名華祭の通販分が届いたので早速レビューしていきます。とか言ってるともうすぐ例大祭ですよ。例大祭が終わったらすぐ夏コミなのでどんどん行きます。
・バステトの仔らに告ぐ(折葉坂三番地)
毎度おなじみイチオシ小説系サークル折葉坂三番地さんの新作は、ミケ、橙、そしてお燐の猫妖怪の面々のお話。
既刊「クラウダーよ福を追え」に引き続き、今回の主役はミケ。ふとしたことから知り合った同じく猫妖怪の橙が、墓場で不審な行動をしているところに出くわすミケ。そのそばには、死体を運ぶ妖怪であるお燐の姿が。橙の行動に驚きを隠せないミケは、なんとか橙を止めようとするのですが……。
ミケ、橙、そしてお燐の三者は同様に猫の姿を持つ妖怪ですが、それぞれ招き猫、化け猫、火車とまったく異なる存在です。本作ではこの違いからくるミケの困惑と橙の行動の真意がポイントとなっています。
「墓を暴く」というのは代表的な禁忌行為ですが、それを橙という幼い印象のあるキャラが行っているのがなかなか衝撃的で、読んでいてミケと同じようにショックを受け、なおかつ橙の行動の真意が気になって先を読み進めていました。
また、三者三様の行動様式の違いの書き分けが面白かったですね。「招き猫」という出自を持った妖怪であるミケが死の匂いの濃い墓場や死体に強い忌避感を抱いているのが印象的。妖怪ならそういうのには抵抗がないというか、そういうのをこそ好みそうなものですが、そこに「『福』というポジティブな属性を持つ招き猫だから」という理由付けを行っているのがなんとなくのキャラ付けにはない説得力を感じます。対して火車であるお燐はもちろんのこと、化け猫である橙も墓場や死体にはまったく抵抗を感じていないという対称性がしっかり物語上のギミックとして機能しているのがさすが。
また、このサークルさんの作品の魅力のひとつが「弾幕ごっこの描写」だと思ってるんですが、今回のミケvsお燐の弾幕勝負の描写もキャラクターの設定を活かしたものになっていると感じました。
たとえば、お燐に惨敗したミケの傷の治りが遅いのが「ミケは招き猫=陶器だから」という理由付けがあったり、両者の戦い方の違いや経験の差などの描写がちゃんと原作ゲームに準拠したものであったり。この辺がしっかりしてるので戦闘描写やその結果といった部分の説得力の厚みが違う。
というか本作、「潔癖優等生vs不良娘」といった感じのアレでそっち方面のリビドーが満たされました。ありがとうございます。スミロドンも出たしな。
今日はここまで。
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