ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ワン・デイ 23年のラブストーリー』

2012-05-31 00:16:42 | 新作映画
(原題:One Day)



「この映画、
原作がそうなっているってことだろうけど、
その発想がまずユニーク」

----「23年。23回の7月15日。」という、あれ?
「そう。
23年前の7月15日、
主人公ふたりの出会いから現在までを、
毎年、その一日(ワン・デイ)に絞って描いていくんだ」

----へぇ~っ。
パラパラ漫画みたいな感じだね。
「それは…(汗)。
髪型や服装などのファッション、
そして街の風景など、
観ている分には楽しいけど、
作る方は、かなり神経使ったと思うよ。
物語自体は、エマ(アン・ハサウェイ)とデクスター(ジム・スタージェス)、
ふたりの微妙な関係を追う、
ほんとうに、ただそれだけのことなんだけど、
でも、この“それだけのこと”がオモシロくって、
世界中のカップルそれぞれの“ワン・デイ”を基に映画を作ることだって
不可能じゃないという気になってくる」

----でも、それには
ある程度のドラマがなくっちゃ…。
「う~ん。
ある程度はね…。
彼らの場合、23年前に同じベッドで一夜を過ごすものの、
男と女の関係にまでは至らず、
そこから“友情”という形で、
ふたりの関係が続いていく。
一緒に旅行に行ったり、恋の悩みを相談したり、大ゲンカしたり。
しかし、実を言うとエマの心にはずっとデクスターが住んでいた。
ところが、このデクスターは自由奔放で恋多き男。
TVで音楽バラエティのMCをやるなど、その仕事も華やか。




一方のエマは作家になることを夢見ているものの、
現実はメキシコ料理店で働く毎日。
しかし、
デクスターは次第に時代から取り残され、
ついには番組を下されてしまう。
一方、エマは自分の書いた児童書が出版されるまでに成功を収める。
と、仕事の面だけを書いたけど、
それぞれの恋、そして結婚と、
お互いの私生活の推移も描かれる」

----ニャるほどね。
でも、ここからは聞かない方がよさそう。
結局、この手の映画って、
最後は結ばれるか悲劇で終るかのどっちかだし…。
「そうだね。
でも、ひとつだけ。
ある結末を迎えた後に、
この映画は、一日だけ動きを見せる。
それは、最初に出会った1988年7月15日の翌16日。
さあ、そこで何があったのか!?…
しかし、これはほんとうに切ない映画だったなあ。
こういうのを観ると、
結婚というのはほんとうに<運命>が導くんだなと
思わずにはいられないね」

----ところで、この映画を作った人って?



『17歳の肖像』のロネ・シェルフィグ。
今回も、パリとロンドンの両方が
巧く使い分けられているよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「この映画を観たら、家に帰って奥さんの腕を握りしめたくなるらしいのニャ」ぼくも観たい
※そういう話も確かにある度…

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『キリマンジャロの雪』

2012-05-28 23:58:23 | 新作映画
(原題:Les neiges du Kilimandjaro)


----この映画って、
キリマンジャロは出てこないって、ほんと?
「うん。
キリマンジャロはおろか、
アフリカさえ出てこない」

----じゃあ、どうして
こんなタイトルに?
「それでは
いつものようにストーリーから説明しよう。
舞台は、フランスの港町マルセイユ。
主人公はミシェルとその妻マリ=クレール。
映画は、労働組合の委員長をしているミシェルが
次々と名前を呼ぶシーンから始まる」

----それって、何やってるの?
「人員削減のため
20名の退職者をクジで選んでいるんだ。
ところがここである思いもかけないことが起こる。
委員長の権限でリストラの対象から外せたにもかかわらず、
ミシェルは自分の名前もクジに入れていたのだ。
彼は妻に、自分がリストラにあったことを告げる。
それからしばらくして
ふたりの結婚30周年を祝うパーティーが行われる。
リストラされた社員も含めた多くの仲間が招待されたそのパーティでは、
孫たちの合唱『キリマンジャロの雪』と共に
夫婦の長年の夢だった、
アフリカ・キリマンジャロへの旅が家族から贈られた。
しかし、このサプライズプレゼントは
思わぬ事態を引き起こしてしまう…………」

----ど、どうしたの。
急に話止めちゃって。
「いや、
この映画、これ以上は喋らない方がいいのかなと思って…。
とは言ってもホームページを見ると、
すべて分かっちゃうんだけどね。
数日後、ミシェルとマリ=クレールの家に
二人組の強盗が押し入って
金品と共にこのチケットまで盗まれてしまうんだ。
ある偶然がきっかけで、
犯人は捕まるわけだけど…。
さあ、ここからがまた喋りにくい。
この映画、主軸はそんな“犯人捜し”じゃないとは言え、
やはり、ミステリの要素は観るまで残しておいた方がいいのは言うまでもない。
ところが、そこを喋らないと、
この映画の持つメッセージは伝えきれない」

----でも、このままじゃ
話、終わっちゃうよ。
「そうだね。
犯人は、あの日
クジでリストラにあった男のひとり」

----それっておかしい。逆恨みだよ。
クジという公平な形をとったワケだし、
第一、当のミシェルもリストラに遭っているもの。
「そう思うよね。
ところが、この犯人の言い分はこうだ。
ミシェルは、委員長でもあるし
長年の功績ですでに十分なお金を手にしている。
だが、自分は、生活苦にあえいでいる。
もっと、一人ひとりの事情を汲みこむべきだとね」

----へぇ~っ。
その言い分って今の日本じゃ
まったく受け入れられないよね。
「うん。
加害者に対しては徹底的に厳しく、
すべて自己責任で、個人の事情は後回し…
これが現代の風潮だからね。
それに対して、この映画では、
ミシェルもマリ=クレールも
信じられない、ある“行為”に出る。
その“行為”とは、
自分のことよりも、先に他人を思いやる…
そこから生まれたもの」

