巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

Song & Dance

2004-11-30 22:05:03 | 映画・小説etc.
いや、劇団四季の「ソング&ダンス」のことではない。アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲、ドン・ブラック作詞でウエストエンドとブロードウェイで上演されたミュージカル、"Song & Dance"のことだ。ロイド=ウェバーのミュージカルとしてはきわめてこじんまりとしたミュージカルで、しかもそれほどヒットしなかった作品だ。

ストーリーはいたって単純。イギリス人の帽子デザイナーである若い女性エマがアメリカにやってくる。そして異文化ギャップにとまどいながらアメリカで暮らすうち、さまざまなアメリカ人の男性と出会って成長するというお話。

この作品は2部形式のミュージカルで、第1部はエマ役の女性が歌だけで話を進め、第2部はダンサーたちのダンスだけが続くという変わった構成になっている。これは、この作品の完成までの経緯が少し変わっているためだ。"Tell Me on a Sunday" という歌だけのワンウーマン・ショーがテレビ番組のために独立して作られた。またそれとは別に、ロイド=ウェバーがチェリストの弟のために作曲したパガニーニのカプリースを基に作った"Variations"があった。そしてこちらにダンスをつけ、"Tell Me on a Sunday"を第1部、"Variations"を第2部として1つの作品とした。

ヒットはしなかったミュージカルだが、わたしはこのミュージカルの音楽が好きで、3つのバージョンを持っている。

まず最初に、マーティ・ウェッブがエマを演じる2枚組のアルバムだ。最初に買ったのはまだCDの時代が到来する前だったために、2枚組の輸入盤LPレコードだった。このレコードは、第2部(つまりVariationsが入っているほう)のある箇所が永遠に繰り返されて終わらないという代物だった。(レコードというメディアには、こういうトラブルは付物だった。)当然、後にCDを買いなおした。

今となっては「珍品」の感があるサラ・ブライトマンがエマを演じたLD(念のために書いておくがLDはレーザー・ディスクの略)も持っている。そのころの彼女のパフォーマンスがどうだったかというと、当時の評価は「ブライトマンは若いため、声は良いのだが役に説得力がない」だった。「若い女性」の役をやって「若いから説得力がない」といわれるのは皮肉だが、みれば確かにその評価の通りだと思う。

そして3つ目は稀代のコメディエンヌであるバーナデット・ピータースがエマを演じる第1幕のだけのアルバム。じつはこれが個人的には一番好きで、わたしの愛聴盤になっている。なにがすごいって、はじめて聴いたときに、歌詞がまったくわからなかったのにもかかわらず、もらい泣きしてしまったぐらいなのだ。

しかし、残念なのは「エマはイギリス訛りの英語を話すがゆえに、アメリカ人男性にチヤホヤされる」という設定なのに、ピータースの発音が「アメリカ人がイギリス英語をまねしました」になってしまっているところ。が、彼女はこれで1985年のトニー賞を受賞。1948年生まれだから、「イギリス人の若い女性」の役を37歳にして歌ってしまったことになる。(Amazonでエマのパートを歌うピーターズの声を視聴できるので、興味がある方は聴いてみてほしい。彼女の元の声質のせいもあるが、たしかに若い女性になりきっている。)

ちなみにこの"Song & Dance"は、1980年代に日本でも日本人キャストによって上演される計画があった。たしかエマ役を元宝塚出身の女優がやることになっていたという記憶があるが、中止になってしまった。たしかほぼ同時期に、「エビータ」の英国からの来日公演もチケットまで売られたあげく、公演が中止になった。何が起こっていたのかわたしには良くわからないが、とにかく「エビータ」の来日公演のチケットは払い戻しにいったヨ。

さて、劇団四季の「ソング&ダンス」にはロイド=ウェバーの"Song &Dance"の曲のいくつかが組み込またことがあるらしい。そんなことしないで、どうせならフルバージョンやってよ。

しかし、ロイド=ウェバーの作品を国内で観ようと思ったら、映画にでもなってくれない限り、四季の舞台に行くしかないのだろうか。

以下は、Song & Danceの歌詞の一節だ。

どんな風に言えばいいんだか…
でも、アメリカ人の男の人って違うの。
あの人たちは、最初は至極まともにみえるけど、
じつはそうじゃないのよね。
みんなグダグダで、ピリピリしていて、
しかもものすごく神経質だってことがプライドなのよ。
そして、だんだん年をとっていくってことを考えるのが
あの人たちにはとってもつらいことなの。


確かに。こういうアメリカ人男性を、わたしは複数知っている。

song_and_dance

Song & Dance: The Songs - Original Broadway Cast Recording
Original Broadway Cast


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○○のスキマお埋めしま…

2004-11-29 23:50:25 | 日記・エッセイ・コラム
最近、電話でわたしと母を間違える人が多い。

電話での第一声を聞き、わたしを同居している母だと思って、わたしが名乗るまもなく世間話とはじめてしまう人がいる。また電話に出た母をわたしだと思いこみ、確認せずにすぐに仕事の話をはじめてしまう人がいる。

