※この日記は1/7に書かれていますが気にしてはいけない。刻が未来に進むと誰が決めたんだ。ターンAターン。
・折葉坂三番地・個人誌折本関連総集編 折葉坂文書館<上>(折葉坂三番地)
いつも読んでる小説サークルさん、夏コミの新刊は個人誌折本をまとめた総集編。
上下巻セットで入手しましたが、ボリュームが大きいのでまずは上巻から。
・玉兎の見る蒼い星
紺珠伝前の玉兎たちのやり取り。
原作では月の都の様子が直接的に描かれることはありませんが、玉兎の設定や装備などの細かさは流石といったところでしょうか。
・玉兎の跳ねる蒼い星
こちらは紺珠伝のあとの清蘭&鈴瑚のお話。
鈴仙とはまた違った形で幻想郷に居着くことになったふたりのやり取りが上記の作品とうまく対になってて総集編映えしている一編です。
・鈴音響くは埋み火に
鈴奈庵といえば炎上。そして「炎上」から「火遊び」を持ってくるこの発想力よ。
それはそれとして鈴奈庵もきっちり炎上してて笑いました。
・月PUBの夜
蓮メリが! 月面で! いちゃつく! 説明!
境界を渡り歩く二人には、こういう夢や幻のような話が似合います。
端々に蓮メリの濃厚接触描写があって俺によし。
・15センチの裁縫師
一寸法師→針→裁縫という発想の一編。
アリスと針妙丸という珍しい組み合わせと、「15センチサイズの衣装を作る」ってテーマは突き詰めるとSFになりそう。
・恋しこころよ化かして参れ
テンション高いこころちゃんかわいい。このサークルさん描かれるところのこころちゃんはテンション高めで好きです。
佐渡というロケーションにぴったりのキャラ選でした。
・宇宙を飛ぶ風祝
SF好きな早苗さん! 「火星の人」とか好きそう。
あやさなは早苗さんがグイグイ行ってるのが好きですね。
・博麗葬送
東方二次創作においては「霊夢が死ぬ話」誰もが一度は考えるもの。
対して本作はそれとは似て非なる「霊夢が死んだあとの話」となっています。
それを「お葬式」という現実に行われていて、なおかつ別に特別なものではない誰もが参加したことがある行事という形で描いているので、なんというか「博麗霊夢」という人物の特殊性が一気に剥がれ落ちたような印象を受けました。
……と見せておいて、やはりというかなんというか、「博麗霊夢」という人物の特殊性を取り戻すのは彼女の役割なんだよなあ……。
・やみのなか
本サークルさんは度々「仕掛け本」とも呼べるさまざまなギミックを仕込んだ作品を発行していますが、本作もそのひとつ。
人里で起きた事件についてたくさんの人物が証言を行うんですが、いちいち証言が食い違っていてまさに真相は「やみのなか」。
以前のわかさぎ姫本のときにも感じましたが、本サークルさんはキャラ本人を出さないでそのキャラを描くというのが非常にうまいと思います。
・冥界無双の剣
東方のように息の長いジャンルとなると、二次創作においてはおのずと鉄板カップリングが決まってくるものですが、そんな中で意外なカップリングに出くわすのも二次創作の楽しみのひとつ。
しかるに本作は妖忌×天子という今まで見たことのないカップリングで意外。
そういや非想天で「天子は適当に剣を振り回してるだけ」という記述があったっけな。
妖忌の頑固ジジイっぷりが好き。
・河城にとりの水平思考
正統派にとまり。
このサークルさんの作品全般に言えることなんですが、河童のゴーグルの仕組みなど原作では詳細に描写されていないガジェットや組織の詳細なんかがとても好き。
・宇佐見菫子の並行世界
こういう変則的な構成の作品をこのコンパクトなボリュームにまとめているのがまずすごい。そして菫子のドッペルゲンガーという特性をしっかり反映させた内容になってるのがさすが。さらにしっかりオカルト的な怖さも配置されているので満足。
・オールドアダムパラドックス
変則的構成ここに極まれりといった逸品。蓮メリ天国。
なんとストーリーが3種類に分かれているというもの。こういう変則的な構成が可能なのも秘封倶楽部ならではといったところですが、秘封倶楽部はたいていの無茶は許される代わりにその無茶を作品として成立させるためには相当なスキルを要求されると思いますが、それを実現してしまってるのがすごい。
こういう変則的な構成の作品は、しばしば変則的な構成を使うことが目的化して作品としては破綻するケースが見られますが、本作はその荒唐無稽さも作品の味として定着していると感じました。
あとたゆん担当はメリー、ぺたん担当は蓮子という棲み分けが大事だと思います。競うなッ持ち味を活かせッ!!
