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電脳筆写『 心超臨界 』

強みは物理的な能力がもたらすものではない
それは不屈の信念がもたらすものである
( マハトマ・ガンディー )

実は一見、定形のように見える私たち生物の体は常に変化しています――福岡伸一さん

2010-04-11 | 09-生物・生命・自然
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Zidai … 時代を打破する、リーダーからのメッセージ。
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組織存続の鍵は生命の本質である動的平衡の中に――福岡伸一


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  福岡伸一(ふくおか・しんいち)青山学院大学教授・分子生物学者
  1959年東京生まれ。京都大学卒業後、ロックフェラー大学、ハ
  ーバード大学医学部博士研究員などを経て、青山学院大学理工学部
  教授。分子生物学専攻。研究の傍ら、一般向けの著作も手がける。
  主な著書に「生物と無生物のあいだ」「動的平衡」「世界は分けて
  もわからない」など。
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環境の変化や厳しい競争に耐え抜き、進化を続ける地球上の生物。
それを可能にしているのは「動的平衡」と呼ばれるシステムだという。
一方、人間の集合体である企業は積極的な人材採用により、その活力を保っている。
企業の存続や成長のためのヒントを、
生物の生存戦略の中に見いだすことはできないだろうか。
分子生物学者の福岡伸一氏に聞いた。

◆空気を読み、
 自分探しをする細胞

約60兆といわれる細胞の集合体である人間。その出発点はたった1個の受精卵です。まず2つに分裂し、4つ、8つと細胞分裂を続け、1000個ぐらいに分裂した状態を「初期胚」と呼びます。その状態では個々の細胞はまだ何の器官になるか決まっていません。

では細胞は自分が何になるかをどう決めるのか。それは周りの細胞とのコミュニケーションによるのです。細胞の表面が接触しあったり、情報物質をやり取りしたりして、ある細胞が「僕は骨の細胞になる」と手を挙げたら、隣の細胞は「じゃあ僕は筋肉になろう」といった具合です。いわば周りの空気を読み、関係性を理解した上で自分が何者になるかを見出しているのです。

私は大学で若い学生にこの話をよくします。人間の集合体である社会でも、同様にこの関係性が非常に重要だと思うからです。学生は自分が何者になるか、一生懸命自分探しをしています。でも自分の中にいくら問いかけても、答えは容易に見つかりません。細胞のように周りとの関係性によって、自分の場所をまず定める必要があると思うのです。

生物の生存戦略は、企業など組織そのものの存続にも重要な啓示を与えてくれます。万物を支配するエントロピー増大の法則というものがあります。これは形あるものはいつか壊れるように、秩序あるものが徐々に無秩序の状態に移り変わる定めを示しています。さて、自然界で唯一この定めに抗(あらが)い存在し続けるもの、それが生物です。

◆持続的成長を可能にする
 「動的平衡」

なぜ生物は時を越え、存在できるのでしょう。実は一見、定形のように見える私たち生物の体は常に変化しています。細胞は分裂と死滅を繰り返し、新しいものに置き換わります。人間の体は半年で全細胞の中身が入れ替わるといいます。集合体としての形はそのままに、構成物は常に流動し全体のバランスを保つ、この状態を「動的平衡」といいます。存続のために絶え間なく壊しては、作り変えるこの戦略は、最初から全体を頑丈に作るよりはるかに有効です。

それは自然界に限らず、人間社会の営みにおいても同様です。一見、堅牢(けんろう)に見える巨石文化が時を経て廃墟と化すのに対し、常に改築を繰り返す街は活気を保ち、何千年と繁栄し続けます。現代は不確実性が増大し未来予測が困難な時代です。企業がサステナビリティーを維持するには、新たな人材を積極的に採用するなど動的平衡を保つ努力が必要なのかもしれませんね。

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