顔の(特に顎の)骨格が似ていないのに間違えられるのは、おそらく声質ではなくしゃべり方のクセが似ているからにちがいない。しかしいくら何でも、60代後半の声と取り違えられるとは、ちょっとばかりまずい。(母よ、すいません。きっとあなたの声が若いんでしょう。)

というわけで、自分のしゃべり方のクセを変えたほうが良いのではないかと思い始めたところだ。

さて本日、いつものように大声で「ハッハッハッ」と笑いながらしゃべっているときに、「そのしゃべり方を変えなくては」の意識が、突然頭をよぎった。そこであわてて笑い方を訂正。声の大きさはそのままで「ハ」を「ホ」に変更したまま笑い続けた。

相手は怪訝そうに言った。

「…喪黒さん?」

ホーッ、ホッホッホッ。

いっそ名刺に「産業のスキマお埋めします」とでも印刷してみようか。名前もふくしまゆみ改め「喪黒福子」でどうだ?


「口角は上向きのほうが良い」と考えられるようになったのはいつごろから?

2004-11-28 15:26:28 | 美容と健康
口角は上向きのほうが良い。

多くの人がそう思っているだろう。実際、口角が下がったへの字の口は不幸顔に見える(と考えられている)。

そして口角の下がった口元は、老け顔にも見える(と考えられている)。通常、口角は年齢とともに下がってくるからだ。『フェイササイズ』にいそしむ同志諸君ならわかるとおり、あの本の中には「口角を上げる(The Mouth Corner Lift)」というエクササイズがある。当該ページにある「1日2回やって、おかあさんのような口元になってしまうのを防ぎましょう」の記述に妙な説得力を感じ、今日も口角を上げるエクササイズを行なうわたしである。でも実際に上がったかどうかはわからないが…

さて、わたしは「口角は上向きのほうが良い」という価値観は昔からのものだと思っていたのだが、実はそうではないらしい。

齢67の母が言うには、母が若いころは口角が上がっている顔は「下品」とみなされたのだそうだ。美人であっても口角が上がっていると、「あの人は、顔立ちはきれいだけれど、口角が上がっているから…」といわれて、顔の造作の欠点として指摘されたものだった。だから若いころの母(1950年代ごろのことかな?)は、日常生活において努力して下向きの口角の表情を作っていたらしい。

そんな口角を下向きにする努力をしていたある日、資生堂の今で言うところの美容部員が母に「口角を上げたほうが良い」と耳打ちした。

世間の基準が「口角が上がっていては下品」だったころのことだから、母は思わず「え?」という顔をした。するとその資生堂の美容部員は、「いまは違うけれど、これからは絶対に『口角は上がっていたほうがよい』と言われるようになるから。」と、言ったのだそうだ。それ以来、母は口角を下向きにする努力をやめた。

母の話が本当だとすると、口角の向きに関する価値観は戦後に変わったことになる。少なくとも戦前までは、日本では口角が上がっていたほうが良いという考える人は、きわめて少なかったようだ。昔の日本では笑顔や微笑の表情のステータスが低く、微笑みを感じさせる上向きの口角も良くないものと思われたのだろうか。とすると、「口角は上向きのほうが良い」という考え方は、西洋から日本に輸入された価値観なのだろうか。

で、今の母は?

先日、炊事をしている母に後ろから呼びかけたところ、ふりむいた母の口もとには、横にイーっとくわえられた状態の割り箸があった。そう、口角を上げるエクササイズをやっていたのだ。

この価値観が新しかろうが古かろうが、とにかく今は老若男女、口角は上向きのほうがよいらしい。そう、男もだ。嘘だと思ったらペ・ヨンジュン氏の口角をごらんあれ。あの上向きの口角の微笑で大量の日本人女性の心をわしづかみにしたらしいから。

…というわけで、現代日本の口角に対する価値観にのっとった口角を作りたいならコレ。

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うむむ、こういう答えは…

2004-11-27 21:13:08 | 日記・エッセイ・コラム
授業で、学生に選択肢を与えた簡単なアンケートをとることがある。「ある特定の状況において、あなたならどうするか」といったもので、唯一の正答などは存在しない類のものだ。こういったアンケートで帰ってくる答えには、ときにわたしを戸惑わせるものがある。

例えば、こんな質問をしたと仮定しよう。(もちろん、実際にはこんな質問は出さない。)

あなたは家族と同居していて、風邪をひいて寝こんでいる家族から「果物なら食べられると思うから買ってきてほしい」と頼まれたと仮定します。この家族は果物なら何でも大好きです。
そこであなたは近所のスーパーへ向かいましたが、あいにく閉店間際のため、このスーパーに並んでいる果物の種類は少ししかありませんでした。またあなた自身も忙しく、他の店に寄る余裕もありません。

