巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

資格の種類により、わたしは通い あるいは 独学する

2010-09-05 22:40:20 | 英語
(この記事はOCN Blogzineのブログ人投票箱Vol. 289 「今週のお題:資格を取得するとき、どのように勉強しますか?」へのトラックバックです。)

今回は資格に関するお題です。仕事のため、向学のため、何かと資格を取る人は多いかと思いますが、皆さんはどのように勉強をしているのでしょうか。「通信教育や独学」「学校などに通う」の二択から選んでください。


と書かれても困る。一応、「学校などに通う」にトラックバックをしておくが、「ものにより使い分ける」がわたしのやり方だ。


その1 純粋に知識を競うもの and/or 学ぶための基礎と教材がそろっているものは、独学で取る

  • TOEIC 990

  • 英検1級

  • 宅地建物取引主任

  • マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト(まだ、MOUSと呼ばれていた頃の古いやつ)

  • 日本語文書処理技能検定(今は存在していない資格)


このうち英語系とMSオフィス系の資格については、土台がないところから始めたわけではなく、「普段から仕事において、かなり深いレベルで使っていた」という前提がある。いくら職務経歴書や英文の履歴書に「上級レベルで使用」などと書いてもただの「自称」と解釈されてしまう可能性があるので、証拠として資格をとったもの。傾向と対策がありテキスト類も結構しっかりしているので、基礎知識があれば独学に向く。

上記で特筆すべきは宅建。不動産会社に勤めていた頃とったもので、会社側がきちんと講座を開いてくれたのに、若かったわたしは、逆らって独学でとった。この資格は正確な知識をきちんと覚えておくことが求められる。土壇場の人間の集中力とは恐るべきもので、信じられない短期間で分厚いテキストのすべてのページをほぼ映像記憶のように覚えてしまった。

で、社内講座に出なかったがゆえに、その年の上司からの評価は「協調性なし」で、試験に落ちた人間よりも悪かった。

その2 通わなければとれない資格もある

  • 学位


大学院に入るときには学位が「資格」だなどとは意識しなかった。が、大学で教える場合、ほとんどの大学で少なくとも修士の学位(博士が望ましい)+過去の講師経験が必要となるので、こういう世界では必須資格になるのだろう。実際にわたしも修士であったから非常勤講師の仕事が来た。なお経験については、社会人向けにインストラクターや、セミナー講師、語学講師をしていたことが、「講師経験」とみなされた。

ちなみに大学院での研究は、他人の研究をあれこれと批評しまくり、かつ、自分の研究について十字砲火を浴びても闘志がメラメラと燃える人間に向いている。大丈夫だよ。いくら自分の持論をバッサバッサと切られても、命までとられるわけじゃない。死にたい気分にはなるかもしれないけれど。

その3 資格は必要ないが、通わないと身につかなそうなもの and/or 実情がわかりにくいもの は、とりあえず通ってみる

  • 通訳技術

  • 英文契約書の翻訳・作成・読み方


通訳については「独学でも大丈夫」という人もいる。が、実際に通訳学校へ行くと、どういう場合にどう訳すかのほかに、通訳としてどういう態度を取るべきか、こういうトラブルがあったらどうするか、など、具体的なことが学べる。

また、こちらのほうがスクーリングのメリットだと思うのだが、いろいろな人とともに学ぶことを通じて、自分の語学力や通訳力とは別に、通訳としての身体能力や性格上の適性があるかどうかが、他人との比較でよくわかるようになる。

契約書の翻訳・作成については、英文契約書のノウハウ本もあり、こうした本のほとんどを私は持っている。が、実際に翻訳書を扱っている人はご存じのとおり、そんなものではとても足りない。

国際法律事務所や総合商社のしかるべき部署に配属されてコツコツ10年も20年もやっていれば、先輩方からの指導もあっ
て、英文契約書を扱うために必要な暗黙知の蓄積もできるかもしれない。が、そうではなくて中小の外資系企業でいきなり一人で英文契約書の作成の仕事をふられる立場の人間は、そうはいかない。

結局、数年間契約書にかかわる仕事をやった後で、その手に学校へ行った。わたしがいつも悩んでいる箇所は、英文契約書にかかわる日本人の皆が等しく悩んでいる箇所だということが分かった。そして、そのような悩みにどのように対処しているのかについて、いろいろな解決方法を聞くのは、非常にためになった。


