ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『恋人たち』(橋口亮輔監督)

2015-10-27 10:29:33 | 新作映画

密度の濃い映画は意識を覚醒させ、そして陶酔させる。
橋口亮輔監督『恋人たち』。
それまでの眠気は吹き飛び、その余韻を失いたくないがため、
次に予定していた一本を取り止めた


----『恋人たち』
これって昔のフランス映画にあったような…。
ブラームスの音楽が印象的で。
「フォーン、さすがよく知っているね。
あれはルイ・マル監督の映画。
でもこちらは日本映画。
橋口亮輔監督の作品なんだ」

----橋口監督…。
よく聞く名前だけど、
あまり作っていないよね。
「そうだね。
でもその一本一本がすべて公開前から注目を集め、
しかもそれに答えた高い評価を得ているんだ」

----ふうん。
どういうところが他とは違うのかニャ。
「うん。
ぼくが“映画ならではの魅力”と考えるものの多くが
その中に詰まっているんだ。
今回も感動のあまり、
観た直後に次々とツイート連投。
それに沿って話してみよう。

橋口亮輔監督『恋人たち』。
ここに出てくる3人の男女は、身の周りに直接にはいないかもしれない。
だが、いるに違いないと思わせるだけの存在のリアリティがある。
そしてそれを確信させるのが、彼ら彼女らの背後に広がる生身の人たちだ。
そんな中のひとりに自分もいる。


----これは分かるような気もするニャ。
「群像ドラマも含めて
映画というのは、
通常は、主人公に物語がフォーカスされていく。
それはもちろん正しいわけだけど、
そちらに気がとられすぎるあまり、
他の人の描き方がなおざりになることが多い。
それを如実に表しているのが学園ドラマ。
学校での昼休み。
そこでは主人公と友だち、
そして彼ら彼女らが意識する異性ばかりが深刻そうに
恋の話ををしている。
周りにも多くの人がいるのに彼らはいつもガヤガヤ。
まさにエキストラとしての役割。
彼ら彼女らにも、
それぞれの悩み、人生があるんだろうな?
と、そういうことが気になってしょうがないんだ。
ところがこの映画では、
3人の主人公の周りに出てくる人々の生活、生きざまが
きちんと描かれている」

---3人が主人公ニャの?
「そう。
自分に興味を持ってくれない夫と気が合わない義母と生活している瞳子(成嶋瞳子)、
同性愛者で完璧主義の弁護士・四ノ宮(池田良)、
そして妻を通り魔に殺害されたアツシ(篠原篤)。
その中のひとりアツシの例を出すと…。
ある女性社員が彼に声をかける、
一見なんでもないようなシーンがある。
会社でひとり輪の中に入っていけないアツシに対し、
彼女は自分の母親との“普段の生活”を話し、家に誘う。
ここは彼女の優しさだけではなく、
その背後の広がり、奥行き、
この女性社員の人生までを感じさせてくれるんだ」

---ニャるほど。
脇で終わりそうな人にまで
目が行き届いているということだニャ。
「そういうこと。
さて、次にツイートしたのがこれ。

橋口亮輔監督『恋人たち』には誰もが息を飲む瞬間がある。
クライマックス、篠原篤演じる篠塚アツシの独白をアップで捕らえた長いワンショット。
その高揚のピークで手持ちのキャメラがさらにぐいっと彼ににじり寄るのだ。
あれは監督の指示なのか? それとも気魄が乗り移ったキャメラマン独自の判断か?


---う~ん。
それはおかしいニャ。
監督の権限を乗り越えてキャメラマンが独自に判断するわけはニャいよ。
「そうなんだ。
この件については
嬉しいことにオフィシャルからこんなコメントを頂いた。
~『恋人たち』への素晴らしいツイートの数々ありがとうございます!
あのシーンは橋口監督の明確な指示によるものです。
役者の演技を見ながら「まさにいま!」のタイミングで
撮影監督に合図をして寄らせたのだとか。
カメラと共にアツシの心に寄る名シーンだと思います!~


