巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

狂犬病

2006-11-23 11:29:24 | 日記・エッセイ・コラム
36年ぶりに、狂犬病が国内で発症…の次の発症例が、なぜその1週間後なんだろう。

それにしても、日本から狂犬病がなくなって久しく、狂犬病の怖さは遠い昔の話となってしまった。そのため噛まれた人には、イヌに噛まれたことによる狂犬病のリスクが思い浮かばなかったのだろうか。両名とも60代であり、狂犬病にかかった場合の怖さは知っている世代のはずだが。

わたしが子供のころ、すなわち1960年代(おっと、たびたびの年齢バレ)の日本では、狂犬病日常生活の中に現実に存在する恐怖のひとつだった。当時はまだ、飼いイヌでも放し飼いが一般的だったし、野良イヌも結構いた。野良イヌたちが集まって野犬の群れと化している場合もあった。飼いイヌには狂犬病の予防接種が盛んに奨励されていたので、狂犬病にかかる飼いイヌの数は少なくなってはいたが、そんなものを受けていないノライヌたちは、狂犬病のハイリスク・グループとして、とっても怖い存在だった。

そのためかどうか、野犬狩りも結構あった。イヌの立場に立てば、野犬狩りは理不尽なジェノサイドだが、ニンゲン側は本当に彼らが怖かったのだ。噛まれることも怖いが、噛まれたことによる狂犬病の発症もおそろしかった。

わたしも2歳のときと7歳の時に、イヌに手をガップリと噛まれた。どちらの場合も近所の飼いイヌで、放し飼いにされているイヌがわが家の庭に入りこみ、そこで噛まれたのだった。そしてどちらの場合も、大人たちが心配したのは、噛み傷そのものよりも狂犬病のことだった。噛まれたと知った母が飼い主の家におもむき、開口一番に言ったことは、そのイヌが狂犬病の予防接種を受けているかどうかの質問だった。(そして2歳にして「狂犬病」という単語が、わたしの日常語彙に加わった。)

とはいえ、わたしは狂犬病のイヌを、実際に見たことはない。1960年代にもなると、狂犬病のイヌの数はかなり減っていたのだろう。

しかし、1930年代後半生まれの母の子供時代には、狂犬病もちのイヌがまだその辺でウロウロしていたらしい。そのため、母が子供のころは、それらしいイヌがやってくると、見つけた人間は「狂犬病のイヌがいるぞ! ○○の方向に歩いていくぞ!」と大声を上げことになっていたとのことだ。

すると、外にいる人間は、自分のいる場所からもっとも近い家の玄関の中に逃げ込んだ。そしてそれぞれの家はドアを開けて、玄関に逃げ込んできた人を入れた。子供嫌いのうちでも玄関の中までは子供を入れるし、たまたま家の前にいた人が犬猿の中であっても、あるいは見知らぬ人であっても、とにかく玄関の中にいれてかくまうというのが、暗黙のルールだったらしい。そして、窓からイヌの様子を伺いながら、「XXの方に歩いていくぞ」と大声を掛けあっては、イヌがいなくなるまでやり過ごしていたとのことだ。

で、ここまで書いて考えてしまった。たとえば仮に、いま日本に狂犬病のイヌがいたとする。そしてそのイヌがこちらに向かってくる。今の社会情勢で、見ず知らずの人間のために玄関を開け、中に入れることができるだろうか。それとも別の危険やわずらわしさを考えて、玄関を閉じたままにしておく家が多いのだろうか。


すいません、告白します

2006-11-22 23:53:15 | 日記・エッセイ・コラム
先週の土曜日(9月18日)に、賞味期限が切れた韓国直輸入のキムチを、炒めてチゲ鍋にぶち込み、「賞味期限切れのものを食べると必ずお腹を壊す」と主張する、繊細な胃腸の持ち主に食べさせてしまいました。わたし自身は「過度に進んだ発酵がわたし好み」と一方では思いつつ、しかしもう一方では一抹の不安を感じておりました。ビンの中で進んだのが乳酸発酵ではなく、別のものが増殖していたらどうしようか…と。

