巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

缶のおしるこ

2017-02-04 23:49:30 | 日記・エッセイ・コラム
土曜日はいつも、母に会いに老健に行く。
母は散歩が好きなので、できる限り散歩に連れ出す。
行く場所は、近くにある城北中央公園だ。

公園の自販機で、飲み物を買う。
今の季節の母のお気に入りは、缶のおしるこだ。
「おいしい」「おいしい」と嬉しそうに飲む。

わたしはおしるこ缶2本を買う。

意味性認知症の母は、
どうやったら缶の中身を飲むことができるかが
よくわからない。

けれど、母は目の前の人間の動作を真似ることができる。


目の前で私が飲んで見せれば、
母はわたしの真似をすることで、同じように飲むことができる。
だから、わたし自身はそれほど缶のおしるこが好きではないが、
母と同じものを買って飲む。



実はおしるこは、缶入り飲料としては難易度が高い。
何しろ中にあずきの粒が入っているから。

飲む前によく振ってから缶を開け、
母に渡してから、まずはわたしが飲んで見せる。
そうすると、母も同じように飲む。

飲んでいるときにも、途中で何回か母の目の前で缶をふる。
そうすると母も同じように缶を振る。

そんな風に飲んでも、
母の缶の中には、かなり多くのあずきの粒が残ってしまう。
それを母は最後まで気にして、
かなり長い時間、なんだかうれしそうに缶と格闘する。



穏やかで、それなりに充実した時間。