----ニャ~るほど。
同じ価値観を持つからこそ、
ふたりの結婚は30年も続いていったわけだニャ。
「うん。
ここに描かれるのは、
こうあるべき、あるいは、こうありたいという人間本来の姿。
でも、その夫婦の“行為”に驚いてしまう自分も
これまた、かなり、今の時代に毒されているんだろうな」

----ふむふむ…。
あれっ。今日は映画の魅力というよりも、
ストーリーやメッセージばかりを聞いている気がする…。
「そうだね。
これって、抑制された演出の映画が多い
クレストインターナショナル配給の作品では
きわめて珍しいこと。
まるでハリウッド映画みたいに、
起承転結は、はっきりしているし、
シャンソン『キリマンジャロの雪』を始め、
音楽や歌もふんだんに使われ、映画にメリハリを持たせている。
物語の背景となる、
家族の繋がりや市井の人々の日常ももきっちりと描き分けているし、
個人的には、とても好ましい映画だったね」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「リストラ後、ミシェルはパーゴラ作りに精を出しているらしいのニャ」気持ちいいニャ

※このパーゴラ、“東屋”と訳されていた。ガゼボに近いけ度…

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『君への誓い』

2012-05-27 23:21:06 | 新作映画

(原題:The Vow)


----これって、先週の金曜日に観に行った
ラブストーリー2本のうちの一本だよね。
まず、こっちから…にしたのはなぜ?
「そうだね。
この物語って、
実話がベースになっているんだけど、
それだけに
もし自分の身に降りかかったら?って、
ちょっと、ゾクッとさせる重みがある」

----へぇ~っ。どういう内容ニャの?
「では簡単に。
と言っても、HPからの抜粋だけど…。
親しい友人たちに囲まれ、結婚式を挙げたレオとペイジ。
ところが幸せな新婚生活も束の間、交通事故でペイジは記憶を失う。
レオと出会ってからの数年間がスッポリ空白となり、
夫であるレオは彼女にとって見知らぬ人。
彼女の記憶が戻らないと悟ったレオは、
出会いからやり直す決心をし、
彼女に恋のアプローチを開始する」

----うわあ、ヘビーな話だニャあ。
「でしょ。
おそらく、ここからは映画用の脚色と思うんだけど、
そこに、レオと出会う前にペイジが付き合っていた元カレが現れ、
レオは気が気でなくなる。
一方、結婚を機に没交渉となっていた
ペイジの両親も現われ。
彼女を家に連れ帰ろうとする」

----なぜ、両親との関係が途絶えていたの?
「映画は、
その<謎>も隠し味として進めていく。
つまり、いまフォーンが抱いたような疑問が
その原因となった出来事も含めて
観ているうちに、一つひとつ明らかにされてゆくんだ。
というわけでここでは、
その<謎>についてはあえて語らずに、
そのような<事件>があったということにとどめておこう。
さて、ここが<恋>だなと思うのは、
ペイジと元カレとの別れの原因。
そこはいまひとつはっきりしない…というより、
単にレオという運命の恋人の出現により、
ペイジの気持ちがそっちに向いただけ。
特別に元カレが悪いわけではない。
しかし(言い方は悪いけど)
彼女が記憶喪失となったそのチャンスを
両親も元カレも生かさないはずはなく、
かつての出来事、ペイジが彼らから離れていったこと、
それ自体なかったものとして
彼女に接していくわけだ」

----ふうむ。難しい問題だニャあ。
「忘れたい過去」っていう言葉あるけど、
ほんとうに消えてしまったワケだものね、
彼女の頭の中から…。
「そういうことだね。
さて、さっきもちょっと話したけど、
レオは最初こそ、
ペイジの記憶を元に戻そう必死の努力を続けるわけだけど、
途中から、
ふたりの恋を最初から始めようとすることへと方針を変えていくんだ。
果たして二度目の恋は成り立つのか?
べたべたのラブストーリーのようでいて、
これはなかなか、複雑で興味深いケース。
レオを演じるのはチャニング・テイタム
ペイジにはレイチェル・マクアダムス
それぞれ『親愛なるきみへ』、『きみに読む物語』と、
ニコラス・スパークスの原作の映画化でブレイク。
今や、このニコラス・スパークス、
映画界の金の卵を産む鶏みたいなものかもね」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「もう一本のラブスートーリー
『一枚のめぐり逢い』
もニコラス・スパークスなのニャ」身を乗り出す
※実話の中では、まだ、彼女の記憶は戻ってないらしい度※お母さん役ジェシカ・ラング、懐かし~い。

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『ミッシングID』

2012-05-26 00:14:58 | 新作映画
(原題:Abduction)



----“ミッシングID”…、どこかで聞いたようなタイトルだニャ。
IDが消失するってどういうこと?
「そうか。
じゃあ、簡単にストーリーから話そう。
主人公は高校生ネイサン(テイラー・ロートナー)。
ある日彼は、近所に住む幼なじみのカレン(リリー・コリンズ)と、
アメリカの児童誘拐事件に関してのリサーチを始める。
そのとき、偶然見ていたインターネットの誘拐被害者児童一覧のサイトで
彼は信じられないモノを発見する。
なんとそれは、自分の幼いころと瓜二つの写真。
それは自分ではないか?
疑問を母親(マリー・ベロ)にぶつけるネイサン。
ところがネイサンがその真相を聞く間もなく、
母、そして父(ジェイソン・アイザック)までが
何者かに殺されてしまう。
ネイサンとその場にいたカレンは、ただ逃げるしかない。
そんなふたりに、CIAを名乗るバートン(アルフレッド・モリナ)を始め、
さまざまな連中が接触を試みてくる。
果たしてことの真相は?」

