ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

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『暗いところで待ち合わせ』

2006-09-30 23:53:28 | 新作映画
----これって乙一の原作の映画だよね?
「うん。前にも言ったかもしれないけど、
彼の世界って映画化しにくいなと…」

----うん。それ聞いたよ。
確か叙述トリックが使われているからでしょ?
「そう。彼のミステリーは、
クライマックスで思わぬ展開をする。
一見、ルール違反のように見えながら
でも、それは読者の思い込みを利用したものと言う、
実に巧妙な話法が使われているんだ。
ただ、この映画の場合、
それよりも別なところにクエスチョンを感じてしまった」

----どういうこと?
「実は乙一ファンを自認しながら、
ぼくはこの原作はその時点で読んでいなかったんだね。
物語を簡単に説明しよう。
ある盲目の女性(田中麗奈)の近くで
線路に人を突き落とす殺人事件が起こる。
(この時点では転落事故ということになっているけど…)
それからしばらくして
彼女は身近に人の気配を感じる。
そう、家の中にだれかいる!」

----あらら、オードリー・ヘプバーンの
『暗くなるまで待って』だ。
「違和感を感じたのは二つ。
彼女は父親(岸部一徳)とふたり暮らしなんだけど、
やがて父親は亡くなってしまう。
ところがそれまでが長すぎてバランスが悪い。
すぐに自分の世界を作り出す乙一らしくない。
もう一つはキャスティング。
チェン・ボーリンが闖入者に扮するわけだけど、
これもしっくりこない。
彼は仕事場でいじめにあってるんだけど、
ここも乙一らしくない。
まさか彼がそのいじめの理由に、
人種的偏見を入れるとはどうしても思えなかったんだ」

----で、どうだったの?
あの後、確か原作読んだんでしょう?
「うん。
やはり父親は早い段階で亡くなっている。
また、男も仕事場で浮いているのは、
彼の信条や生き方が理由。
その閉ざされた心が、
周囲と遮断して生きている
ヒロインの孤独な心と通底しているんだ。
チェン・ボーリンをこの役に使うというのが
監督・スタッフの判断だったのか?
もし別の側面からの強い要求としたら
監督も困っただろうね。
前作『AIKI」が力技で見せてくれただけに
実に惜しまれるな」


              (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「……」もう寝る



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『アントブリー』

2006-09-27 23:42:32 | 新作映画
----あらら、こんな子供向けアニメ観に行ったんだ。
「そう思われても仕方ないよね。
この物語というのが……
気弱な10歳の男の子ルーカスが“アリいじめ”でうっぷん晴らし。
これはたまらないと立ち上がったのが
アリの魔法使い、ゾック。
なんと、魔法の薬でルーカスをアリサイズに縮めてしまう。
このあたりは『ミクロキッズ』だね。
さて小さくなったルーカスは、
アリたちとの生活を通して、
友情やチームワークを学んでいく…。
確かによくある話と言えば、よくある話だ」

----でも、けっこう満足しているみたいじゃない?
「そうなんだよね。
製作はパフォーマンス・キャプチャーと言う
革新的な手法でリアルな表現をした
「ポーラー・エクスプレス」
トム・ハンクス&ゲイリー・ゲッツマン。
今回も一つひとつのショットに
アニメならではのアングルを取り入れ、
それをアップテンポのカッティングで繋いでいく。
悪意ある放水によって大洪水に見舞われるアリの巣、
人間の足で踏みつけられそうになるアリなど、
小さき者からの視点のスペクタクルが
ふんだんに織り込まれているんだ」

----でも、アリって硬い鎧をまとっていると言う感じで
あまり親近感が沸かないんだけど…。
「それは確かにそうだね。
この映画、子供向けのはずだけど、
けっこうグロいビジュアルも出てくるから、
そこは要注意かな」

----たとえば?
「たとえば…
アリの視点で描かれるオジさんの頭とか…」

----それはフケだらけで汚そう(笑)。
「ほかにも、
『ピノキオ』ばりに蛙の胃に飲み込まれるシーンなんてのもある。
これもリアルだったなあ」

----それもあまり想像したくないニャあ(笑)。
そう言えば日本語吹き替え版しか公開されないんだって?
「そうなんだよね。
ぼくは分かりやすくてノレたんだけど、
エンドクレジットを観て
向こうのキャストにビックリ。
ジュリア・ロバーツ、ニコラス・ケイジ、
メリル・ストリープ、ポール・ジアマッティ、
レジーナ・キング…」

----うわあ。それは豪華。
限定劇場での公開が惜しまれるね。

   (byえいwithフォーン)

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『unknownーアンノウンー』

2006-09-26 00:07:12 | 新作映画
「こういうシチュエーション・ムービーって
好きな人にはたまらないんだろうな」

----確か、目が覚めたらみんな記憶を失っていたって映画だよね?
「そう。ある毒性のガスを吸ったせいで
廃棄工場の中の5人みんなが記憶を喪失している。
で、次第に、分かってきた彼らの置かれた状況というのが、
5人のうち2人が誘拐されていて
他の3人が彼らを監禁し、見張っていたということ。
しかも犯人側のボスが日没には戻ってくると言う。
みんな、自分が加害者・被害者の
どっち側だか分からないものだから、
とりあえずはここから逃げ出そうとするんだけど、
入り口にはハイテクなカギがかかっていて脱出不可能。
さらには一挺の拳銃が床に転がっていたことから、
その争奪をめぐっても熾烈な戦いが繰り広げられる」

----ふうん。でも、どうして
彼らは自分たちが敵味方に分かれていたと分かるの?
「それが巧いことできているんだ。
手錠に繋がれた上に銃で撃たれた男もいれば、
椅子に縛り付けられた男もいる。
しかも派手に壊れた携帯、血のついたスコップまで転がっていれば、
これでみんななかよしと思う方がおかしい。
さらにそこに置いてあった新聞の切れ端の記事で、
彼らの中のふたりが誘拐されていたという事実が分かるというわけだ」

