巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

ウィーン国際空港で出国審査のボディチェックに引っかかってしまった

2010-10-24 12:54:30 | 日記・エッセイ・コラム
先週末の話だが、タイトルの通り、ウィーンからの出国時に引っかかってしまった。

他の人たちより念入りに検査され、いろいろ聞かれたあげく、隅にある椅子に座らされて、靴を脱ぐように指示された。脱いだ靴はしばらくかえって来ず、その間わたしは次々とボディチェックをクリアしていく人たちを、呆然と眺めていた。

ボディチェックで引っかかった主な理由は、わたしが

スニーカーを履いていた

からだ。

「スニーカーを履いていると出国審査で引っかかることがある」という話は聞いていたが、この夏スニーカーを履いて海外旅行に行った周囲の人たちの誰からもボディチェックで引っかかったという話は聞かなかったし、自分自身も成田からの出国のときは何の問題にもならなかったために、すっかりそんな話は忘れていたわけ。

まずいことに、靴を脱がされたときにハッと思い出したのだが、わたしのスニーカーはイタリアは ― といっても製造は中国だが ― Stonefly(ストーンフライ)のウエッジヒールスニーカー。ご存知の方もいらっしゃると思うが、このメーカーの靴は、歩行時の脚への衝撃を抑えるために靴底のかかと部分に半流動体のジェルを仕込んであるのが最大の売りだ。そして靴底は「液体みたいなものが入っています」というのが視覚的にアピールできる作りになっている。よくよく考えてみれば、これはさらにまずいわ。

しばらくして靴は無事に帰ってきた。が、帰国後に気がついたのだが、両方の靴底のジェルが入っているメーカーが「ブルーソフト(bluesoft)」と呼んでいる部分の変なところに針で刺したような小さな穴が開いている。中に入っているものが完全な液体ではないので、すべてが穴から流れ出すということはないのだが、ブルーソフトをググっと押してみると、何やら液状のものがじんわりと滲み出してくる。

Stoneflyの靴はけっこう気に入っているのだけれど、出国時の検査はスーツケースの中に入っていたアサヒタビジェンヌの「疲れにくいレザーパンプス」を履いてほうがよかったかも。でも、Stoneflyの靴は大き目にできていて、スーツケースの中で場所をとるのよね。


ゾフィエンザールとウィーン3区

2010-10-18 21:58:34 | 音楽
仕事を離れて、オーストリアへ行ってきた。「え? オーストラリアへ行くんですか?」と複数の人間に聞かれたが、「リア」と「ラリア」の差は大きい。「ラリア」だと、どうしても仕事になってしまう。「リア」なら、多分ならない。だから、オーストリアへ。そして行くからにはどうあってもウィーン市内めぐりは外せない。

しかし、週末のウィーン1区は、観光客しか存在していないのではないかと思われるほど、観光客であふれかえっている。それも世界各国からの団体さんが多く、様々な言語が耳に入ってくる。オーストリア人たちは金曜の午前で仕事を終えるとのことなのだが、そのあとは一体どこに行ってしまうのだろう。

見どころは1区に多いのだけれど、1区のあまりの観光客の多さに加えて、フンデルトヴァッサー・ハウスがあるからという理由で先に3区に立ち寄ってみようと、マルクサーガッセに足を踏み入れた。そこでまずわたしを圧倒したのは、廃墟と化したゾフィエンザールだった。

ゾフィエンザールは「ゾフィー(バイエルン王女、オーストリア大公妃)のホール」という意味だ。1826年に建築されたホールで、クラシック音楽ファンには、英国のデッカ・レコードが1950年代から1980年代半ばまで、ウィーン・フィルの録音に使用したホールとして有名だ。舞踏会に使われる広いホールに高い天井、そして地下には屋内スイミングプールがあったために音響が素晴らしく、録音向きだったらしい。また、ヨハン・シュトラウス父子もここで演奏を行っているなど、由緒のあるホールであるが、この歴史的建築物は2001年8月の火災で外壁を残して焼失してしまった。

修復プロジェクトが開始されたたという話も聞いたこともあるが、どこまで進んでいるのかわからない。だが、ともかく、外壁を残して焼失したゾフィエンザールの写真は、ネットのあちらこちらに散らばっているので、無残な姿を目にする心構えもあった。

しかしショックだったのは、そのような写真には写っていなかったグラフィティ(というか、単なる壁への落書き)が正面側の壁に描かれていたことだ。(下の写真は、クリックで拡大します。)