しかしとにもかくにも、わたしも当日は大量にチゲ鍋を食べ、翌日には残りのスープにうどんを入れてまた食べました。その夜も次の日も、お互いに大丈夫だったようで、安堵しております。そしてほとぼりがさめたころだと思い、謹んでここに告白いたします。

あの、キムチの賞味期限は2ヶ月前の2006年9月12日でした。

それにしても、やっぱりキムチは炒めていれないとおいしくありません。そしてチゲ鍋の素は、モランボンのキムチチゲ用スープ(辛口)に限りますね。




ポケットスコアのススメ

2006-11-16 19:43:58 | 日記・エッセイ・コラム
かつての同僚から、久々にメールがあった。メールの内容は、もっか彼女が夢中になっているラフマニノフのピアノ協奏曲第2番についてだ。

どうもこの曲には、よくも悪くもメロドラマの大げさなBGM的な響きがある。そのため映画『逢びき』(1948年、デヴィッド・リーン監督)で使われいたし、フィギュアスケートでもよく使われて来ているので、クラシックファンならずとも、CDを持っている人は多いと思う。

で、彼女が突如として、このラフマニノフのピアノ協奏曲に夢中になった理由は、他の多くの方々と同じ「のだめカンタービレ」だ。(ちなみにこのドラマなら、わたしも観ている。)メールにはこの曲について、誰が演奏した盤をわたしが持っているか、誰の盤がお奨めかというような質問が書いてあった。

とりあえず、定評のあるものを2つほどあげておいた後、興奮して何度もドラマ版の該当シーンの録画を再生していると書いてきた彼女に、わたしはさらにトドメの一言を加えて返信しておいた。

「CDのほかにポケットスコアも買えば、さらに楽しめると思います」

ポケットスコアとは、スコア(=総譜、すべてのパートがまとめて書かれている楽譜のこと)の中で、大体A5版ぐらいのサイズの大きさのもの。指揮者が使う大型(A4)のサイズのものと異なり、そのままこれを指揮台に置いて指揮ができる…ってな大きさではないが、クラシック好きには結構楽しめるシロモノである。

わたしのような素人のクラシック愛好家としては、音楽を聴きながらポケットスコアを片手に譜面を追っていくのもよし、またスコアを読みながら、頭の中で音楽を再生するもよし。各パートを別々に再生するのも、またはいくつかのパートを組み合わせて再生するのも、もちろんすべてのパートを一斉に再生するのも、脳内再生ならお好み次第だ。もちろん耳コピーをした後に、スコアで確かめるのも良い。(あ、移調楽器に注意ね。)

とにかくスコアがあると、1つの曲に対してさらに多様な愉しみ方ができる。このさい、彼女にはスコアを買っていただき、しばらくこの愉しみににどっぷりと浸かっていただこう。

(ちなみに、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のポケットスコアの購入は、楽譜ネットからどうぞ。)

で、こんなポケットスコアに、高校のころのわたしは、なけなしのお小遣いをつぎ込んでいた。もちろんレコード(当時はCDなどまだ存在しなかった)は当時のわたしには高価なのでほとんど購入できず、もっぱらNHK FMのクラシック番組をエアチェックが専門だった。その中に気に入った曲があると、池袋西武に走ってポケットスコアがあるかどうかを確認して購入。ポケットスコアを眺めつつ、カセットに録音した音楽を何度も再生したものだ。(ここでちょっと遠い目をさせてね。)

さて、今年の春、引越しにあたっていろいろな荷物を整理していたら、父が若いころ買ったらしいポケットスコアが何冊も出てきた。父がこういうものを購入していたとは知らなかった。

