巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

セキュリティソフトをマカフィーからESETへ変更

2012-08-01 22:36:00 | インターネット (CMC)
ミニタワーで使っていたセキュリティソフトを、マカフィーインターネットセキュリティを ESET(イーセット)スマートセキュリティ5に変更。

このミニタワーには、マカフィー インターネットセキュリティがプリインストールされていた。マカフィーの最初の使用期限が来たときに、忙しかったせいもあって、あまり良く考えずにそのままこのソフトの使用期限延長手続きを取ったが、思えばこれは正しくない選択だった。

マカフィーは結構重い。バックグラウンドスキャンは時間が結構かかるうえに、スキャン時はPCの動作がかなりもっさりする。

しかも、使用期限延長の手続きのために、同社のために一度使ったクレジットカード情報を使って、次回より勝手に使用期限延長の手続きを行うという、自動期限延長システム(シマンテックでいうところの「オンゴーイング・プロテクション」)が当初は説明不足にまま行われたため、わたしは混乱した。

こちらは1年のみ使用期限の延長をしたつもりなのに、いきなりある日「お客様がご利用されているマカフィー製品のご契約は登録されている決済情報をもとに、更新の手続きが完了いたしました。」のメールが来て、クレジットカードに課金される。その1年延長分の課金金額が製品版と比べてお高め。さらには、どうやってその自動期限延長システムを解除する方法の説明が不十分。

これにはユーザーからのクレームが相当出たらしく、さすがに最近では、「自動更新に関するご案内」の予告メールが来るようになり、更新の解除も簡単にできるようになったけど、やっぱり更新料は少々割高だ。

とどめのように、今年5月に「更新後インターネット接続ができない問題について」が起こり、朝の忙しいわずかな時間に、メールのチェックと返信をしなければならないわたしは、ついに切れてしまった。その後この問題は解決されたけれど、自動更新に使用したクレジットカードの期限が今年3月で切れた今、7月末のソフトの使用期限をもって心置きなく乗り換えを決心したわけである。

ESETにしたのは、以前NOD32を使用したことがあり、その時の印象が結構よかったためだ。日本での販売元とサポートが、キヤノンITソリューションズだというもの、ポイントだったりする。

開発元ESETは農業国スロバキアの企業だ。工業国チェコとはあまりに違いすぎて1つの国家を継続していくことが難しく、「ビロード離婚」になったという歴史がある。NOD 32が軽かったのは、自国のPCのスペックが平均して低いので、それに合わせたという話を聞いたことがある。

今のところ不満はない。ESETのインストール時にスキャンしたところ、なんとバックアップドライブにの2010年4月のバックアップ分にトロイの木馬が1つ入っているのを発見した。たまにバックアップドライブもスキャンしていたんだけれど、どうしたのかしら。

ところで、起動時に一瞬現れるESETのキャラの"I, Robot" のロボットみたいな顔(以下のyoutubeを参照)が怖い。こういうキャラをマーケティングに使う感覚が同社にもともとあるのか、それともグローバルマーケティング戦略ゆえか。いずれにしろ、日本の企業だったら、もうちょっと親しみやすいキャラをたてる気がする。



せめて一瞬現れるあのロボットに、いくつかバージョンがあるとか(たとえば詳細設定でピンクのアフロのかつらをかぶったバージョンが現れるようにできるとか)、せめてサニーみたいにウィンクしてくれるとかだと、もうちょっと親しみがわくんだけれど。

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「ネットによる選挙運動は、候補者に機会の平等を与えるか?」についての雑感

2010-07-25 22:49:31 | インターネット (CMC)
シロウトのわたしの目には、ネットによる選挙運動に必ずしも候補者に機会の平等を与えるものではないように見える。

思うに、その候補者が現役の議員か、議員ではないがもともと知名度があるか、インターネット利用に潤沢なお金and/orマンパワーをかけられる候補が有利になりそうだ。3つ目の「潤沢な…マンパワー」というのは、純粋に候補のために頑張ろうというボランティアも含まれるが、わたしがここで言いたいのは、そういうマンパワーを動員できるお金や組織持っている人のことだ。

しかし、ともかくネットによる選挙運動は解禁しなければならないだろう。

「わたしみたいにお金も知名度のない候補が全国区で戦うには、マスコミで取り上げてもらうか、インターネットを使うかしかないんです。」

と、齢30歳の某候補が、選挙運動に何回もかかわってきたその党のベテランたちを前に主張したのは、9年前の参議院選挙でのこと。そういう候補の主張に、これまで数々の選挙を手伝ってきたベテランたちは怪訝そうな顔をした。「マスコミはともかく、インターネットってどうよ?」

