巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

グーラッシュ(グヤーシュ)の話

2019-07-14 20:23:26 | 
最初に断っておきますが、このエントリーは長いですよ。

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中欧へツアーで旅行に行くと1回は出てくる、パウダー状のパプリカをたっぷり入れたハンガリー発祥の牛肉のスープまたはシチュー。オーストリアではグーラッシュと呼び、ハンガリーではグヤーシュと呼ぶ。

バリエーションはいろいろあって、スープのようなあっさりしているか、シチューのようになっているか、肉の煮込み料理になっているかは、その地方や作り手によって違う。「中毒になるほどものすごく美味しい」というものではないが、日本人の口にあうはず。わたしは1年に1回ぐらい食べたくなるので、輸入もののグーラッシュの素があれば自分で作り、なければ、青山通りのカフェラントマンに行く。

で、今回はグーラッシュの素を使わず自分で作ってみようと思ったわけ。



メインとなる食材は、牛肉(他の肉やソーセージを使ったバリエーションもあるけどやっぱり牛肉!)、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、トマト(缶詰やピューレ等でも可)、ピーマン系の何か(ここで「何か」という理由は、このエントリーの最後の方に)を適当にぶち込む。ちなみに私は野菜ゴロゴロがすき。

グーラッシュをグーラッシュたらしめるスパイスとして欠かせないのは、色と風味をつけるパプリカ(辛みのない唐辛子の粉で、スーパーの香辛料売り場には必ずある)を結構な量と、風味を左右するキャラウェイかクミン。そして、ニンニク、ローリエ、塩・コショウ等。唐辛子としての辛みが欲しければ、カイエンペッパーを足すこともある。

調理方法はカレーやシチューとほぼ同じで、具材を炒めたうえで煮込めば、大体それらしいものができる。今回はその際にビーフコンソメの素と白ワインを少々足している。ちなみに上の写真のものは玉ねぎをあまり炒めずに作ってしまったので、そこは失敗。

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グーラッシュには旅行の思い出がある。

祈念すべき最初のグーラッシュ・エクスペリエンスは、2010年オーストリアはザルツブルクにあるヨーロッパ最古のレストラン。ザンクトペーター・シュティフツケラーのグーラッシュ。



ツアー用の料理のため量は控えめ。そしてその時のツアー一行の関心は「できそこないのタコさんウィンナー」のようなソーセージの形状に集中。
丸いドーム型のものは小麦粉やジャガイモベースのダンプリング。これはのちにウィーンのカフェでグーラッシュを頼んだ時にもついていた。実はなぜこの時の、ちょうど乳がんの全摘手術から1周年の日に食べたものだったから。


翌年は、ツアーの中欧旅行中、チェコはブダペストでやはりグーラッシュに遭遇。



ここについているのは、「クネドリーキ」という茹でパン。

実は、その時の中欧旅行では、グラーシュ発祥の地であるハンガリーで、現地添乗員お勧めのチューブに入った「グヤーシュの素」を購入している。それを使って後に作ったのが、これ。



ご覧のように、力が入ってクネドリーキも自作。クネドリーキには強力粉、ドライイーストに古くなったパンを混ぜ込んだ記憶がある。大量のジャガイモで作るバージョンもあると聞く。


次の写真は2013年2月、ウィーンのリンク通り沿いにあったカフェ・ショッテンリンクでのグーラッシュ。



「ピーマン系の何か」といったのは、おそらくこんなものが入るだろうから。私の第一印象は「中途半端に熟した万願寺がのってる?」

さて、ここにもザルツブルクで食したのと同様のダンプリングが。しかもなんと2つも。これだけでもボリュームがあるのに、オーストリアのパンが好きなわたしは、別途三日月形のパンも注文。で、もちろんメランジェ(カプチーノみたいなコーヒー)も。旅行となると、私はしばしば大食漢に変身するのである。
さて、そのとき、グーラッシュを食らう私の前に広がっていた光景がこれ。


