最近はなんか引きこもりがちだったので映画を見に行くことに。もうそろそろまた見たい映画が公開されていくタイミングなので、夏コミ原稿を進めつつ見ていきましょう。
というわけで今回見てきたのはこれ!

本作は「X エックス」「Pearl パール」に連なる三部作の完結編にして「X エックス」の惨劇から生き残ったマキシーンのその後を描く後日談です。
舞台はロサンゼルス。「X エックス」にて、テキサスで起こった惨劇から6年後。ポルノ女優としてのキャリアに限界を感じていたマキシーンは、新作ホラー映画の主演女優として異例の抜擢を受けます。時同じくしてロサンゼルスでは、ポルノ女優だけを狙った謎の連続殺人犯・ナイトストーカーが世間を賑わせていました。
一方で女優としてハリウッドデビューを果たそうとしているマキシーンのもとに、彼女の過去を暴こうとする探偵が近づきはじめ……。
本作はホラー映画となっており年齢指定もR15。しかし、全2作に比べるとゴアシーンやセクシャルな描写はかなり少なめでビジュアル的なインパクトはむしろ弱体化していたように感じました。まあブーツで睾丸を踏み潰すという下っ腹のあたりが冷たくなるシーンはありましたが……。
思ったんですが、本作はそもそも前2作、特に「X エックス」のようなホラーらしいホラーではないような気がします。「X エックス」が直球のホラーなら「Pearl パール」は「スターを夢見ながら夢破れたパールの狂気」という形で「スター」という要素が濃くなり、そして本作ではホラー要素をスターを目指す者たちが集まるハリウッドというスターダムの狂気といったように変化していったのではないでしょうかね。
本作における一連の殺人事件は、悪魔を崇拝するカルト教団の長にしてマキシーンの実父であるミラーが行っていたものでした。その動機というのが「ハリウッドの腐敗を暴くため」。しかし、マキシーンの抱く「スターになる」という強力な動機を植え付けたのがそもそも父親であるミラーだったという……。
ミラーは前述の通りカルトの長でまあイカレ野郎なわけですが、単なるイカレ野郎ではなくハリウッドの腐敗の糾弾者、さらに言うなら「テレビスターの潔癖性」を過激なまでに信奉する視聴者の代表というポジションではないかと思います。
作中では要所要所にポルノを排斥・否定し、「ポルノはアートではない!」と声高にシュプレヒコールを上げる集団が映し出されます。フィクションの中の描写にはそれぞれ役割があると思いますが、これらは要するに一言で言ってしまえば「一般人の綺麗事」なんでしょうね。
主人公であるマキシーンはハリウッドという魔窟でのし上がっていくために文字通り手段を選びません。自身の過去を暴こうとしてきた探偵は容赦なくボッコボコにするし最終的にはプレス機でペシャンコに。「スターを夢見るヒロイン」数あれど、ここまで手段を選ばないヒロインはなかなかいないのでは。
この狂気的とも言えるスターへの憧れは、「X エックス」の殺人鬼にして「Pearl パール」の主人公でもあるパールも同じく抱いていたものです。そして「X エックス」の事件の生き残り、いわゆるラスト・ガール・スタンディングであるマキシーンが、今度はスターダムを駆け上ることを夢見ながら父親を射殺するというこの展開、ある意味では呪いの継承とも感じられます。
ホラー映画には恐ろしい殺人鬼や怪物が登場するものですが、本シリーズ3部作における最大の怪物は、一度憧れてしまえば最早正気には戻れない「スター」という目標そのものだったのではないでしょうか。
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