本人死亡を理由とする携帯電話の解約には苦労したのだが、意外とあっけなく解約できてしまったものがある。外資系の医療保険だ。電話1本でだけで解約できてしまった。
医療保険というのは基本的には生きている人の医療費のためのものだ。誰でもいつかは死ぬのであるから、一般的な医療保険に死亡給付金がついていたら、月々の保険料をかなり高めに設定しないと保険会社はやっていけないと思われる。だから、医療保険の多くは死亡時には何も出ないか、あるいは死亡保険金もらうためには別途特約に入って高い掛け金を支払わなければならなかったりする。父が入っていたのも死亡保険金がないタイプのものだったが、父は加入時から高齢だったこともあって、結構な額が口座から毎月自動的に引き落とされていた。
さて、父の死により「某共済」「某傷害保険」そしてこの「某医療保険」の3つの保険を早急に止めたかった。この3つの保険は保険料が口座自動引き落としになっており、父の死による口座凍結の結果、連絡しないでおくと「督促状」がきてさらに面倒くさいことになりそうな気がしたのだ。
この3つの保険はいずれも病死に対応していないので死亡時保険金は出ないのだが、いずれにしろ保険を解約する理由とその証拠が必要ということで、共済と傷害保険については所定の書類の提出と、死亡を証明する書類のコピー(「除籍謄本」「住民票の除票」「死亡診断書」などがこれにあたる)の添付を求められた。(この3つとは関係がないが「自動車保険」も同様の手続きが必要だった。)
しかし、件の医療保険の対応は一味違った。父のアパートに残された代理店の連絡先と保険証書番号をもとに電話をかけたわたしは、まずは身元確認替わりに父の生年月日と住所と電話番号を聞かれ、その後事情を説明したところ、即座にこう返された。
「そうですか。申し訳ないのですが、私どもの保険は生きている方のためのものですので、私どもにできることはございませんので。」
その口調に何となくムカつきを覚えつつの、きわめて冷静を装い「それは存じておりますが、解約の手続きのためにお電話を差し上げているのですが、どのようにしたらよいのかお教えいただきたいのですが」と慇懃に返したわたしは、「それでは、解約の書類をお送りいたします」と言われて、こちらの住所と電話番号を残してひとまず電話を切った。
が、その5分後、先方から電話がかかってきた。
「お客様のご都合で解約ということでこちらで手続きをいたしますので、これで結構です。何もいりません。では。」
なんだかキツネにつままれた気分になった。人が一人死んだ時の死亡時の諸手続きは大変だ。だから、このような申し出はありがたいはずなのだが、あっさりしすぎではないか。この手続きの話を周りの人たちにしたら、何人かが「外資系の保険会社だからじゃないか?」といった。しかし、「外資系だから解約があっさりしている」というのとは、ちょっと違うと思うのだが。
こんな風に、電話一本で解約ができてしまうのだとしたら…
たとえば、の話。「とにかく、1円でも多く飲み代がほしい」と思ったアルコール依存症の配偶者が、保険会社に電話をかけて「主人(または妻)は死にましたので解約します」といえば、それで解約できてしまうことになるわけだ。配偶者なら被保険者の氏名も住所も生年月日もわかっているし、保険証書の番号だってすぐにわかるはずだ。だから、「アタシ(あるいはオレ)は生きているのに、自分が知らないうちに自分の保険が『死亡』を理由に家族に解約されていた」なんてことが、できてしまう可能性がある。
いやもちろん、ねことアヒルは力を合わせてみんな幸せを招こうとしているはずだ。
しあわせよ しあわせよ ここに来ておくれよ
ただし、「みんな」とは「生きている加入者」のことだが。
ちなみに父は、医療保険に結構なお金を毎月払っていながら、一度も病院へは行っていなかったらしい。
医療保険というのは基本的には生きている人の医療費のためのものだ。誰でもいつかは死ぬのであるから、一般的な医療保険に死亡給付金がついていたら、月々の保険料をかなり高めに設定しないと保険会社はやっていけないと思われる。だから、医療保険の多くは死亡時には何も出ないか、あるいは死亡保険金もらうためには別途特約に入って高い掛け金を支払わなければならなかったりする。父が入っていたのも死亡保険金がないタイプのものだったが、父は加入時から高齢だったこともあって、結構な額が口座から毎月自動的に引き落とされていた。
さて、父の死により「某共済」「某傷害保険」そしてこの「某医療保険」の3つの保険を早急に止めたかった。この3つの保険は保険料が口座自動引き落としになっており、父の死による口座凍結の結果、連絡しないでおくと「督促状」がきてさらに面倒くさいことになりそうな気がしたのだ。
この3つの保険はいずれも病死に対応していないので死亡時保険金は出ないのだが、いずれにしろ保険を解約する理由とその証拠が必要ということで、共済と傷害保険については所定の書類の提出と、死亡を証明する書類のコピー(「除籍謄本」「住民票の除票」「死亡診断書」などがこれにあたる)の添付を求められた。(この3つとは関係がないが「自動車保険」も同様の手続きが必要だった。)
しかし、件の医療保険の対応は一味違った。父のアパートに残された代理店の連絡先と保険証書番号をもとに電話をかけたわたしは、まずは身元確認替わりに父の生年月日と住所と電話番号を聞かれ、その後事情を説明したところ、即座にこう返された。
「そうですか。申し訳ないのですが、私どもの保険は生きている方のためのものですので、私どもにできることはございませんので。」
その口調に何となくムカつきを覚えつつの、きわめて冷静を装い「それは存じておりますが、解約の手続きのためにお電話を差し上げているのですが、どのようにしたらよいのかお教えいただきたいのですが」と慇懃に返したわたしは、「それでは、解約の書類をお送りいたします」と言われて、こちらの住所と電話番号を残してひとまず電話を切った。
が、その5分後、先方から電話がかかってきた。
「お客様のご都合で解約ということでこちらで手続きをいたしますので、これで結構です。何もいりません。では。」
なんだかキツネにつままれた気分になった。人が一人死んだ時の死亡時の諸手続きは大変だ。だから、このような申し出はありがたいはずなのだが、あっさりしすぎではないか。この手続きの話を周りの人たちにしたら、何人かが「外資系の保険会社だからじゃないか?」といった。しかし、「外資系だから解約があっさりしている」というのとは、ちょっと違うと思うのだが。
こんな風に、電話一本で解約ができてしまうのだとしたら…
たとえば、の話。「とにかく、1円でも多く飲み代がほしい」と思ったアルコール依存症の配偶者が、保険会社に電話をかけて「主人(または妻)は死にましたので解約します」といえば、それで解約できてしまうことになるわけだ。配偶者なら被保険者の氏名も住所も生年月日もわかっているし、保険証書の番号だってすぐにわかるはずだ。だから、「アタシ(あるいはオレ)は生きているのに、自分が知らないうちに自分の保険が『死亡』を理由に家族に解約されていた」なんてことが、できてしまう可能性がある。
いやもちろん、ねことアヒルは力を合わせてみんな幸せを招こうとしているはずだ。
しあわせよ しあわせよ ここに来ておくれよ
ただし、「みんな」とは「生きている加入者」のことだが。
ちなみに父は、医療保険に結構なお金を毎月払っていながら、一度も病院へは行っていなかったらしい。