いやぁ、おそろしい。血は争えないものだ。父娘ともどもクラシック音楽を愛しつつも、どちらも音楽家になるほどの才能がなかったんだけれど、ポケットスコアで鬱憤をはらしていたとは。若き日の父は、きっと休日になるたびにこのスコアを見ながら、指揮者になりきっていたのだろうね。父の残していったポケットスコアは紙の質が異様に悪く、ひどく劣化していて手に取るとボロッと紙の端がボロボロと崩れ落ちていった。

Licadちなみに、わたしが持っているラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のCDは、セシル・リカドのピアノ、クラウディオ・アバド指揮のシカゴ交響楽団により1983年に録音されたもの。このフィリピン人の「美人ピアニスト」(カッコつき)リカドとアバドの演奏は、当時はかなり評価が高かったと記憶しているが、彼女は今は何をしているんだろう。日本ではリカドの情報が聞かれなくなって久しく、「あの人は今」的扱いになっているのが悲しい。



入浴剤について

2006-11-10 00:36:06 | 日記・エッセイ・コラム
■ 入浴剤の種類

東京23区内とはいえ、朝晩は冷え込む今日このごろ。しかしいくら冷え込んでも、ニッポン人には風呂がある。1日の最後に入浴剤入りのお風呂で体の芯まで暖まり、そのままお布団へGoとなれば、フトコロは寒くとも体は朝までポカポカ。白状すると、冬には電気敷毛布を使っているのだが、とにかくお風呂文化のある場所に生まれてきた幸せに酔いしれることができる。

昨冬までのわが家は、LPガス使用のバランス釜のお風呂であった。沸かしすぎてお風呂の湯を沸騰させてしまった回数は数知れず。ついには、うっかり空焚きして釜を壊し、懐も体も寒くなってしまったものだった。

いまのわが家はエコキュートのお風呂だ。空焚きと温度調整の心配のない自動給湯タイプのお風呂は、サイコー…と言いたいところだが、実はそうは言えない。お風呂の入浴剤について、自動給湯であるがゆえのよけいな制限がでてくるのだ。

まず、硫黄成分が含まれるものは使用できない。硫黄成分が含まれる入浴剤というと、ドラッグストアで簡単に入手できるのは六一〇(ムトー)ハップあたり。これは以前のバランス釜でもダメだったので使用したことはなかったため、今回も使用不可でも別に気にはしない。

次に濁り湯系もだめ。本体の熱交換器が腐食するからということだ。以前は濁り湯系の入浴剤を好んで使っていたので「濁り湯系禁止」は痛いが、これも涙をのみつつ譲歩することにしよう。

しかし、トドメは発砲系がダメだということ。発砲系入浴剤を使用すると湯はり量センサーが狂うことがあるからだとのことだ。冬のバブのお風呂を愛するわたしとしては、最初にお風呂の取説を読んだときには、奈落の底に突き落とされたような気分だった。

●入浴剤を使うときのお願い
〈避けて頂きたい入浴剤〉ふろ循環ポンプの不具合や配管等の金属腐食の原因になります。
  • 炭酸ガスにより発泡させるもの

  • 硫黄成分が含まれるもの

  • 炭酸カルシウムを含むもの(濁り湯状にさせるもの)

(三菱電気温水器のサイトより)


か、悲しい。自動給湯タイプも使える入浴剤の、より充実したラインナップを、切に切に望むものである。


■ 入浴剤の香り

しかし、使用可能な入浴剤の種類の少なさをどう嘆いても、現状で無理なものは無理だ。というわけで、濁り湯系と発表系はいさぎよくあきらめて、透明タイプ・非発砲系のスタンダードな入浴剤を買いにいった。

Mogitate_ringoドラッグストアで目に付いたのは、今秋新発売のバスクリンの「もぎたてりんごの香り」だ。リンゴといえば、子供のころわたしが病気になると、母がすりおろしリンゴを作ってくれたものだった。つまりわたしにとって「りんご」は、昔から癒しのイメージ。もちろん入浴剤の老舗ツムラさんがねらっているのも、心を落ち着かせるイメージにちがいない。

