ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『リトル・ミス・サンシャイン』

2006-12-07 01:13:06 | 新作映画
(原題:LITTLE MISS SUNSHINE)
----この映画って、東京国際映画祭で三冠を受賞したんだよね。
監督が夫婦ってことでも話題になっていなかった?
「そう。
その最優秀監督賞に加えて
最優秀主演女優賞、そして観客賞。
もっともすでにサンダンス映画祭で上映され、
配給権をめぐる争奪戦の上、
その契約金は同映画祭史上最高額にまで
跳ね上がったと言う<伝説>を持っているだけに、
それから約10ヶ月遅れての
東京国際映画祭での受賞は、
そう驚くことでもないのかもしれないね」

----そうだよね。
アメリカではすでにサマーシーズンに
スマッシュヒットを飛ばしていたわけだし…。
でも、主演女優賞ってだれ?
もしかして、この眼鏡の女の子なの?
「そう。アビゲイル・ブレスリン。
日本でも最近、子役が巧くなってきたなと言う気がするけど、
彼女を観ると、まだまだということを思い知らされる」

----どういうところが違うんだろう?
「このアビゲイルは、
撮影当時まだ5歳。
でも映画のテーマを熟知している」

----テーマって?
「アビゲイルいわく
『映画のテーマは、
不完全な家族だって完璧な家族と同じくらい
愛し合えるってことなのよ』」

----それはスゴいや。
子供の言葉とは思えない。
でもどんなお話ニャの?
「<不完全な家族>=フーヴァー一家は
“リトル・ミス・サンシャイン”コンテストに
繰り上げ参加することになった娘オリーヴを連れて
カリフォルニアへ向かうことに。
その家族構成はと言えば、
独自の成功論を振りかざす家長リチャード(グレッグ・キニア)、
バラバラな家族を必死にまとめようとする母シェリル(トニ・コレット)、
家族を嫌って沈黙を続ける長男ドウェーン(ポール・ダノ)、
ヘロイン常用者でエロじじいの祖父(アラン・アーキン)、
男性への失恋が原因で自殺をはかった
プルースト研究者の叔父(スティーヴ・カレル)、
そしてビューティー・クイーンを夢見るオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)だ」

----ニャるほど。
キャラ設定を聞いただけでも、
いくつもの楽しいエピソードが生まれそうだ。
「いやあ。最近こんなに笑った映画はほかになかったね。
よく、<現実の悩みをコメディで忘れる>…という話を聞くけど、
そういうことってほんとうにあるんだなと、
この年にして初めて思ったね」

----それはまた大胆な!?
「うん。
彼らは、日本で言うところの負け組。
でも、この映画は、人生は勝ち負けじゃないと言うことを
ブラックな笑いに包んでたっぷり見せてくれる。
だからと言って、
彼らは、最初から自分たちを負け組と開き直っているわけじゃない。
それぞれに自分の置かれている立場を意識過剰なほどに自覚し、
そこから抜け出すべく
自分に折り合いを付けながら生きている。
でも似た者同士でもあるだけに、
些細なことでぶつかり合いもする。
しかし、みんな家族であることは間違いない。
だから各自が窮地に直面すると、
何はさておきお互いを守り抜こうとする。
たとえ外から見たら、
それがどんなに不器用であろうと、
あるいは異常であろうとかまいはしない。
根っこの部分が同じであるところから生まれる家族の絆とやさしさ、
それがこの映画の魅力だ」

----へぇ~っ。ニャるほどね。
よく、えいも<猫バカ>と言われるもんね。
「そう言うこと。
いや、ちょっと違うな(笑)」

----フォルクスワーゲンだっけ?
このミニバスもかわいいね?
「うん。このミニバスが、もうひとりの主人公。
クラッチがバカになって
みんなでエンジンを押しがけしたり、
クラクションが止まらなくなって
警察に捕まったり…と、
さまざまな場面で笑いを提供し、
同時に家族の絆が深まるきっかけを作ってくれる。
これまでにも
あまたのロードムービーが生まれたけど、
ここまで乗り物が大きなウェイトを占めた映画は、
そんなには多くはないのじゃないかな」

----ところでコンテストはどうなるの?
「さすがに結果までは言えないけど、
オリーヴの周りはレベルが違う。
大人顔負けの表情や仕草、
そしてパフォーマンスを見せるライバルたちに対して、
彼女は、何で勝負するのか?
よく、知った人が舞台に上がって芝居すると、
見ている方が恥ずかしくなるってことあるけど、
この映画ではそれと同じ感覚を抱いてしまう。
『ちょ、ちょっとヤバいんじゃない。止めた方が…』ってね」

----それだけ入り込んでしまったわけだ。
「まあ、そう言わないでよ。
観たら分かるって。
ラストも、やたらと余韻を持たせようとはせずに、
潔くスパっと終わる。
今年のお正月映画は本命不在と言われるけど、
ぼくはこの映画がNo.1だね」

----でも、この映画はそういうコンテスト的な観方を
否定していると言うか、おちょくっているんでしょ?
「いいの。
監督夫妻もコンテストに参加しているわけだし。
東京国際映画祭のコンぺティションにね。
あっ、音楽もいいよ。早くサントラ出ないかな」



                  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「よさそうだニャ」身を乗り出す

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22 コメント

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連日すみません (april_foop)
2006-12-07 08:55:22
おはようございます。
この映画、ホント最高でしたね。正月映画の本命というのは、まったくもって同感。
家族の欠点をお互いに疎みながらも、その根底では繋がっているという構図をこんな気持ちよくみせてくれるとは思いませんでした。

