巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

カタツムリ(蝸牛)

2004-06-30 14:10:58 | 日記・エッセイ・コラム
snail_b.jpg

明け方に大雨が降ったため、喜んだカタツムリたちが庭にでてきた。最盛期を外れたためか、出てきた数はそれほどは多くはない。ざっとみた限りでは10匹ぐらいだろうか。「雨なので紫陽花」に書いたように、出る日は100匹単位で出る。

snail_a.jpg人間とは身勝手なもので、カタツムリに対しては温かい目を向けがちだ。もちろん野菜などに被害を与えるので、駆除対象にはなることもある。が、彼らに対しては子供が観察記録をつけたり、めでたりすることが多いものだ。大人だって、こうやって写真を撮ったりする。

が、かたつむりの遠いご親戚の、背中に殻(貝)がないやつ(ほら、風呂場なんかに出てくるアレ)に対しては、ほとんどの人間が情け容赦なくあつかう。ふくしま家の人々も他の人間と同様、彼らにむかって赤穂の甘塩を大量に食らわす。にもかかわらず、彼らは人間の迫害に耐えぬき、毎年現れるのである。


「先取り納涼企画・心霊スポット」

2004-06-30 00:42:29 | 日記・エッセイ・コラム
東京の心霊スポットについて、きわめて有名なところをひとつ。

池袋のサンシャイン60。ここはかつて巣鴨刑務所、通称「巣鴨プリズン」があったところで、第二次世界大戦の戦犯たちが収容され、処刑が執行された場所だ。そのため、ここで処刑された人たちの霊が出ると、もっぱらの噂だ。

かつて勤めていた英会話学校チェーンの池袋校は、このサンシャイン60のなかにあった。「霊感がある」従業員たちは、この池袋校への配属を断固拒否し、用事があっても行こうとはしなかった。彼女たち(「霊感がある」のは、だいたいは女性だ)は、「なにかがいるのを感じる」と、言っていた。

そして、有名でないものをひとつ。

日本市場参入時のデルの本社があった五反田のビル。そのビルから飛び降り自殺した人の霊が、落下地点に近い場所の地階に出ると、まことしやかにささやかれていた。(デルだけに「出る」などという、ダジャレを言わないこと。)そのビルの地階もデルのオフィスだったが、「ここには何かいて気持ち悪い」と、地階には入ってこない女性の従業員もいた。

わたしは、そのビルの地階の、その幽霊が出現するといわれたまさにその場所で、たったひとりで徹夜で仕事をしたことがある。幽霊は出なかった。というより、出たかどうかは、わからなかった。

もともと、霊感がないのだ。それに、朝までになんとしても仕上げなければいけない仕事と格闘していたので、誰の目にも見える幽霊が出たとしても、それを気にしている暇などなかったのだ。

[この記事は、OCNブログ人「日本沈没地図」に掲載された、2004年6月28日のお題「先取り納涼企画・心霊スポット」に関連する、トラックバックです。]


選挙カーながめの悦楽(せめて楽しまないと)

2004-06-29 23:13:26 | 政治と選挙
参院選の選挙カーは2台と決められている。選挙カーの前後に何台もお付の車(従車)がくっついていることもあるが、スピーカーをつけて候補者の名前を連呼できるのは2台だけだ。というわけで、今回の選挙のように候補者の数が少なければ、街はそれだけ静かになるはずだ。

ところで、選挙カーからの連呼は得票に効果があるのだろうか? これについては良くわからない。多くの人が、「効果がない」あるいは「うるさいために逆効果」と思っているのではないだろうか。

が、古くから選挙にかかわっている人によると、選挙後に地区ごとの得票を調べた限りでは、実際に選挙カーで重点的に回った地域は、他の地域より票が出るのだそうだ。電話による投票のお願いも同じで、電話をかけまくった地域は、かけなかった地域に比べて票が多いということだ。

ただし、票については「自分がここですばらしい演説したために、この地区では票が出た」などという単純なものではない、とも聞いた。3年前に手伝った候補の場合は、本人は認めたくないかもしれないが、票が出たところはいずれも、その地域に強い企業や宗教組織が動いたり、地元の県議や市・区議、もと国会議員が自分たちの組織に強力に働きかけたりしてくれた。

車からの連呼の話にもどると、もともと票が出そうなところを車で回るわけだから、どこまでが選挙カーの効果かは厳密にはわからないと思う。しかし、選挙運動ができる期間は限られおり、選挙運動で使える手段も非常に限られている。その非常に限られた手段の一つである限り、車からの連呼が効果的であろうとなかろうと、各候補者はやらざるを得ないのだろう。

