日本は明治時代。ようやく鎖国が解けた頃。
そんな頃に、
アメリカに渡った日本人の詩人・野口米次郎(中村獅童)は、
自分の詩の創作を編集という形で手伝ってくれたアメリカ人女性・
レオニー(エミリー・モーティマー)と結ばれる。
ところが、折からの日露戦争が勃発。
ロシアびいきのアメリカで
現地にとどまりづらくなった米次郎は日本へ帰国。
残されたレオニーは、ひとり男の子を出産。
やがて米次郎の誘いで日本に渡るが…というお話だ」

----へぇ~っ。いかにも大河ドラマって感じだね。
「うん。オープニングの映像からしてそう。
大自然を捕えたカメラに身を任せていると、
これが日本人監督の手によるものということを忘れてしまうほどだ」

----えっ。これって日本映画ニャの?
「そう。監督は『ユキエ
』『折り梅』
の松井久子。
寡作ながらも、これまでの作品は、
いずれも高い評価を浴びている。
実はこの映画は、プロデューサーやライターが二転三転。
そういうときって、
普通、監督サイドの不幸が強調されるものだけど、
プレスを読んだ限りでは、
監督のこだわりもその理由の一つのよう。
なにせ、プロダクション・デザイナーを解雇した理由が
『ロケハンはそれぞれのビジョンをぶつけ合う戦いの場。
自らのビジョンがなく受け身なだけの人は、
チームの士気を低下させるだけ』」

----スゴい厳しい言葉だニャ。
「でしょ。
これが実は監督自身の言葉。
しかし、それだけ画作りにかけているんだなということがよく分かる。
プロダクション・デザイナーというのは、
ある意味、映画のビジュアル面においてもっとも芯となる部分だからね。
他にも当初、主人公に決まりかかっていた
シンシア・ニクソンを年があわないとの理由で、ゴメンナサイ。
ライターは何度も変わるし、プロデューサーとも決裂。
そんな彼女の執念がどう結実したか、
まずはそこを観てほしい映画だね」



           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「アメリカと日本の風景、両方観られるのかニャ」
小首ニャ

※札幌のモエレ沼公園に行きたくなった度


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『アメリア 永遠の翼』

2010-09-19 23:32:34 | 新作映画
(原題:Amelia)



----ん?アメリアってどこかで聞いたことがあるニャあ。
『ナイト ミュージアム2』のことだね。
実は彼女は『史上もっとも有名なアメリカ人10人』に必ず入ってくるほどの女性。
ただ、日本での知名度たるや、
本国アメリカのそれには、遠く及ばなかった」

----ニャるほど。
あの映画では、
確かエイミー・アダムスが演じていたんだったよね。
今度はヒラリー・スワンクか。
全然、タイプが違う感じだけど…。
「そうだね。
エイミー・アダムスは、とてもキュートに演じていて、
いかにも、あの時代のハリウッド映画が好んだ典型的な女性って感じ。
それに比べると、
今回は“現代の視点”が入っているって感じかな。
いわゆる、男目線でアメリアを理想化するようなことにはなっていない。
そこが好感がもてるところだね。
ヒラリー・スワンクは自ら製作総指揮に名を連ねている。
プレスによると、
その意気込みは、役作りにも表われていて、
綿密なリサーチに基づき、
容姿、立ち居振る舞い、話し方もそっくりに演じている…
と、こういうことなんだね。
さらには、
“アメリアの精神性も完璧に表現し、
本が生き返ったかのよう”なんてことまで書いてあるけど、
そんなこと、ぼくに分かるはずないし…」

----そりゃ、そうだよね(笑)。
でも、後半、けっこう、乗り出して観ていたって
言っていニャかった?
「うん。彼女は、
世界で初めて大西洋を横断した女性。
以後、空への挑戦を続け、
大西洋単独横断、大陸横断、
太平洋横断と、次々と記録を塗り替える。
しかし、赤道上世界一周飛行の途中、
南太平洋において行方不明に。
映画では、沿岸警備隊の小型船との交信が普通となり、
次第に焦りの色が濃くなるさまが克明に描かれていく。
結末が分かっていながら、
それでも観る者に緊張を強いるこの演出はお見事。
監督がインドの女流監督ミーラー・ナーイルと聞いて、
なるほどと納得。
彼女の愛と自立、ぞの葛藤もなかなかよく描かれていたと思うよ」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そんなに本物と似ているのかニャ?」
ご不満

