かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

連載終了1話前。さて来週からは・・・。

2008-03-09 22:29:34 | Weblog
 ほぼ半年がかりで連載続けておりました「ドリームジェノミクス」も、今日でようやく山場を越えました。あと一回、それなりの分量が残っており、完結は次の水曜日の予定ですが、お話的には、もう終わったな、という章のしめになった感じがします。
 発刊当時からすると基本的な筋立ては変わっていないのですが、かなり大胆に章立てを組みなおしましたし、遺伝子関連の用語や説明のところなどは大分加筆修正もいたしました。まったく別の作品になっているわけではありませんが、初版の流れが一本調子だったのと比べればメリハリもついたように感じますし、私の独りよがりだった部分も改めて見直し、個人的にはそれなりに完成度を上げることができた、と感じております。それが読んで下さってる方々の楽しみに直結していれば言うことないのですが、2年後くらいに読み返してみたら、まだまだ自己満足の域から出てないな、というような感想を抱くかもしれません。まあそのときどうしても許せなければ改めて書いてみてもいいでしょうし、これは当時の一つの到達点として不足分は甘んじて受け止め、新たな作品でその辺の不満を解消すべく構想を練ってみるのもいいだろうと思います。いずれにしても先々の話ですので、当面は次の次、来週の日曜日からはどうするか、というところが問題です。
 今のところ考えておりますのは、とりあえず表サイトのコンテンツをこっちのブログのほうに移管してみようか、ということです。表サイトを閉めるつもりは毛頭ないのですが、ブログでの更新に慣れてしまうとどうにもHTMLエディタでいじってFTPでアップする、というのが億劫になってきてました。それに、この間も動画をアップしましたけれど、前々から表サイトはそういうブログ等では扱いきれないサイズの物を置くための、私専用のアップローダーとして活用した方が有意義に使えるんじゃないか、と思っておりました。今回小説を連載することで、ブログでも小説を十分公開できることがわかりましたし、CGや小さなGIFアニメもここでちゃんと公開できます。まあその分これまで大雑把に分けていたカテゴリーをもう少し細分化し、コンテンツにちゃんとリンクされるように考えないといけませんが、その辺の調整をやりながら、移せるものは移してしまい、名実ともにこちらを主体に動かしていくことを検討したいと思います。それが一段落ついたら、次の長編小説の連載を計画、その間に新作も作って、将来の連載に備えていくようにできたら、かなり長期にわたってここの主力コンテンツを確保できそうだ、と、胸算用をはじいているところです。
 来週の土日は何かと公私に渡って七面倒なことが控えてはいるのですが、その合間を縫って粛々と準備を進めていこうと思います。
 
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15.奇跡 その7

2008-03-09 00:18:06 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
麗夢は戦慄に不安を募らせながら死夢羅に言った。
「何をしたの! まさか鳩を・・・」
「その通り! たった今、鳩共を空に開放した。一万羽の死の天使が、愚かな人間共に鉄槌を下すべく飛び立ったのだ。もうお前達はおしまいなのだよ」
「その勝利宣言はまだ早すぎるな、死夢羅」
 半壊した出入り口に、よれよれのレインコートにくわえ煙草から煙をたなびかせる、蘭や麗夢にはおなじみの姿が現れた。麗夢達の絶望にひずんだ顔が、その姿を見てわずかに生気を取り戻す。一方の死夢羅は、怒りも露わに呼びかけた。
「どう言うことだ! 榊」
「対夢見小僧用の「秘密兵器」を、このビルに仕掛けさせて貰った。鳩は一羽たりとも空には飛びたたせんよ」
「対夢見小僧用秘密兵器だと?」
「窓の外を見るといい。死夢羅」
 榊警部の言葉に、死夢羅だけでなく、麗夢、美奈、蘭、そしてハンスもゆがんだ窓枠しか残っていない壁を見た。
「何? あれ」
 蘭が一旦目をこすって外を見直した。どうも霞がかかったように外の様子が見えない。麗夢達も訝しげに見ていたが、ようやく階上から降りてきた円光と鬼童が、その仕掛けを麗夢達に披露した。
「網ですよ、麗夢さん」
「網?」
「強靱なナイロン性の目の細かいネットが、このビル全体を覆い尽くしているんです」
「な、何だと?」
 死夢羅はあ然としてもう一度ビルの外を見つめ直した。すると、靄のように見えていたそれが、白色の細かい網模様を見せながら、時折所々できらりと光を跳ねているのに気がついた。
「ば、馬鹿な・・・、そ、そんな事くらいで、こんな馬鹿げたやり方で、このわしの苦心の策が破れたというのか!」
 すると榊は、うんざりしたように死夢羅に言った。
「馬鹿げたなどと言って貰っては困る。これでも夢見小僧に備えて、警察としても必死に知恵を絞ったんだからな」
「榊警部が任せて、って言ったのは、この事だったのね」
 麗夢が感心したように言うと、隣で蘭が腕を組んで溜息をついた。
「私はこんなベタなやり方でつかまったりしないわよ」
 まあまあ、と美奈とハンスが蘭をなだめる中、麗夢は改めて死夢羅に振り向いた。
「今度こそ観念なさい。死夢羅!」
 すると死夢羅は、ようやく上体を起こすと、麗夢を見上げて笑いかけた。
「ふふふ・・・今回は確かにしてやられたわい。潔く我が敗北を認めるとしよう。だが、この次はこうはいかんぞ、麗夢」
「この次ってこの状況でよくもそんなこと・・・」
「麗夢殿危ない!」
 円光がすんでの所で麗夢と死夢羅の間に割って入った。一瞬遅れて、大きく開けた死夢羅の口から、大量の瘴気が噴出して辺りを一瞬だけ闇に眩ませた。
「しまった!」
 慌てて麗夢は瘴気の渦を振り払ったが、ようやくそれが晴れたとき、うずくまっていた死夢羅の姿は、跡形もなく消え失せていた。
「ええい! 取り逃がしたか!」
 円光が悔し紛れに錫杖の石突を、ついさっきまで死夢羅のいた床に叩き付けた。麗夢も千載一遇の好機を逸し、しばらく唇を噛んでいたが、直ぐに気を取り直して皆に振り向いた。
「こっちこそ、次はきっちり返り討ちにしてやるわよ! こんなに頼もしい味方も増えたんだし」
 美奈、蘭、ハンスが、照れくさそうに麗夢の差し出した手を握り返した。元の可愛らしい姿に戻ったアルファ、ベータが四人の組んだ手の上に飛び乗り、榊、円光、鬼童も、互いに一仕事終えた充実感を共有しながら、笑みをかわし合った。やがて白んできた東の空に明るい太陽が力強く姿を現し、射し込んだ朝日が、わずかに残っていた瘴気を完全にぬぐい去った。
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