----いやあ、これはアイデアの勝利だね…。
「そういうこと。
しかもやがてみんなそれぞれに記憶の断片が甦り、
それはボスの到着でピークを迎える。
さてそのとき、
彼らの間にようやく芽生えていた“はずの”、
脱出を目指して互いに協力し合う気持ち、
あるいは一瞬甦った
悪に手を染める前のピュアな心が
どう転ぶかというのが最大の見どころとなる」

----うわあ。いよいよもって観たくなったニャあ。
「ついでに言えば、
この映画には二重三重のドンデン返しがラストに待ち受けている。
その一つは『なあんだ』ですむけど、
ラストのヤツはまず読めないだろうね。
まあ。観てみる価値は十分にあると思うよ。
ランニングタイムが
90分もないというのも嬉しいしね」


                                          (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「キツネにつままれたみたいニャ」なにこれ?

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『長い散歩』

2006-09-23 18:54:58 | 新作映画
「拳銃って出てきた瞬間に、
映画に緊張をもたらすよね」

----ん?今日の映画って
老人(緒形拳)が虐待されている隣家の少女を連れて
約束の場所へと向かうロードムービーじゃなかったの?
「そう。モントリオール国際映画祭でグランプリを始め、
3章を受賞しただけあって、
さすがによく知っているね」

----この少女を演じた
杉浦花菜もスゴいんでしょ?
「そうだよ。
虐待に次ぐ虐待で
自分の名さえ忘れている。
ちょっと触れられただけで『ぎゃ~っ』と
とんでもない声を発する。
こんな真摯な映画に
たとえは悪いけど韓国ホラーの
『ボイス』のウン・ソウを思い出したね」

----真摯?それもビックリしたことの一つだよね。
奥田瑛二っていつもエロスのイメージがつきまとってたから…。
「うん。今回は『female フィーメイル』で大胆な演技を見せた
高岡早紀が母親役だけに
またまた過激になるかなと危惧していたんだけど、
言葉くらいでそれほどでもなかったね」

----で、さっきの拳銃って?
「途中でバックパッカーの青年(松田翔太)が絡んでくるんだ。
ここは少し『ユリイカ』を思い出したね。
ま、それはともかくとして
彼は帰国子女なんだけど、
なぜか拳銃を隠し持っている。
となると、それがいつ発砲されるのか?
さわざわざ出すくらいだから
使われないまま終わるはずはない」

----ニャるほどね。
でも奥田瑛二も精力的だね。
「うん。
脚本に、彼の妻だけでなく、長女、次女も協力。
奥田瑛二自身も監督としてやっていくことを改めて宣言」

----役者を経てからの監督業。
伊丹十三を思い出させるね」
                                          (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「この子の演技スゴいニャ」身を乗り出す

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『赤い鯨と白い蛇』

2006-09-20 23:26:18 | 新作映画
----白い蛇と言うのはよく聞くけど
赤い鯨ってのはニャによ?
「う~ん。ほんとうはネタバレになるから
あまり言いたくないんだけど、
プレスにも思いっきり明かしてあるし、
言っちゃうかなあ。
これは戦時中の特攻潜水艦のこと。
舞台となるのが夕陽の名所、館山であることから
この“赤い”という形容詞が
“白い”と対比させるべく使われているわけだ」

----えっ?と言うことは、これは戦時中の映画?
「いや、そうじゃない。
れっきとした現代の映画。
主人公は、千倉に住む息子夫婦のもとに
身を寄せることになった雨見保江(香川京子)。
孫の明美(宮地真緒)を伴って千倉に向かう途中で
『どうしても昔住んでいた家を見に行きたい…』と、
館山駅で途中下車する。
保江の家族は、戦争中この家に疎開していた。
終戦後も何年かそこで暮らした彼女にとって
そこはまさに
青春の思い出がいっぱいに詰まった家というわけだ。
保江は懐かしい家を見せてもらったあと、
千倉に向かおうと促す明美に、
「できれば今日はここに泊まりたい…」と言い出す」

----ニャるほど。その中で彼女の過去が語られていくんだニャ。
「うん。普通に考えたらそうなるよね。
ところがここに、家の持ち主・光子(浅田美代子)、
光子の娘・里香(坂野真理)、
さらにサプリメント食品のセールスをしている美土里(樹木希林)が絡み、
彼女ら5世代の女性による演技のアンサンブルで物語が進んでゆく。
監督がテレビの名ディレクターとして知られる
せんぼんよしこ。
1928年生まれの彼女にとっては
70代も後半に差し掛かってからの監督デビュー」

----それはスゴいね。
でもテレビと映画じゃ違うよね。
「うん。この映画、
どちらかと言うと、
舞台で見た方がいいなって感じ。
それぞれの女優のかけあいがオモシロく、
彼女らの会話が物語を牽引していく。
なかでも樹木希林の存在感は圧巻。
ぼくはどちらかと言うと彼女は苦手なタイプだけど、
今回ばかりはその巧さを認めざるを得なかった。
人を笑わせる術はもちろんのこと、
ウィッグを脱いだときの素の表情など、
あまりの見事さに言葉を失ってしまう」

----そう言えば、浅田美代子と樹木希林って…。
「うん。『時間ですよ』。
なあんて、いまじゃ誰も知らないか。
隣の美代チャンもすっかり貫禄がついた……
そう、しみじみ思うのはボクだけ?」

----いや、それはどうか知らないけど、
映画はどうだったのよ?
「この会話だけでもけっこう楽しいのに、
後半、急に<あの戦争>が飛び出してくる。
戦争時代の青春とは?
そしてその記憶が失われゆくこと。
でも、それがあまりにも<お約束的>。
監督には申し訳ないけど、少し不自然な気がしたな」

