マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

行くはずだった「能楽鑑賞教室」

2017年10月09日 | 身辺雑記

 東大学へ行くはずだったが、東大学に行かねばならなくなってしまった。たった一文字の違いだが、天と地ほどの差があった。10月7日(土)の午後、東洋大学の井上円了ホールでは、「能楽鑑賞教室」が開催され、『殺生石』(能)と『佐渡狐』(狂言)が演じられるはずで、大分前から楽しみにしていた。ところが”突然の明日”が待っていた。
 
この日の早朝、妻に”逆流”が起こり、40度近い高熱。駆け付けた医院の主治医はレントゲン撮影を経て誤嚥性肺炎と診断。それもかなり重いとの判断。その日の午後から日・祝と休診が続くので、急変に備えて、東大病院での外来診断を勧められ、紹介状を持って病院棟へ。入院するほどではないだろうとの当番医の最終判断が出たのは3時間後で、薬を貰って帰って来た。



 私も同行し、待っている間に色々と考えた。治療環境の整った大学病院は、急患の外来の誰をも、いきなりは受け付けてくれないだろう。妻の場合、ここの診察券を持ち、しかも紹介状があった。私は大学病院の診察券を全く持ってはいない。何とか工夫をする必要があるかも知れない、などと考えた。
 廊下には右写真のマークが書かれていた。多分、英文字が隠されていると思い、暇を持て余し長いこと考えたが分からなかった。帰宅してネットで調べた。詮索好きなのだ。
 これは東大病院のコミュニケーションマークで、向き合っているのはヒューマンの「h」と、ホスピタルの「h」。「東大病院を受診している患者様やご家族に対して、人と医学・医療がしっかり向き合って、最先端の医学を研究・教育することが大切と考えた、病院医療スタッフの思いを直接お伝えするため、このマークが誕生しました」とあった。2009年に制定されたとのこと。妻はこの日の医療には珍しく不満を抱いていなかった。

 さて夜、小林さん宅に行ったところ、その日に行われた「鑑賞教室」のパンフレツトを渡された。32ページからなる立派なパンフレットで、学生や留学生を対象としたこの教室の周到な準備が感じられた。能と狂言の台詞のみならず、観世銕之丞を話し手とし、原田香織教授を聞き手とするインタビューも載っていた。それによれば、この教室は開催14年目を迎えたイベントであるとのこと。演目の『殺生石』や『佐渡狐』の見方までに話が及ぶ面白いインタビューで、最後に銕之丞は学生へのメッセージを頼まれ、次の様に語っていた。私には新鮮に感じるメッセージだった。
 「人との別離の体験が、ある能の場面と結びついたとき、すごく奥行きが深くなります。能に限らず、歌舞伎やミュージカルや現代劇や映画であっても、個人的な体験に結びつく一瞬の再現が出来るのが舞台芸術です」と。来年は是非観たいものだ。