コーポレートカラーとは、会社のシンボルとなる色のことだ。たとえばMUFGのMUFGレッドとかANAのトリトンブルーとかいったもので、1色のこともあれば2色以上のこともある。
ある程度以上の規模を持つ企業がコーポレートカラーを決めている場合、ブランド・コンサルティング会社などに頼んで、会社が醸し出したいイメージと、色が持つイメージをすり合わせて戦略的に作られることが多い。
コーポレートカラーを決めている企業の中には、同時にウェブサイトや印刷物、PowerPointのスライドなどで使用する色を、厳しく決めているところがある。その企業が作るコンテンツやマテリアル全てに統一感を持たせるためだ。通常、コーポレートカラーは「使用すべき色」の1色(または複数色)に含められる。
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PowerPointの英語のスライド作りや、すでに日本語で作ったプレゼン資料の英訳を頼まれることが結構ある。大抵は小さな会社からの依頼で、会社が使うPowerPointやWordの社内共通のテンプレートなどはない。
このような場合、スライドの色使いが問題になることが結構多い。
日本人が作成したPowerPointのファイルの中には、作成者が自由に色やフォントを使ってしまって、統一感がない印象を与えてしまっているものが結構多い。また同じ会社から作成者によって雰囲気が違うものが作られたりすることも、よくある。
この統一感のなさを嫌う外国の企業は結構多く、ゆえにそのまま英訳しただけでは、メッセージは伝わってもマイナスの企業イメージを抱かせる危険性がある。なので最低限色使い(及びフォント)は統一しておくことが望ましい。
とはいえ、わたしはデザインのプロではないから、その企業にふさわしいプレゼンのスライドの配色を、一から決めることなどはとてもできない。そこで、とりあえずはOfficeの組み込みの配色パターンを使って配色の統一感を出すことを検討できないかどうかを考えてみる。
コーポレートカラーが決まっていない小さな会社の場合は、とりあえずこうやってその場をしのぐとしても、既にコーポレートカラーが決まっている企業の場合、そのコーポレートカラーを含めた配色を考えねばならない。これがわたしには結構難しかったりする。
コーポレートカラーの醸し出すイメージが、その企業の業種のイメージと合わない場合は、さらに頭が痛い。スライドに下手にコーポレートカラーを使うと、プレゼンのメッセージと色の放つイメージが矛盾したりすることがあるためだ。
ので、わたしは言いたい。
「コーポレートカラーは、その後に作成する配布資料やプレゼンのスライドのことも考慮して決めよう。」
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![Bhp_screenshot Bhp_screenshot](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/ce/f8b729c109bb69caf78f266423b34470.png)
ところでこのエントリーの最初のほうで、「コーポレートカラーを決めている企業の中には、同時にウェブサイトやPowerPointのスライドなどで使用する色を、厳しく決めているところがある」と書いた。
その例として、
BHPビリトンという世界最大の鉱山会社がどのような色を使うのかをあげておこう。(右は、同社のスクリーンショット)
この企業はオーストラリアと英国で二元上場しており、この企業のシンボルマークの色はテラコッタとグレーがかったブルー(ブルークレイ)である。このテラコッタが連想させるのは、オーストラリアの酸化鉄(錆)を含んだ赤茶けた土の色だ。そう、この企業はオーストリアで鉄鉱石を生産している。
この会社のウェブサイトとプレゼンテーションのスライドに、全て共通の上記2色を含む規定の8色を使用している。これらの色は、ロゴやタイプフェイスとともに、ブランドコンサルティング会社であるフューチャーブランドが作成したと思われるが、これらの色はカラーバランスのみを考えて決められたわけではなく、恐らくそれ以外の意味があるのだろう。例えば同社が扱っている様々な鉱物の色かもしれない。(全8色の具体的なカラーについては、
A Website about Corporate Identityの
BHP Billitonに関する説明のページを参照。)
BHPビリトンのプレゼンテーション資料を眺めていてわたしが特に興味深く感じたのは、資料で使用される写真の中に赤茶色やブルーがある場合、ときには写真の色合いをいじって、規定のテラコッタ(Pantone 159)とブルークレイ(Pantone 549)の色合いに近づけているようなものがあることだ。(例として、同社の「
レポートとプレゼンテーション」のページから、使用されたプレゼンテーションをPDFファイル化したものをいくつか見てほしい。)
こういう「いろいろな決まりがある」作り方は、スライドの作り手個人の美意識やPowerPoint作成・編集のテクニックを誇示したいという欲求は満足させられないかもしれないが、同じ企業が出す一連のマテリアルとしての統一感はあり、もちろんこのようなものには統一感を優先すべきである。(視覚的に紛らわしくなりがちな3Dグラフの使用を、徹底的に避けているところにも注目。これも「3Dは使うな」というルールがあるのだろう。)
で、もう一度言っておく。コーポレートカラーを決めるときは、ウェブサイトやプレゼンのスライドで、その色をどのように使うかも考慮しつつ決めたほうが良い。