----どこかで聞いたような話だニャ。
「自分の身に覚えのないところで
事件に巻き込まれ追われていくというのは、
ヒッチコックが作り上げたサスペンスの一パターン
伝統だからね。
これを若い男女に持ってくるのも最近の流行り。
『イーグル・アイ』などがその好例だ。
ただ、この映画では、
主人公の父と母、
銃撃という非日常にもとっさに対応するふたりの身のこなしから、
これはただ事じゃないなというのを
早くから匂わせる。
もともと、ネイサンはどこのだれなのか?
そして、この父と母は何者なのか?
ことの発端を明らかにしないこの方法によって、
観る側は、ネイサンに次々と接触してくる人たちの
誰の言うことを信じていいのか分からなくなる。
サスペンスの持っていき方としては、これは巧い方法」

----でも、こういう普通の高校生が
サスペンスに巻き込まれてプロ相手に戦えるという、
それだけで嘘っぽく感じちゃうニャあ。
「ぼくは、
それはそれでいいと思うんだけど、
でもこの映画は、そこも一応、筋が通してある。
こういう事態に備えて
父はネイサンの体を鍛えていたんだ。
一方で、彼はベネット医師((シガーニー・ウィーバー)の元にもカウンセリングに通っている。
そしてそこにもまた、ある理由があることになっている。
そういう意味じゃあ、そつがなさすぎ。
それらがかえって、
この映画から、自由さ、破天荒さを奪っている気がしないでもなかったね」




                    (byえいwithフォーン)



フォーンの一言「主演は
『トワイライト』
シリーズの狼男なのニャ」もう寝る

※さすがの身のこなしだ度

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画像はドイツ・オフィシャル・ダウンロード・サイトより。

『かぞくのくに』

2012-05-24 12:03:56 | 新作映画
----“かぞくのくに”って、どういうこと?
他の家族と自分は国籍が違うってワケ?
「そうだね。
この映画は、
25年も遠く離れて暮らしていた
長男ソンホ(井浦新)と家族のわずかな期間の再会の物語なんだ」

----どうして離れていたの?
「1969年12月から1984年まで、
数度の中断を含みながら
20数年間にわたって北朝鮮への集団移住が行なわれたんだ。
当時、北朝鮮は“地上の楽園”と呼ばれ、
日本社会における民族差別や貧困に苦しんでいた9万人以上の
在日コリアンが北朝鮮に渡った。
この話は映画『パッチギ!』にも少し出てくるけどね。
実はその多くは“南”の出身者で、
中にはその妻や子供など日本国籍を持つ者も多く、
このことは、今も大きな尾を引いている」

----だよね。北朝鮮って、
フォーンから見てもとんでもない国だもの。
でも、その長男は一時帰国ができたの?
「それはね。
脳腫瘍に冒され、日本で手術という名目。
中国ルートでひっそりと帰ってくるんだけど、
観ている方は、
えっ、そんなことで帰してもらえるの?
と、まずそこから疑問を感じてしまう。
今の北朝鮮の状況を伝え知っているだけにね。
案の定、ソンホの顔は25年ぶりの再会なのに暗く、
言葉も少なめ。
当時、日本に留まった旧友とのミニ同窓会でも
重い空気が支配する。
めったやたらなことは口にできないと言うのが
体中から滲み出ているんだ。
このARATA改め井深新の演技は特筆すべきだね。
で、その彼には、北からの見張りヤンが付いている。
演じているのは『息もできない』の監督・主演のヤン・イクチュン
この存在感が圧倒的で
映画の主軸は、このふたりが醸し出す空気に支配されている。
ストーリー自体も、これ以上なく過酷で、
ソンホの真の目的が妹リエ(安藤サクラ)に対して明らかにされるシーンや、
その彼の行為を咎める同胞協会の幹部でもある父(津嘉山正種)に、
これまでの彼の思いを爆発させるシーンなどでは、
静かだった画面が一気に泡立つ。
ただ、それも、前提として
家族の再会にもかかわらず、
どこか落ち着かないと言うその空気を醸しだした
監督ヤン・ヨンヒの演出力と、
それに応えた井浦新、ヤン・イクチュンの演技の力が大きいと思う。
実は、この女性監督ヤン・ヨンヒの兄3人も、
北朝鮮に渡ったまま戻ることが許されてないんだ」

----実話が基になっているんだ…。
「そう。
ネタバレになるからあまりに言えないけど、
この帰国は、当初3ヶ月の予定だったのに、
急に切り上げられる。
そのとき、ソンホが言う言葉が辛い。
『こういうの、ほんと、よくあるんだよね』。
続けて彼は、考えていたら頭がおかしくなるから思考停止することにした。
そうすると楽だぞと…。
これって、なんだか、昨今のわが国にも当てはまっているような気が…。
いつしか、個よりも全体が上に来て、
思ったことも言えず、
黙りこくってしまうような世界になってきている。
こんな個人ブログでさえも、
ちょっと体制批判めいたこともあったしね、
罵倒されたこともあったしね」

----「黙ってろ」ということだね。
じゃあ、今回もヤバいかも…。
「まったく。
この話って、北朝鮮に限った話じゃないなと、
ぼくは、そう思ったね」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「
『白いブランコ』

が効いているのニャ」身を乗り出す
※あと、スーツケースもだ度(一部だけど…)

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『幸せへのキセキ』

2012-05-22 23:24:50 | 新作映画
(原題:We Bought a Zoo)

※注:この映画の「キー」についても喋っています。
少し、見どころのネタバレになっていますので、
鑑賞ご予定の方は、それから読まれた方がいいかもしれません。




----最近、この“幸せ”をタイトルに持ってくる映画って多いよね。
「うん。
観る前までは少し安直な気もしたけど、
これはこれでいいんだろうな」

----でも、どうして“キセキ”って
わざわざカタカナが使われているの?
「ん。これは
よくあることで、
おそらく“奇跡”にするか“軌跡”にするか迷って、
結局ダブルミーニングということで、
これにという形に落ち着いたんじゃないかな」