Sofiensaal_oct_2010_2

ウィーンの街にはグラフィティが多い。1区でもかなりの落書きを見た。が、さすがに観光名所になるような名のある歴史的な建造物にはない。ゾフィエンザールのファサードのグラフィティには、「この建物には、もう何の価値もない」と言われているようで、わたしはしっかり落ち込んでしまった。

マルクサーガッセを挟んでゾフィエンザールのほぼ斜め前になるザイドルガッセ21には、このブログで何回か取り上げているピアニスト・作曲家の故フリードリヒ・グルダが生まれてから20歳あたりまで過ごしたアパートがあった。(その後グルダ一家は1区へ引っ越した。)

今ではそのアパートはなく、別の黄色い(1960年代か70年代あたりに建てられたらしいデザインだ)アパートがあるが、オーストリアではこういう場合は「ここに、グルダが幼年期と青年期を過ごした建物が建っていた」というプレートが、この建物の外壁につけられるはずである。見れば、確かにそのようなプレートがついていた。こういうプレートが市内の建物の至るところにあり、こういうものを色々と探すのも楽しいものだ。(たとえばホテル・ザッハーには、ここがかつてアントニオ・ヴィヴァルディが住んでいた場所であることを示すプレートがある。)


Gulda_plate



ところで、ウィーン3区出身のピアニストといえば、ザイドルガッセ出身のグルダのほかには、エルトベルク通り出身のジャズ・ピアニストの故ジョー・ザヴィヌルがいる。両者とも偉大なピアニストである。ウィーンではこのような偉大な出身者は、公園にその名を残すはずである。

というわけで、フリードリヒ・グルダ公園という名の公園もジョー・ザヴィヌル公園という名の公園もウィーンの中にあり、しかも3区の中にある。どちらもGoogleマップで探せるので、探してみるとよい。なんなら、行ったついでに足を延ばしてみても良い。

わたしは、マルクサーガッセとザイドルガッセからウィーン国立音楽大学に向かう途中に、ちょいと回り道をしてフリードリヒ・グルダ公園の前を通った。話には聞いていたが、公園のを囲むように新しいアパート群を建設中で、周囲一帯が立ち入り禁止で、中がどうなっているのかはわからなかった。が、きっと、その辺にあるきわめて普通の小さな公園だと思う。


(注:本文中の、地名について、「ガッセ (Gasse)」は「小路」「路地」「横丁」の意味なので、Marxergasseは「マルクサー小路」とも訳される。個人的に「小路」のイメージがつかめないので、「マルクサーガッセ」と記載した。表記の統一のためにはErdbergstrasseを「エルクベルトシュトラッセ」とすべきかもしれないが、こちらのほうは「エルクベルト通り」のほうが分かりやすいと思うので、そのように表記した。)



トニー・カーティスといえば…

2010-10-02 23:52:00 | 映画・小説etc.
ちょっと前に、米国人俳優のトニー・カーティスが死んだというニュースが流れてきた。

日本人がカーティスを思い浮かべるとすれば、まずは、マリリン・モンローとジャック・レモンと共演した『お熱いのがお好き』(1959) (原題:"Some Like It Hot")だろう。

が、わたしの頭の中に浮かんだのは、70年代初頭 (日本での放映は70年代中頃) にロジャー・ムーアと共演したTVドラマ『ダンディ2 華麗な冒険』(原題:"The Persuaders!")。英国貴族のブレット・シンクレア卿 (ムーア)と、ニューヨークのスラム街出身で成功した実業家ダニー・ワイルド (カーティス) という正反対の二人 (が、ともに女好きなところは共通している) が組んで探偵だかスパイだかのようなことをやるという筋立てで、両俳優が紋切型の英国貴族と紋切型の成り上がりのヤンキーを、楽しそうに演じていた。

BBCのニュースをポッドキャストで聴いてたところ、BBCのRadio 4がカーティスの死にあたって、ムーアへのインタビューを行っていた。もちろん、インタビュアーも『ダンディ2』のファンだったらしく、当時のことを質問していた。そう、この作品は英国では今でも愛されているのだ。『ダンディ2』は一度2組のDVDボックスセットになっているので、興味のある方はもし何らかの形で入手可能であるならば、一度観てみることをお勧めする。

お勧めする理由は、この2名の共演のほかにもうひとつある。この作品は広川太一郎と佐々木功の吹き替えがスゴいのである。特に、この作品における故・広川氏のアドリブはある意味すさまじい。当時、TV番組の録画などは一般人には到底無理だったので、わたしはあの番組の音声をカセットに吹き込んで、後で何回も聴きかえしたものだった。

ちなみに広川氏は、カーティスの吹き替えもムーアの吹き替えもやっていたが、このドラマではカーティスの吹き替えを担当している。
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