ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

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『Mommy/マミー』

2015-06-21 20:27:34 | 映画

(原題:Mommy)




----あらら。今頃、この映画?
世間では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で盛り上がっているというのに、
ニャんだか対極の映画…。
「まあ、
あれはすでに喋っちゃっているわけだし、
この作品は、以前からすごく気になっていて…。
というのも『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と同じく
この映画に対しては否定的な意見を目にしたことがない。
しかも人によっては、
監督のグザヴィエ・ドラン
他の監督たちとは一線を画する、
フェリーニやキューブリックと並ぶ天才だとまで…。
彼の『トム・アット・ザ・ファーム』は観ているけど、
そこまで言い切っちゃうかなと…。
これは観ないわけにはいかない」

----で、どうだったのかニャ。
「う~ん。
確かにスゴイことはスゴイ。
2時間半近く、
まったく飽きることはない。
ただ、ぼくが興味を惹かれたところと
一般にこの映画が高く評価されているところとは
微妙に違うような気が…」

----どういうこと?
「どう言ったらいいんだろう?
この映画は、シングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)を軸に進んでいく。
彼女は注意欠陥多動性障害の息子スティーヴ(アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン)を抱え、
どんなことがあっても彼をかばいぬこうとする。
そのふたりにもうひとりの女性、
隣の家に住む休職中の高校教師カイラ(スザンヌ・クレマン)が
絡むことで物語が進行していく。
そこで描かれるのは、
どんなことがあっても息子を守り抜こうとする母親の愛。
経済的に行き詰っている彼女は、
息子が犯した放火によって
被害者から多額の賠償金を要求されている。
この窮地を脱するべく
ギリギリの選択を選び取るも、
スティーヴによって
希望の芽を摘み取られてしまう」

----う~ん。
それってひどすぎるニャあ。
いくら障害を抱えているとしたって…
写真を見たところ、彼、
もういい年じゃニャい。。
「そうも言えるよね。
15歳だし、
まったく分別がつかないという感じでもない。
ただ、この障害特有の
ある種、潔癖さに基づいた衝動が
理性で自分を抑えて常識的に生きることこそが是とされる
この一般社会では
はみ出し者となってしまうんだ。
でも、モラルにとらわれないその生き方が
“悪”と言い切れるのか?
この映画で重要な役割を果たす隣人のカイラ、
彼女は吃音気味で
人とはうまく話せない。
しかしスティーヴの前ではそれが治ってしまうんだ」

---ニャるほど。
分からない気がしないでもないニャ。
でも、そうやって聞いていると、
この映画、
そんなに特別な映画でもないような…。
強烈な個性の母と息子の話…。
「そんな気がしちゃうよね。
さて、ぼくが引っかかったのは、
これが<架空の国の話>になっているところなんだ。
この映画で最初に流れるテロップはこう。
『ある世界のカナダでは、2015年の連邦選挙で新政権が成立。
2ヶ月後、内閣はS18法案を可決する。
公共医療政策の改正が目的である。中でも特に議論を呼んだのは、S-14法案だった。
発達障がい児の親が、経済的困窮や、身体的、精神的な危機に陥った場合は、
法的手続きを経ずに養育を放棄し、
施設に入院させる権利を保障したスキャンダラスな法律である。
ダイアン・デュプレの運命は、この法律により、大きく左右されることになる。』

極論すればこれはSF。
この物語を成立させるために、
監督はわざわざありもしない法律を作り出しているのだから…」

---でも、それだからこの映DarkGoldenrod画がダメと言っているわけじゃないよね。
「うん。その逆。
ぼくが思ったのは、
もしこの法律がなかったら、
果たして事態はどうなっていただろう?ということ。
さっきのテロップに戻るけど、
監督も『ダイアン・デュプレの運命は、この法律により、大きく左右されることになる』と言っている。
つまりこれは、
人の運命、それはその環境でいくらでも変わりうるということを意味する」

---あ~あ。
だから小林政広監督の『日本の悲劇』
「そうなんだ。
あの映画も、
父親の個性の強さといったらこの映画の比じゃない。
なにせ息子のために自死を選び取るんだから。
そして監督は、それを決して“立派な行為”とは言っていない。
それはタイトルですでに明らか。
“日本”の“悲劇”」

