電脳筆写『 心超臨界 』

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人々が合意すると決めた解釈のことである
( ナポレオン・ボナパルト )

読む年表 明治~戦後 《 北里柴三郎がノーベル賞候補に――渡部昇一 》

2024-10-10 | 04-歴史・文化・社会
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当時、医学の最先端の分野であった細菌学で日本人が多くの発見をしていることは、日本の医学界が世界のトップを走っていた証明であると言うことができよう。医学以外の分野では、この頃、天文学の木村栄(ひさし)が地球の緯度変化の法則を示す新しい定数「Z項」を発見している。


◆北里柴三郎がノーベル賞候補に

『読む年表 日本の歴史』
( 渡部昇一、ワック (2015/1/22)、p200 )

1896(明治29年)
北里柴三郎がノーベル賞候補に
明治維新からわずか三十余年で、世界的な学者が続々と登場した

徳川幕府や明治政府が多数の留学生を海外に出したことは特筆すべきであろう。19世紀末の段階で、留学制度を政策として考えた非白人国は日本だけであった。優秀な若者を海外に送り出して勉強させれば、すぐ西洋文明に追いつけるはずだという確信があったのである。

きわめて独創的だったこの制度は、速やかに効果を上げた。1896年に発足したノーベル賞の第一回医学賞の最終候補には、コッホ(結核菌、コレラ菌の発見者)とともに日本の北里柴三郎の名前があったという。実際に受賞したのはドイツのベーリングであったが、ノーベル賞は、今さらながら驚かされる。西洋人が自分たちしかできないと思い込んでいた自然科学の分野でも、日本人は多くの業績を残すようになったのである。

しかも、ベーリングと北里とは、同じコッホ博士の研究室の同僚であり、ベーリングの受賞理由となったジフテリア菌の血清療法の研究は、彼が北里と破傷風菌の共同研究を行い、北里が血清療法を創案したことが原点になっているのだから、“本家”の北里にノーベル賞が与えられていても不思議ではなかった。だが、当時は、現在とは比較にならないほどの人種差別があり、しかもそれが美徳ですらあった時代である。また、当時の医学界はドイツが席巻していたという事情もあり、結局、ノーベル賞はドイツ人ベーリングに与えられたのである。

また、野口英世は明治44年(1911)に梅毒の病原体スピロヘータを、マヒ性痴呆患者の大脳の中から発見した。これは精神病の病理を明らかにした最初の成果でもあった。彼もノーベル賞に二回推薦されて最終候補に残っているが、結局、受賞できなかった。

野口と同じころ、鈴木梅太郎がビタミンB1を主成分とするオリザニンを発見している。史上初めてビタミン類の発見をした鈴木が受賞しなかったのも、じつに不思議な話である。

細菌学の分野では、赤痢菌を明治30年(1897)に志賀潔が発見している。当時、医学の最先端の分野であった細菌学で日本人が多くの発見をしていることは、日本の医学界が世界のトップを走っていた証明であると言うことができよう。医学以外の分野では、この頃、天文学の木村栄(ひさし)が地球の緯度変化の法則を示す新しい定数「Z項」を発見している。

日本人初のノーベル賞受賞は、大戦後の昭和24年(1949)、中間子理論構想を発表した理論物理学の湯川秀樹が最初だが、これは自然科学で有色人種が受賞した初の例でもある(文学賞ではインドのタゴールが1913年=大正2年に受賞している)。

大東亜戦争によって人種差別が通用しなくなり、続々と独立国が出てくる状況にノーベル賞主催国スウェーデンが適応したということであろう。
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