罰ゲームな翻訳

2010-03-14 19:17:03 | 英語
「罰ゲームな翻訳」という種類の翻訳が存在するわけではない。が、仕事の一部に翻訳が入っていると、時々「これはいったい何かの罰ゲームでしょうか?」と思うような文書を翻訳しなければならないことがある。

「内容が限りなくくだらない」「翻訳したってだれも読まないだろうに」というものは、翻訳者のやる気をそぐものだ。それとは別に、「英語自体が変」という、翻訳する側にとってはまことに厄介な文章の翻訳のニーズが巷には結構ある。この手のものは英語をピボット言語とした翻訳に多い。
ピボット言語とは、Aの言語からBの言語に訳したいが、Aの言語からBの言語へ直接訳せる者がいない場合に、その仲立ちをする言語ことだ。(この場合、Aの言語は「起点言語」とよばれ、Bの言語は「目標言語」と呼ばれる。)日本人が関わるものについては、大体は英語がこのピボット言語になる。

たとえば、ベトナム語で書かれた文章の日本語訳がほしいが、直接日本語へ訳せる者がいない場合には、まずベトナム語から英語に訳してもらい、その英訳を日本語に訳すことになる。

わたしにまわってくる英語をピボット言語とした翻訳は、大体が法律文書だ。法律文書というのは、その言語の持つ言語構造のほかに、その国の法体系や商習慣などにも大きく影響されるため、正しく訳したものであっても「英文の法律文書」としては奇妙なものになることが多い。そのうえに、「英語自体が変」が加わると、まさに罰ゲームの世界になるのである。

「文法が変」とか「句読点の打ち方が変で、どの部分がどこにかかっているのかが判断できない」というのも厄介ではあるが、大体は解釈ができる。(とはいえ、やはり問題は残り、後で原文との厳密なすり合わせが必要になる。)しかし、ときに英文がこちらの常識とは異なった内容に解釈できたり、同じ文書内の他の記述と矛盾した内容であると解釈できる場合は、ブチ切れて的場遼介のごとく「ウォォオオ」と吠えたくもなる。(的場遼介が誰かを知らなくても、別にこの人物について調べる必要はない。)

たとえば「A社とB社で折半している企業なのに、この譲渡の条項では一方の当事者に著しく都合がよい」「X条では取締役会の権限を制限していながら、Y条では取締役会はほとんどやりたい放題ができることになっている」などと解釈できている文章にぶつかったとする。

問題は、このような英語を見た場合:
(1) 起点言語からの英訳が間違っている;のか
(2) 英訳自体の内容は正しくて、本当にこんなトンデモ条項/規定がある、
のかは、こちらには区別できない。
(もちろん 「(3) 英語を翻訳をしている人間が英文を誤解した」という可能性もあるのだが、ここではそれは置いておくとして。)

このようなものに下手な配慮をしてしまうと、「本当は (2) だったのに、 (1) であろうと勝手に解釈して、日本語訳を妥当性のある文章にしてしまったため、問題を覆い隠してしまった」ということが、起こる可能性がある。ゆえに、こういう内容を含む文書の翻訳の場合、わたしは英文から解釈できる訳をつけておいて「おそらく英訳で間違えている」と指摘しておくとともに、「もう一度原文を訳し直してチェックした方がよい」と、文書に残して申し上げることにしているのだが…

過去に、そのような英文にぶちあたり、翻訳提出時にその旨を伝えたところ、「じゃあ、きちんとした英語に直してくれましたか?」と言われて、ずっこけて(死語?)しまったことがある。起点言語はロシア語であり、すでに発効してしまった文書である。こちらの一方的な判断で、法的に効力のない英訳のほうを「正しいと思われる英語」に直したところで、何の解決にはならない。

何故こんなことを書いたのかというと、つい最近、またもこの「罰ゲームな翻訳」があったのである。まったく別の業界の別の会社で。しかも「英語がおかしく、英訳の解釈が原文の意図と異なると思われる個所があるので、原文をチェックし直した方がよい」との指摘に、またも「英文は直しましたか?」という質問が来た。

いや、常識的に考えて、起点言語で書かれたオリジナルを見てもいないのに ― 見たとしてもわたしにはわからない言語だが― そんな怖いことをするはずないって! もう、吠える気力もないから歌っちゃうぞ!