---ニャんか、
話が飛んじゃっていない?
「ごめんごめん。
もちろんこの映画の魅力はそこだけで語れるわけじゃない。
正方形サイズの画面での世界の切り取り方。
そして何よりも主演ふたりの
役が乗り移ったかのような熱演。
とりわけアンヌ・ドルヴァル。
ラストで彼女が見せる嗚咽をこらえたその顔は、
『サンダカン八番娼館・望郷』田中絹代の慟哭に匹敵。
ぼくの中にいつまでも焼き付いて離れないこと間違いないね」




フォーンの一言「他のブロガーさんはどういう風に観ているのかニャ」身を乗り出す

※「映像や音楽も含めて、ぼくもそれが知りたい度


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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

2015-06-09 14:51:39 | 新作映画
(原題:Mad Max : Fury Road)


----おっ。いよいよだニャ。
フォーンが知っている限り、
えいが、これなででもっとも興奮していた映画。
Twitterでもいろいろ喋っていたでしょ。
「そうなんだ。
この映画は、これまでここで話してきた作品のどれとも違う。
観る前に、すでに“映画史を塗り替える”といった絶賛評を目にしていて、
はて、どこを指して言っているのかなと、
興味津々で臨んだわけ」

----で、それは裏切られなかったってことだニャ。
「うん。
ただ、ぼくが思うにそれはなにも“斬新”というわけじゃない。
むしろ“映画の原点”に立ち戻ったということなんだ。
この映画を前にして、
映画論を語ることがいかに虚しいか…」

----どういうこと?
「映画は、
よく知られているように
1895年12月28日、パリのグラン・カフェで、
リュミエール兄弟がそ人々に有料公開したことに始まる。
翌年に公開された『ラ・シオタ駅への列車の到着』では、
カメラに向かってくる汽車を見て観客が大騒ぎしたという。
つまり、映画は生まれたときから
“スペクタクル性”をその特徴の一つとしていたわけだ。
もちろん、その後、
映画はさまざまな理論の元にアカデミックに発展していく。
でも、ぼくは映画の醍醐味、
その原点はこの瞬きする間もない映像の引力にあると思う」

----で、この映画は
それを持っていたということだニャ。
「そうだね。
そのためには何が必要だと思う?」

----う~ん。
観ている間、余計なことを考えないでいいってことかニャ。
そうか、分かった。
ストーリーだ。
これ、絶対に難しくない方がいい。
「そう。
この映画は、一言で言えば、
“脱走”と“追撃”の前半、
“反撃”と“復讐”の後半
に分かれる。
そのシンプルな物語を
赤茶けた砂漠の中、
轟音とともに繰り広げる。
そこに目を楽しませる要素として
敵の一団の奇抜な衣装、メイク、
さらにはロッカー野郎といった
直接のバトルには関係ない“盛り上げ要員”まで用意している」

---“盛り上げ要員”?
よく分かんないけど、まあいいか。
「これらの要素って
一見、劇画チック。
でも劇画じゃ音は出ないからね。
これもまた映画ならでは…。
さらにはアレハンドロ・ホドロフスキー映画ばりの<異形の要素>までも備えている。
まあ、これは実際に観てもらった方がいいだろうね。
さて、こうしてお膳立てがそろうと、
いかにして“誰も観たことがないアクション”を作ればいいか?
監督の集中はそちらへと注がれることになる。
それは車のデザイン、機能はもちろんのこと、
さらにはバトルの背景となる<大自然>にまで及んでくる。
と、こうして出来上がったのが
ジョージ・ミラーの“完全無欠”カーアクション映画。
まあ、ぼくが何万人集まって喋っても、
この映画の魅力の前にはかなうはずもない。
とにかくこれはネタバレなんて関係のない映画。
(小さな声で付け足せば)
この映画、日本語吹き替えが問題になっているけど、
よく、その役を引き受けたなと…。
恐れ多くて、とてもじゃないけど手が出ないというのが普通だと思うよ」




フォーンの一言「これは、フォーンも観たいのニャ」身を乗り出す

※「この後にアクション映画を作る人は大変だ度。いわばアクションの『2001年宇宙の旅』






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『フレンチアルプスで起きたこと』

2015-06-04 19:41:06 | 新作映画
(原題:Turist)