というわけで、選挙カーからの連呼を止めてもらえそうにないとわかったら、せめて選挙カーと車内のスタッフを眺めて楽しもう。

まず、選挙カーには、選挙カーであることを示す掲示がなければならないので、これが車の見える場所にきちんとついているかどうかをチェックしよう。これを掲示してない車が候補者の名前を連呼していたら、公職選挙法違反だ。この掲示を掲げるのを忘れて車が連呼をはじめた場合、たとえそれが正式な選挙カーであっても、やはり違反になる。

選挙カーにはルールやマナーがある。連呼する時間は午前8時から午後8時までであること、病院や学校のある地域ではうるさくしないこと…などだ。こういうことをきちんと守っているかどうかを監視し、守っていない候補がいたらブログで指摘するのもよいだろう。

一般市民のことをきちんと考えている候補とその選挙事務所なら、病院や学校のほか、葬儀等がある場所の前では連呼をやめ、交通渋滞に巻き込まれて動けなくなったときも、その周囲の住民や車のことを考慮して、拡声器の音量を下げてくるはずだ。こういうことを守っているかどうかも見てみよう。

選挙カーの仕様もチェックしてみよう。ここには候補者の財力が反映される。潤沢な資金を持つ候補は、お立ち台があってそこから演説ができるような、立派な車がつかえる。金がない候補の選挙カーは、1300CCのカローラバンだったりして、灼熱地獄のせまい車内の後部座席で、ウグイス嬢が滝のような汗を流しながらマイクを握っていたりするのだ。

車に乗っているスタッフたちのユニフォームも比較してみよう。金のある候補のスタッフたちが着ているのは、候補者の名前やシンボル入りの素晴らしいもので、選挙カーから振られている手の白手袋も、つくりのしっかりした高級感のあるものだったりする。一方、貧乏候補側のそれは、ユニクロで特価で売っていたポロシャツと、100円ショップで売っている手袋だ。

対立候補の車とすれ違ったときや並んでしまったときに、お互いの車がどのような声を発するかにも、耳をかたむけてみよう。完璧に無視するか、威圧するように音量を上げて連呼の調子も激しくするか、他党の候補であっても「○○候補のご健闘を申しあげます」というか、などだ。

車上スタッフたちにやる気があるかも、チェックのしどころだ。ウグイス嬢と目が合ったら、きっとこっちに向かって手を振ってくれるはずだ。そしてそれにちょっとでも反応しようものなら、あなたにむかって「ご声援ありがとうございます!」と、張り切った声で感謝してくれるはずだ。ウグイスは当然そうするが、そのときに同じ車内の他のスタッフも、ウグイス嬢と同じようにしてくれるだろうか。そして、彼らの手の振り方は、やる気にみちて美しいだろうか。(大きな選挙カーだと、中でふんぞり返っている男性がいたりする。)

もちろん、ウグイス嬢の発声がどうかも重要なポイントだ。お金のある候補はプロのウグイス嬢を雇える。が、お金がない場合はシロウトが、にわかウグイスとして働いていたりする。聞けばだれでもわかることだが、プロとシロウトの連呼の差は歴然だ。

ウグイス嬢の顔には、あまり注目しないほうが良いかもしれない。ウグイス嬢は必ずしも若くはないし、夏の選挙ともなると、日焼け防止対策のために、全員が信じられないほど厚化粧をしている可能性があるからだ。

ちなみにわたしは、2001年の選挙期間中には、1日1万円でウグイス嬢として登録されていた。車に乗っていない時間も選挙事務所で働いていたので、選挙期間中はまったく休み無しで、1日1~1.5時間睡眠になった。おかげで最終日には、選挙カーの中から手を振りながらうとうとしてしまった。意識はなくなりながらも、手だけは外へむかって振っていた。

40代のシロウトウグイスだし、普段の声が中途半端に低いので、きっとおそろしい連呼になっていたと思う。しかし、ある候補の選挙カーの連呼には完全に負けた。ゆっくりとした、低い不機嫌そうなオバサン声が、通り過ぎる選挙カーのスピーカーから流れてきた。あまりにもすごい声だったために、それを一度でも聞いた人たちの耳には、こびりついて離れなかったはずだ。ある意味、絶大な効果だったろう。その選挙カーのアナウンスは、こう言っていた。