----それにしても原題の「We Bought a Zoo」とは、あまりに違う。
“動物園を買う”って?
「実を言うと
この映画のストーリーは簡単。
オフィシャルに載っている次の言葉で要約が出来ちゃう。
『最愛の人を亡くし、悲しみのどん底にあった主人公が
廃園寸前の動物園の再生を通じて自らの再生も果たしていく』。
で、これにもう少し補足すると…次のように。
主人公はコラムニストのベンジャミン(マット・デイモン)。
半年前に妻キャサリンをなくした彼は、
悲しみをいやす間もなく子育てに追われる日々を送っている。
息子のディランは、反抗期に加え、
母を失った寂しさから非行に走るようになっていた。
天真爛漫な娘のロージーの笑顔も曇りがち。
そんな中、彼は上司から本意ではないWEBへの執筆をすすめられ嫌気がさし、
衝動的に会社を止めてしまう。
時同じくしてディランが退学処分に。
妻との思い出の多いこの町を離れようとベンジャミンは郊外をめぐり、
ある邸宅を見つける。
しかし、それは2年間閉鎖状態が続いている動物園付きの物件。
とても無理と思った彼だが、
クジャクとはしゃぐロージーの姿を見て、
ここを買い取ろうと決意。
かくして、動物園の新オーナーとなったベンジャミンは、
ケリー(スカーレット・ヨハンソン)ら飼育員たちとともに
動物園再建に乗り出す…」

----あらら。
いくら映画とは言え、
これはありえない話だニャ。
「いや、ところがこれは
実話が基になっている。
妻が亡くなった時期、
あるいは購入しようとした動機など、
若干の違いはあるけどね。
でも、巧いのは、
その実話をここまで
魅せる映画にまとめ上げていること。
とにかく、この映画、そのセリフがいい。
動物園の再建と並ぶ、もう一つの大きな問題。
ベンジャミンと息子の絆の回復――。
歯車がうまく回らない父と子が
いかにして心を通い合わせていくか?」

----う~ん。
どうせ、本音で感情をぶつけあうんでしょう?
よくあるパターンのような気がするけど…。
「確かにそれはそうなんだけど、
その後が少し違う。
ここで父は息子にある提案をするんだ。
『お互いが喜ぶことを言い合おう』と。
これ、実際に使えるなって思ったね。
あと、息子がケリーの従姉妹リリー(エル・ファニング)を
好きだと言うことを知った父が彼に言う『20秒の勇気』。
これは、この映画で最重要な言葉である『Why not?』とともに、
ラストでまた使われる。
ただ、この『Why not?』は予告編では意訳しすぎ。
『約束だから』ではなくそのままの意味でいいと思う。
そう言う意味では
チラシの中の
“ベンジャミンが動物園を買った本当の理由が明かされる、
かつてないラストシーン”というくだりも少し違うような気もするんだけどね」

----あらら。
それにしては、けっこう感動しているようだけど?
「うん。
その内容よりも映画の作りがね。
この違うシチュエーションで使われている『Why not?』が
伏線となって最後で生きてくるオモシロさ。
そして、開園の日の見せ方。
これは途中から『もしや』と思ったら、ほんとうにその通りに。
ここは『フィールド・オブ・ドリームス』

----あらら。それ言いすぎ。
でも、あちらはファンタジーだし…。
「そこ、そこなんだよね。
実は、この『フィールド・オブ・ドリームス』風のシーンの後に、もうひと山が。
そこである信じられない『キセキ』が起こる。
それは昨年公開された日本映画『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』と同じもの。
あの映画の中の、
“見えないはずのモノが見える”『キセキ』を
映画のファンタジーとして受け入れられる人には、
このラストはほんとうにたまんないと思うよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ヨンシーの音楽がまたいいらしいのニャ」身を乗り出す

※監督が『あの頃ペニー・レインと』のキャメロン・クロウだけにね。これは胸にグッとくる度

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『メン・イン・ブラック3』

2012-05-18 23:34:17 | 新作映画
(原題:Men in Black III)



----この映画、10年ぶりの新作ニャんだって。
ひとり増えているみたいだけど…。
今回からペアじゃないってこと?
「う~ん。
これは言っちゃってもいいんだろうな。
フォーンも知っているように、
この映画は“J”(ウィル・スミス)と“K”(トミー・リー・ジョーンズ)のエージェント・コンビのお話。
彼らの任務は、人類にまぎれて地球に潜在するエイリアンの犯罪を取り締まること。
でも、その存在は公にはされていない。
事件の目撃者は、“ニューラライザー”なるガジェットで、
その記憶を跡形もなく消されてしまう。
さて、この“J”は、ベテラン捜査官“K”にスカウトされたというのは、
最初のエピソードで知ってのとおり。
ところが、今回は、なんと
その“K”が実は40年前に死んでいたという事態に発展する」

----どういうこと?
「歴史が変えられたということだね。
そのきっかけとなるのが冒頭のエピソード。
実は、個人的にはこのシーンが
映画全体の中で最もオモシロかったワケだけど…」

----あらら、それって尻すぼみってこと?
「しっ。
でも、それも仕方ないかなと思うんだ。
今回の敵役は片腕の囚人ボリス。
かつて“K”に捕まり、
月面にある刑務所に収容された彼は、
“K”を殺すべく脱獄して過去へ向う。
で、ここを描くにあたって、
監督バリー・ソネンフェルドは、ボリスの凶悪さをすべて見せきる。
ある意味、クライマックスが最初に来ているようなもんなんだ。
さてボリスのもくろみは成功し、
秘密機関“MIB”からは“K”の姿は消え、
とっくに死んだ人となっている。
かくして、“J”は時を超えて
ヒッピーが溢れる1969年へ飛ぶ」

