夏コミ原稿が終わったせいですべてが終わった気分になっているのでとても危険。
・東方SFアンソロジー 夢現理論の臨界点(東方SFアンソロジー製作委員会)
ようやく半分を過ぎたのでなんとか夏コミ出発までには終わると良いなあ。
・Drown Ship BEBOP(夏後冬前氏)
個人的に見出した本作のSFテーマは「閉鎖空間ホラー」。
今さら言うまでもなく宇宙船という閉鎖空間はホラーと非常に相性がいいわけです。そこで東方要素として「船」幽霊であるムラサを持ってくるチョイスが実にいい。そして文字通りじっとり、べったりとまといつき飲み込まれてしまいそうなホラー描写がまた素晴らしい。
SFにおける未来世界を成立させている発達した科学力は、その文明の力でもって暗い闇の中に潜む妖怪を駆逐するもの。しかし本作では、「宇宙船」という科学力の象徴とも言えるロケーションに「船幽霊」という時代遅れであるはずの妖怪が侵入してくることで、逆説的に闇に潜む妖怪という存在のしぶとさを見せつけています。
人類が重力の軛を解き放って宇宙に進出したとしても、妖怪は不滅の存在なのかも知れません。そこに人類がいる限り。
・犬走椛の砂漠(SYSTEMA氏)
個人的に見出した本作のSFテーマは「本物と模造品」。
しばしば広漠でなにもないことの例えに使われる「砂漠」というロケーションにて、変わらない監視任務を無為にこなしていく白狼天狗部隊の話。
収録作品の中ではかなりボリュームの大きな作品でしたが、そのページ数の多さがそのまま本作の舞台である砂漠の果ての見えない遠大さに思えてきました。
あとがきによれば本作のネタ元は幻想文学の古典「タタール人の砂漠」という作品だそうですが、わたくし人形使いは作品後半の展開にスタニスワフ・レム「ソラリスの陽のもとに」を想起しました。
不毛の地の象徴たる砂漠が万能の生成機械の材料だったというのも皮肉ですが、それらから生み出されたものと「本物」との間にどれほどの違いがあるのか。ラストでにとりと会話している慧音ももしかしたら……と思わずにはいられません。
短いですが今日はここまで。
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