「田嶋陽子でございます。」


ジョンソン ベビーパウダー薬用

2004-06-29 18:25:46 | 美容と健康
baby_powder.jpgあせもの季節がやってきた。

アレルギー体質なので、これからの季節で怖いのは、皮膚科系ではあせもと虫さされ、そして慢性じんましんだ。慢性じんましんはともかく、あせもや虫さされは、そのままアトピー性皮膚炎に移行すると長期化する。特に首から胸にかけてのあせもがいけない。首はもともとアトピー性皮膚炎が出やすいところだからだ。

あせも予防のために、夏の間は自宅ではベビーパウダーまみれになる。ベビーパウダーだけだと乾燥するので、保湿剤をつけてからパウダーをまぶして完成。その姿はさながら人間大福である。

ベビーパウダーはいろいろ使ってみたが、やはりジョンソン・エンド・ジョンソンジョンソン ベビーパウダー薬用がよろしい。なにしろ容器にでかでかと "prickly heat (あせも) powder" と明記してあるぐらいだから、あせも予防には効果がある。

ただし、ユーカリオイル入りのためかにおいが強烈で、これでダメな人が多い。慣れてしまえば、「においが効き目」を思えるはずだ。


ある男とその家族の話

2004-06-28 21:45:00 | 日記・エッセイ・コラム
昔昔の戦争にまつわる、ある男とその家族の話だ。まったくの作り話かもしれないし、モデルとなる実話があるかもしれない。「この話のモデルはうちだ」と思うのは、いったい何人いるのだろうか。

================

男は終戦の前の年の6月の終わりに、海軍に徴兵された。男の住んでいるところは梅雨時に田植えをする習慣だった。そこで男は、親戚に手伝ってもらい、大急ぎで田植えを終えるやいなや、家と子供を妻に任せた。

男は、その年の10月か11月に、船でフィリピンへ発った。10月か11月と書いたのは、もうそのころには、すべてが混乱していたため、正確な記録がないからだ。船は民間船だった。

翌年の3月、男はフィリピンで戦死した。無論、はるか故郷で男の妻がそれより1ヶ月前に、自分の長男である4人目の子供を生んだことなど、男には知る由もなかった。

戦争が終わったとき、男の妻のもとには、8歳の長女を筆頭に、次女と三女、そして、乳飲み子だった長男が残された。

未亡人となった男の妻は、「戦争未亡人」として、周囲から好奇の眼を浴び、嫌がらせを受けた。再婚したい人もあらわれたが、結局、それはできかった。何かの機会に酒を飲むと、そのたびに男の妻は、夫の位牌を箸でたたいては、泣きながら独りごちるのだった。

「お父さん、何で帰ってきてくれないんだ。お父さんさえ帰ってきてくれていたら。」

貸していた田んぼは、「不在地主」であるとして、農地改革によりすべて借主のものになった。まだ子供だった長女がほとんど学校へ行かず、夫の妻といっしょに、残った土地で米や野菜を作り、かつては自分たちのものだった土地を、少しずつ買い戻していった。

大黒柱を戦争で失った一家のもとには、いろいろなものがやって来た。

宗教団体がたびたびやってきては、「あなたの夫が帰ってこないのは、信仰心が足りないからだ。わたしたちの会に入れば、きっと戻ってくる」と、繰り返し言った。そして一家がついぞなびかないと見るや、捨てゼリフをはいては立ち去るのだった。

「こんな不信心な家だから、旦那が戦死するんだ!」

また、復員してきた男たちは、口々に言うのだった。「死んだ奴には、死ぬだけの理由があった。俺たちが帰ってこられたのは、俺たちの行いが良かったからだ。」

さらに言うのだった。「貧乏人が靖国に祭ってもらうのだから、感謝すべきだ。ありがたく思わないと。」

それは、生き残ったことに対する、男たちの後ろめたさが言わせたことばだったかもしれない。けれど、生まれたときからこのことばを、繰り返し、繰り返し聞かされてきた男の長男には、そのことばを真に受けて信じる以外になかった。

??戦争で死んだ人間には、死ぬだけの理由があるのだ。

そう信じながら、男の長男は成長し、就職し、結婚し、子供を育てた。

戦争にいった男とその妻が再び一緒になったのは、二人が最後に別れてから57年後のことだった。母である夫の妻が死んだあとに、長男はいろいろな人の書いた戦争時の手記を読みあさり、そしてやっとひとつの結論に達した。

??戦争で死んだ人間と生き残った人間の間にある違いは、単なる「運」でしかなかったのだ。