で、ぼくはこういうお返事をさせていただいた。

~ありがとうございます。
篠原さんの気魄に飲まれ、それを見つめるキャメラと自分が一体化。
キャメラも一緒に引き寄せられた…そんな錯覚を抱いてしまいました(汗)。
監督の指示タイミング、素晴らしいです。
やはり観客と一体化。帰宅後、予告で感動を追体験しています。~

---ニャるほど。
「つまり、ぼくにとって
映画とはストーリーをそのままなぞるモノではないということ。
そして映像のマジックによってある瞬間、
観る者を、感情の沸点にまで持って行ってくれること。
これに尽きるんだ。
だけどそれは、そこに至るまでの精緻な描き方があるからこそ成り立つもの。
ただ。やみくもに主人公の姿を追っていては
その感情の沸点という祝祭を味わうことはできない。

で、ぼくは一連のツイートの最後をこう締めたんだ。

『バクマン。』のような時代の最先端を走る映像で作られた映画もちろん嫌いじゃない。
しかし橋口亮輔監督『恋人たち』には、
この時代に継承された日本映画の誇るべき伝統を見ることができる。
そこでは、スクリーンの隅々まで、
絵空事ではない血の通った人間が、明日を掴むため、息をしているのだ。

---いやあ、えいの興奮が伝わってくるニャ。


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『WATCHA(ウォッチャ)』(映画、ドラマ、アニメのレコメンドアプリ)

2015-10-20 15:01:10 | 映画


----あれれっ?
『WATCHA(ウォッチャ)』
そんな映画、聞いたことないニャあ。
「うん。
ちょっと今日は、
新しいアプリの紹介をしようかと…」

----アプリって、
あのスマホなんかでよく聞くヤツ?
えいは、Twitterばかり…。
そのおかげでブログの方に来てくれなくなったし。
フォーンとしてはあまり嬉しい話にはなりそうにないニャ。
「ごめんごめん。
でも確かに
スマホを使うようになってから
パソコンに向かう時間が少なくなったのも事実だね。
一日のスケジュール、電車の乗り換え、天気予報。
カメラにナビにラジオ。さらにはネットプリントと、
もう、生活のほとんどがカバ-できちゃう」

----でしょ?
それに加えて、
また新しいアプリ…。
いったいどんなのが出てきたワケ?
「これはね。
海外では160万人以上にも上る人たちが利用している
WATCHAというアプリ。
その構成はこんな感じ。
自分が観た作品のレビューを★による評価付きで書いてポスト。
それが集積されてデータベースとなり、
『(人気=高評価)ランキング』、
あるいは『(ジャンル別)おすすめ』として紹介される」




----そうか、
これから映画を観ようという人の参考になるわけだニャ。
「そういうこと。
その『ジャンル』も
さまざまなタグが…。
たとえば『母』『患者』『リング』『森』『伝説』などなど…」

---ニャるほど。
サスペンスだのラブだのと言うのとは
ちょっと違うってことだニャ。
「うん。
サスペンスひとつとっても
『警官』『刑事』『強盗』『捜査』、あるいは『復讐』と、実に細かい。
自分が観た映画をレビューして投稿するとき、
どこに入れるのか?
それを考えるのも一興。
ためしに『神』というタグを見てみたら
『タイタンの戦い』や『エクソダスー神と王―』と一緒に
『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』は『エミリー・ローズ』なんかがあったりもする。



でも、ぼくがこのアプリで最も楽しめたのは
実は別のところにあるんだ。
それは最初の登録の時にウォーミングアップとして行う『評価』」

---『評価』?
「うん。
『さあ、まずは試してみよう』…とばかりに、。
いろんな映画がビジュアル付きで出てくるんだ。
で、その中の見た作品に自分なりの★評価をつけていくワケ」




---あらら、★つけるの嫌っていたじゃニャい?
「そうだね。
映画と映画との間に優劣をつけて、
それを公表するというのが
これまであまり納得いかなかったんだ。
でも、
自分の頭の中で遊ぶには、
これはけっこう楽しいものだということがよく分かった。
あまり肩ひじ張らずに、
気分でサクサクっと付けていく。
初めにやったとき、
もうこれが止まらなくて気が付くと
すぐ三ケタに」