「夜の街にヤオー! オフィスビルの谷間にヤオー!」

「Indeed, 彼はアメリカ人なんです」:または、米国人がイギリス英語を書くとき

2009-09-20 22:12:39 | 英語
パンフレット送付依頼の英語の手紙に「英語のレターってどんなふうに書くんだっけ?」なんて悩んでいたころには昔昔には考えもしなかったことだが、メールや、レターや、ドキュメントを英語で書くときに、または英語に翻訳するときに、スペルや文法や表現を米国風にするか英国風にするかを選択しなければならないことが、結構ある。

あのアメリカ語をアメリカ人が世界中で使っていることは、忌々しいことではあるがしかたがない。(ただし言っとくけどね、あれはrubbishだよ。)しかし、それを何で英語が母国語ではなく日本人である君が、しかもネイティブではないにしては英語が結構使える君が、アメリカ語っぽい英語なんか使うわけ? 言っとくけどね、"UN Information Center"ではなく、"UN Information Centre" (国連広報センター)だぜ。"World Food Program" ではく、"World Food Programme" ((国連)世界食糧計画)だぜ。世界はユナイテッド・ステイツを中心に回っているわけじゃないんだよ。
そうは言っても、日本で教えられている英語は、ギブミーチョコレートの時代(=進駐軍に日本が占領されていた時代)の名残もあり、伝統的にアメリカ英語が中心だ。英和辞典だって大体はアメリカ英語が中心で、イギリス英語のスペルで引くと、アメリカ英語のつづりを参照するように表示されていたりする。

相手が米国人や、米国に留学していた経験のある人ならば迷わず普段のわたしの英語になる。しかし、相手がオーストラリア、ニュージーランド、そしてヨーロッパ各国となると、やはりアメリカ英語の文法、表現、スペル、そして発音は、あまり受けが良いものではないらしい。そう面と向かって言われ、修正するようにそれらの国の人たちから指示されたことが、実際に何度もある。

そこでイギリス風英語でいくと決めたときには、Wordのスペルチェック機能の辞書の言語を「英語(英国)」に切り替え(デフォルトでは「英語(米国)になっているはず」)、知っている限りの知識を総動員して、アメリカ的な文法や表現を避けていく。とはいえ、そこは英語が母国語ではないわたしのこと。中途半端になってしまうのであり、だからあくまでも英国「風」英語なのである。

で、ここからが本題だ。仕事での話である。

ブリュッセルに本拠を置く国際弁護士事務所の弁護士チームからのメールのやり取りで、先方の窓口になっているのはチームの一員の弁護士であるA氏である。彼の名前は明らかにアングロサクソン系だ。そして、彼の書く英語はもちろんスペルにおいても文法においても、イギリス英語だった。だからわたしは彼を英国人だと思っていた。英国人らしく、しかも彼の書いたであろうと思しきドキュメントの中身には、"Indeed," で始まる文がやたらと多い。100段落の文章があったとすれば、大体そのうちの少なくとも50の段落の中のどこかには "Indeed," 始まっている文章がある。

その過剰な多用にいつのまにか影響を受けてしまったらしく、先日、わたしもつい文頭に "indeed" を使ってしまったところ、さっそく「それはイギリス人の使い方だよ」とダメ出しをくらってしまった。ちなみにダメ出しをしたのはアメリカに留学経験のある日本人だ。

が、この記事のタイトルにあるように、実はこのA氏は米国人だったのである。

それがわかったのは、彼が書いた約50ページのドキュメントにおいてだ。このドキュメントにはドラフトの訂正のやりとりが数回あったのだが、数ヵ所使われていた "skeptical" (懐疑的な)が、最終稿ですべて "sceptical" に修正されていたのを発見した。

イギリス英語でのつづりが "skeptical" であることをそこで思い出したわたしは、彼のプロフィールをネットで調べた。A氏は米国生まれ米国育ちで、もちろん米国で教育を受け弁護士資格をとり、米国の某州の弁護士会に登録していることが分かった。

