巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

ジョージ秋山『アシュラ』

2006-02-24 00:26:12 | 映画・小説etc.
本屋へいったところ、ジョージ秋山氏の漫画『アシュラ』が巻の文庫版(幻冬舎文庫)がなって出ているのを見つけた。1970年から71年にかけて週刊少年マガジンに連載された、文字どおりの「問題作」で、あまりの残酷な描写に、雑誌の回収騒ぎまで起こしたし、長い間、事実上の「発禁本」となっていた。

幸運にもわたしは、この作品を最初から最後まで、リアルタイムで読むことができた。恐ろしくグロテスクで、恐ろしく悲しい話で、10歳の子供に、のっけから飢饉によるカニバリズムが出てくる話はきつかった。しかも、気が狂った(しかし赤ん坊のアシュラを必死に育ててきた)母親が、飢餓に耐えかねるあまり、ついにアシュラを食べようと、火の中に入れて焼くのである。

アシュラが母親の遺体にすがりついて号泣した結末には、小学生だったわたしも号泣したものだった。35年たった今また読み返したところ、やはり結末には涙である。

この作品を詳しく語ることはあえて避けるが、ぜひ文庫本を読んでほしい。ただし、読了後のあなたの心のケアは、わたしにはできない。

アシュラ (上)
アシュラ (上)ジョージ秋山

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アシュラ (下)
アシュラ (下)ジョージ秋山

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お片付けでお宝発見!? (アップルのニュートン)

2006-02-19 19:39:45 | ガジェット/モノ
1ヶ月先に、建て替える家に引っ越すんだから、そろそろお片付けをしないと間に合いません。それも38年間の間にためこんだものを、ここらで大量に処分しないと。しかし本人もすっかり、忘れていたものが出てくるかもしれません。ひょっとしてその中には、お宝もあるかも…

…と、家族みんながそれぞれ、片づけを始めたとたん、出たぁ!

Newton

わたしのものではないが、アップルコンピュータのNewton (ニュートン) が2台。左側はMessagePad (メッセージパッド) 120、右側はMessagePad 2000。とりあえず2000のほうに単三乾電池4本を入れて動作確認をすると、みごとに動く。しかし、購入した本人ですら、長らくその存在を忘れていたらしい。

アップルコンピュータのNewtonは、世界最初のPDA。本当の名称は "MessagePad" なのだが、このPDAで使用していたOS「Newton OS」ゆえに、 "Newton" のニックネームで知られている。このNewton、1998年にアップルが開発をやめて以来、復活の噂が数回流れたが、いまもって復活していないし、今後アップルがPDAを扱う予定もないらしい。

ところこのNewtonって、今でも市場価値があるのかしらん?

っていうか、これを見つけたために、家中が大騒ぎになり、お片付けどころじゃなくなってしまいましたよ。こんな調子じゃあ、いつまでたっても片付かない…


確定申告書作成ソフトでガックシ(←死語)

2006-02-18 00:57:33 | ガジェット/モノ
ここ3年は、確定申告ソフトを使っている。同じシリーズの青色会計のソフトと確定申告書作成ソフトを買い、青色会計のソフトで経費などを計算し、そのデータを確定申告書作成のソフトに取り込んで、申告書を作成している。

確定申告のソフトは毎年新しいバージョンを買っている。新しいものは、新しい税制の改正などに対応しているからだ。ゆえに、今年もこのソフトの2006年版を買って使ったのだが、今回はちょっと使えない。


この手の確定申告書作成ソフトは、通常なら電卓片手に眉間に縦ジワを寄せて行なわなければならないような面倒な計算を省略してくれるようになっている。このソフトの場合は、確定申告書の第二表に入力し、第一表で「第二表から転記する」ボタンを押すと、第二表の数字に基づく計算結果が第一表に入るようになっている。

ところが、第二表に給与と雑所得を入れ、第一表の「第二表から転記する」ボタンを押すと、今年のバージョンはあら不思議。反映されるのは一部の所得のみ。

複数の「給与」と複数の「雑所得」を入れたところ、給与の合計は反映されるが雑所得はまったく反映されていない。第二表の「雑所得(公的年金等以外)・配当所得・一時所得に関する事項」に必要経費を入れた後では、雑所得の一部だけが第一表に反映される。第一表の所得の数字は、第二表のどこから引っ張ってきているのだろうか?

