「はやぶさ」のリーダー川口淳一郎氏から「小惑星に穴を掘ってくれ」と依頼された佐伯さん。それは、まだ世界で誰もやったことの無いチャレンジだった。彼は色々な方法を考えることとなる。
⑤考えぬかれた方法の“ドリル案”や“ロケット案”などでは目的達成は不可能と、彼は知った。最後に辿り着いた方法が「はやぶさ2から発射装置を切り離し、上空で仕込んでいた爆薬を爆発させ、その圧力で弾丸をリュウグウに打ち込んで穴を掘る」という方法だった。この発射装置“インパクタ”の大きさ30センチ。(写真:模型だが、左がインパクタ。右が爆風で押し出され、リュウグウに向かう弾丸)
⑥地上で、重さ5キロの爆薬を搭載して100m先のターゲットを狙う実験は、2013年10月に行われ成功。
⑦2014年12月、はやぶさ2打上。往復6年の大冒険だった。2018年6月、リュウグウ上空に到着。2019年4月、初めてのミッションに臨むが、大きな危険と隣り合わせだった。インパクタが爆発した際に、こなごなに砕け飛び散る破片ではやぶさ2が破壊される危険があった。緊急避難出来る唯一の安全地帯はリュウグウの裏。その余裕時間は僅か3分だった。(写真右下は進行役の櫻井翔)
⑧2019年4月5日10時56分13秒インパクタを切り離す。退避は無事成功。カメラにイジェクタ(噴出物)が写っていた。実ははやぶさ2は小型カメラを搭載していた。避難の際に、その小型カメラを分離し、小惑星の裏側で、はやぶさ2の本体の裏側からは見えない噴火の瞬間の撮影にも挑んでいた。カメラは佐伯さんの10年越しの夢が叶った瞬間を写していた。
⑨はやぶさ2が、空けた穴へ降り、岩石を採取に向ったのは2019年7月11日。10時06分18秒、生命のルーツに迫る鍵をついに手に入れたのだった。小惑星探査の分野では日本は世界の水準を突き抜けたと杉田教授は語った。(写真:喜ぶ、プロジェクトのメンバー)
⑩はやぶさ2は2020年末に地球に帰還する予定。帰ってくるまでにあと1年あまりの旅が残っている。僅か0.1グラムのカケラの分析は宇宙の謎を解き明かす大きな鍵となるそうな。
太陽系誕生後、小惑星には炭素と氷と熱があった。温泉の様な環境で、炭素のつながりが生まれる絶好な環境となっていていった。その小惑星同士が衝突しリュウグウなどが生まれ、そのカケラが太古の地球に大量に飛来してきた、と考えられている。