さてこのスーパーにあった果物は、以下のようなものです。これらの果物の中から1種類を選び、またその果物を選んだ理由を書きなさい。


  • 温州みかん

  • りんご

  • バナナ

  • グレープフルーツ

  • アボカド

  • 洋ナシ



出題した側としては、回答者が風邪をひいている者に対してどのような果物がよいと思っているのかを、そしてなぜそう思っているのか把握したいと思っている。だから期待している答えは、例えば次のようなものだ。

「りんご。整腸作用があるし、もしそのまま食べるのが大変なら、おろしりんごにしてもよい。」

「バナナ。栄養があるから。かんきつ類もビタミンCが多くて良いと思うが、風邪をひいているとのことなので、酸味が喉にしみるかもしれないので避ける。」

しかし1種類に選びきれず「洋ナシかグレープフルーツ」と書いてくるのもあるかもしれないし、「そのとき店頭にあるもので一番安いもの」という考え方もあるかもしれない。場合によっては「このバナナが台湾バナナだったらバナナを選ぶが、他の産地のバナナだったらいやだ。」などという多少ひねった答えが出てくる可能性も考慮している。

わたしがとまどう答えとは、次のような類のものだ。

「家族が風邪をひいているのは心配だ。そして果物は体に良い。選び方にはいろいろあると思うが、いずれの果物を選ぶにしろ慎重に選びたい。」
 ??で、どれを選んだの?

「りんごもいいと思うし、バナナもいいと思う。アボカドも体にいいと聞いているし、グレープフルーツやみかんも良いだろう。」
 ??で、その結論は?

「妥当なものを選ぶ。」
 ??で、あなたのいう「妥当」なものとは? そしてあなたの考える「妥当」の基準は?

また、「本人の一番好きなものを選びたい」「別の店へ行く」「わたしは1人暮らしなので、家族のために選ぶ必要はない」のような類の答えが出てくるともあり、こうなると「質問を読んだ?」になってしまう。こういう答えを書かれると困るので、わざわざ「果物は何でも好きです」とか、「あなた自身は時間もなく他の店に寄る余裕はありません」とか「…と仮定します」などと書いておくのだが。

気になるのは、このような回答をするのが必ず日本人だということだ。わたしの担当している科目を履修している学生には、毎年アジアからの留学生が数名含まれるのだが、留学生たちはこんな回答はしない。彼らは1種類選び、その選択の根拠を書いてくる。

では、どうして日本人学生の中に、このような答えを書くものがいるのだろうか?

ひとつの仮説として、日本人にしばしばみられる「状況次第でとる行動が変わることを考慮して、ひとつの回答の提示や明言を避けようとする意識」が強く働いているためと考えられるかもしれない。彼らが日常会話において日ごろ取っている「答えをあいまいにする」行動が、そのまま文章に反映されてしまうのかもしれない。

もうひとつの仮説として、いくらこちらが「正答はない」といっても、答える側では出題者が期待する答えが存在していると思ってしまっている可能性があげられる。そして自分がその期待された答えを書けるかどうかがわからないため、わざと答えをぼかしている状況が考えられる。(企業などで研修をやると、しばしばこの「相手の望む答えを出そうとする努力」が、日本人の間にはかなり強く働いていることを実感する。)

3つめの仮説としては、彼らにロジカル・シンキングの能力が欠けているものだ。そして、4つ目としては、「最近の大学生の日本語力が低下している」というものだが、特に4つ目については、あってほしくない。


ヤマヨシのわさビーフGOLD

2004-11-26 19:28:41 | 
wasabeef_g「ヤマヨシのわさビーフ」というわさびとビーフ風味のついたポテトチップがあるが、この「わさビーフGOLD」は、その大人向けバージョン。さらにわさびの辛味がきいて、しばしば鼻をつままねばならないほどだ。七味唐辛子やかんずり等、和のテイストの辛味が大好きなわたしは、この「わさビーフGOLD」にもいたく感銘を受けた。

静岡産わさび使用
松坂牛使用
大人向け
辛口仕上げ


と、堂々と書かれているところも感動ものだ。(え、松坂牛?)

ところで「わさビーフ」といえば頭に「ヤマヨシの」が必ずつくものだと思っていたのだが、じつはヤマヨシにそれほどの知名度はないらしい。わたしの周囲ではわさビーフの名は知っていても、ヤマヨシの名を知っている人はいなかった。

でもなんでわたしはヤマヨシの名を知っていたのだろう…と、よくよく考えて思い当たった。東武東上線(よく使う)に乗っていると、常盤台駅から中板橋駅の間で「ヤマヨシのわさビーフ」の看板が見えるのだ。袋を見たら、このメーカー山芳製菓株式会社の本社は東京都板橋区常盤台だった。なるほど、いつのまにか本社の看板の文字が、わたしの頭の中にインプットされていたのだ。

わさビーフGOLDは1袋45g入り110円。ウェブサイトをみると通販もしてくれるらしい。全国のワサビストに試食をお勧めする。

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「松阪牛使用の『わさビーフGOLDとチリビーフGOLD』.ハバネロは入ってないけど結構辛い,そしておいしい!」 (Dの仮面(仮)) (2005.03.17追加)