司法書士のオシゴト

会社にかかわる登記を中心に素朴なギモンにお答えします♪ 

払い込みを証する書面 その2

2009年06月01日 | 商業登記

先週は払い込みを証する書面の種類についてお話ししました。
本日は、①払い込みを受け入れる口座、②払い込みの仕方、③払い込みの金額、④払い込みをする人、⑤払い込みの時期はどうすればよいか? です。

原則どおりにやれば何の問題もありませんが、ちょっと違うことをするときは不安いっぱいですよね。ある程度は登記官の主観が入る書類なので、認められる範囲がどれくらいなのか考えていきましょう。

①払い込みを受け入れる口座
増資の場合は、当然、株式発行会社の口座になりますね。設立の場合は、未だに「新会社の口座を作るんですよね?」というご質問が多いのですが、設立手続中ですから、まだ新会社は存在しないので(少なくとも日本の銀行だったら、新会社名義の口座は作れないと思います)、発起人の口座に払い込むのが原則形態です。

ただ、例外的に発起人から委任を受けた人(設立時代表取締役など)の口座もOKだそうです。この場合は、授権された証明書が必要とされています。

私自身はこの方法でやったことはありませんが、どんな場合に必要なのかな~?と考えたところ、例えば、日本に銀行口座を持っていない外国人の方が発起人になるようなケースでは、他の人に頼むことになるのでは・・・と思います。

そうそう、「払込用の発起人名義の口座を作るんですか?」というお問い合わせもありますが、全く必要ないです。普段お使いの口座でダイジョウブです。ただ、払込前後の預金の動きとか、残高とかが分かってしまいますので、なるべく動きの少ない口座を利用することをおススメします。

ちなみに、外国銀行の外国支店の口座は不可です。日本の支店の口座をお使いください。外貨預金の口座も、先週お話ししたようにOKです。

②払い込みの仕方
これも非常に分かりにくく、かつ、変なウワサも流れていたために、誤解している方が非常に多いのですが、残高があるだけではダメです。
例えば、残高が1億円の口座でも、出資金の分だけの払込(その口座に受け入れたというお金の動き)がなければいけません。出資金が100万円であれば、100万円の払込行為が必要です。

払込は、必ずしも振込でなくても良く、1億円の口座から100万円払い戻して、同額を預け入れるという方法でも構いませんよ。

以前、資本金2円で設立した会社が、わざわざ振り込みをしました。振込手数料の方がよっぽど高くついてしまいました。もったいなかったです。

③払い込みの金額
払い込みの金額はぴったりじゃなくても構いません。少ないのはダメですけど、多い分にはダイジョウブです。ただ、決議した金額より多い場合、余ったお金が何なのかっていう問題がありますね。準備金にするのであれば、その旨を決議しておかなくてはいけませんので、ご注意ください。

でも、多いのはダイジョウブと言いつつ、それは常識の範囲内なんだろうな。。。と私は思ってマス。10万円の出資で1000万円払い込まれたら、やっぱりその出資金と考えるのにはムリがあると思いませんか?

④払い込みをする人
払い込みをした人は、通帳コピーに載ってしまいますけど、これは誰でも、何でも良いでしょうか?
海外送金だと、通帳には振込人は載らず、送金番号が記帳されるようです。以前は、「海外送金の場合は、通帳のほかに海外送金の明細も添付しなさい」と登記所に言われたこともありましたが、今は通帳コピーだけでOKの登記所がほとんどのような気がします。ですが、実際には管轄登記所に念のため確認を。

それから、③のように入金でもいいし、振込の場合で、払い込んだ人と出資者が違っていてもダイジョウブと言われています。これも私見ですが、まったく関係ない第三者からの振り込みが、その出資金と考えられるかどうかも常識の範囲だろうと思います。ケースバイケースとお考えいただいた方が無難ですよね。

ただし、お給料の振込など、「客観的に出資金ではないと分かるものはダメですよ。」 ということになっております。

⑤払い込みの時期
増資をするとき、設立をするとき、結構イサミ足で、「お金はもう入っちゃいました!」というクライアントさんがいらっしゃいますが、早すぎるのはダメです。

増資だったら、少なくとも募集事項の決議の後(実務上は申込期間を設けますので、その期間中の払い込みが良いです)、設立だったら、定款作成の後としていただく必要があります。

つまり、意思決定機関が何の決議もしていない段階で、お金が振り込まれても、「その時にはまだ何も決まっていないでしょう?!それは常識的に考えて出資金ではありません。」と考えるわけです。

以前とても困ったのは、決議していないのに、親会社からの増資の出資金を海外送金で受け取ってしまったケースです。億の単位のお金なので、一旦返すわけにもいかず、結局、伝票上の処理で出金→再入金にしました。本当はもうちょっと大人の事情があったのですが、まあ、無事増資できました。

ということで、あとちょっとのつもりが今日もヘビーになってしまいました。お疲れ様でした。私の頭の整理と、新人教育の一環と、クライアントさんへの説明と。。。。色々兼ねちゃったものですから。。。。

明日からは、少しボリュームを下げたいと思います。
これに懲りずにまたいらしてください。

コメント (11)
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