----ちょ、ちょっと待って。
どうして“J”だけ、
彼が昨日までいたことを覚えているの?
「そこはきちんと説明がなされている。
そして、その秘密こそが
この映画のある意味、感動的なエピソード、
“J”の過去へと繋がってゆく」

----えっ、“K”の過去じゃなくて?
「あっ、喋りすぎたかな。
話を変えて、
この映画の見どころの一つは
1969年の風俗。
そこでは、まだ人種差別があり、
“J”と同じエレベーターに乗り合わせた男は、
彼を避けようとする。
また、超高級アメ車を使用貸借した“J”は
パトカーに目を付けられ尋問を受ける。
もうひとつは、アンディ・ウォーホルも出てくる当時のパーティ。
ここでは、声だけだけどヨーコも登場」

----ニャるほどね。
で、さっきの質問に戻るけど、
もうひとりの黒服の男は?
「これは40年前の“K”。
ジョシュ・ブローリンが演じているんだけど、
もう、これがトミー・リー・ジョーンズそっくり。
しかし、若いだけあって動きもキレがいい。
そのため、これまでになく
この映画はフィジカル・アクションが多く登場する。
あとは、今から観ると
レトロとも言えるいくつかの特殊武器が登場するところかな。
ニューラライザーは部屋を占領するほど大きいし、
一輪車のモノサイクルといった奇妙な乗り物も登場。
でも、やはりジェットパックだね。
ショーン・コネリー時代の『007』に出てきたモノをそっくり」

----エイリアンの方は?
「これがグロテスク。特に宇宙魚は
まるでクローネンバーグの『イグジステンズ』に出てきたクリーチャーみたい。
ファミリームービーにしては、
少しやりすぎ感もあったね」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これも高所恐怖症には要注意の映画なのニャ」もう寝る
※時をジャンプするのに、なえか超高層ビルからジャンプだ度

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『崖っぷちの男』

2012-05-16 23:20:44 | 新作映画
(原題:Man on a Ledge)


----この映画、7月公開だよね。
まだお話聞いていないの、他にもいっぱいある気がするけど…。
「うん。
でも、これが急いで喋りたくなるくらいオモシロくってね。
いや、急いでつけ加えれば、
おそらくある部分の人たちには
スゴく不評を買うとは思うんだけど…」

----どういうところが?
「けっこう、穴もあるし、
ツッコミどころも多い。
なぜ、ツッコミが生まれるかと言うと、
それは、それだけ物語のアイデアが
よく言えば斬新、悪く言えば突拍子もない
こういうことなんだけどね」

----タイトルからして
突拍子もない(笑)。
「でも、これは原題そのまま。
プレスによると
『誰かがビルから飛び降りようとしている時、
実際に使われる警察用語』ということのようだ」

----どんなお話ニャの?
「マンハッタンのルーズベルト・ホテル。
そこでひとりの男(サム・ワーシントン)が飛び降りようとする。
あっという間に、下には野次馬の人だかり。
警察も出動して彼を説得しようとする。
ところが、この男、
リディア・マーサー(エリザベス・バンクス)という女刑事を呼べと言う。
彼女は、少し前の任務で失敗を犯し、
若い警官の飛び降り自殺を食い止められなかったことで
心に傷を抱えている交渉人」

----“交渉人”を呼べ…ニャにか思い出すニャあ。
あっ、ズバリ『交渉人』だ。
ケビン・スペイシー、サミュエル・L・ジャクソンの…。
もしかして、この男も交渉人?
「交渉人ではないけど、元NY私刑の警官ニック・キャシディ。
彼は、2年苗に、移送中の時価30億円のダイヤを横領・転売したかどで
シンシン刑務所に服役中。
しかし少し前に、父親の葬式に参列し、
そこから脱獄に成功していた」

----せっかく逃げたのに、
なぜそんな目立つことを?
「自分は無実ということを証明しようとしたんだね。
実は、ここはもう想像つくけど、
彼のこの行動は、あることの時間稼ぎ。
そしてその“あること”とは、
弟ジョーイ(ジェイミー・ベル)とその恋人の“計画”を
目につかないように執り行うための囮的役割…
と、こういうワケだ。
で、ここも想像できると思うけど、
実は、そのダイヤは被害には遭っていない」

----ん?
「実は、持ち主であるダイヤ王イングランダー(エド・ハリス)が
狂言をしていた…
このことを彼らは暴こうとしているワケだ。
かくして、物語は、飛び降りを装いながら無線で弟に命令を出すニックと、
ビルに潜入してダイヤを入手しようとするジョーイたちという
ふたつのサスペンスが同時進行してゆくことになる」

----ニャるほど。
そのためにニックはリディアを味方につけようとしたんだニャ。
「そう。
彼女ならば、自分の真意を理解できるのではないか…とね。
実を言うと、リディアがニックを信頼していく過程の説得性は少し弱いし、
潜入にしても、
これってあまりにも巧くいきすぎだろう?
など、ツッコミ出したらキリがないワケだけど、
この映画は、そういうことを忘れさせる
いい意味での強引さがある。
これは監督が剛腕ということ。
よくできたエンターテイメントというのは、
本来は不自然=ありえないようなことを描き、
でも観ている間には、そうは感じさせないと言うところにあると思う。
いわゆる映画ならではの<嘘>。
ここがこの映画に僕が惚れたところ。
監督のアスガー・レスってドキュメンタリー畑で、
劇映画は初らしいけど、これはいい。
ある、ホテルマンの正体なんて
分かったときには、してやられたって感じ。
まあ、タイトルとは裏腹にハッピーな映画だったね」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「高いところは苦手なのニャ」もう寝る
※サム・ワーシントン、ほんとうにあの高さに立って演技したらしい度(一部だけど…)