----でも、監督はそれが言いたくてこの映画を
撮ったんだろうけどね。
「それはそうなんだけどね。
ホームドラマ・テイストの前半から
メッセージの後半への移行が
もっとスムーズに行けば、
この映画は大傑作になったかも知れない。
とても惜しい気がしたな」


フォーンの一言「海ぼたる、見たニャあ」ぱっちり

   (byえいwithフォーン)

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『ホステル』

2006-09-19 22:37:26 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、素通りしてください。


----ニャんだか、顔が青ざめていない?
「タランティーノが製作総指揮、
でもって全米第1位のホラー。
それでいて思いっきりB級。
あらかじめ、そんな情報が入っていたとは言え、
この残虐性はちょっと耐えられなかったね」

----ふうん。ホラーと言ってもいろいろあるけど、
つまりは残酷な方のタイプなんだ。
血糊がバァ~っと飛んだりするわけだね。
「うん。それも<痛み>を伴う、ありとあらゆる方法でね。
いわばこれは一種の残酷ショー。
好事家の餌食として目を付けられたら、
泣いても喚いても逃げられない。
日本映画で言えば『花と蛇』などのSMをもっと過激にしたような感じ。
何せ最終的には死に至らしめるわけだからね」

----ニャるほど。だんだん分かってきた。
これって殺人鬼が一人ではなく
金持ちたちがお金を払って獲物を貰い受け、
残虐の限りを尽くすわけだ。
でも、そんな映画がどうしてボックスオフィスの1位に?
「そうなんだよねえ。
タランティーノの神通力か、はたまた恐いもの見たさか。
もっとも前半は
アメリカの青年ふたりとアイスランドの青年による
アムステルダムでのエロ旅行が描かれる。
これがまた、ひと昔前の西ドイツポルノかと言う感じで、
女性たちがあっけらかんと脱いでは
その豊満な肢体を存分にさらけ出してくれるんだ。
物語の根幹に関わるから
あまり深くは言えないけど、
彼らは電車の中で出会った男に教えられ、
さらなるスケベを求めて、
スロバキアのあるホステルに向かう。
そこがまた聞きしに勝るパラダイス。
宿泊客の若い女性たちは
相性も何も関係なく男たちを快楽の世界へといざなっていく。
でも、そんなにいいこととばかりがあるわけもなく……」

----つまり、そこに罠があるわけだね。
でも、舞台がスロバキアって珍しくない?
「監督のイーライ・ロスは、
タイのウェブサイトで1万ドルで拷問・殺人の出来るという広告を見て
そこからアイデアを膨らませて脚本を書いたのだとか。
これをタイからスロバキアに変えたのは確かに正解かも。
寒々とした東欧の風景が死の拷問部屋の外に広がり、
彼らの救いが、手の届くところにはないと言うことを強調する。
そう、あたかも街ぐるみで
この死のビジネスに関わっているかのように見せるわけだ。
さらに言えば、この街にはマフィア予備軍のような子供たちが
情け容赦のない暴力を大人たちに加える。
こんな怖い子供たちは『ザ・チャイルド』以来だ」

----そう言えば、三池崇史も出ているんだって?
「うん。イーライ・ロス監督が三池崇史の大ファン。
そのためわざわざ現地に呼び寄せたらしい。
セリフもちゃんとあるしね」

----そう言えば三池崇史監督の『オーディション』、
あれも痛かったよね。
とても目を開けていられなかった。
「キリキリキリ……だね。
あれはノコギリだったけど、
これはもっといろんな拷問器具が出てくる。
一つひとつはとても言えないなあ。
あっ、これは日本人俳優が演じているわけじゃないけど、
日本人と言う設定の若い黒髪女性が出てくる」

----ふうん。でも主人公はこの3人の若者なんでしょ?
「それはそう。
でも巧いなと思ったのは、
殺されていく順番が通常の映画の常識とは正反対。
学園ホラーだと、
まずは性に奔放な男から殺され、
最後に残るのは比較的まじめな男だよね。
でもこれは…」

----あああっ。それ言っちゃダメでしょ。


   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「目を開けてられないニャ」もう寝る

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『虹の女神 Rainbow Song』

2006-09-16 01:20:22 | 新作映画
----これって岩井俊二が初プロデュース。
しかも小説家の桜井亜美が脚本に参加しているんだよね。
「うん。
申しわけないけど
実のところ、この映画に対しては
ぼくは全く期待していなかった。
監督の熊澤尚人にしても『ニライカナイからの手紙』だの
『親指さがし』だの、シャープさに欠けたイメージしかなかった。
ところが分からないもんだね。
この映画ではキャメラ・ポジションが
これしかないというくらいに決まっている。
俳優たちの好演もあるけど、
まずはそれだけで観る者を惹き付ける」

----でも、お話もありふれているみたいじゃない?
かつて一緒に自主映画を作った女の子の死で、
みんなが集まり、あの時代を回想してゆくんでしょ。
行定勳の『ひまわり』とかもそうだったような…?
「いや、あの映画とは異なって、
これはあくまでも主人公・智也(市原隼人)と
あおい(上野樹里)の物語。
自分の友だちに片思いする智也の恋のキューピッド役に失敗したあおいは、
そのまま彼を自分が監督する自主映画
『THE END OF THE WORLD』に主演俳優として誘い込む」

----えっ?
上野樹里の役って、ヒロインじゃないんだ。
「途中からヒロイン役も兼ねるんだけどね。
と言うのも、最初に予定していた今日子という子が
キスシーンを断固拒否。
この今日子の役は酒井若菜が秋田弁で演じているんだけど、
これがなかなか笑える。
『花とアリス』に続いて岩井組に参加の相田翔子も加えて
キャスティングも絶妙」

