オフィス・デポが日本国内から店舗販売を引き揚げるというので、ちょっと困っている。詳しくはNikkei Net2009年5月3日付の
「米オフィス・デポ、店舗販売で日本から撤退 年内に20店閉鎖」を参照。)
わたしが仕事で使うメモ類といえば、いつぞや書いた
リーガルパッドの他に、もうひとつある。それがステノブックだ。そのステノブックの入手先がオフィス・デポだったのだ。が、なぜかわたしの通勤圏内にある店舗に限って早々に閉店してしまうか、いつものステノノートの在庫がなく、ついにオフィス・デポの通販を使う羽目になった。リーガルパッドもオフィスデポのものなので、この先は通販に頼らなければならない。
ステノブック(またはステノパッド、ステノノートとも)とは、要するに速記用のノートのことだ。日本ではそれほどポピュラーではないが、速記や逐次通訳のメモ取りに使用する人が多い。もちろん普通のノートやメモとして使用している人もいる。わたしの場合は、たまに逐次の通訳を頼まれたときにこれを使う。
ステノブックの購入で困るのは、大きな店ではないと売っていないことが多く、しかも入手可能な種類が少ないことだ。一番入手しやすいのは日本のマルマンのステノブック(360円)だが、これはわたしの使用目的に対して紙の質が良すぎるし、1冊の紙の枚数が60枚と少ない。比較的手に入りやすくしかも枚数が多いものは、丸善が輸入している140シートが綴られているMeadのCambridgeのものだが、こちらは714円とお高い。そこで安くて、紙質が許容範囲のものを探したら、オフィスデポが扱っている144シート354円也のTopsのDocketの黄色いステノブックにたどり着いた。紙の質は値段相応である。つまり、それほどは良くない(のに、Super Qualityと印刷されている)。
ところで、速記用ノートとは何か。すなわち、何をもって速記用のノートと定義するのだろう。そこでわたしなりに考えてみた。考えつくのは
- サイズは普通のノートより小型でメモ帳よりは大きい
- 台紙が厚い
- 上部スパイラル綴じ
- 多くは紙を切り離すミシン目がある
- メモを横長にとらないような工夫がなされている
- リーガルパッド同様両面印刷である
- 罫線幅は速記方式によって異なる
あたりである。
特徴の1と2については、机の上ではなく、手に持って筆記ができるようにとの工夫である。
日本で見かけるサイズは6インチ(横)×9インチ(縦)(152mm×228mm)の大きさのものだが、海の向こうには異なるサイズが数種あるらしく、わたしが見たことがあるのは4インチ×8インチの縦長のものだ。横幅6インチのものは紙の真ん中に赤い縦の分割線が1本入っているが、4インチのものは分割線が入っていない。
わたしが6×9インチのステノブックを使うのは、まさにこの「1本の分割線」のためである。私がメモをとるときに、メモ自体は罫線に沿って横書に書いても、そのメモを横に長くのばしてとってしまうと、あとで読み返したときに何が何だかわからなくなる確率が高くなるのだ。おまけに紙の右端までノートをとってしまった場合、新たな行を起こすときに、左端までペン先をもっていく労力と時間が必要になり、これが忙しいときには煩わしく感じられるのである。一本の赤い線が、メモ書きが横に伸びいていくのを、止めてくれる。
またスパイラル綴じであるのはこのノートの厚みと用途を考えると当然なのだが、しかし最後に捨てるときにごみの分別では、少々の力と手間が必要になる。また、枚数の多いステノブックでは、紙をどんどん切り離していくと、リング径の大きさが気になってくる。
紙の色については、リーガルパッドと同様に、紙に色つきが多いのが特徴だ。色としてはリーガルパッドの場合は白かイエローであり、ステノブックの場合は、白(アイボリーを含む)か、淡いグリーンか、イエロー(Canary)が中心である。マルマンはアイボリー、Mead Cambridgeは淡いグリーン、そしてTops Doeketの中心はイエローである。Topsにピンクとか紫とかもののもあり、オフィス・デポに売っている。
また両面の罫線印刷は、リーガルパッドと同様に、おそらく罫線印刷時の紙の反りを防ぐためのもので、両面にメモをとるためのものではないのかもしれない。リーガルパッド同様、紙を透かしてみると両面の罫線の印刷がきれいに一致しているからである。赤い1本の縦罫線は安物ではずれていたりするが(おい、Tops君ずれてるぞ!)、それでも何本も引いてある横横線(これは通常は淡いブルーまたはグリーンである)は、透かしてみるときれいに一致している。マルマンのステノブックだったら、紙の反り防止目的に両面印刷などはしなくてもよいのだが、Topsのものになると、紙質ゆえに両面罫線にしておいたほうがよいのだろう。
「罫線幅は速記方式によって異なる」と書いたが、ステノブックの罫線幅でよく聞くのは「Gregg rule」と「Pitman Rule」という幅である。GreggとPitmanは両方とも、英語の速記法の考案者で、米国ではGreggが、英国ではPitmanのほうが優勢だと聞いたことがある。日本国内で入手可能な輸入物のステノノートの多くはGreg Ruleである。(いや、これも日本が敗戦国のせいかも。)Gregg Ruleとは、5/16インチ(約8 mm)の幅の罫線のことなのだが、
丸善のサイトのMead社製品のページによればGregg Ruleは8.80 mm幅のことである。Tops DocketもGregg Ruleと銘打ってあるが8.5 mmである。Pitmanのほうはもう少し幅が広いらしく、この記事を書こうと思って調べたところ、1/2インチ(12.7 mm)ということらしい。ともかく、長さ9インチのステノノートに対して、Gregg Ruleのものは行数が25行前後、Pitman Ruleでは最大18行になる。
ついでに書いておくと、速記用のノートに対して、速記用のボールペンやシャープペンシルといったものもあり、これらは通常のペンよりも芯が太くなっている。複数のメーカーが速記用のボールペンやシャープペン知るを出している。芯の色は、これはリーガルパッドにも共通して言えることなのだが、イエロー・ペーパーには、黒いインクのボールペンより、青インクのほうが目立つ。
ちなみに、わたしがTops Docketのイエローのステノブックと一緒に使用するのは、三菱uni ジェットストリームの1.0 mmの青インクである。紙の消費が著しく激しく、そうやって使った紙は、終了後即シュレッダーという場合が多い。紙がもったいない! よってわたしは紙の両面を使っている。紙質はあまり良くないが、両面が使えないことはない。
[使用画像説明:左はMead Cambridgeのステノブック、真ん中と右はTops Docketのステノブック。画像はクリックすると拡大し、"Gregg Rule" の文字が読めるはず。]