>※ウィキペディア見たら、ほんとソックリだった度


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『ゲゲゲの女房』

2010-09-15 23:20:26 | 新作映画
----これってテレビでもやっていなかった?
「うん。朝の連ドラでね」
----じゃあ、その人気にあやかってってこと?
「いや、そうじゃないらしい。
企画の立ち上がりはほぼ同じ。
これは、漫画家水木しげるの奥さんである布枝さんの
自伝エッセイを映画化したものなんだ」

----へぇ~っ。
テレビ、映画の企画がほぼ同時ということは、
そうとう話題になったてことだよね。
どういうところが、受けたの?
「彼ら夫婦は、
底なしの貧乏暮らしを続けながら、日々、生きていく。
経済不況、就職難、失業者が溢れかえる
今の時代と重ねあわせられるところが多い。
よく、映画って、その中に自分とは違う世界を観て、
セレブな暮らしにうっとりしたり、
あるいはその真逆で、我が身を振り返り
ホッとすることってあるけど、
これって、水木しげる夫婦の生きざまに
自分たちの指標を見てとった、
そういうことじゃないかな(勝手な想像だけど)」

----でも、それじゃあ、映画独自の魅力には繋がらないよね。
確か、この監督は『私は猫ストーカー』鈴木卓爾だよね…。
「うん。そこがぼくの最も興味を引かれたところ。
さて、どんな世界を見せてくれるか…。
まず、ファンにとって最大のプレゼントとも言えるのが
『墓場鬼太郎』『悪魔くん』の原画制作.
しかも、それがアニメーションとして動き出すんだ」

----それは楽しそうだニャ。
ところで、水木しげるは誰がやっているの?
クドカンこと、
宮藤官九郎
彼はもう天才的。
ぼくは、若い頃の水木しげるを直接は知らないけど、
まさしく、こんな感じじゃないかと思わせる説得力がある。
いつも、飄々としていて、
でも、一回だけ、怒りを爆発させる。
そこがどこかは言わないけど、
戦争で片腕失った水木しげるの
内に秘めた思いが強く伝わり、
さすがにここは泣けたなあ」

---ふうん。
ところでさ、
水木しげるって、
気づいたときはもうとっくに有名だった気がするけど…。
「実は彼は貸本時代からの漫画家。
ところが週刊誌が相次いで発刊され、
低年齢化する読者のニーズからはかけ離れていく。
妖怪もののような暗い漫画は受けなくなってきたんだね。
で、発行元も苦しくなって原稿料を値切ったり払わなかったり」

---ニャるほど。現代と似てきた。
「そんな中、大手の出版社が
彼にSFものでと、原稿を依頼にくる。
でも、フォーンも知っての通り、
今に至るまで彼は妖怪ものしか描いていない」

---ということは、断ったわけだね…。
そんな苦しい生活をしていながら…。
奥さん、たまんないよね。
「まあ、ここがこの映画の最大のポイントだろうね。
日々の食いぶちにも困るありさまながら、
漫画家としての矜持は失っていないわけだから。
ipadの出現で、ただでさえ売れなくなってきた本。
そんな中、小説家たちはどうするのか?
ぼくは、ここでも今の時代と被さったな」

---ニャるほど。現代と似てきた。
貸本屋がなくなったように、
本屋も危ないということか…。
そういえば、貸本屋の主人の顔、どこかで見た気が…。
鈴木慶一
今回は音楽もムーンライダーズとして担当。
エンディングでは小島麻由美のフィーチャリングで歌も歌っている。
もしかして鈴木慶一とムーンライダーズとしてのアルバムに
『火の玉ボーイ』というのがあるから?なんて、
変な連想しちゃった。
というのも、この映画の中に火の玉も出てくるんだ」

---気持ちは分かるけど、
さすがにそれはないんじゃニャいの。
「だよね。
さて、最後にこの映画の違和感。
それは、風景として、
どう見ても当時はないと思われる建物がいくつも出てくること。
例えば調布駅前のパルコもそのひとつ。
でも、これは企画の越川道夫さんが書かれた一文で納得。
『映画の表現として今の風景の中で
昭和30年代を演じることの意味を大切にしました』。
ただ、観ている間は、そういうこと分からないから、
あれっ、水木しげるって、この頃にはもう有名だよね…
なんて、思ってしまったけどね」




       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そういえば女房のこと喋ってないニャ」ご不満

※あっ、吹石一恵だ度



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『半次郎』

2010-09-12 18:03:18 | 新作映画
----あれれ、また時代劇?
「う~ん。これも一種の時代劇なのかなあ。
確かに幕末も出ては来るけど、
どちらかと言えば、明治時代が中心。
これは、かの西南戦争の裏を描いた映画なんだ」

