シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

2012-02-06 | シネマ ま行

試写会で見ました。

9・11で大好きなお父さんトムハンクスを亡くした少年オスカートーマスホーンが1年後にお父さんのクローゼットから1本の鍵を見つける。この鍵が開けられるものは一体何なのか?それがまるでお父さんからのメッセージのように感じたオスカーは、その鍵が入っていた封筒に書かれた「Black」という言葉をたよりにニューヨーク中の「Black」さんを訪ねて回ることにした。

9歳のオスカーはアスペルガーのボーダーラインにいる少年。以前から世の中は怖い物だらけだったけど、9・11以降さらに怖い物が増えた。公共の乗り物、エレベーター、飛行機、橋、大きな物音、老人、赤ちゃん、あらゆるものが怖いオスカーが、タンバリンの音を聞くことで自分を落ち着け、会ったことのないたくさんのBlackさんたちを勇気を出して訪ねていく。それはまるでお父さんが生きていたときに他人と話すことが苦手なオスカーのために計画してくれた探検調査の一部のように思えた。

この1本の鍵が握っている秘密とはなんなのかという純粋なミステリー要素とともに、オスカーが訪ねて歩くBlackさんたちとの出会い、オスカーがあの“最悪の日”に経験したこととは本当はなんなのか、途中から一緒にBlackさんを訪ね歩くことになるオスカーのおばあちゃんちの喋れない間借り人マックスフォンシドーとの関係、お父さんが死んでしまってからぷつりと切れてしまったようなお母さんサンドラブロックとオスカーの関係を巧みに織り込みながら一気に進む物語に観客はぐいぐい引き込まれていく。作品が次々にアカデミー賞候補になるスティーブンダルドリー監督の繊細でいて大胆な手腕が光りまくる。映像、編集も素晴らしくこれだけの人間ドラマでありながら、まるでジェットコースターに乗っているかのようなスクリーンとの一体感さえ感じる。

最愛のお父さんの死を受け入れられず母親の愛情にも心を閉ざしてきたオスカーが自分の力で立ち上がり、お父さんの死を受け入れていくまでの物語に涙が止まらない。間借り人とのサブストーリーも素晴らしく心を打つものに仕上がっているし、この鍵が持っていた秘密というものもオスカー少年が探し求めていたものとは少し違っていたけれど、見る者にとっては十分に満足しうる秘密だった。

そして、ワタクシがこの物語を見ながらもっとも注目していた、お母さんとオスカーがどのようにもう一度絆を結ぶことができるのかという点だったんだけど、これがクライマックスで想像していたよりも最高の展開だった。お父さんとは親友のようだったオスカーは十分に描かれていたけれど、そのためにお母さんとの関係が9歳の少年にしてはもの凄く希薄に思えたけど、それはオスカーが気付かなかっただけでお母さんはもちろんオスカーのことをずっとずっと見守っていた。自分も最愛の夫を亡くし失意のどん底にあったけれど、お母さんは決してオスカーから目を離すことはなかった。それをオスカーが理解するシークエンスが素晴らしい。サンドラブロックの強くてしなやかな優しさがこのお母さんにピッタリだった。

この映画のためにスカウトされたというオスカーを演じたトーマスホーンの演技が天才的です。子供が主役の映画は無数にありますが、彼ほど観客をほぼ一人でぐいぐい引っ張っていった子役がかつていたでしょうか。ずっと一人で頑張ってきたBlackさん探しの話を間借り人に堰を切ったように一気に話すときの彼の演技は映画史に残ると言っても過言でないと思います。彼を見つけたことがこの作品の成功の80%は占めているんじゃないでしょうか。顔も可愛らしいし、この先どうなっていくのかものすごく楽しみな少年です。

マックスフォンシドーは今年のアカデミー賞助演男優賞にノミネートされていますが、彼の役は結構“オイシイ”役だったなぁと思います。クリストファープラマーとのおじいちゃん対決ですね。

喪失感から立ち直っていく人間の姿を心に焼き付け、最後にカタルシスを感じることのできる130分間の体験です。



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