1879年の創業の由緒あるカフェだったのだ。リンク通りとはいえもともと観光客があまり来ない場所にあるし、さらには2月という観光のシーズンオフの夕方。観光客は私を除いて全くおらずそこでくつろいでいるのは少数の地元の人だけ。 しかし、このカフェ、残念ながらその後まもなく閉店になってしまった。閉店を知った時はマジで涙した。。


2015年の12月のウィーンのクリスマスマーケットでは、ブール型のパンに入ったグーラッシュがおいしかった。



パンの中には他のシチューを入れてもらうこともできるのだが、やはりグーラッシュが一番おいしそうで、ついでに値段も他のシチューを入れてもらうよりちょっと高い、6.4ユーロだった。蓋はバリバリ食べちゃったが、パンは完食できなかった。

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さて、今回、2週間前に一度作って、「うーん?」と考え、もう一度作り直した。

どこが問題になるかというと、先ずはスパイス。パプリカは必須として、その次に来るのものをキャラウェイにするかクミンにするかが風味の分かれ目。キャラウェイ(甘い風味がするのでお菓子に使われることが多い)とクミン(カレーに必須)では、外見はそっくりだけど、バジルと大葉の違いぐらい風味が異なる。どちらが好きかは好みがあるけれど、先にサッポロビールのレシピを参照にクミンシードを使って作った私は、「これは私が求める風味ではない」という結論に達し、二度目にはキャラウェイシードで作り直したわけ。もちろんキャラウェイとクミンの両方を使うのもありだが、実のところ、クミンは容易に手に入るがキャラウェイは売っていないことが多い。今回、キャラウェイは私がよく行くイオンスタイルとイオンスタイル内のカフェランテにはなく、わざわざカルディに赴いて購入した。(カフェランテに無いとは、怪しからん。)

次に、ピーマンの類。Wikipedeia日本版には、グーラッシュの具材として「生のグリーンペッパー」と書いてあるが、これは、生の青いコショウの実のことではなく、いわゆる野菜として売っているピーマン系のもののこと。日本の青いピーマンの苦みが嫌いなら赤ピーマン(通常の緑のピーマンを完熟させたもの)でよいかもしれない。パプリカ(香辛料のパプリカではなく、サラダに使う赤、オレンジ、黄色の大きなカラーピーマン)でもいいんだけれど、パプリカを入れると全体が甘くなりすぎるというのは、1回目に感じて、2回目には赤ピーマンで作ってみた。グリーンペッパー系で何でもよいのだったら、獅子唐辛子でいいかもしれないし、やっぱり万願寺唐辛子が入手できたらグーラッシュを作ってみたいな。

次にとろみ。これまで私はグーラッシュの素次第でとろみが出るものも出ないものも使ってきた。(どちらも現地のスーパーでクノールとかマギーのものが手に入る。)
今回、一度目にサラサラで作った私は、二度目には多少のとろみを入れるために、牛肉に塩・コショウをした上に、小麦粉をまぶしてから肉に火を通している。さらっとしたスープとして食したいなら、小麦粉は無し。逆に煮込み料理のソース感を大きく出したいのならば、十分に炒めた小麦粉を加えてから煮たり(小麦粉だけ加えると糊感が出てしまうよ)、フランス料理の技だけれど仕上げにブールマニエを足すかという判断になる。

なお、今回グーラッシュを作った背景には、サワークリーム消費という動機もあった。グラーシュにもサワークリームを使うことがあるので。実は先日、ボルシチを作るために、サワークリームを買った。ところが、ロシアの料理なのに、健康を考えすぎて血迷ったか、ココナッツオイル使ってしまった。その結果、風味がボルシチとは違うものになってしまった。ビーツの泥臭さとココナッツオイルの甘い香りが、ミスマッチでした。サワークリーム入れてもどうしようもなくて。

外国の料理を日本の食材だけで作る場合は、やっぱり数回は試行錯誤することが必要らしい。いや、どんな料理でもイメージしたものとぴったりの味を1回で作れる人がいることは知っているが、私はそうではない普通の人なので。しかし、次回はもっと玉ねぎを十分炒めよう。