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猫ニュー



『外事警察 その男に騙されるな』

2012-05-13 18:51:39 | 新作映画
----今日の映画は、この前話していた『外事警察』だね。
テレビでも放映されて評判がいいようだけど…。
「らしいね。
でも、テレビでこの味あいって出せるのかな?」

----どういうこと?
「この映画の売りの一つは“銀残し”の手法。
これは映画史的には、市川崑監督が『おとうと』で最初に取り入れたと言われている。
現像の際、本来取り除く銀をあえて残すことでコントラストを増し、
黒を締め、彩度を落とすことで引き締まった映像を創りだしているんだ」

----えっ、でもこの映画ってデジタルでしょ?
「そこなんだよね、オモシロいのは。
実はこの映画、ALEXAというフィルムライクな映像を可能にする
フィルムスタイルのデジタルカメラを採用。
なんて、これはぼくも知らずに
あとでプレスを読んで分かったことだけど…。
本来はフィルムで生まれた映像スタイル、
それをあえてデジタルでやることの意味。
このことを考え出すと、夜も寝れなくなる…」

----またまたオーバーな…。
「まあ、そう見えるかもね。
でも、フィルムとカメラというところから生まれた映画。
その中で生みだされた表現を、
あえてデジタルで再現しようとしているワケだから…。
“見てくれは似ていても中身は違う”と言うか…。
テレビでもやはりこれを採用しているのか否か?
なんて、いろいろとね。
でも、ここのところばかりを話していてもしょうがないから
別のことにも触れよう。
物語的にも見どころはけっこうあるし…。
というのも、今回の事件は3.11の震災、
その後の原発事故により立ち入り禁止となった区域にある大学の研究施設から、
核に関する軍事機密データが盗まれたことから始まる。
そしてそれは朝鮮半島の某国(もちろんあの国)の核テロに結びついていくという、
実に大胆なストーリーなんだ」

----確かに大胆だ…。
これまでにも
3.11によって一変した風景をバックにした映画はいくつかあったけど、
これって、いわゆるエンターテイメント大作だものね。
「そういうこと。
いやあ、ここまで踏み切るのはかなり勇気がいったと思う。
復興からはほど遠い瓦礫の跡を映像として目の前に提示されたその時、
こちらが受けるインパクト。
それが、こういう刑事ドラマと結びついちゃうんだから…。
そうそう、言うのが遅くなったけど、
この映画のタイトルにもなっている“外事警察”とは、
国際テロを未然に防ぐための組織。
主人公の住本健司(渡部篤郎)は
任務遂行というか、国益保護のためなら手段を選ばない。
そこも想像していたのと少し違っていて、
(というより副題『その男に騙されるな』に気がつかなかっただけだけど…)
そのためなら、彼はどんな嘘でも付く。
いわゆる、人を騙すことなんてなんとも思っていない」

----良心のかけらもないってこと?
「この映画はそこも観る者自身に問いかける。
人ひとり騙したからって、
国益に適えばそれは良心に従っていることになるのではないか?とね。
さて、次の見どころ、演技について。
今回、この映画でぼくが買っているのは
田中泯、そして真木よう子
田中泯が扮しているのは、日本で最先端の技術を学び、
25年前に祖国へ渡った在日二世のエリート科学者・徐昌義。
彼が住本に『君の言う国益とはなんだ?』と問うシーンの迫力たるや、
もう鳥肌モノ。
真木よう子は借金まみれの過去を持つシングルマザー、果織。
その彼女を救いだす形で結婚したのが奥田正秀、本名・金正秀。
金は果織と結婚することで日本国籍を取得しているんだ」

----これはオモシロいストーリーだニャあ。
「そう。
ほんとうに無駄なく、
物語がラストまで突き進む。
しかも、ここで描かれるテロは
これまでにない理由が狙いとなっている。
自分の命を投げ打つと、こういうことまで考えるのかって感じ。
ただなあ…」

----ただ?
「“ラストまで”と言ったばかりではあるけど、
クライマックスがね。
ここは、核が爆発するかどうかの
タイムリミット・サスペンスになるんだけど、
どうもそこが少し弱い。
アメリカ映画ほど能天気じゃないけど、
緊張感が乏しい気がする。
本来は、核の爆発ってとんでもないこと。
これまで、娯楽映画で核を爆発させたシーンを写した日本映画(実写)がないのも、
広島・長崎を経験した我々が、
その恐怖を知っていればこそ。
折しも3.11以降の原発再稼働をめぐる論争が明らかにしてみせたように、
日本人の核アレルギーは
かつてに比べて、かなり失せてきているのかな…と、
そう思わないでもなかったね」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「脚本は『探偵はBARにいる』 古沢良太 なのニャ」身を乗り出す
※この副題、内容に比べて少し軽すぎる度

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猫ニュー

『臨場 劇場版』

2012-05-10 15:19:59 | 新作映画

----『臨場 劇場版』『外事警察』
最近の東映って、こういうテレビ発の警察モノ多いよね。
「うん。
『相棒』が当たったことから、
その路線を開拓していこうということじゃないかな。
しかし、この2本を観て思ったのは、
警察という機構は、ほんとうに裾野が広いというか
いろんな部署があるんだなってこと。
『臨場』は検屍官・倉石義男(内野聖陽)の物語。
プレスによれば、
“刑事訴訟法に基づき、変死体の状況捜査を行う司法警察員”とある。
この映画では、巧妙に証拠を隠蔽された殺人を、
遺体とその現場に残されたあらゆる事象の中から、
死に隠された

