巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

雨なので紫陽花

2004-06-11 18:59:59 | 日記・エッセイ・コラム
hydrangea_1.jpg

当然のように本日の東京は雨につき、庭の紫陽花(アジサイ)をいくつかアップ。画質を犠牲にしてファイルサイズを軽くしたため、「雨にうたれる紫陽花」の風情が飛んでしまって残念。とりあえず、色変わりを楽しんでくれれば…

hydrangea_2.jpg紫陽花は庭に数本ある。青系、ピンク紫系、そして一番下の写真の薄青系のものは、ガクの形が少し変っている。

ご存知のように、紫陽花は花ではなくガクだ。なので、花とはちがい、梅雨が明けたあとでもしぼまず、この形を保ったままバリバリに筋ばって乾いていく。人間が枝を切ってやらないと、この形のまま夏がすぎ秋がすぎ、冬になる。その姿は霞を食って生きている仙人のようだ。

hydrangea_3.jpgノラネコたちは、紫陽花の低木の中に隠れるのが好きだ。根元に3匹も4匹も隠れていることがある。

この季節は、紫陽花と相性のよいカタツムリも出る。足元をよく見ないとカタツムリを次々と踏んでしまうぐらい、大量にでる。特に夜の帰宅時がいけない。玄関にたどり着くまでに、歩を進めるたびに足元で「バリバリ」と音がするのだ。足元が暗いので、気をつけても何匹か踏んでしまっているらしい。

無用な殺生は避けたいのだが…







レターサイズ:あるいはアメリカの陰謀

2004-06-11 11:44:35 | 異文化コミュニケーション
「アメリカ人ほど、世界中の進出した先々で、現地の人間に『アメリカ流』を押しつける国民はいない」とは、しばしばいわれることだ。それを裏付けるかのようなアメリカ企業の日本での「あひゃひゃ」な行動なら、個人的にはかなり経験してきた。だがこれは大体においては許すことができる。

しかし、わたしがいくつかのアメリカ系企業で、さすがに「このぐらいは日本に(というより世界標準に)あわせろよ」と、あきれたことがある。それは「オフィス内の紙の基準のサイズが、レターサイズ (letter size) だった」ことだ。アメリカでは圧倒的なシェアを誇るレターサイズだが、このサイズを使っているのは北米(つまりアメリカ合衆国とカナダ)のみで、海外では入手しにくいサイズだ。おまけにA4の大きさに近い。だから、こんな汎用性のないサイズを何も極東の現地法人でわざわざ使わずに、さっさとA4の紙を使用すべきだと思うのだが…

sheet_sizes.gif念のために記しておくと、レターサイズとは用紙のサイズの規格で、幅 8.5インチ×高さ11インチの用紙のことである。これをミリに直すと、215.9mm×279.4mmというサイズになる。現在日本企業がビジネスで広く使用しているA4の用紙のサイズは210mm×297mmなので、この2種類の紙を重ねると、幅はレターサイズのほうがわずかに広く、高さは逆にA4のほうが多少高くなる。(図を参照)

このレターサイズの用紙は、日本では売っているところが少ない。レターサイズのコピー用紙は、メーカーに注文すれば入手可能だが、国内でそれほどのシェアがないために店頭には置いてないし、単価がA4の紙よりかなり割高になる。

ところが、一部のアメリカ系企業の日本支店や日本法人では、このレターサイズの用紙がごろごろ…というよりは、すべての文書がレターサイズの紙で回っているのだ。コピー室にある大量のコピー用紙もレターサイズが中心。そう、日本人顧客向けの日本語の印刷物にもレターサイズの用紙を使ってしまう。時おり「官公庁の規則により、A4の用紙で提出しないと受け付けてくれない」という印刷物を作るハメになると、大量のレターサイズの用紙の束をかきわけつつ、「ええっと、A4はどこにあったっけ…ああ、ここだ。」などと、いうことになる。

レターサイズの用紙には専用のパンチがあり、これは三穴だ。当然、穴を開けた紙を綴じこむリングファイルも三穴だ。この三穴パンチとファイルは、最近ではオフィス・デポに行けば手に入る。さすが外資系のショップだ。しかしそのオフィス・デポだって、レターサイズのコピー用紙等のOAペーパーは売っていない。(特別に注文してくれれば入れてくれるかどうかは、定かではない。)なんでアメリカ人はこんな面倒くさいことに、わざわざ固執するのか。

さて恐ろしいことに、このレターサイズの用紙の上にかかれた英語の文書を、数ヶ月間ひたすら眺め続けていると、英語という言語の印刷物には、美的観点からレターサイズの用紙のほうがふさわしいように思えてくるのだ。アルファベットにA4の用紙は、「縦長」で似合わないと感じてくるのだ。レターサイズというローカル規格の用紙が、なんだか愛しくなりはじめるのだ。

しかしこう思い始めたら要注意。アメリカ文化の毒素が、頭の中にまわりはじめている証拠だ。

アメリカ系の企業数社で、レターサイズの用紙を一生分使った後に行った企業は、イギリス系だった。イギリス本社から来る書類はすべてA4だった。「縦長」の紙にびっしり英語が印刷されていた。

ここで目が覚めた。そう、世界標準はA判だ。こちらが国際標準化機構(ISO)の認める国際規格なのだ。レターサイズなんて、あくまでもローカルな規格でしかない。

ところで、日本でワープロソフトとして圧倒的シェアを誇るマイクロソフトWordの日本語版に入っている英文テンプレートは、用紙のデフォルトが「レターサイズ」に設定されている。そしてBlank Documentの余白は上下25.4mm、左右31.7mmと中途半端だ。この余白の大きさは実は上下1インチ、左右1.5インチなのだが、さすが、アメリカのソフトウェア。アメリカ流をそのまま押し付けてくるなんて。

ISOに準拠せず、ソフトウェアの中にひそかにアメリカ規格を仕込むなどとは、アメリカ帝国の陰謀だ。いや、じつはなにも考えていなかっただけかも…