・萃香晴国紀行
鬼と切っても切れない関係にあるのが桃太郎。岡山県に色濃く残る桃太郎の伝承を、萃香はどんな心境で見るのか。
このサークルさんは度々、実際に現代に残っている名所などを東方キャラが訪れる作品を書かれていますが、本作はなんというか、「取り残されたもの」としての鬼である萃香が、現代に残されたかつての鬼と人が戦っていた時代の残り香を懐かしむ心情がこちらにもフィードバックしてくるようでした。
・岐のクシティガルバ
東方新作が発表されたときの楽しみである「公開された限られた情報からの製品版予想」。本作は鬼形獣製品版が出る前じゃないと書けない貴重な期間限定の作品と言えます。
読む方もまた製品版が出る前と後ではまったく別の感想を抱くと思うので、もし自分が鬼形獣をプレイする前にこれを読んでいたらどんな感想を抱くだろうかという方向でも楽しめる一作でした。
内容が98%くらい製品版と合致してるのすっげーな。
・私が妹様に仕えるに至った2、3の事情 私が妹様に仕えた結果の2、3の不都合
明らかにセットな作品なので2つ合わせてレビューします。
にんっしんっ!!!!?
東方二次創作においてはプレイボーイ的な振る舞いをするキャラとして描かれることもある美鈴ですが、この方向性は初めて見た気がする。紅魔館の風紀はいったいどうなってるの!?
それはそれとしてヒトならざる妖怪の繁殖とアイデンティティについての解釈はすごく面白かったです。
・九割九分九厘の美
徒然草の一編と冥界組のお話。
妖夢は未熟者キャラですがそれがいい。あとゆゆ様のゆるーい話し方が好き。
・ハーン・ザ・ラストハンター・レディ
アイエエエ!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!?
なんとなく「オールドアダムパラドックス」で登場した歴戦のメリーを思い出しました。
ぜひともこのノリで1冊書いてほしい。
・ヤマビコエコー
「echo」と「回向」をかけるという発想がすごいし、それがまた響子の「妙蓮寺の門徒である」という設定ときちんと噛み合っているのがまたすごい。
このサークルさんの作品は、こうした要素がきちんと部品となって作品が構築されているのが魅力です。
・彁
いわゆる幽霊文字ってやつですね。じゃあその幽霊文字とどの東方キャラを組み合わせるかというと当然小鈴ちゃんです。
そしてこの幽霊文字を「文字の幽霊」と解釈しているのがなんとも東方的。
・傀烏狩
以前単独で発行されていたのを読んだ作品。
タイトルだけではピンとこなかったものの、「桃太郎」「戦闘機」でなるほどアレか!となりました。外の世界と深くつながっている東方キャラは何人かいますが、やはり萃香はその中でも特別な立ち位置にいるキャラだと感じます。
・椛紹介日記
日記の体裁で描かれた椛の日常。
椛と同じ哨戒部隊の面々の様子も伺えて面白かったです。文はいつもどおり。
そしてプライベートな文書であるところの日記に他者のメッセージが入り込むあたりが変則的で好き。というかこの日記出版されてんじゃねーか!
・無何有の郷の落穂
原作ゲームに倣ったプレイヤーキャラ選択とステージ構成になっている体裁が楽しい一編。
まえがきによれば本作はこの総集編に収録されている作品の中でもダントツに古いものだそうですが、随所にこのサークルさんの今の作風や解釈につながる幻想郷感、東方感が伺えて面白かったですね。
総集編の楽しみはこれまたいろいろあると思いますが、こうした古い作品に触れることでそのサークルさんのルーツを感じることができるのが楽しいです。古い作品を収録することを嫌うサークルさんもあるでしょうが、読んでる方としては古い作品も合わせて読むことでまたいろいろ感じ取れるものがあるので、ぜひとも古い作品も収録してほしいものです。
今日はここまで。
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