業を煮やしたわたしは、第一表に数字を強制入力し、手動で第一表と第二表の数字を整えて、印刷画面に進んだ。プレビュー画面でチェック。OK.、きれいに出そうだ。そして印刷ボタンを押し白紙にプリントアウトする。しかし、ここで致命的なエラーが起こった。プリンタがはき出したものをみて、わたしは

ギャッ!

と叫んだ。

Tax_return_sheetこれ→ 
(クリックで画像が拡大します)が出たのだ。入力したデータとともに印刷される確定申告書用紙の画像が、「逆版 & 天地が逆」のコンビネーション。

なぜこんなことに? 2月15日にリリースされたソフトのアップデータもきちんと入れたのに…(大体、アップデータのリリースが、こんな時期になったなんていうのも、それだけでヒンシュクものだが。) わたしのPC環境と、ソフトの相性が悪いのかしら? でも、去年までのバージョンには、こんなトラブルは起こらなかったのに。

今年は何が何でも3月中に引越すために忙しいので、更なる解決法を考えたり待ったりしている暇はなし。さっさと、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使わせていただきますわ。

昨年までのバージョンは好感度高かったんだけれど、今年は一体どうしちゃったんだろう。遅まきながらアマゾンのユーザー・レビューをみて、わたしと同じトラブルに見舞われている人がいることがわかった。

残念だけど、4000円以上支払って購入したソフトがこの出来では、来年はもう使わないだろう。この「やるぞ!確定申告2006」は。


Bad, Bad Numbering Machine:ナンバリングは悪い奴

2006-02-14 21:56:41 | ガジェット/モノ
確定申告が始まる。

昨年の今頃、1年分の領収書整理と経費の入力とチェックの煩雑さにうんざりしたわたしは、2005年分こそリアルタイムで伝票入力をしようと思っていた。が、またもやこの時期になってから、1年分の領収書を仕分けして、裏紙に貼ると作業からはじめることになった。

しかし、今年のわたしには少しばかり強い味方がある。ナンバリングである。

Numbering_machineナンバリングとは、経理や郵便局などでよく使っている、紙に番号を連番で打つアレ。かつて、経理担当で使っていたときには、別に全然ありがたいとは思わなかったナンバリング。なにしろ、ちょうど良い具合にインクを補充するのも少々コツがいる。インクがなくなってくると、印字はすぐに「3」だか「6」だか「8」だか判別しにくくなる。打ち始めの任意の数字をセットするときには、スティックか何かで地道に一方方向につっついて動かして数字を合わせなければならない。面倒くさい上に、ガチャガチャと大げさな音を出す、とっても面倒くさいヤツ。

しかし、去年と一昨年の確定申告の領収書整理で、いちいちペンで領収書に番号をふるのには懲りた。つくづく嫌になった。時間の無駄だ。ああ、ナンバリングがほしい、ナンバリングが。あれさえあれば、軽快に連番が打てるのに。

そこで、今年のこの時期の備えとして、あらかじめ昨年のうちにナンバリングの手配をしておいた。とはいっても、新品のナンバリングは近くのダイエーでも5000円以上する。こういうときにこそヤフオクだ。結果、1000円で中古品を手に入れた。数字合わせのためのスティック(手に入れたのはライオン事務器製なので、ここでは「ステッキ」と呼ぶべきか)も取扱説明書も付いていないが、まぁ、ナンバリングの機能なんてたかが知れているので、取説なんて必要ないでしょうよ。

あらかじめ数回試しを打ちして、動作を確認。いよいよ紙に貼った領収書の束に、連番を打つ。

ガチャッ、0001、ガチャッ、0002、ガチャッ、0003、ガチャッ、0004、ガチャッ、0005...

出しは好調である。

...0008、ガチャッ、0009、ガチャッ、0110

え?「0009」の次が「0110」?

あわてて別の紙で、ガチャガチャと動作を確かめてみる。

ガチャッ、0111、ガチャッ、0112、ガチャッ、0113、ガチャッ、0114、ガチャッ、0115、ガチャッ、0116、ガチャッ、0117、ガチャッ、0118、ガチャッ、0119、ガチャッ、0220


「0119」の次が「0220」??? あわわ...