つまり、アメリカ英語が母国語のA氏は、今の自分の職務上、仕事における自分の書き言葉をイギリス英語風にしているのである。これって、ストレスなのだろうか。うまく切り替えられるのだろうか。そして、その切り替えはどこで起こるのか。たとえば、A4の紙を渡されるとイギリス英語を書き、レターサイズの紙をみるとアメリカ英語に戻るのか?
しゃべる方の英語もクライアント向けにある程度変えるのだろうか?(たとえば、最低限 "twenty"とか "International"の "t" はきちっと発音するとか。)まぁ、本人に直接聞いてみなければわからないことだが、本人に会う機会はおそらくないだろう。

それにしても、わたしが米国系の企業を数社経験していることもあって、アメリカ人はアメリカ英語を国際ビジネス標準英語と考えて、世界のどこでも使いまくっているというイメージが漠然とあったのだが、まあ彼らもいろいろ苦労はあるんだな。

ちなみに、英国人で一人だけ、わたしが書いた英語をアメリカ英語に直すように指示した人がいる。英国の再就職支援会社の本部のディレクターだった。

日本で外資系企業あての外国人人事部長あてにDMを出すためのドラフトをチェックしてもらった時の話だ。「内容そのものはOKで英語にも間違いはないが、日本ではアメリカ英語が優勢なので、アメリカ英語になおした方が良い」とのコメントが返ってきた。

それから、日本でも官公庁の名称などには意外と英国風スペルが使用されていて、たとえば、厚生労働省は "Ministry of Health, Labour and Welfare" だ。

でも、国際機関を見てみると、たとえばILO・国際労働機関は "International Labour Organization" なのだけれど、なぜに折衷なんだろう?


最近の英語モデルの電子辞書について

2009-05-04 02:03:00 | 英語
以前、電子辞書を買い替えようとしていたのに、衝動的にナノケアイオンスチーマーを買ってしまったことについて、このブログに書いたことがあります。(「電子辞書を買い替えるつもりだったが、買ってしまったものは…」) あの選択にはこれっぽっちも後悔はしていません。わたしの肌は「待ったなし」のひどい状態だったからです。

んが、「もう少し我慢できるだろう」と思っていた電子辞書については、先々週末ついに「限界だぁ!」と思う事態に直面してしまいました。何があったのかは省略しますが(要するに言いたくない)、仕事がらみでちょっと困った事態になってしまったわけです。

こうなったからには、さっさと辞書を注文です。といっても、店舗だと目映りして何が何だかわからなくなるので、基本的なハード面のつくりを店頭でざっとチェックし、その後にネットで機能だの価格だの、使用者のレビューだのをチェックです。もちろん、わたしの周りにいて、似たような仕事をしている人たちに電子辞書のお勧めも聞いてみます。というのは、彼らは常により良い電子辞書を探しているからです。

わたしが仕事で英語を使用しなければならないのは、「仕事でコミュニケーションのために英語を使う」という状況と「英語そのものが仕事になっている」という状況の2種類です。電子辞書を作っているメーカーはわたしの知る限りでは4社ですが、英語コンテンツが充実した電子辞書といえば、いまのところ選択の幅は事実上2社のお値段が高めの電子辞書に限られているということは、御同輩の方々には周知の事実だと思います。この2社とはセイコーインスツル(SII)とカシオのエクスワードです。

結論として、今回はカシオのエクスワード XD-GF10000を購入したのですが、購入のために、全部で6種類ほど検討しましたので、それらを主にコンテンツ面からみていきたいと思います。
今回、候補として検討したのは、以下の6機種です。

  • カシオ エクスワード XD-GF10000 (総合モデル)

  • カシオ エクスワード XD-GF9800 (外国語モデル 英語プロフェッショナル向け)

  • SII SR-G10001 (英語モデル、英語プロフェッショナル向け、PC接続)

  • SII SR-G10000 (英語モデル、英語プロフェッショナル向け)

  • SII SR-G9001 (英語モデル、英語を使うビジネスマン向け、PC接続)

  • SII SR-G9000 (英語モデル、英語を使うビジネスマン向け)


SIIの電子辞書のうち、英語そのものが仕事になっている英語屋、もとい、「英語のプロフェッショナル」向けなのは、SR-G10000またはSR-G10001です。また、仕事で英語を結構使うビジネスパーソン向けにはSR-G9000またはSR-G9001、英語を使う法務や財務の担当者向けにはSR-G8100、英語を使うエンジニア向けにはSR-G8000といった具合になっています。エクスワードはそれほど細分化されてはいません。