----西南戦争って、西郷隆盛だよね。
「中心はね。
でも、これはタイトルからも分かるように、
いつも彼の傍にいた中村半次郎が主人公。
鹿児島出身の榎木孝明が企画も兼ね、半次郎を演じている」

----へぇ~っ。でもこういう実話だと、
お話がしづらくない。
昔の偉人について、ああだこうだ言うわけにもいかないし。
「それはそのとおり。
特に、ぼくのようにこの戦争について
ほとんど無知な人間からすれば、
簡単に、『へぇ~っ、そういうことだったんだ』とも言えない」

----だったら、あえて取り上げることもないのに…。
「いや、それが、
思った以上に映画として魅力的だったんだ。
冒頭、いきなりクライマックスの戦争シーンの一部が映し出される。
それを観て頭をよぎったのは『二百三高地』
メジャー作品というわけでもないのに、
その迫力は、まったく見劣りしない。
五社英雄監督の『雲霧仁佐衛門』を彷彿させる、
肉を斬られる痛み。
さらには死への恐怖感もよく出ていて、
いわゆるアクションという範疇を超えていると思ったね」

----ほ~っ。それはスゴそう。
「ドラマ部分で言えば、その視点から描かれているのか、
実際にそうだったのか、
明治政府ができて、かつての同志たちが
中央でのし上がっていく中、
その策略謀議によって、彼らは滅亡へと追いやられていく。
権力闘争というのは、
いつの時代でも同じだということがよく分かる。
これは、政治の世界だけじゃなく、
会社を含む、小さな組織にも通じるものだね。
というわけで、ぼくは、
この戦争のことを調べてみたくなったな」

----へぇ~っ。
じゃあ、映画としては大成功じゃニャい。
ものぐさな、えいの気持ちを動かしたんだから。
「監督が『地雷を踏んだらサヨウナラ』五十嵐匠
実在の人物を描くのは彼は巧いね。
ただ、一か所、アレッと思ったシーンが。
河原で永山弥一郎(AKIRA)が追い詰められるシーンで、
若者たちの中にひとりだけ、白髪の目立つ人が…。
温水洋一そっくりで、ちょっとしらけちゃった」

----でも、作られた世界だから(笑)。

           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「日本人同士の最後の戦争らしいのニャ」
悲しい


※本気で作っているのがビシビシ伝わってくる度


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『大奥』

2010-09-11 17:44:46 | 新作映画
----ヴェネチアで『十三人の刺客』(2010年版)がスゴイ人気なんだって?
ニャんでもスタンディングオベイションが鳴りやまなかったとか…。
で、今日はモントリオールで深津絵里が主演女優賞受賞の
『悪人』の初日。
ニャのに“おおおくより~(by岸田今日子)”。
「いやいや、これはその『大奥』とは別。
よしながふみという人が描いたマンガを基にした、
もうひとつの江戸時代を描いた者。
なんと、そこでは将軍が女性。
で、女人禁制の大奥には将軍に仕える美男子が3000人。
一説によれば、これはBL(ボーイズラブ)とも…」

----それって発想はオモシロいけど、
どうしてそういうことになったの?
「それは、男ばかりが死んでしまう謎の疫病がはやったから。
劇中、堀北真希演じる
お信のセリフに次のようなものがある。
『男の方は力は強くとも体は弱いから…』。
で、圧倒的に少なくなった男は、世の中で重宝される存在に。
暮らしが貧しい家では、体を売って暮らす者もいる始末。
そう、種馬としての役割なんだね」

----あらあら。で、そのお信というのは主人公とどんな関係?
「主人公は旗本の家に生まれた水野祐之進二宮和也
お信は彼を恋い慕う大問屋の娘。
でも、これは叶わぬ恋と、祐之進は家のため大奥勤めを決意。
しかし、そこでは、権力をめぐる野望と策略が渦巻いていた…
と、まあ、後はだれもが想像のとおりかな。
ボーイズラブの言葉で分かるように、愛と嫉妬もたっぷり。
ただ、今回、オモシロかったのは主人公の将軍を吉宗(柴咲コウ)としたこと。
実際の徳川吉宗は、
この映画の吉宗と同じく質素倹約を徹底して財政再建を図る。
その彼、いや彼女が贅沢の象徴である大奥に対して、
どう出るか…。
ここがポイントだね」

----じゃあ、見どころはふたりのラブシーン?
「いや、それもあるけど、
何度も言っているようにボーイズラブだから、
男同士のそれもある。
なかでも水野を慕う垣添とのそれは、
今、注目の中村蒼が演じているだけに、
ちょっとショックかもよ」