----ちょ、ちょっと…。
想像した通り…って?
「いや、いま言ったことがすべて。
テレビを観ていないから断言はできないけど、
このケースでも、
一件落着で終りそうな<死>を、
彼がそうじゃないだろう?と
組織の枠にとらわれず、追求していく。
そのバリエーションのひとつだね。
テレビシリーズの門外漢のぼくには、
なぜ彼だけ、検屍のときに
前ボタンを締めないラフな服装でいられるのか、
合同捜査の席で好き勝手なことをやっているのか、
あまりよく理解できなかったけど、
まあ、それも<お約束>ということなのかもね。
この映画は、そういう一匹狼の渋さを表に出しているんだろうし…」

----ニャるほど。
そういうことか…。
「あんまり素直に納得されても拍子抜けするけど、
裏(?)テーマ的には、
刑法第三十九条、いわゆる心神喪失時に犯した事件が絡んでくる」

----それってこれまでにもいくつかあったよね。
「うん。
それが詐病ではないのかという問題提起も含めてね。
この映画では、さらにそれを一歩進めて
彼を無実にした精神鑑定人、
そして弁護士のあり方にまで言及している。
と、見どころはこのあたりかな。
そうそう、冒頭の通り魔事件が凄惨。
犯人を演じているのは柄本佑。
『誰も守ってくれない』では弟の柄本時生が似たような役を。
このふたり、少しキャラかぶるよね」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「監督は『探偵はBARにいる』 橋本一なのニャ」身を乗り出す
※原作は『クライマーズ・ハイ』横山秀夫だ度

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『ポテチ』

2012-05-07 22:36:13 | 新作映画
----『ポテチ』
って、
ポテトチップスのことだよね。
どんな映画か想像つかないニャあ。
「そうだね。
タイトルがタイトルだし、
ランニングタイムも68分と短い。
いわゆる小品の部類なんだけど、
その感動は
映画のサイズ(?)とは反比例するように深い。
だけど、この映画に関しては、
あまり情報を入れずに観たほうがいいだろうね」

----そ、それは…
少しくらいは話してよ?
「じゃあ、外郭から。
原作は、宮城・仙台を舞台に物語を紡ぎ続けてきた伊坂幸太郎
その彼の中短編集『フィッシュストーリー』の中の一編『ポテチ』を、
これまでにも多くの伊坂作品を映画化してきた中村義洋が監督。
仙台の街で生まれ育ったふたりの青年の奇妙な運命を描く」

----そのふたりって?
ひとりは、濱田岳が演じているみたいだけど…。
「う~ん。
実は、これ以上を知らない方がこの映画はオモシロいんだ。
ぼくの方として出せる情報というのは、
彼が演じている今村が空き巣の仕事をしていること。
その彼女・若葉を木村文乃
彼の兄貴分・黒澤を大森南朋
そしてボスを中村監督自身が演じていることかな」

----あれっ? 石田えりは?。
「今村の母親役だね。
さて、このことを頭に入れて、
見どころを少し。
(1) どうして若葉のような美人が今村の彼女になったか?
(2) 若葉が買ってきたポテチ。
そのとき彼女が発した言葉で今村が泣いたワケ。
(3) 黒澤が立てた計画とは?
大切な話を若葉にホテルで話すとき、
なぜ、彼はロビーでなく部屋へ向ったか?」

----ちょ、ちょっと謎かけみたいだニャあ。
「そうなんだ。
この伊坂作品の魅力は、
ミステリーというジャンルに属しているワケでもないのに、
話は、謎を孕みながら進んでいくこと。
そして、その謎が解けたとき、
そこには大いなる感動が横たわっているという、
ここに尽きるという気がする。
ぼくは、原作は未読だけど、
おそらく、その事実が分かったとき、
多くの読者は深い感動に包まれたんじゃないかな。
ミステリーとヒューマンの融合。
そういう意味では、浅田次郎の語り口とも似ている。
そしてそれは帰りこぬ時間軸で進んでいく映画にはピッタリの世界。
さっきも言ったようにランニングタイムは短いけど、
感動はギュッと凝縮している、
ほんとうに涙なくしては観られない映画だったね」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「音楽はまたまた斉藤和義なのニャ」身を乗り出す
※ラストには爽やかな笑いが待っている度

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『星の旅人たち』

2012-05-04 23:45:16 | 新作映画
(原題:The Way)


----『星の旅人たち』って、
そのタイトルがいいよね。
「うん。ロマンがあって
それだけで観たくなる」

----実際はどうニャの?
「確かにロマンはロマン。
でも、それは、いわゆる
男と女のロマンスというものじゃない
これは、息子エミリオ・エステベスから
マーティン・シーンへのプレゼント。
この映画の舞台となるサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を歩くことは、
マーティンの長年の夢。
その中で彼の父の故郷ガリシアを目指そうとしたんだね」

----ニャんだか、プライベートな話だニャ。
「うん。ところがそこに、
監督エミリオ・エステヴェスは、
さらに、自分と父の関係を入れていく。
物語の発端はこう。
『世界を見たい』と、
サンティアゴ巡礼の旅に出た息子ダニエル(エミリオ・エステヴェス)。
その彼が、ピレネー山脈で嵐に巻き込まれて死んだとの報が
眼科医トム・エイヴリー(マーティン・シーン)の元に届く。
トムの脳裏によみがえる最後の会話。
―『普通の人はふらっと旅行などできんぞ』
『僕の道に賛成しなくてもいいけど、勝手に判断しないで』
『生き方は違うが、私は今の人生を選んだ』
『人は人生を選べない、生きるだけ』―
フランスとスペインの国境の町を訪ねたトムは、
ダニエルの遺品が詰まったリュックを受け取り、
息子の亡骸とともに帰国するつもりだった。
しかし、土地の警部(チェッキー・カリョ)の
『“道”は自分探しの旅ですから』の一言に、
彼は息子が志半ばで断念せざるを得なかった旅を継ぐ決意をする…
『やり直すために、ふたりで旅立つ。息子と一緒に』」