----へぇ~っ。自主映画でキスシーンもやっちゃうんだ?
「うん。この映画は、
一度でも映画を作ったことがある者にとっては、
もうたまらないエピソードがいっぱい。
キスシーンをめぐるごたごた、
母親役に同級生を使う、
流れっぱなしのBGM。
そしてエディターとスプライサーを使っての編集。
プロジェクターがエルモだったのも懐かしければ
8ミリの最高機種フジカZC1000も出てくる。
ただ、これは高すぎて手が出ず、
ぼくらはキャノン518SVを使ってたけどね。
でもシングル8だからコダクローム40が使えないんだ」

----?????意味が分かんないニャあ。
「当時、8ミリには2タイプがあったんだ。
一つはコダックとサクラ(後のコニカ)のスーパー8タイプ。
それに対してフジはシングル8方式を採用。
キャノン518SVはシングル8方式で、
オーバーラップやスローモーションなどが使える。
フジカZC1000は、
さらにそれに加えてレンズ交換や手動撮影などもできたんだ。
しかし使えるフィルムはフジだけ。
人気の高いコダクロームはカートリッジが合わなかった。
ただ、雨に濡れた後の緑の色などは
ぼくはフジが好きだけどね」

----へぇ~っ。そんな時代があったんだ。
「ぼくなんかは、
ダブル8も使ったことあるもんね。
確かこれは16ミリのフィルムを半分ずつ使う方式だった。
あと、編集もテープでなくて
砥石みたいなので削ってテープ・セメントで張り合わせていた。
編集用のテープが出てきた時は
その便利さにほんと驚いたものだった。
話を元に戻すけど、
この映画でも描かれているように、
岩井俊二は
シングル8のカートリッジにコダクロームを詰めていたらしい。
さすが、ぼくらとは器が違うわ」

----しかし、今日は映画は映画でも作品の話にならないなあ。
「つまり、それだけ平常心では観られない映画だったってこと。
でも、上野樹里にはまいったね。
この映画の彼女は、映画青年ならだれもが参ってしまうタイプ。
位牌の戒名にも<映><好>の文字が入っていた。
あと、蒼井優。
彼女は女優として完成されすぎている。
この映画では浮くんじゃないかと思ったんだけど、
製作側はなるほどという役柄を用意してきた」

----なに?なに?
「彼女はあおいの妹役。
しかも盲目なんだ。
つまり、自分しか知らない世界を持っている。
その空気の違いが彼女の別次元の演技によって
見事に醸し出されている。
最近、ヒロインが盲目の別の映画を観て、
申しわけないけど、その演技、少し違うんじゃない?と思ったんだけど、
蒼井優の演技なら文句なし。
いつもながらの彼女の泣き顔も
またまた観る者の心を揺さぶらずにはおかないよ」

----それはそうと、明日、飛行機に乗るんだよね?
あおいは飛行機事故で死ぬんでしょ。
「もう。いやなこと思い出させてくれたね。
旅の無事を祈っててね」



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『明日へのチケット』

2006-09-15 00:10:16 | 新作映画
----なにこれ?アッバス・キアロスタミにエルマンノ・オルミに、
今年、カンヌでパルムドール受賞のケン・ローチ。
とてつもなくスゴい顔ぶれだね。オムニバスなの?
「う~ん。
独立したエピソードを1本に繋いだわけではないことから、
配給元ではオムニバス形式とは呼んでないみたい。
ローマへと向かう特急列車に乗り込んださまざまな人種と階級の人々。
彼らが重なりあう形で他の物語にも登場。
それぞれのチケット(乗車券)から始まる3つの物語を
織り上げたと言う形になっている」

----だれがどんなエピソードをやったんだろう?
なんか興味あるニャあ。
「話だけ聞いて、それを想像するのも楽しいと思うよ。
と言うことで、ここで3つの物語のさわりと見どころを喋るから、
どれがどの監督のお話かあててみたら。
まずは第1話から。
悪天候のために飛行機をあきらめ
インスブルックから列車でローマに帰るはめになった初老の大学教授。
彼はチケットを用意してくれた若い女性に心ときめき、
心の中に甘い妄想を広げてゆく。
ところがテロ対策で乗り込んでいる軍人の
アルバニア移民家族に対する横柄な態度によって
その白日夢が打ち破られる。
そんな中、彼は思いもかけぬ行動に出る。
このエピソード、
軍人がサングラスをしているのが印象的。
威圧感たっぷりで個々に対しての思いやりがまったくない。
列車の乗客全員の命を守ると言う、
その大義の前には、たかが一人という感じなんだろうね」

----おっ、愛がテーマかと思ったら、
そういう方向に変わってきたわけだ。
「さて第2話。
この物語はアルバニア移民家族が乗り換えた列車の中で進む。
そこに一緒に乗り込んできた太った中年女性。
彼女はフィリッポと言う青年を連れている。
フィリッポは兵役義務の一環として
将軍の未亡人である女性の手助けをするよう割り当てられたわけだ。
何を言われても下僕のように言いつけに従うフィリッポ。
一方の未亡人は、二等車のチケットしか持たないのに、
一等車の座席に座り込み、てこでも動こうとはしない。
そんな中、フィリッポの過去を知ると言う少女が現れる。
彼女が昔の自分について語るうちに、
彼の中にある自覚が芽生えてくる。
ここのエピソードはユーモアと緊迫感を伴う会話が特徴だね」