別エントリですが『ヘンダーソン婦人の贈り物』にもTBさせていただきました。こちらもいい映画でしたね。
返信する
■april_foopさん (えい)
2006-12-07 10:36:15
おはようございます。

同じ気持ちでこの映画を観ている人がいる……それだけでとても嬉しくなります。

この映画、ぼくは
あまりにも笑いすぎて涙が出てしまいました。

『ヘンダーソン夫人の贈り物』も風刺が利いていて楽しかったですが、
こっちの方が自分にあっていました。
返信する
こちらが・・・ (charlotte)
2006-12-08 00:07:04
こんばんは。
先ほど「イカとクジラ」の方にもTBをさせていただきましたが、こちらにコメントさせていただきます。
似たようなお話で・・・どちらかというとこちらのほうがより好みでした。
イカ…の方も結構心理的に共感していたのですが、映画的に見て楽しかったのはこちらかな。

本人は一生懸命だから笑っちゃいけない!と思いつつ、泣き笑い状態でした。
あのワーゲンもかわいいですよね~。笑
出来の悪い息子でも憎めないのと同じというか。家族の一員でした
返信する
■charlotteさん (えい)
2006-12-08 12:21:39
こんにちは。

『イカとクジラ』も悪くはないですが、
やはりこの映画のハッピー・テイストには勝てません。
ワーゲン、ほしいなあ。
返信する
いやなことみんな忘れる度 (隣の評論家)
2006-12-16 21:07:42
こんばんわ。
是非書こうと思っていた、あんな事こんな事そんな事を全て網羅できずにフィーリングで書き上げたといったところです。いやー、公開前にレビューを書くのって、やっぱり難しいと思いました。それを考えると、えいさんはスゴイですね。
コンテストのシーンは、何と言うか劇画タッチでしたね。ちっちゃい叶姉妹やらダイアナ・ロスやら。どの子も化粧が派手すぎて、司会者もインチキ臭くて。普通に大笑いしそうになってしまったとなひょーです。

『フォーンの一言』が加わったのですね。カワイイですねー。こちらに顔を出す頻度が上がります。
返信する
■隣の評論家さん (えい)
2006-12-17 11:11:11
こんにちは。

この映画、とにかく愛おしいです。
ぼくは公開前の新作には
紹介の意味をかねてストーリーを付けていますが、
封切りされてから観た映画をには、
ストーリーは書いていません。
その分、少し肩の力が抜けているかも……。



「フォーンの一言」
……どなたが最初に気づかれるかと
密かに楽しみにしていましたが、
気づいていただけて嬉しいです。

全部に今から付けるのは無理なので、
新作はもちろんのこと、
TBをいただいたところに
少しずつ加えていこうと思っています。

これからもよろしくお願いします。
返信する
おにーちゃんの筆談 (にゃんこ)
2007-01-03 18:17:23
こんにちは
えいさんが何度でも観たくなるのって
鑑賞してからわかりました。(笑)
沈黙の誓いを9ヶ月も守り続けるおにーちゃんの
結構深い、筆談が、効果的に使われていましたねぇ
ママへのハグなんて・・・おにーちゃんたら
ダイキライ!って言いながら、結構家族想いの
いいヤツだよねぇ~なんて思ったり
そんなおにーちゃんを黙ってハグしてあげたオリーヴも
とってもいい妹で(笑)

2007年の早速のベスト候補だったりします。
返信する
■にゃんこさん (えい)
2007-01-04 14:18:03
こんにちは。

お兄ちゃんの筆談。
「ママをハグしろ」はグッときましたね。
あれがオリーヴがお兄ちゃんをハグする伏線になっている。
大切なこと、
人が人を思う気持ちは
家族がこのようにして伝えていく。
観るたびに発見のある映画だと思いました。
返信する
Unknown (風情♪)
2007-01-06 12:02:45
明けましてオメデトウです。
今年も見捨てずに遊んでやってくださいね♪

とんちき爺さんが一番のお気に入りなんですが
ドウェーン&フランク2人の哲学者肌コンビも何
気に気に入ってます。
まぁ早い話、登場した人物皆、好印象でした。
もちろんおんぼろ黄色バスも♪ (゜▽゜)v
返信する
素敵なお年玉に感謝です。 (TATSUYA)
2007-01-06 13:11:17
えいさん、素敵なお年玉、アリガトです。
えっ、何がって? 
ブログで紹介されてた『リトル・ミス・サンシャイン』。
今年映画館で観る初映画だったのですが、
もう最高でした。
これ、特にアメリカ人のメンタリティにはジャストな映画だと思います。
日本はまだまだアメリカと社会状況は違いますが、
それでも明日へ向かって生きる事の意味や家族の愛は、万国共通です。
お涙頂戴映画とはチョッと違う、シッカリしたメッセージもあり、
登場人物一人一人が愛しくて、ハグしたくなるお馬鹿で魅力的な家族でした。
スパッと切った潔いエンディングや、巧みなシナリオと、良い意味で期待(予定調和)を裏切る展開も気に入りました。
ちなみに達也のオキニは、エロエロ爺さんです。

@ 友人が同型のVWのミニバスに乗っていたのですが、
 とんでもない車です。でも素敵なヤツだったので、
 仕事で黄色いVWミニバスとしてCGでフラッシュ・ム ービーを作ったのですが、偶然ってあるんですね。
 何か不思議な縁を感じました。
 http://www.smileserver.ne.jp/
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