□□□コンテンツ□□□

コンテンツについての全体的な印象は、SIIは必要なものだけを入れて必要ないものを入れない引き算の世界、それに比べてエクスワードはいろいろと役に立ちそうなものを入れていく足し算の世界になっているようです。

■ 日本語の辞書

外国語モデルの辞書では、日本語の辞書も充実していてくれなくては困ります。特に翻訳が発生する場合はそうです。翻訳が仕事の一部になることがありますが、翻訳は後々までモノが残ってしまいますので、ひとつひとつの言葉に細心の注意を払わなければなりません。(通訳では、ひとつひとつのことばに、注意を払わなくてもいいという意味ではありません。)

その意味で、わたしとしては、基本の日本語の中に岩波書店の『広辞苑』か、三省堂の『大辞林』(電子辞書版は『スーパー大辞林』)が入ってほしいと思います。『デジタル大辞泉』(小学館)ファンの方、ごめんなさいね。ここでわたしの選択肢からは、エクスワードXD-GF9700とSIIのSR-G10000は外れます。

加えて漢和辞典は必須で、次に日本語のシソーラス(類語辞典)もできればあったほうがよいです。今回購入を検討したモデルでは、漢和辞典はどれにも入っていますが、シソーラスはどちらかといえば上位モデルのほうにのみ入っています。また、XD-GF10000にしか入っていなかったのですが、『数え方の辞典』のような辞典も、和訳のときには役に立ちます。たまに「工場の数え方って?」「この場合、ズボンは『本』で数えるべきか『枚』で数えるべきか?」のような状況が発生するからです。


■ 日本の出版社の英和・和英辞典

日本の出版社が使う英和・和英の辞書については、今回検討したクラスのものはすべて大辞典を入れていますが、電子辞書に使用されている大辞典は大体決まっています。必ずしも優秀な辞書なので選ばれたというわけではなく、出版社側のデジタル化に対する方針もあるのでしょう。

英和でいえば、まずは研究社の『リーダーズ』と『リーダーズ・プラス』。この2つは比較的早くから英語モデルの電子辞書に採用されています。大修館の『ジーニアス英和大辞典』を入れたものが、現在のところ「かなり英語を使う人」の向けようです。SIIのSR-G10001とSR-G10000とには、これに研究社の『新英和大辞典』にが加わります。

通訳・翻訳にかかわっている人の何割かの人が「入れておいてほしい」と思っている大辞典は、小学館の『ランダムハウス英和大辞典』です。わたしが狭い範囲で聞いた中でも『ランダムハウス』の存在ゆえに、購入検討に値する機種はこの2種類しかないと言い切った人が3名いましたし、わたしもできれば入っていてほしいと思いました。この『ランダムハウス』が入っているのは、エクスワードのXD-GF10000とSIIのSR-G10001です。

では、和英はどうでしょうか。

電子辞書のコンテンツの日本の出版社による和英辞典は、英和辞典とくらべるとそれほど充実していません。概して英語モデルでは、研究社の『新和英大辞典』と小学館の『プログレッシブ和英中辞典』の、2種類のうちの両方、または片方が採用されています。英和大辞典が4~5種類というのと比べると、かなりさびしいものです。しかしこれでも、英語モデルの和英が『ジーニアス和英中辞典』だけだったころから比べると、各段の進歩です。(5年前の記事「英語用電子辞書への一考察」を参照。)『ジーニアス』の中辞典は英和のほうはすばらしいのですが、和英については、編集した方には申し訳ないのですが「この辞書で事足りる人がいたら、その人こそが『ジーニアス』だ!」と言いたくなってしまいます。

この和英辞典のコンテンツですが、「上位機種だから2種類とも入っている」というものではないので、注意が必要です。たとえばメーカーのサイトで見る限りでは、SIIでは英語屋さん向けSR-G10001、SR-G10000には『新和英』のみ、英語を使うビジネスマン向けのSR-G9001は『プログレッシブ』のみが入っています。が、SR-G9000は、なぜか両方を搭載しています。CASIOは、XD-GF10000とXD-GF9800とも両方を入れています。