----ニャるほど。次は?
「では第3話。
こちらは第2話と同じ列車内のビュッフェ。
ローマで行なわれる試合を観るために
スコットランドからやってきた3人の青年たちが主人公。
セルティックF.C.チームのファンである彼らは
少ない給料からお金を積み立てて実現させたこの旅に気分は最高にハイ。
アルバニア出身の少年がベッカムのシャツを着ているのを見て
入場券を見せびらかし、大はしゃぎ。
もとよりやさしい彼らは
アルバニア人家族がパンを分け合ってるのを見て、
自分のパンをあげたり、
隣の席の女の子にふざけて話しかけたりと、旅の興奮を満喫。
ところがその中の一人のチケットが紛失。
このままではローマで警察に引き渡されてしまう。
彼らの一人は先ほどのベッカム少年を疑うが…。
このエピソードは、後半、3人がアルバニアの家族と対峙し、
移民問題と向き合うばかりか、家族の命運を握る立場となる。、
そこで彼らがどのような決断を下すか?
これが最大の見モノとなる」

----これもオモシロそうだね。
でも、だいたい読めてきたね。
この3話目の監督は……。
「あっ、答は言わないでいいよ。
後でそっと耳打ちしてくれれば(笑)。
これら3本の映画に共通しているのは、
主人公たちが列車の中で新たな自分の誕生に立ち会い、
さらに一歩先を踏み出すこと。
しかもそれぞれのエピソードでは
権威への批判、社会矛盾の告発がベースに横たわっている。
そう言う意味でも、無邪気な3人の若者が
社会と自分たちが繋がっていることに気づく
ラスト・エピソードは感動的だ。
一つのことを成し遂げ、
個人としても成長するさまを
列車の外の開放的空間の中で映し出した
エンディングは至福に満ちていて、
これぞ映画と思わせてくれる。
さすがケン・ローチだね」

----あっ、言っちゃった。
「あっ」

   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンは、三番目のお話が好きニャ」ぱっちり

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『もしも昨日が選べたら』

2006-09-14 00:16:16 | 新作映画
※ネタバレにつながる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも



----これっていかにも日本でつけたと言うタイトルだね。
「うん。原題は『Click』。日本語ではパソコン用語としておなじみだけど、
ここではリモコンのスイッチを入れることを意味しているんだ。
主人公は建築士のマイケル(アダム・サンドラー)。
彼には美しい妻のドナ(ケイト・ベッキンセール)がいる。
仕事優先主義の彼は、部屋にあるリモコンの区別さえもできなくなり、
すべての電化製品を操れる万能リモコンを求め、夜の街へ。
行き着いたのは、寝具&フロア用品売り場の奥にある不思議な部屋。
そこで彼は怪しげな従業員モーティ(クリストファー・ウォーケン)から
何でも操作できるばかりか、人生までも変えてしまうと言う
最先端のリモコンを与えられる」

----人生まで変えちゃうの?
ふうん。どんなリモコンなんだろう?
「まずはペットのうるさい声をダウン」
----あらら(汗)。
「もちろん消音や色調整もできれば音声切り替えもできる。
でも、一番大きい特徴は早送りかな。
妻との口論をストップしたり、早送りしたり。
たちまち、そのリモコンの虜となった彼は
家族との食事会や夫婦生活、交通渋滞、シャワーなど
生活の中の面倒なことをすべて早送り。
しかもチャプター機能で
自分の行きたい時間・場面にスキップもできることから、
彼はリモコンで自分の人生そのもを操れると勘違いしてしまう」

----あらら、それって勘違いなの?
「うん。操っているようでいて、
実はいつしか自分がリモコンに操られていたんだね。
と言うのも、このリモコンはマイケルが早送りしてきた事柄をすべて記憶。
出世主義の彼のポリシーに合わせて、以後も勝手に省略。
そんなこんなで、自分が望む地位になっていたときには、
マイケルはもうすっかり年をとっている。
家族をその代償としていたことに
ようやく気づいたときには
もう後の祭りと言うわけだ」

----ニャるほど。
でも、どうしてその間の記憶がないの?
「煩わしい時間を早送りしている間は、
マイケルのダミーが代わりを務めてくれる。
つまり彼自身はそれをまったく経験していないんだ。
出世欲にとらわれた男に起こる不思議な出来事。
しかし後で彼は一番大切なものが何かを知る…。
まあ、ある意味、いかにもハリウッドらしい作品だね。
ヒューマンなテーマをファンタジーで描くわけだからね」

----ふうん。ところでモーティは何者だったの?
話の展開からして、これをハッピーエンドにするには、
夢落ちしかないような気もするけど……。
「それは2つとも明かすわけにはいかないな。
ただ、クリストファー・ウォーケンが演じるくらいだから、
あまりプラス・イメージの役柄じゃないことは確か。
あとキャスティングで言えば
マイケルの父親をヘンリー・ウィンクラーがやっていたのが
とても懐かしかったね。
その父親がダミーのマイケルに冷たくされ、
それでも息子に愛の言葉を告げる。
それを横で見ている本物のマイケルが
なんどもそのシーンをリピートさせる……。
これはこの映画の白眉。
大切なものは失って初めて気づく。
いまを大切にしよう……
それこそがこの映画の邦題の意味と言うわけだ。
『もしも昨日が選べたら』……
そう言わなくてもいいように毎日を生きなくちゃね---
なんて久しぶりにマジにしめてみちゃった」


   (byえいwithフォーン)

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『涙そうそう』

2006-09-13 00:01:02 | 新作映画
----この「涙」って、「なみだ」じゃなくて
「なだ」って読むんだよね。知らなかったらあきれられちゃった。
「ぼくも(笑)。
これって、沖縄のBEGINが作曲したメロディに
森山良子が詞を乗せ、夏川りみがカバーした
いわゆる歌なんだって。
その詞は森山良子が亡き実の兄を思って書いたとか。
だからと言って実話と言うわけではなく、
映画では、血の繋がらない兄・洋太郎(妻夫木聡)と妹・カオル(長澤まさみ)が、
ふたりだけで励ましあって生きていくさまが描かれる」

