この日記を書いてるのは4/28ですが気にしない方向でお願いします。時が前に進むと誰が決めたのか。
・クロネコオーブ(折葉坂三番地)
紅楼夢新刊レビューも終わらないうちに例大祭が始まってしまい己の音速の遅さを痛感するわたくしです。
さて本作は去年多くの人に惜しまれつつもサービス終了となった「東方キャノンボール」の二次創作小説です。
前回レビューした「袖振り合うも化生の縁」に引き続き、タイトル通り、橙が主役の短編が4編収録されています。
わたくし残念ながら、結局キャノンボールの方は触らずじまいで終わってしまったんですが、作者である折葉さんのツイートなどを拝見してて相当楽しんでおられるのは把握してました。
本作はそうしたところから生まれた作品となっています。
では、収録作ごとに感想を。
・化猫的十二支考余録
13番めの干支を決めようというイベント「新干支レース」を題材にしたお話。
作中での慧音先生の話でも思いましたが、とんでもなくハタ迷惑な話だよなこれ……。
図らずも本作と連続して「袖振り合うも化生の縁」を読む形になりましたが、本作でも橙のビジネスへの適正が描かれていて、将来が楽しみといった感じ。
・向こう岸の船乗りネコ
求聞史紀で出てきた「三途の川の距離を求める計算式」を持ち出した一遍。
このサークルさんの作品を読むたびに思うんですが、本当にネタのチョイスとその調理が非常にうまい。
三途の川の渡し船を式で無人遊覧船にするというアイデア、「彼岸一歩手前刊行ツアー」というネーミングはなんとも東方的。
・黒猫のシグナム
時系列と設定は、先述の「袖振り合うも化生の縁」のあと。
そして本作のゲストキャラとなるのは阿求……というか、求聞史紀で描かれていた稗田家の黒猫。
こんなところからも話を膨らませられるのはさすがといった感じ。
あとこのオチにドラえもんみを感じます。
・宝珠を巡る賢者の考察
まず実弾と書いてキャノンボールと読ませてるのがうまい。
二次創作の魅力のひとつに「原作に含まれていない部分の補完」があると思うんですが、本作は実質的に東方キャノンボールの後日談というか答え合わせになってるんじゃないでしょうかね。
作者さんも東方我楽多草子にコラムを寄稿するなど、キャノンボールには相当な思い入れがあるようなので、サービス終了という不本意な形で終了してしまった東方キャノンボールにしっかり決着を着けられたんじゃないでしょうか。
寂寥感のあるラストシーンで、むかーし夏休みに一緒に遊んでた親戚の友達が帰ってしまったあとの、祭りの後の寂しさを思い出しました。
「不本意な形で迎えることになったサービス終了という形での分かれ」のもたらす寂しさもエッセンスとして取り入れた、読後感の良い一編でした。
今日はここまで。