---あ、そうか。
どの作品が出てくるのか分からないから
余計に楽しいんだニャ。
うん。フォーンもやってみようかニャ。

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猫ニュー

『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲<ラプソディ>』

2015-10-15 22:29:17 | 新作映画



(原題:Feher isten)

『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲〈ラプソディ〉』。
雑種犬には課税という法律が制定された世界。
虐げられた犬たちが、
裏社会の闘犬に仕立てられた一匹の犬に率いられて蜂起する。
「アートは批評的なスタンスを決して手放してはならない」。
コーネル監督の言とあわせれば、その寓意は明らかだ。

『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲〈ラプソディ〉』。
無人のブダペストを疾走する250匹もの犬。追われる少女。
どうなることかと息を飲んだが、なるほど納得の伏線の回収。
閑話休題。相手とコンタクトを取るには、同じ高さの視線は基本。
これは犬や猫だけのことではない。これぞ寓話のお手本だ。


       (以上Twitter。…もっと詳しくは↓)

----“少女と犬”…これって、どんな映画ニャの?
またまた泣かせる作品?
「うん。
ぼくも最初はそう思っていたんだけどね。
シノプシスを読んだら、どうも違うらしい。
犬たちが人間に対して立ち上がる。
いわゆる“復讐”の映画ということが分かってきて…。
これは期待できるぞ…と」

----それって『猿の惑星』を思い出すニャ。
「そう。
ぼくもそれを思い出して…。
あの映画では、
人間と同様の能力を持った一匹の猿が現れてリーダーになり、
やがては他の犬を率いて立ち上がる。
リブート版『猿の惑星・創世記<ジェネシス>』では、
そのきっかけとなった<事件>をきっちり描いていた。
そうなると、その後に生まれたこの映画では、
そこをどう見せてくれるのかと、
それも興味のひとつ」

----そうか。
この時代、
急に犬が凶暴化しちゃった…ではすまないわけだニャ?
「76年の『ドッグ』なんかではまだそうだったけどね。
さてこの映画に戻すと…これはもう冒頭から度胆を抜かれる。
人っ子ひとりいない無人のブダペストの街。
そこに自転車に乗ったひとりの少女が現れる。
その背後からうなり声をあげて彼女を追う犬の大群。
あれっ?これは思っていたのと違うぞと…。
ぼくは
少女は犬と一緒に人間社会に<復讐>をするのだとばかり思っていたからね」

----なんでそんなことになったの?
「まあまあ待って。
これ、どうなるの?
観る者にそう思わせたらつかみはOK。映画は成功。
実はこの映画の中では、あの
『Mommy/マミー』と同じく、
架空の法律が制定されている。
それは<雑種>の犬には税が課せられるというもの」

----それはひどいニャあ。
フォーンも雑種…。
とんでもない<差別>だ。
「そこ、そこなんだよ。
この映画の作りは“寓話”。
つまり、これは人間社会のメタファになっているんだ。
<差別>された者たちのレジスタンス。
それこそが監督がこの映画で描こうとしたものなんだ。
雑種の反対は純血。
そこを重視する人たちが排斥主義に陥りやすいのは、
いまのこの国を見ても明らか」

----ふむふむ。
国粋主義ってやつだニャ。
「そう。
そしてそんな彼らが選ばれた民、
エリートとして権力を握ると、どうなるか…。
この映画では、
少女リリから無理やり引き離され、
多くの車が行きかう危険な街に放り出されたハーゲンが、
欲にまみれた人間たちの間で売り買いされ、
ついには裏社会の闘犬として鍛えられていく。
その過酷な訓練ときたら…
ここは思わず目をそむけたくなったね」

----ふうむ。
いよいよこれは
最後、どうやって解決するのかが見ものだニャ。
「でしょ。
ぼくもこれはどうやっても無理と、
そう思ったものね。
ところがこのラストシーンときたら…。
コミュニケーションにおける基本を思い出させてくれるばかりじゃなく、
思わず膝を打つ
見事な伏線の回収を見せてくれる。
11月、絶対におすすめの一本だね」






フォーンの一言「これは騙された思って観てみるのニャ」身を乗り出す

「犬や猫と暮らしている人ならだれもが納得のラストだ度

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