----そういえば、大倉忠義
玉木宏らも出ているんだよね。
「そう。彼ら美男子がまとう衣装の豪華さも見逃せないだろうね。
素材は現在のモノを取り入れながらも
モチーフは江戸時代ならではの花やヒョウタン。
衣装デザイナーの小川久美子
『男は美しく、女はカッコよく』を目指したらしい。
あと、江戸城下の風景も楽しませてくれる。
まんじゅう売りから岡っ引き、左官、お遍路さんと、
すべてが女性だからね」

----聞いていると楽しそうだニャあ。
「う~ん。
気楽に楽しむにはいいけど、
どうもセリフのイントネーションが気になっちゃった。
原作もそうなのかもしれないけど、
水野がべらんめぇ調。
将軍もちょっと蓮っ葉な感じが…」

----でも、作られた世界だから
それはそれでいいのかもよ。


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ニャんでも“お猫さま”の時代らしいのニャ」
もう寝る

佐々木蔵之助はシャム猫を膝に乗せていた度


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『彼女が消えた浜辺』

2010-09-05 14:26:53 | 新作映画
(原題:Darbareye Elly)

※『オカンの嫁入り』『君が踊る、夏』『おにいちゃんのハナビ』の核に触れる部分もあります。
それらを鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。




----これって、
「この夏の外国映画のベスト」と言っていた作品だよね。
ちょっと出し惜しみしすぎじゃニャい?
「ゴメンゴメン。
気がつくと、公開がもうそこまで迫ってて、
さすがにこれじゃまずいと…。
さて、いつもとは違ってこのストーリーから。
この映画、まだ、そんなに知れ渡っていそうにもないし…。
ささやかな週末旅行を楽しみに、
テヘランからカスピ海沿岸の避暑地にやってきた大学時代の友人たち。
その参加者であるエリという若い女性が、幻のように消えてしまう。
果たして彼女はどこに?
エリが海で溺れたのではないかとパニックに陥る一行。
やがて、物語は思いもかけぬ展開を見せてゆく」

----えっ。これってミステリーだったんだ?
「そうじゃないよ。
いや、そうとも言えるかな。
人間の心、それそのものがミステリー。
もともとエリという女性は、この一行の中では新参者。
このヴァカンスの小旅行を企画したセピデーの子供が通う保育園の先生。
セピデーは面倒見がよく、ヴィラを予約し、日程も決めている。
しかし、そんな彼女には別の思惑があった。
ドイツで生活しドイツ女性との結婚に破れたアーマドと
エリの出会いの場にしようとしたんだ」

----それって、余計なお世話のような…。
「そういうことだね。
本人は善意でよかれと思ってしていることが、
相手にとっては迷惑な面も。
だって、その人にはその人の生活があり、
そこには人には言えない秘密も隠されているわけだから。
案の定、エリは浮かぬ顔で、
何度もどこかに携帯電話をかけている。
もともと一泊の予定で来ているエリは早く帰りたくてたまらない。
そんなとき、その事件は起こった!」

----そうか。もともとエリは帰りたがっていたわけだから、
観客からしても、
彼女が溺れたのか、それとも意図的に失踪したのか分からない…。
「うん、そういうこと。
さてミケランジェロ・アントニオーニ『情事』じゃないけど、
映画は途中からとんでもない方向へ進む。
この急展開がスゴイ。
9月公開の日本映画は
『オカンの嫁入り』『君が踊る、夏』『おにいちゃんのハナビ』と、
みんな難病や不治の病で物語が動いていくけど、これは全然違う。
それは、ある思いもかけぬ人物の出現によるもの。
そしてそれをきっかけとして、それまで善意の塊のように思われていた
アーマドの別の側面が次々と浮き彫りになってくるんだ。
で、観ているぼくらはあれれ?という感じなんだけど、
映画は休む暇もなく次々と新局面を呈示する。
そうなると、いましがた
うわべとは違うことが分かったばかりのアーマドが次は何を言い出すのか、
こっちは息をのんで見守るしかなくなる」

----でも、そんなアーマドの裏側を知ったばかりだし、
そこで語られることも
もう信用できなくなるのでは?。
「そういうこと。
あるひとりの女性が嘘つきだと分かった後、
以後の彼女の言動に対してそれをどこまで信じるかは、
それこそ、劇中の登場人物だけではなく、
観客の方も、自分のこれまでの生き方に応じて
一人ひとり違った答が出てくる。
最後の最後に追い詰められたアーマドが語る言葉。
そして、それを聞いた仲間は?そして観客は?
いやあ、実にスリリングな映画だったね」