しかし最近は、フレグランスにもヘアケア製品にも、そして部屋やトイレの芳香剤にまでフルーツ系の香りが氾濫しており、ゆえにフルーツ系の香りを入浴剤に使うのは、非常に微妙だ。つまり、わたしは悪い香りだとは思わなかったが、人によっては芳香剤臭いと思うかもしれない。すでにリンゴの香りの消臭剤芳香剤が、市場に出回っているのだから。

そういえば昔、トイレの芳香剤といえばキンモクセイの香りが定番だったが、いつのまにかなくなってしまった。キンモクセイの香りの芳香剤がなくなった理由として、トイレの芳香剤にキンモクセイが使われすぎたため、天然のキンモクセイの花の香りがトイレをイメージさせるようになってしまったためだと推理していたのだが、どうやらその推理は正しかったらしい。(トイレの「キンモクセイの香り」が衰退した理由を参照)。リンゴのようなポピュラーな果物の香りも多種多様なものに使いすぎると、キンモクセイの二の舞になりかねない。

ところでツムラさん。「もぎたてりんごの香り」もいいですが、これはむしろ若い層向けの香りでしょう。中高年向けには「インドりんごの香り」のほうが、より癒し度が高いと思うんですが、どうせなら期間限定で販売する気はありませんかねぇ、「バスクリン インドりんごの香り」。

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「トイレの「キンモクセイの香り」が衰退した理由」Exeite Bit コネタ




ヨウシュヤマゴボウの実を食してみる

2006-11-03 16:48:03 | 日記・エッセイ・コラム
「ブルーベリーと紹介なんと毒物だった」

 テレビ東京が27日、同日午前6時45分から放送した「おはスタ」番組中でブルーベリーと紹介した植物が、食べるとおう吐などが起きる「ヨウシュヤマゴボウ」と分かったため、注意を呼びかけた。同番組では東京・三軒茶屋小学校を紹介し、学校内の植物としてブルーベリーを取り上げた。しかし、放送後、実はこの葉や根を食べると、おう吐、下痢、まひなどの症状を起こす可能性があるヨウシュヤマゴボウと分かり、同局の夕方のニュースやホームページで食べないように呼びかけた。
(日刊スポーツ)[2006年10月28日6時31分]
http://www.nikkansports.com/entertainment/f-et-tp0-20061028-109436.html


あ~あ。子供のころこれで色水遊びをした方は多いだろうに、こともあろうにヨウシュヤマゴボウをブルーベリーと間違えるとは。

Pokeweed_1

ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)(別名「アメリカヤマゴボウ」)は東京23区内でも結構みることができるし、実際にわが家の庭にもある。写真は今年の春に一度更地にしたところから、たくましくも出てきた数本だ。生長が早く、葉がよく茂るので、夏の間はわが家の庭を虎視眈々と狙うノラネコどもが、よく葉陰に隠れていたものだ。

Pokeweed_2

その鮮やかな実には毒はないとのことで、食べても大丈夫らしい。「らしい」などと無責任なことを書いてそのままにしておくのもナンなので、虫がついていなさそうなのを5粒ほど食べてみた。生まれてはじめての体験である。

まぁ、かすかに甘い(ような気がする)し、吐き出すほどまずくはない(ので飲み込んだ)。しかし、決して人間の食欲をそそるような味ではなく、大量に食べる人はいないだろう。仮にこの実がおいしかったら、戦後の食糧難のときに、食べつくされていただろう。

この実は英語で "inkberry" と呼ばれることがある。実の汁の色から来ているのであろうが、別種の植物(の実)の名前でもあるため、英語のネイティブには "pokeweed" のほうが、ヨウシュヤマゴボウをイメージしやすいようだ。

しかし、今夜体調が悪くなったら、ヨウシュヤマゴボウの実のせいかも…