----ありゃりゃ、それはビミョーだね。
年ごろになってくるとヤバいんじゃニャいの?
「そうだよね。
兄はその事実を知っていながら、
妹にひた隠しにしている。
気まずくなるのを避けるためだね。
一方の妹は、そんな兄の心を知ってか知らずか、
『兄ィニィ』と危険なくらいに甘える。
さて、物語は
節約生活を続け、ようやく念願の店を出した洋太郎が
だまされて全てを失うエピソードを起点に、
大きな展開を見せていく。
医者志望の恋人(麻生久美子)との破綻、
兄を経済的に助けようと
受験時期にも関わらずバイトを始めるカオル…。
かくして、いったん狂ってしまった歯車はなかなか元には戻らず、
すべてが悲劇へ悲劇へと転がってゆく」

----ニャるほど。タイトルに<涙>がくるはずだ。
ところで『涙そうそう』ってどういう意味?
「『涙がとめどなく流れる、ボロボロ止まらない』という意味。
それには『泣きたいときは、我慢しないで、
思いっきり泣いたらいい』の意味を込めているらしい。
『泣くだけ泣いたら、もう一度明日に向かって歩き出そう…』ということのようだ」

----ふうん。よく妻夫木が鼻をつまんでいる写真見かけるけど
あれはニャんなの?
「洋太郎の母親(小泉今日子)が教える涙を止める方法。
彼は、それによって<涙>を克服してきた。
それはカオルにも受け継がれる。
監督が「いま、会いにゆきます」の土井裕康。
あの映画でも樹木にしたたる雨粒など、
情景描写に光るところを見せてくれたけど、
今回も沖縄の映像はよく捉えられていた」

----どういうところが?
「意外と、沖縄で撮影した映画には曇り空の画が多く、
海の発色などがよくない。
思うに、これは長期ロケができないなどの
予算的なものからくるんじゃないかと思うんだ。
ところが、この映画は贅沢なほどに
空も海も美しい。
また、セットも凝っていて
洋太郎とカオルが住むアパートは、
那覇市にあるクライミングジムの建物の屋上に外観用、
そして内部用には同市のITスタジオ内にほぼ同じ大きさのセットを設営。
しかもそのセットにはジムのセットにある庭まで再現されているんだ。
こんな贅沢が許されるのも
『いま会い』のヒットのおかげかな?」

----やはり映画はヒットしなくちゃニャのかね。
「う~ん。観てくれる人がいなかったら、
それは個人フィルムになっちゃうからね」


   (byえいwithフォーン)

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『ありがとう』

2006-09-12 00:11:18 | 新作映画
----この映画、阪神淡路大震災が背景になっているんだよね。
監督が万田邦敏って、あまりイメージじゃないね。
「うん。
なんと言っても問題作『unloved』の監督だからね。
あの映画では、ヒロインが自分の生活に満足し、
裕福で社会的に成功した男からの仕事の話や愛を拒む。
で、結果的に彼女は、
貧乏で社会の落ちこぼれであるもうひとりの男を選ぶわけだ。
その強烈な生き方もさることながら、
自分の主張を通すために
いまどき珍しいほどの大議論が声高に行なわれる。
ところがこの『ありがとう』では、
そんな<世界の中でただ一人の自分><それに見合った生活>
という考え方とは対極の、
<自分が生かされていることへの感謝の気持ち>
<心のあり方次第でだれにも気勢期は起こる>ことが描かれる。
途中、逆境にめげそうになった妻(田中好子)が
楽観的な夫(赤井英和)に食ってかかるところの不思議なリアル感は
『unloved』を思い起こさせたけどね」

----そういえば、これって実話に基づいているんだって?
「原作が『還暦ルーキー』と言って、
今もシニアツアーで活躍しているプロゴルファー古市忠雄氏が主人公。
震災で家も財産も失った古市氏は町の復興に奔走。
その一方で自らプロゴルファーを志し、
還暦を目前にしてプロテストに合格するんだ」

----大震災を背景にしているということは
それも描かれるの?
「これが実に怖い。
地震そのものよりも
その後の地獄絵図がたまらない。
目前に迫る火の手。
家の中には身動きとれなくなった妻。
彼女を助けようとして半狂乱の夫。
子供の頃、映画館で観た時代劇にあった江戸の火事の記憶が甦ったね。
さらに、焼け跡となった神戸を歩くシーンもスゴい。
てっきりCGと思っていたら、
なんと御殿場にオープンセットを組み、
クレーンで潰したらしい。
タッチの違いはあれど
その荒廃とした風景がニュースフィルムと
さほど違和感なく繋がれている。
特撮監督に、かつてプロデューサーとしてならした仙頭武則。
撮影を渡部眞が担当しているのも嬉しかったね」

----そういえば、キャスティングもスゴいよね。
それも仙頭武則ならではの人脈かな?
「それもあるだろうけど、
賛同出演も多い。
個人的には薬師丸ひろ子、尾美としのり、
そして薬師丸ひろ子が久しぶりにそろい踏みしたのが嬉しい」

----?????
「これに石原真理絵(真理子)が加われば?」
----あっ、『翔んだカップル』だ。
しかし、話がどんどんずれていったね。
「ごめんなさい」


                     (byえいwithフォーン)


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『グエムル/漢江の怪物』

2006-09-10 23:54:55 | 映画
----これって確か『殺人の追憶』の
ポン・ジュノ監督が作った韓国映画なんだよね。
「うん。一作ごとに目を見張る成長を遂げているだけに
ぼくの期待も大きかった。
カンヌはもちろんのこと、
周囲の声も絶賛一色だったしね」