あくまでも主観ですが、最近のよくできた和英中辞典は、日常的な英語でかなり力を発揮します。それは自分自身の言葉として使うときも、他人の言葉を伝えるような通訳・翻訳のような時も、です。その意味で、上級モデルであっても、中辞典は外してほしくないと考えます。『プログレッシブ』、研究社の『ルミナス』、学研の『スーパーアンカー』、そして三省堂の『ウィズダム』あたりが使える和英中辞典でしょうか。『プログレッシブ』はよくできた和英中辞典としての定評があり、わたし愛用しています。つまり『プログレッシブ和英中辞典』が入っていない辞書は、選択からはずしました。




■ 海外の出版社の英語辞書

次に、海外出版社系の英語の辞書を見てみましょう。

メインの英英辞典は大辞典1種類に加えて、1種類から数種類の学習英英(英語がネイティブではない人向けの英英辞典)です。目下のところ、電子辞書の大型の辞典の標準仕様は、『オックスフォード英英辞典(Oxford Dictionary of English)』のようですが、学習英英については『オックスフォード現代英英辞典(Oxford Advanced Learner’s English=OALD)、『コリンズ コウビルド英英辞典(Collins COBUILD Advanced Learner's English Dictionary)』、『ロングマン現代英英辞典(Longman Dictionary of Contemporary English=LDOCE)』のどれかを採用しているものが多いです。『マクミラン英英辞典(English Dictionary for Advanced Learners)は、電子辞書にはないのかな? 余談ですが、これらの学習英英の日本語タイトルは日本での販売名にならいましたが、どれも "Learner" って単語をわざと訳していませんね。マーケティング上の理由なんでしょうが。(何いってんのよ。人間はみな一生Learnerなんだから、わざわざ消すことないじゃないの!)

大型辞典の『オックスフォード英英辞典』は、昔は『オックスフォード新英英辞典(New Oxford Dictionary of English=NODE)』と呼ばれていたものの新版です。英文学・英語学研究者が必要とする、紙で20巻+3巻もののOED(『オックスフォード英語辞典』(Oxford English Dictionary))とは別物です。OEDはCD-ROMだと1枚に収まるらしいのですが、このCD-ROMが1枚で数万円ですから、これを電子辞書に入れたら、電子辞書の価格が跳ね上がり、しかし使用者は限られている…ということになるので、OEDは「英文学研究者モデル」でもない限り、電子辞書のコンテンツには入ってこないと思います。

学習英英でコウビルドがほしければSIIから購入するしかなく、一方、ロングマンがほしければエクスワードになります。わたしは、大学時代にLDOCE(エルドスと読む)の活用本を書いた先生のもとで授業を受けたため、学習英英はコレで刷り込まれています。(あなたのことですよ、名和先生。)で、ロングマンを採用していないSIIはすべて外れてしまいました。でも、実はコウビルドは非常に優秀です。

英語モデルの電子辞書には、海外出版社系の辞書は英英のほかに、シソーラス、イディオム(慣用句)、連語(collocation)、を中心に、句動詞(phrasal verbs)を中心にSentence Dictionaryだの活用辞典だの、といったいろいろな辞書が付いてきます。これらはあれば便利だとは思っても、実際にはなかなか単体で買うことがないものなので、勝手についてきてくれると、私としてはそれはそれでありがたいです。ここで、コウビルド+オックスフォード系がお好みならSIIを、ロングマン+オックスフォード系がお好みならエクスワードという選択になりますが、同じメーカーでも機種により、採用しているものが微妙に異なります。

また、英語辞典(ここではイギリス英語)と米語辞典(アメリカ英語)を別々につけるか否かという問題に関しても、今回検討した6種類では、それぞれ少しずつコンセプトが異なるようです。


□□□機能面・操作性□□□

わたしの場合、操作性は「反応が遅すぎる」「キーがあまりにも打ちにくい」といった場合を除き、それほど重視していません。ここでいろいろと書いているわりには、実際はそれほど電子辞書を使わないためです。自分で英語を書いたり翻訳をしたりする場合には、まずはオンライン辞書に頼ることが多いです。ある単語やイディオムを深く掘り下げて探したいときや、文法面のダブルチェックのために電子辞書を使うことが多く、電子辞書にもとめるのは「詳しい説明」が第一です。そこで自然とコンテンツ重視になります。