どうやら、10の桁と100の桁が一緒に動いてしまうらしい。取説がないために,、直感のおもむくままにあちらこちらを適当にいじくり、数字送りがきちんなるよう調整するのに、1時間以上を要した。その間、10000の桁が別の桁と連動したりして、パニックに陥りかけた。

いと罪深きは、この中古のナンバリング。いやいや、このナンバリング自体に罪はない。人の手を渡るうちに、どこかで誰かが変にいじくってしまっただけだろう。

それにしても、今年の確定申告の準備にも、また無駄に時間を使うことになったようだ。

「高島平ドリーム」

2006-02-05 22:48:52 | ニュース
高島平団地は、旧日本住宅公団(現年再生機構)が72年に完成させた。大阪・千里(62年)、東京・多摩(71年)両ニュータウンほど広大ではないが、高度経済成長の働き手として地方から東京へ出てきた人たちが夢を抱いて住み込んだ。
(朝日新聞 2006年2月5日第2面より)


本日(2006年2月5日(日))の朝日新聞の1面と2面で、「分裂日本」というシリーズ物の第1部として、高島平団地を取り上げている。日本の社会が階層化し、格差が広がって日本が分裂しつつあることを検証しようという主旨らしく、かつての「中流」が集まっていた高島平団地の現状に、一億総中流意識が崩れて分裂しつつある社会を映し出そうというわけだ。

この記事によると、高島平は高度経済成長を指させたサラリーマンがマイホームを最初に実現する場所であり、高島平団地に移ってきた人たちには、まずは高島平団地の賃貸棟を借り、収入や地位が上がれば次に分譲棟へ移り、さらには一戸建てへ…という「高島平ドリーム」があったらしい。

高島平団地ははわたしが生まれたあとにできた団地だ。前の名を徳丸田んぼといって、東京の穀倉地帯だった。とはいっても、ここで田んぼを耕していたのは母の世代までで、わたしが覚えているこの場所の昔の姿は、「一面の野原」だった。それはすでに団地になることが決まって、区画整理のために穀物が作られなくなった元田んぼ・畑の一時的な姿であったわけだが、この一瞬の姿?広大な草原、小さな川と水草、イナゴなどのバッタ類、そしてザリガニ?が、わたしにとって高島平の原風景だ。

高島平団地が出来たのは、わたしが小学校の5年のことだった。前年の1年間を千葉県にある病弱養護学校の寮で暮らしていたわたしにとって、団地の完成は「東京にもどってきたら、野原が団地に変わっていた」ように見えた。

できたばかりの高島平は、とくに高島平駅の周辺は、別世界のように思われた。近隣の蓮根団地(当時の蓮根団地のほとんどは3階建てだった)に比べて、1棟1棟の規模が大きく階数も高く、そして最初からスーパーや小売店がそろっていた。高島平の駅前はとても広くて整備されていた。無機質な団地群と団地の作る強いビル風とあいまって、その光景はどことなく近未来的だった。そしてここの住人は比較的若い世代が多かった。

当時の他の団地より家賃が倍近く高かったため、高島平団地の完成にともなって引っ越してきた人たちの中には、「高島平に住む」ということに対してプライドを持っている人も多かった。高島平団地の住民の中には、近隣にすでにあった蓮根団地を「貧乏団地」と呼ぶ者もいた。また、高島平団地内でも序列があったらしく、「うちは分譲に住んでいるのだから、違うのよ!」という言う人もいた。

だが歴史は繰り返すものだ。タバコ屋の店番をしていた母によると、1957年に完成した蓮根団地の住民も、1970年代の高島平団地の住民と同じようなメンタリティを持ってたらしい。まだ「2DKの団地のDKで、椅子に座ってカレーライスを食べる」ことがモダンだと考えられてれた時代に完成した蓮根団地は、当時はかなり先端を行っており、住民には結構プライドの高い人が多かったそうだ。

昨年の秋、散歩がてらに久々にこの団地の周辺を自転車で回ってみた。かつてあんなに輝き、近未来的で若々しく輝いていたこの団地は、枯れていて、高度成長期のレガシーのように感じられた。今でもスーパーはあるが、あの当時はもっとオシャレなものを売っていたはずだった。団地の1階にあった多くの個人商店のテナントはなくなっており、新たなテナントが見つからないのかシャッターを下ろしたままである。歩いている人間には年配者が多く、最初の高島平団地ができたときに高島平に引っ越してきた世代が、そのまま年をとったようだ。(年配者が多いという印象については、これを裏付けるように、朝日の記事では「この団地の住民の3割近くが高齢者だ」としてしている。)

朝日の記事には、かつての「高島平ドリーム」に夢破れた人たちが取り上げられていた。「一所懸命に働いていれば、物事は良くなっていくものだと」信じて真面目に生きてきた、かつての「中流」階級の人たちのやりきれない今が載っていた。

つまりこれが日本の現状なのだろうか。