----で、どうだったの?
「いやあ。これは語るのが難しい映画だわ。
怪物を何かのメタファーと見ることはもちろんできるんだけど、
そういうことを考える以前に、
映画としてのオモシロさに圧倒されてしまう」

----どう、オモシロいのよ?
「マッドサイエンティストが
ホルムアルデヒドの不法投棄を命じるオープニングカット。
これだけで、もう掴みはOK。
『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン』を思い出したね。
で、2年後、漢江で釣り人が奇妙な生き物を発見するシークエンスを挟んで
いよいよ成長したグエムル(怪物)が登場。
ここがまた不気味。
橋桁からぶら下がったその姿は
かつてネッシーではないかと騒がれた巨大生物の死体を思わせる。
で、いったんは水中に姿を消したかと思うと、
次には思いもよらぬ方向から現れる。
そのときのショットが
グエムル(怪物)を見た人々驚きの表情のアップ。
スローモーションで捉えられたその表情の次のカットは、
ユーモラスなまでに早足で迫ってくるグエムルの姿。
と、まあ、こんな機知に富んだ映像が次々と積み重ねられていくんだ。
果たしてどういうSFX技術を使ったのか、
のどかな漢江の風景を惨劇に変えてゆくその映像は
何度でも繰り返し見たくなるほど蠱惑的だ。
しかし、この映像の魅力ばかり語っているわけにもいかないしなあ」

----じゃあ、別の角度から聞いちゃうよ。
そんな怪物映画撮って、監督はいったい何を言おうとしたわけ?
「うん。たとえば、映画の物語に沿っていけば、
こう見ることだってできる。
韓国の平和の象徴、漢江。
しかしそれは、一瞬にして崩れることもある。
そのとき政府は無策なばかりか国民を見捨て、
ただアメリカの指示のまま動くだけ。
そんなとき、自分たちを守るためにもっとも必要なのは家族の絆だと。
事実、この映画ではパク一家と言う一家族に焦点を当てる。
彼らは、グエムルと接触したということで
政府によって身柄を拘束されるものの脱出。
さらわれた娘ヒョンソの奪還に向かうんだ」

----ニャるほどね。
そういえば、彼らはみな超人的なんだって?
「うん。常識で言ったら何度死んでいるか分からない。
でも、この映画ではそれこそ何度も何度もありえないほど甦る。
そう、家族に対する強い<想い>が彼らをその都度甦らせるんだ。
もとより、こんな<怪物>自体がいるわけはない。
そんなありえないことを前提とした作品の中で
グエムル(怪物)に立ち向かうには
死んでも甦るほどの強い<想い>が必要となる。
途中、『時計じかけのオレンジ』を思わせる脳手術シーンまで出てくる。
しかし、主人公はそんなことさえもなかったかのように
また<戦場>へ戻っていく」

----戦場?
「うん。彼らはアーチェリーや火炎瓶など、
それぞれの過去や現在をまとった武器で戦うわけだ。
しかも、それぞれが協力し合うことで
最後には感動的なまでの<グエムル打倒>の形を作り上げる。
それはまるで原始人たちが巨大な獣に
石器で立ち向かっている絵を観ているかのようだ。
さっきも言ったように、この映画にはいろんなメタファーを見ることは可能。
でも、その根源にあるのは<想い>だと思う。
その<想い>のいっぱい詰まった一家の中に生まれ育ったヒョンソだからこそ、
見知らぬ少年を身を呈して守ると言う
あの象徴的な姿が生まれたのじゃないかな」


                   (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「あのラストは少し複雑ニャ」複雑だニャ

殺人の追憶 ASBY-3436殺人の追憶 ASBY-3436
※これはポン・ジュノ監督のオススメ。しかも安いのに驚きました。

※もしかして家族はみんな死んでいるのに戦っていたのかもだ度
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『奇跡の朝』

2006-09-09 23:00:45 | 新作映画
「いやあ、風変わりな映画を観ちゃったね。
“死者の蘇生”を描いた映画と言うから、
これは『黄泉がえり』フランス・ヴァージョン、
もしくは『あした』の路線を思い浮かべて臨んだら、
まったく違ったね」

----ふうん。どんなところが違うの?
「たとえば大林監督の『あした』を思い出してみよう。
死んだ人との邂逅は、
まさにその瞬間こそがクライマックスとなるはず。
もう二度とは会えないはずの人と会う……。
それこそ『奇跡』だからね。
ところがこの映画では冒頭、
死者たちが静かな足どりでぞろぞろ列をなして
村に入り込んでくる。
いきなりのクライマックスと言うわけだ」

----それってゾンビっぽくない?
「いや、ところがみんな
だれ一人として外傷を負ってはいない。
しかも全体の65%が60歳以上と言うその構成からも想像がつくように、
きわめて落ちついた"黄泉がえり" となっている。
で、映画の方も、この全世界で同時に起こった事態に対して、
舞台となる市議会がどう対処するかが
まるでテレビ中継でも観ているかのように
淡々と描かれる」

----へぇ~っ。映画はその街だけの話に終始するの?
「そういうこと。
ぼくは観ていてブラッドベリの小説を読んでいるような気にさせられた。
事実、監督も50年代のアメリカのSFを意識したらしい。
映画は、3人の蘇生をもとに、
3つの再会と再びの別れを描いていく」

----でも再会のドラマだから感動的になるんじゃないの?
「そこがさっき話したSFチックなところで、
彼らは一見、普通の人間だけど、
体温が通常に比べて4℃低い。
しかも失語症的で会話がどこかぎこちない。
それもそのはず、
彼らは生前使っていた言葉を繰り返しているだけで、
言語能力の回復は困難なんだ」

----ニャるほど。
確かにオモシロい設定だけど、あまりにも作り込みすぎじゃない?
「うん。それはあるかな。
彼ら蘇生者は夜になると、徘徊して集まり、
同じものを声を出して読んでいる。
そしてついに運命の日を迎える。
この瞬間は、けっこう驚きだよ」