----ニャるほど。それだけでも感動的な物語になるのは想像できるニャ。
「この映画、
どこがぼくの琴線に触れたかと言うと、
彼を含め、その旅を続ける人々に、
懐かしい“ヒッピー”の香りが漂うところ。
もとより“旅”というもの自体が、
日常のしがらみから離れて
自由に自分でその日程を組むもの。
いわゆる“旅行”とは違うわけで、
“自由”の色合いを帯びるものではあるけどね。
この映画には、
本来ならば全体を覆うはずの息子の“死”よりも、
“解放”感の方が先立つんだ。
これは監督エミリオの資質でもあり、
『ボビー』のときも話したように、
父マーティン・シーンの影響が大きいんだろうね。
まだ、アメリカが希望を持とうとしていた頃の空気に満ち満ちているんだ」

----つまり、これは
マーティン・シーンの影響を受けて育った
息子エミリオならではの映画ということだね。
「うん。
それをそのままスクリーンに焼きつけているんだから、
これはマーティン・シーンにとっても最高のプレゼント。
途中、彼に絡んでくる女性(デボラ・カーラ・アンガー好演!)に対しても、
さして目もくれず、
息子への思いだけを胸にストイックに旅を続けていく。
だからと言って、
その主人公トム・エイヴリーが完全なのかというと、
そういうわけでもなく、
途中で警察沙汰を起こしたりもする。
偏屈、でも真摯。
これは、マーティン・シーンのキャリアの中でも最高の部類になるんじゃないかな。
また、そのトムの脳裏によみがえる息子ダニエルの顔がいい。
翳りのない人懐こい笑顔…。
映画の背景を彩る大自然の表情以上に、
脳裏に焼きつくこと間違いないよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ところで、なぜ“星”なのニャ」小首ニャ

※“コンポステーラ”には「星の平原」の意味があるらしい度

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『ぼくたちのムッシュ・ラザール』

2012-05-02 19:15:14 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。





(原題:Monsieur Lazhar)


----背広の背中に、お魚貼り付けられている。
こういういたずらって懐かしいニャあ。
これって学校が舞台ニャんでしょ?
どこの先生?
「舞台はモントリオールの小学校。
でも、この先生はカナダ人というワケじゃない。
アルジェリアの移民で代用教員なんだ」

----それって、担任の先生のお産かなにかで?
「普通そう考えるよね。
ところがこの映画では、
いきなりショッキングな出来事が起こる。
なんと、シモンという少年が
担任の女教師マルティースが教室で首を吊って死んでいるのを
目撃してしまうんだ」

----それは…。
「そこに現れたのが、
新聞記事を読んだという、このラザール先生。
聞けば19年間の教師経験があるという。
「子供たちの助けになりたい」という彼は、見るからに誠実そう。
校長先生はラザールを新しい担任として受け入れる。
ところが、彼の授業方式は洗練されていなく
授業内容も言い回しの古い文法用語。
生徒からはそのことを指摘されてしまう。
それでも、ラザール先生は
一生懸命に生徒たちを指導していこうとする。
そんな中、やはり先生の死を目撃したアリスは、
そのことが頭から離れようとはしない。
現実を遠ざけようとする学校のやり方に疑問を持つ彼女は、
先生の死を気にしていないフリをして、
わざと悪ふざけするシモンに苛立ちを覚えていた。
そんな中、アリスは
マルティース先生の死をどう感じているかを書いた作文を
みんなの前で発表。
ラザールは、校長にこの作文を
全校児童に配布することを進言するが…」

----ふうむ。子どもたちの心にまだ傷が残っているということだね。
で、先生は、それをどうにかしようと…。
「そう。
でも、周りからは
『しつけではなく、勉強を教えて』の声が出てくる…。
と、ここまで書けば、
これは日本の得意の『金八先生』のようにも見える。
最近でもテレビで
『ブラックボード~時代と戦った教師たち~』が放映された。
実は、この死の裏に隠されたエピソードというのが
その第三夜『夢』とかぶさるところがあるんだ。
ちょっとネタバレになるけどね。
この中の松下奈緒と神木隆之介の関係…。
ただ、こちらの方が小学生でもっと幼い分、
同じ行為でも生徒に違う反応が生まれる」

----う~ん。何言ってんのか…?
「やはり、分からないか…。
でも、ここの部分は
本作の核になるし、あまり言わない方がいいかも。
というのも、この映画にはいくつもの<秘密>が忍ばされていて、
それらが感動のクライマックスへと
同じベクトルで向かっていくんだ。
なかでも現実を直視しようとするアリスの名指しにより、
シモンの逃げ場がなくなり、
ついに自責の念が堰を切って溢れだすシーンは圧巻。
子役という言葉が似つかわしくない、ふたりの熱演。
ある<事実>が明らかになるこのクライマックスをステップにして、
次は、ラザール先生の<秘密>が明らかになる。
それによって先生は教室を去らなければならなくなるワケだけど、
ここで行なう最後の授業が憎い。
自分が書いた詩の間違いを生徒たちに答えさせる形で、
彼が伝えたいことをみんなの心に沁み込ませていく。
それを受けての
ラストカットの奇跡的なほどの美しさ。
シモンと先生のそれをも伏線に持つこのシーンは
それこそ涙なくしては観られない。
全体的に地味な映画ではあるけど、
このラストカットだけでも
この映画は十分に意味を持つと思うよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「エンドクレジットの音楽もいいらしいのニャ」悲しい


オフィシャルのトレーラーがおススメだ度。

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画像はオフィシャル・ギャラリーより。