「しかし、後味の悪い映画だったな。
よく言う、鉛でも飲み込んだような気分。
これ、多くの、とりわけ男性にはたまらないんじゃないかな」

----(笑)じゃあ、なんでそんな映画、
紹介するのよ?
「まあ、
逆に言えば、それだけ喋りやすいからかな。
毒がある分、他の映画との差異が際立っている」

----確かに、この映画の話ってよく聞くよね。
アルプスにスキー旅行に行った家族が雪崩に遭う。
ところが、父親は自分だけさっと逃げてしまう。
一方の母親は、娘と息子をかばってその場に。
幸いにして雪崩は彼らの直前で止まり、
父親も戻ってくるものの、
いざというときに家族を置いて逃げたことから
すっかり権威を失って…。
「よく知っているね。
そのとおり。
いまフォーンも喋ったように、
この話は簡単に語れちゃう。
じゃあ、その後がどうなるか?
ここがやはり興味を引くところ。
果たして、父親は
その権威を取り戻せるのか?否か?」

----どうニャの?
「その前に、
ここで今回の行為の何が問題なのかを整理しよう。
もちろん最大の問題は、
父親がすべてを放り出して自分だけ助かろうとしたこと。
これは、彼としては当然認めたくない。
しかし、この映画はさらなる次の段階をも描く。
戻ってきてから何事もなかったかのようにふるまう夫。
妻にはそれが解せない。
あれだけのことをやっているのに…。
そこで自分たちは同じ経験をしたんだよねと夫に確認する。
ところが夫はここでさらに逃げる。
いや、そうじゃない。
僕の記憶は違うと…。
しかし、携帯の動画にそのときのことが残っており、
夫は逆に窮地に立たされる」

----ということは以後、
この映画は夫婦の会話劇になるのかニャ?
「いやいや、そこに陥らないように、
いくつかの工夫がしてある。
このゲレンデには、
アバンチュールを求めて
ひとりで遊びに来ている妻の友達がいる。
そんな彼女に、その行為=不倫の是非を問い詰める妻。
そのことによってこの妻の夫婦観、家族観が明らかになっていく。
いわゆる一般に言われるところのノーマルなモラルの持ち主ってこと。
さらに、ふたりの共通の知人カップルもゲレンデへ。
そのカップルに対して、
自分たち家族が雪崩に遭ったことを話す妻」

---それは、夫としては立つ瀬ないニャあ。
知られたくないことニャのに…。
「だよね。
このカップルというのが
若い女性と妻と別れて暮らす年上の男。
急に相談された二人はあたふた。
この暗い雰囲気を何とかしなくては…と、
男は夫婦に夫をかばうアドバイスをしたものの逆効果に。
あなたも同じタイプいね…と、
こちらの関係もヤバく…。
まあ、そのような広がりを見せるため、
このスウェーデン映画、
重苦しいながらも目を離すことはできなかったね。
しかしなあ、これが日本だったらどうなるか…と、
一寸考えちゃったね」

---そう?
この問題に、洋の東西もないよ。
「いや、岩手には“津波てんでこ”という教えがある。
これは津波に遭ったら、
家族のことはさておき、
めいめいに逃げろ、というもの。
もちろん、津波と雪崩は違うけど、
このくらいの覚悟をもって雪山に臨まないと、
ちょっとこれはヤバいかな…なんてそんなことが頭によぎったわけだ」

---その例を出すくらいだから、
えいも、これはきっとひとりで逃げるな。
「あらら手厳しい」
---それにしても
オチが読めないニャあ。
この家族の関係は修復できるの?
「それがね。
この後、一山ふた山あるんだ。
ラストは、
まあ、監督としては公平さを期したんだろうけど、
少し無理あるかな。
あっ、あと見どころは子供の演技。
直接、父親に何か言うわけでもなく、
じっと押し黙って
“別に”と、無言の抗議。
ただただ、信じられなかったんだろうね、父親の行為が…」

---分かる。
それは、カノンが来たときのパンセの態度と同じだよ。
もう、悲しさを通り越していたんだ。
「mmmmm……」



フォーンの一言「この主人公、もう子供みたいに泣き出すらしいのニャ」身を乗り出す

※「うん。兵庫の号泣議員を思い出した度



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