----でも、あまりユーロスペースでやる映画って感じじゃないね。
「ぼくも最初はそう思った。
でもね、映画は3つの再会と別れ、
それぞれを通して、
埋められない生者と死者の距離を描くんだ。
しかも決して声高になることなく、
それぞれの関係を見つめていく」

----だけどさ、
普通こういうことって
ありえないんじゃない。
生者と死者の距離なんて
わざわざ描こうとする意味が分からない。
「う~ん。思うにそれはこういうことじゃないかな。
映画の中では、
なぜ彼らが黄泉がえったのか、
そしてどうして再び去っていたのかも説明されない。
ぼくはそこでブラッドベリの小説『火星年代記』を思い出した。
その中の一つのエピソードに、
地球人が火星に行ったら、
なぜかとっくに死んだはずの両親がそこにいたというのがある。
そこで地球から来た男は親に聞く。
『どうしてここにいるの?』
すると親の答は
『そんなことどうだっていいじゃないか。
だって地球にいた時だってだれも
私たちがなぜここにいるのか教えてくれなかった』って。
もう、ン10年も前に読んだからうろ覚えだけど、
確かこんなやりとりだったと思う。
つまり『私たちはどこから来てどこへ行くのだろう』
という人間にとって大きな課題が
この映画の背後にも感じ取れたってワケ。
まあ、それとこの映画をぼくが好きかどうかは別物だけどね」


          (byえいwithフォーン)

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『ユビサキから世界を』

2006-09-08 22:31:50 | 映画
----この映画って、無料上映会を行ったんでしょ?
行定勳監督だよね。どんな映画ニャの?
「一言で言えば
明日のない日本の生活に意味が見出せなくなって
死ぬことを決意したリンネ(谷村美月)と、
それに簡単に同調した
ウタ(北乃きい)、ラン(麻里也)、タマ(永岡真実)の物語。
夏休み最後の8月31日には、
Yahoo!ムービーで1万名を対象としたオンライン上映もやったから
観ている人も多いのでは?」

----確か、一時間ちょっとしかないんだよね。
「そう。だから詳しいストーリー説明は割愛。
それぞれ自分や家庭に小さな問題を抱えているとだけ言っておこうかな。
ただ、今っぽいなと思うのは
彼女らが乳牛とあだ名している牛川(上原香代子)に
いじめをしていること。
牛川は彼女たちへの復讐が生きる活力となっている」

----ははあ、それじゃ簡単に死なれたら困るわけだ。
「物語自体はありふれていて、
ただ、ところどころに
ブラック混じりの挿話を織り込んでいるというくらいかな。
最大の見どころは夜中に雨が降ってきて、
ずぶ濡れになった彼女らが
体を温めようと教科書を燃やすところ。
一冊一冊燃やしながら
数学の公式や古文の一節、日本史の年号を
お互いに暗唱しあう…。
ここはほんとうに楽しげで
祝祭的な雰囲気があったね。
少し『台風クラブ』を思い出しちゃった。
映画って、こういうワンシーンの方が、
全体のストーリーよりも
その映画の記憶をしっかりと補強する気がするな」

         (byえいwithフォーン)

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『太陽』

2006-09-03 11:48:26 | 映画
----ようやく観に行けたね。
「うん。
この映画、日本で公開されたのも驚きだけど、
それが銀座シネパトスってのも意表を突いていた。
『モレク神』のときだったかな。
ソクーロフ監督が昭和天皇を主人公にした映画を作るという
話が流れたとき、
まず日本公開はありえないだろうと思っていたから、
配給のスローラーナーには
その勇気を感謝したい」

----えっ、<勇気>って?
「昭和天皇、あるいは皇室をこのような形で描くのは
タブーとも言える。
戦前は神と言われたわけだからね。
でも、監督ソクーロフから見れば、
それはとても興味深いことだったに違いない。
映画でも描かれるように、
昭和天皇の名の下に<歴史>が動いたわけだから。
その構造を描くということは
ある種の日本人論でもあるわけだけど、
監督としてはそれよりも
あらかじめそのような存在として生まれ育った
一人の人間=ヒロヒトに深い興味を抱いたのだと思う。
だからこそ、ここで描かれているのは
戦争を遂行した強力な権力者ではなく、
自分は人間だと、改めて宣言せざるを得ない
世にも稀な運命を背負った一人の人間の心のうちだ」

----ふうむ。確かにそれは日本人には描きにくい切り口だね。
「だからだろうか、
これは思いもよらなかったことだけど、
ぼくは観ていて何度も目頭が熱くなった。
ソクーロフは天皇に対して悪意を抱くのでもなく、
もちろん神として崇めるのでもなく、
自分の意志では自由にならない運命を持って生まれた人間への
深い慈しみを持って
その人となりに迫っていくわけだ。
そうそう、この映画のラストエピソード、
天皇が下した決断が巻き起こす悲劇を明らかにする
侍従長との会話の中身に触れた評を見かけたことがある。
でもこれは知らないで観た方が衝撃はより大きいと思うよ」

----映像の方はどうだったの?
「撮影を監督自身が兼ねていて、
沈んだ色のない世界が展開される。
イッセー尾形の奇跡の熱演がそこに
さらに厚みを加えていく。
ときおり彼のアドリブかなと思えるセリフなどが入り、
周囲にも笑いが広がったけど、
このあたりはいったいどういう演出なんだろう?
監督が彼に任せたのだとしたら、
スゴい信頼関係だ。
皇居を上空から写したセット、
戦後すぐの廃墟と化した東京、
そして飛び魚の悪夢など、
約2時間を一気に見せきる。
まさに見応え十分の映画だったね」


                                          (byえいwithフォーン)


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