というわけで機能面は、簡単にまとめます。

「使い勝手」という面では、SIIのほうが良いと思います。個人的にはキーの形はSIIのほうが好みですし、画面もSIIのほうが見やすいです。エクスワードは一般的に画面が暗めで、そのため暗い所でなくてもバックライトを使っている方も結構いるでしょう。わたしはこれまで使ってきたのがエクスワードだったためそれほどは気になりませんが、SIIの最新機種を使っている方がエクスワーをいじったら、まずは視覚的にイライラすることが多いかもしれません。

画面表示がきれいになればなるほどそれだけパワーが必要なのかどうか、SIIは基本は付属のリチウムイオン充電池に充電する方式です。SR-G10000、SR-G9000については、辞書を長時間使用する人のためにAC電源が付属していますが、乾電池は使えません。電子辞書を持ち歩く人で、充電を忘れがちな人には、市販の乾電池が使えなというのはちょっと厳しいと思います。SR-G9001は補助電源として乾電池が、SR-G10001は乾電池とニッケル水素電池が使えるようになっています。エクスワードは乾電池が基本で、ニッケル水素電池では特にエネループ指定です。わたしはいままでエクスワードの旧機種を何も考えずにトラブルもなくエネループで使っていたのですが、ニッケル水素電池では電子辞書では不具合がでることもあるらしいです。(ちなみに、SR XD-GF10000は電池を入れたときに、乾電池を使っているのか、エネループを使っているのかを設定する画面が出てきます。)

SIIにあってエクスワードにないものはパソコン接続とそれによる拡張機能、逆にエクスワードにあってSIIにないものはタッチパネルということになります。パソコン接続については、実際に使っていないので何とも言えませんが、タッチパネルについては好みの問題だと思います。ただ、SIIのようにコンテンツを絞り込んだ辞書は、タッチパネルはそれほど必要なさそうです。エクスワードの上位機種のようにコンテンツを闇鍋のごとく詰め込んだ辞書の場合には、他のコンテンツに素早く移動するためにはタッチパネルが便利です。

レスポンスは7年前のエクスワードのXD-R9000との比較になってしまいますが、さすがに、最近の電子辞書は1つの辞書(つまりたとえばランダムハウスだけで検索する)場合のレスポンスは、かなり早くなっています。今回購入したXD-GF10000については、複数辞書にまたがる検索については、結果が返されるまでに微妙な間が生じます。これは通訳や、大至急の翻訳で使用するには、少々ストレスがかかる間だと思います。

しかし、90年代前半ぐらいまでは、通訳でも翻訳でも、紙の辞書をめくっていたのです。出先で通訳や翻訳をする人たちは、常に分厚い英和と和英と専門辞書、と大量の関連資料を鞄の中にいれて移動しなければならなかったはずです。それを考えると隔世の感がありますね。



ちなみに、アマゾンでポチりました。

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語学の録音教材

2009-04-14 22:29:04 | 英語
仕事柄、たまに以下のようなお願いをされることがある。

「英語を教えているんですけれど(または「勉強しているんですけれど」)、ネイティブに録音してもらいたいテキストあるので、誰か紹介していただけませんか? もちろんその方に謝礼はお支払いします」

そのようなときはたいがいは断るようにしている。その理由は適任者を探すのが難しいから。

ネイティブの発音なら誰でもいいってものじゃない。発音そのものの訛りの問題もあるのだが、それだけではない。

実は読むのが下手な人が多いんである。会話などはここまでダイコンになれるのかと思うほど棒読み。新聞の記事などは、ホームページリーダーがニュースサイトを読み上げたもののほうがまだましだろうと、思ってしまえることもあるほど。要するに、録音するに足りる読み方ができる人が、少ないのだ。

一方、録音教材を使い倒そうとする人の中には、一つ一つの発音はともかく、気合いを入れまくると、録音された声のピッチだのレイトだの間の取り方だのまで、全部まねしてしまう人もいる。そんな場合に、そもそもの教材が悪いと、大変お気の毒な事態となる。

