A Day in The Life

主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

塚口サンサン劇場「マジック」見てきました!

2024-03-28 23:08:35 | 映画感想
 昨日に引き続きサンサン劇場です。毎回言ってますが1週間限定はほんとに油断してるとすぐ上映終了日が来てしまうので注意が必要です。
 というわけで今日見てきたのはこれ!
 
 
 みんな大好き「大将(タラパティ)」ことヴィジャイ氏演じる主人公・マーラン医師は貧しい人々にもわずかな報酬で医療を提供する人格者。そんな彼が国際会議でその業績を称えられている頃、医療関係者が次々と行方不明になる事件が相次いでいました。その容疑者として警察に捕らえられるマーラン医師。しかし、尋問の中でマーラン医師と瓜二つの顔を持つ奇術師・ヴェトリという第2の人物が浮かび上がり……。
 インド映画を見るたびに毎回言ってますがまあヴィジャイ氏カッコイイ。カッコよすぎて笑ってしまう。特に前半のマジックを披露しながら強盗と戦うバトルシーンは、強盗が入ってくる展開がちょっと雑なのも含めてあまりもカッコよすぎて心の中の小学3年生が大喜びですよ。
 わたくしも「バーフバリ」からスタートしてさまざまなインド映画を見てきましたが、カッコイイのはもう当たり前の大前提としてバトルの奇想天外さがたまらなく魅力的なんですよね。
 前述のマジックバトルも、子供から借りたタブレットからボールを出したり女性から借りたバッグから槍を取り出したりと、まさに「奇術師(フーディーニ)」の面目躍如と言った感じ。もはや一種のディスりとなっている「トランプを武器にして戦う」もカッコよくキメてくれてて最高にカッコイイ。
 でもただ単にカッコイイってだけじゃないんですよね。ヴィジャイ氏主演の作品はすべてタイトルよりも先に「『大将(タラパティ)』ヴィジャイ」の名前がクレジットされるという時点で、インド映画界で、ひいてはインド社会で「映画スター」という存在がどれほど大きいものかが分かるというもの。そしてこの「インド社会における映画スター」というポジションだからこそ、本作のテーマである「インド社会の医療の闇」に映画というメディアを通して切り込むことができたと言えるんじゃないでしょうかね。
 わたくし人形使いは新作映画や知らない映画を見るときはポスターやトレーラー以上の事前情報を意図的に見ないようにしてるので、本作もこういう方向性とは思いませんでした。マーラン医師とヴェトリの関係も「医師としての表の顔と奇術師としての裏の顔を持つ同一人物」だと思ってましたし、タイトルが「マジック」なので奇術師側にフィーチャーしたミステリーやサスペンスを全面に出した方向性だと思ってました。
 前半は確かに「同じ顔を持つ二人の容疑者」「マジックショーの最中に殺人が起こる」「医療関係者が次々に行方不明になる」といったミステリーな方向性を感じさせます。しかし、一連の事件の真相が明かされる中盤からは一気にインド社会の格差や大手病院による搾取構造が明らかになっていく。間違いなくこここそがこの作品の、ひいてはヴィジャイ氏の作品に込めたメッセージだと感じました。
 日本映画では……というか大抵の作品の場合、こうしたいわゆる「医療サスペンス」はあくまでいちジャンルです。しかし、この作品においては「医療サスペンス」は現実に存在する切迫した問題であり、今このときにも現実に存在する問題なんでしょう。本作は確かにフィクションではありますが絵空事ではない、という……。
 映画に限らずフィクションというものは「満たされない現実に対する救いを描く」という側面があります。本作はまさに「貧しいものが満足な医療を受けられず搾取されている」という現実に対する救いを「大将」・ヴィジャイ氏に託した作品だと思います。ラストで病院から出てきたマーラン医師の言葉と視線は、明らかにスクリーン外への世界に、そして我々に向けられたものでした。
コメント
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