           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「イランの中流階級のバカンスも珍しい度」
おっ、これは


※そこに、イランならではの道徳観も加わる度


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画像はイタリア・オフィシャル・ギャラリーより。

『悪人』

2010-09-04 13:28:40 | 新作映画
----このタイトルって、
あまりにも直接すぎニャい?
予告観ても、だれが悪人かすぐ分かっちゃうし…。
「いやあ、そこが原作のうまいところなんだろうね。
観ていて、途中、主人公がいい人か悪い人か、
自分でも分からなくなっちゃうもの」

----原作って、芥川賞作家の吉田修一だよね。
「うん。今年初めには
彼の原作『パレード』も映画化されている。
今回の作品は吉田自ら“代表作”というだけあって、
20社以上からの映画化争奪戦が繰り広げられたらしい。
監督も10人を超えるオファーがあったとか。
これって、その昔の『復讐するは我にあり』を思い出したね。
ぼくはたまたま、この映画を観ながら、
偶然にもその『復讐するは我にあり』を思い出していた。
というのも、主人公が、その正体がつかみきれない“怪物”。
で、彼の出身が九州の長崎」

----ニャるほど。
で、そのときの緒形拳妻夫木聡か…。
ちょっと線が細い気がするけど…。
「いやあ、これが見事にハマっている。
あの妻夫木スマイルも封印して正体不明の怪物を好演。
で、先に役者の話をすれば、
まず脇役が揃いも揃って名優ばかり。
『雷桜』でもひとり見せ場をさらっていた柄本明
やはり声だけよりも、その姿を見せた方がいい樹木希林
ワンシーンだけなのに強い印象を残す余貴美子
実は最初のうちは
彼らの久留米、長崎、あるいは佐賀弁のアクセントが
気にならないでもなかったんだけど、
いつの間にか忘れていたね。
一方、若手に目を移すと、
まず殺されるOL佳乃を演じた満島ひかり
もう、ゾツとするほど、いやな女を、完全ななりきり演技。
この手の役は彼女の独壇場。
それに引きずられるかのように、
地元の大学生・横尾を演じた岡田将生も、
これまた、絶対にお友達には欲しくないいやな男の役を怪演。
こちらもおそらく彼のキャリアに長く残るだろうね」

----あれっ?肝心の深津絵里は?
それに、ストーリーが見えてこないんだけど…。」
「ごめんごめん。
じゃあ、そこから。
物語は二言三言で言える。
出会い系で知り合った佳乃の人を見下した態度に、
逆上して彼女を殺してしまった清水祐一(妻夫木)。
やがてそれは警察の知るところに。、
追い詰められた祐一は、やはり携帯サイトで知り合った、
馬込光代(深津絵里)に佳乃を殺めたことを告白。
警察に自首しようとするが、
それを思いとどまらせたのは、なんと光代だった…」

----ニャるほど。逃避行ものか…。
最近はあまりなかったけど、以前はそいうの多かったよね。
「そうだね。犯罪映画の一つのパターン。
片方に引きずられて逃避行。
ぼくは『テルマ&ルイーズ』が頭をよぎったね。
ただ、テイストとしてはどこかヨーロッパ映画のような感じも。
もっとも、最初に祐一が光代をホテルに誘うところなんかは
『遠雷』そっくりだけど…」

----ニャんか、名作ばかりもってきたね。
ということは、この映画を気に入っているってこと?
「うん。
映画として、ほんとうに巧い。
まずショットに無駄がない。
タメによって映画にアクセントをつけ、観る者を飽きさせないんだ。
そのタメは、俳優たちの演技にも使われている。
次に、彼らがどういう仕草をするか、何を喋るのか?
観客は 、それこそ息を呑んでスクリーンに吸いつけられてしまう。
で、先ほどの深津絵里。
彼女なんか、顔の皺ひとつまで計算している感じがしたね。
監督は『フラガール』以来となる李相日
黒澤明、小津安二郎時代ばりに、
旅館の中で
原作・吉田修一と、旅館で共同の脚本作業を行っている。
撮影の笠松則通もさすがの仕事。
音楽は久石譲
クライマックスに流れる福原美穂の歌も
彼の手によるもの。
これも雰囲気だったな」




           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ほめすぎ!
知っている九州の場所がいっぱい出てくるから、
嬉しがっているのかもニャ」
ぼくも観たい

※今の時代に必要なメッセージを内包している度


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