さて、「棒読み英会話」の恐ろしい録音教材が、かつて私が勤めていた英会話学校には、テキストの副教材としてあった。時代はカセットテープ。そしてもちろん数千円と有料である。わたしはその録音を聞いたことなく、カウンター営業がメインだから、会社の方針もあって生徒さん達に薦めしていたのだけれど、あまり売れなかった。今となれば売れなくてよかった。

ある日、レギュラーのスクールでの授業に加えて、新しく企業レッスン(こちらは相手企業を訪問してレッスンを行う)も担当することになった講師が、カセット教材を手に深刻な顔でわたしに言った。

「このカセット教材の録音、聞いたことある? 信じられないほど棒読みだぜ。まったく使えないよ。」

この講師は日本の某大手経済紙(って、いったら一つしかないよね)の初級英会話クラスを担当することになり、そのクラスの生徒たちにこのテープを副教材として勧めてみようと、初めてこの数千円なりのテキストの会話の録音テープを聞いてみた。聞いてみて、男2名の会話のあまりの棒読みぶりに、おもわずf-wordがたて続けに口からでてしまったらしい。

当時、その某大手経済紙の英会話クラスを担当していたのは、わたしがそのとき務めていた会社ばかりではなかった。数社が様々なレベルを受け持っていたらしく、わたしが勤めていた会社の場合は、わたしの上司の営業努力の甲斐があって、「まずはお試し」的に1クラスを与えられたものだった。だからここで何か粗相があったら切り込み隊長としてのこの講師の責任は重大だし、第一こんな棒読み教材をもっていくなんて、この講師自身のプライドが許さない。

というわけで、この講師は、週末に別の競合他社の英会話学校に勤めている友人に食事をふるまって、この友人と二人でテキストの会話を録音しなおし、それをダビングして企業レッスンで配ったらしい。そういうことが本部にばれると「正規のテープを使え」だの「無料で配らず、ちゃんとお金を取れ」だの騒ぎになるのだが、もちろんそんなことは誰も本部へ洩らさなかったので、なにも起こらずに済んだ。


ところで、同じ教材でも、誰が録音するのかによって随分印象が変わってしまうものだな…と、最近、ほぼ同じ教材の異なる録音を聞いて思った。

その教材とは、ひとつはいつぞやちょっと記事に書いた日向清人氏の2004年春のNHKラジオの「ビジネス英会話」。もう一つはこのプログラムを元に、この日向氏が一冊の本にまとめて2007年にDHCから出版した『即戦力がつくビジネス英会話―基本から応用まで 』

DHCから出版された本は、NHKのプログラムの中にあったStudy Notes、Business Writing、Business Vocabularyは割愛されてるものの、あの半年のプログラムをよくもまぁきれいにコンパクトにまとめたものだと、びっくり。そして「たしかこの表現に似たものを先月かその前の月あたりに、やったことがあるぞ」というようなものに関しては、NHKのテキストではフォローがされていなかったのだが、DHC版ではきちんとテキスト内で注意書きが加えられている。おお、すばらしい。

が、録音されたDHC版のCDには、NHK版にあったあのお気に入りの部分の印象が変わってしまって、不満が。

変わってしまってがっかりしたお気に入りの部分とは、以下の2つである:

  1. 部のミーティングの冒頭で、部長がその会議の基本ルールを決めておこうと「まずは、このミーティングは英語で通すこと」といったことに対して、参加者がしぶしぶ「はぁい」と答えるところの、その答え方の「いかにも嫌だ」という感じが、NHK版の録音のほうが真に迫っている。

  2. 防災訓練の打ち合わせをするCAOの女性の妙にハイパーなしゃべり方も、NHK版のほうが楽しかった。そうそう、CAOって普段は完全に裏方だものね。もと総務の責任者(で防火管理者)としては、あんなに張り切ってしまう気持がわからないでもない。


まぁ、英会話教材をこんな角度で見ている人間もいるということで…

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↑この本のバナーを貼っておきました。ちなみに、このテキスト内にあるような状況は、金融庁の立ち入り検査とか、契約書の交渉でごちゃごちゃになったとか、わたしも大体は経験済みです。で、経験から、このテキストにある表現は、かなり役に立つと言えると思います。著者も言っているように、この本の表現は、仕事で英語を使うのならば、最低限すべてスラスラと使えるようになっておいたほうが良いと思いますよ…って、私も全部使えるわけじゃあありません。