36年ぶりに、狂犬病が国内で発症…の次の発症例が、なぜその1週間後なんだろう。
それにしても、日本から狂犬病がなくなって久しく、狂犬病の怖さは遠い昔の話となってしまった。そのため噛まれた人には、イヌに噛まれたことによる狂犬病のリスクが思い浮かばなかったのだろうか。両名とも60代であり、狂犬病にかかった場合の怖さは知っている世代のはずだが。
わたしが子供のころ、すなわち1960年代(おっと、たびたびの年齢バレ)の日本では、狂犬病日常生活の中に現実に存在する恐怖のひとつだった。当時はまだ、飼いイヌでも放し飼いが一般的だったし、野良イヌも結構いた。野良イヌたちが集まって野犬の群れと化している場合もあった。飼いイヌには狂犬病の予防接種が盛んに奨励されていたので、狂犬病にかかる飼いイヌの数は少なくなってはいたが、そんなものを受けていないノライヌたちは、狂犬病のハイリスク・グループとして、とっても怖い存在だった。
そのためかどうか、野犬狩りも結構あった。イヌの立場に立てば、野犬狩りは理不尽なジェノサイドだが、ニンゲン側は本当に彼らが怖かったのだ。噛まれることも怖いが、噛まれたことによる狂犬病の発症もおそろしかった。
わたしも2歳のときと7歳の時に、イヌに手をガップリと噛まれた。どちらの場合も近所の飼いイヌで、放し飼いにされているイヌがわが家の庭に入りこみ、そこで噛まれたのだった。そしてどちらの場合も、大人たちが心配したのは、噛み傷そのものよりも狂犬病のことだった。噛まれたと知った母が飼い主の家におもむき、開口一番に言ったことは、そのイヌが狂犬病の予防接種を受けているかどうかの質問だった。(そして2歳にして「狂犬病」という単語が、わたしの日常語彙に加わった。)
とはいえ、わたしは狂犬病のイヌを、実際に見たことはない。1960年代にもなると、狂犬病のイヌの数はかなり減っていたのだろう。
しかし、1930年代後半生まれの母の子供時代には、狂犬病もちのイヌがまだその辺でウロウロしていたらしい。そのため、母が子供のころは、それらしいイヌがやってくると、見つけた人間は「狂犬病のイヌがいるぞ! ○○の方向に歩いていくぞ!」と大声を上げことになっていたとのことだ。
すると、外にいる人間は、自分のいる場所からもっとも近い家の玄関の中に逃げ込んだ。そしてそれぞれの家はドアを開けて、玄関に逃げ込んできた人を入れた。子供嫌いのうちでも玄関の中までは子供を入れるし、たまたま家の前にいた人が犬猿の中であっても、あるいは見知らぬ人であっても、とにかく玄関の中にいれてかくまうというのが、暗黙のルールだったらしい。そして、窓からイヌの様子を伺いながら、「XXの方に歩いていくぞ」と大声を掛けあっては、イヌがいなくなるまでやり過ごしていたとのことだ。
で、ここまで書いて考えてしまった。たとえば仮に、いま日本に狂犬病のイヌがいたとする。そしてそのイヌがこちらに向かってくる。今の社会情勢で、見ず知らずの人間のために玄関を開け、中に入れることができるだろうか。それとも別の危険やわずらわしさを考えて、玄関を閉じたままにしておく家が多いのだろうか。
それにしても、日本から狂犬病がなくなって久しく、狂犬病の怖さは遠い昔の話となってしまった。そのため噛まれた人には、イヌに噛まれたことによる狂犬病のリスクが思い浮かばなかったのだろうか。両名とも60代であり、狂犬病にかかった場合の怖さは知っている世代のはずだが。
わたしが子供のころ、すなわち1960年代(おっと、たびたびの年齢バレ)の日本では、狂犬病日常生活の中に現実に存在する恐怖のひとつだった。当時はまだ、飼いイヌでも放し飼いが一般的だったし、野良イヌも結構いた。野良イヌたちが集まって野犬の群れと化している場合もあった。飼いイヌには狂犬病の予防接種が盛んに奨励されていたので、狂犬病にかかる飼いイヌの数は少なくなってはいたが、そんなものを受けていないノライヌたちは、狂犬病のハイリスク・グループとして、とっても怖い存在だった。
そのためかどうか、野犬狩りも結構あった。イヌの立場に立てば、野犬狩りは理不尽なジェノサイドだが、ニンゲン側は本当に彼らが怖かったのだ。噛まれることも怖いが、噛まれたことによる狂犬病の発症もおそろしかった。
わたしも2歳のときと7歳の時に、イヌに手をガップリと噛まれた。どちらの場合も近所の飼いイヌで、放し飼いにされているイヌがわが家の庭に入りこみ、そこで噛まれたのだった。そしてどちらの場合も、大人たちが心配したのは、噛み傷そのものよりも狂犬病のことだった。噛まれたと知った母が飼い主の家におもむき、開口一番に言ったことは、そのイヌが狂犬病の予防接種を受けているかどうかの質問だった。(そして2歳にして「狂犬病」という単語が、わたしの日常語彙に加わった。)
とはいえ、わたしは狂犬病のイヌを、実際に見たことはない。1960年代にもなると、狂犬病のイヌの数はかなり減っていたのだろう。
しかし、1930年代後半生まれの母の子供時代には、狂犬病もちのイヌがまだその辺でウロウロしていたらしい。そのため、母が子供のころは、それらしいイヌがやってくると、見つけた人間は「狂犬病のイヌがいるぞ! ○○の方向に歩いていくぞ!」と大声を上げことになっていたとのことだ。
すると、外にいる人間は、自分のいる場所からもっとも近い家の玄関の中に逃げ込んだ。そしてそれぞれの家はドアを開けて、玄関に逃げ込んできた人を入れた。子供嫌いのうちでも玄関の中までは子供を入れるし、たまたま家の前にいた人が犬猿の中であっても、あるいは見知らぬ人であっても、とにかく玄関の中にいれてかくまうというのが、暗黙のルールだったらしい。そして、窓からイヌの様子を伺いながら、「XXの方に歩いていくぞ」と大声を掛けあっては、イヌがいなくなるまでやり過ごしていたとのことだ。
で、ここまで書いて考えてしまった。たとえば仮に、いま日本に狂犬病のイヌがいたとする。そしてそのイヌがこちらに向かってくる。今の社会情勢で、見ず知らずの人間のために玄関を開け、中に入れることができるだろうか。それとも別の危険やわずらわしさを考えて、玄関を閉じたままにしておく家が多いのだろうか。