電脳筆写『 心超臨界 』

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( マーク・トウェイン )

大樹にも例えられる最後の偉大な教養人――中村 元

2024-09-12 | 04-歴史・文化・社会
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中村元先生の“最後の新著”が、昨年(2005年)の命日を期して刊行されました。没後6年もたってなお手つかずの原稿が残されていたことが、奇跡的な7回忌の記念出版を実現させました。中村先生は、インド哲学、仏教学、比較思想など東洋学の世界的権威。原始仏教の経典の翻訳を、漢訳仏典からの教典解釈ではなく、サンスクリット語の原文から直接訳出した業績が高く評価されています。先生の生涯を貫いた言葉は「慈悲」。〈慈〉とは他人に楽しみを与えることであり、〈悲〉とは他人の苦しみを除き去ること。


◆大樹にも例えられる最後の偉大な教養人――中村 元

「中村元 明晰なる啓蒙家――インド哲学の巨星、7回忌で脚光再び」
( 2006.01.07 日経新聞(朝刊)「文化」)

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中村 元(なかむら・はじめ)
1912年島根県松江市生まれ。36年東京帝国大学文学部印度
哲学梵文(ぼんぶん)学科卒。77年、文化勲章受賞。私財を投じ
「現代の寺子屋」というべき財団法人東方研究会と東方学院を設立、
主な著書に『ブッダ入門』『論理の構造』など。99年10月死去。
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インド哲学、仏教学、比較思想など東洋学の世界的権威だった中村元氏が亡くなって7年になる。昨年の7回忌を機に、その広大な足跡が改めて見直され始めている。

《21世紀への遺著》

氏の“最後の新著”が、昨年の命日を期して刊行された。全3巻の『構造倫理講座』(春秋社)である。本願寺維持財団発行の雑誌『あすあすあす』に、1981年5月号から15年間、178回にわたって連載された「構造倫理講座」をまとめたもの。

元原稿が未刊のまま氏の書斎に残されていた。「没後6年もたってなお手つかずの原稿があるとは。奇跡的な7回忌の記念出版になりました」(春秋社)。

同倫理講座の第1巻「〈東洋〉の倫理」では、いかに生きるべきかを語り、「〈生きる道〉の倫理」の第2巻では、道徳j、善悪を論じ、「〈生命〉の倫理」(第3巻)では、人間存在そのものにつての根源的思索を展開している。

例えば、なぜ人を殺してはいかないか、といった極めて卑近な問題についても、初期の仏教の教えを手掛かりに、平易に説いている。

最晩年の10年余、中村氏に仕えた堀内伸二・東方研究会主事がある時、「これからどんな著書の刊行を構想されていますか」と尋ねたところ「ぜひ“倫理”についてまとめたい」との答えが返ってきたという。その意味でこの3巻は、生涯に千5百に及ぶ著作を残したという中村氏の「21世紀への遺著」といえるかもしれない。

著書の版元の春秋社、東京書籍、青土社、河出書房新社の4社は、昨年から全国24の書店で「中村元の世界」というブックフェアを開催。春秋社では、それに合わせて全40巻の『決定版中村元選集』を全巻重版した。セット価格は27万5千余円と値が張るが、ぽつぽつうれているという。

この選集を買いそろえている立松和平氏は、「折に触れてひもといている。先生の著作は、2千5百年来不変不滅の真理の世界を説いて、永遠に色あせない。いつも新鮮な発見がある」という。

哲学者の梅原猛氏は中村氏について「大樹にも例えられる最後の偉大な教養人だった。最大の功績の一つは原始仏教の経典の翻訳と解説だと思う。非常に平易で明晰(めいせき)な日本語で教典を訳し、釈迦の教えを多くの日本人にもわかりやすいものにした」と語る。漢訳仏典からの教典解釈ではなく、サンスクリット語の原文から直接訳出した業績は高く評価されている。

《学問の間口広く》

昨年9月末には、中村元の学問・思想への入門書として、河出書房新社の「道の手帖(てちょう)シリーズから『中村元 仏教の教え 人生の知恵』も出た。中で目を引くのは「はじめての人のための中村学入門」の一章だ。

辛島昇氏はじめ中村学の後継者たちが、「中村元先生のインド古代史研究について」や「近・現代インド思想」「アジア学」「比較思想」「ヒンドゥー教」「日本におけるインド学」「大乗仏教論」「ジャイナ教」「辞典」といった各項目について解説している。その学問の間口の広さに驚く。

《後進に職を提供》

中村氏は、「東洋思想の研究およびその成果の普及」を目的とした東方研究会の創設。運営に後半生をささげた。1970年に文部省から財団法人設立の認可を受けた。それを母体に、人々を啓蒙(けいもう)する公開講座、東方学院を生まれた。

中村氏は、若いころの無職の時代の生活苦を思い、学科の先輩の一人が、困窮の果てに死に至ったことを目の当たりにして財団設立を悲願とするようになった。後進の学究に職を提供し、道を開こうとしたのである。

氏の生涯を貫いた言葉が「慈悲」だった。畢生(ひっせい)の大作『佛教語大辞典』の改訂版『広説佛教語大辞典』の「愛」の項には「仏教語としての愛は、むしろ愛欲といった、否定的な意味をもつことが多い。仏教者にとって、愛は憎しみと背中合わせであり(中略)愛が深ければ深いほど憎しみの可能性も大きくなる」と記し「仏教においてはこのような人へのやさしさを意味する愛は慈悲という語が相当する」と説いた。

「〈慈〉とは他人に楽しみを与えることであり、〈悲〉とは他人の苦しみを除き去ること」(『〈東洋〉の倫理』)とも述べている。

東方研究会の前田専學・常任理事は「今日の世界に起こっているさまざまな紛争を見るにつけても、愛だけでは地球は救いきれないのではないか。中村先生の説かれた慈悲という言葉の重さが今さらのように痛感される」と語る。
(編集委員 竹田博志)
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