怪訝な顔の理由は、彼らがメールを除いてネット関連にほとんど手出しをしない世代だったからというだけではない。候補者が選挙に利用できるメディアは限られており、その中にインターネットは入っていないからだ。しかし知名度のない人間が比例区から立候補する場合、ほかに何か手があるのか? なにしろ比例区の候補として全国津々浦々を回りたくても、先立つ旅費・交通費がない場合もある。

取り急ぎ、候補の身内の知り合のウェブデザイナーに破格値でサイトの原型を作ってアップしてもらい、その後は、その候補と同じ院ゼミに属していた関係でその選挙を手伝うことになったわたしが、修正とアップデートを担当することになった。が、このサイト問題は、選挙が終わるまでわたしの偏頭痛の種であった。

頭痛の種の理由の一つはもちろん、候補者のサイトに選挙期間より前に具体的なこと(たとえばどの選挙にどの選挙区から出るか)を書くと「事前運動」になってしまうのに、選挙期間に入ったらサイトの更新が一切できないこと。そして、もう一つ頭の悩ませどころは、今でいうところのSEO(サーチエンジン最適化)をどうするかということだった。

後者に関するわたしの嫌な予感は的中してしまい、こっちは必死にMetaタグをいじったり、当時の日本の代表的なサーチエンジンすべてに対して、カテゴリー検索でのサイト登録の手続きをしたりしたのに、gooがサーチエンジンの検索結果にやっとサイトが出るようになったのはサイトをレンタルサーバーにアップしてから3週間後。当時日本人のほとんどがサイト検索に使っていたであろうYahoo!検索では1ヶ月経ってもサイトがヒットしない。ついには「Yahoo!の上層部に知り合いはいませんか? いたら、その人にお願いして検索結果の上位に来るように…」という話になりかかったりもした。選挙ポスターにURLを入れておくのが「ITに強い候補」としウリになると思っている人がいた時代の話である。(念のために書いておくと、当時Googleは存在していなかった。)

ところで、選挙におけるネット解禁の問題というと、「サーバーの安定性」とか「成りすましをどうやって防ぐか」といった方面に議論が行きがちだけれど、わたしが考える最大の問題点は、最初のほうで書いた「やろうと思えばどこまでも金と時間と労力を使って大がかりなものを作ることができてしまう」という点だと思う。

現状の選挙制度で合法的に使用できるメディアは、大きさと枚数が限られた選挙はがきや・選挙チラシ・ポスターと、そして政見放送に該当演説等。この中でできることは、金をかけようがかけまいが限られている。

それに比べてネットは、何千万円もお金をかけて作る充実したものや凝ったものから、素人がとりあえず無料のレンタルブログを使って作ったものまでの広範囲が、「候補者のホームページ」になりえる。金があれば、専門のコンサルティング会社を雇って「好ましく受けが良くて、読んでもらえるものは何か」を戦略的に判断してもらい、ネットによる発信を重視する大手企業のサイトに匹敵するようなサイトを作ってもらえる。SEO対策ひとつにしても、それを専門としてコンサルティングが存在する。(関連業界のコンサルタントの皆さんには、いろいろとおいしい商機が存在する。)

「お金をかけたものではなくても、見かけがそれほど素晴らしいものではなくても、真摯で素晴らしい主張であれば、みんなが読んでくれるはず」という意見もあるだろう。しかし、画面でそのようなものに目を通してもらうのは、紙での主張以上に難しい。パット見でアピールできなかったら、数秒後にはクリックで別のサイトに飛ばれてしまうだろう。そんなものでもきちんと読んでくれるのは、その候補の元からの支持者か、逆に重箱の隅をつついて揚げ足取りをしようと意気込むアンチあたりだろう。あるいは、候補者が何らかの問題を起こして、良くも悪くも一躍注目度がアップしてしまったときも熱心に閲覧してもらえそうだ。

これらの理由ゆえに、ネットによる選挙運動は、それほど簡単に候補者に機会の平等を与えるわけではないと、わたしは考える。とはいえ、ネットによる選挙運動を認める際に「公式サイトのデータはXX GBまで」「サイトの全ページ数はXXページまで」「Twitterは禁止」なんて規制を加えるのも無理そうだし、第一どんな規制を作っても抜け道はあると思われる。

ともあれ、ネットによる選挙運動はある程度解禁しなければならないだろう。その理由は、消極的な理由だが、目立つ形でネットに意見をアップすることが簡単にできるようになった結果、今の制度のままでは選挙期間中に集中的にネガティブキャンペーンをすることが可能で、それに対する対抗手段が候補者側には少ないという、不公平が生じているように感じられるからだ。

先の参議院選では、選挙期間中に複数の候補者のネガティブ情報がネットにアップされた。これらの情報の真偽のほどは知らないが、同一のネガティブ情報が複数ブログへほぼ同時に書き込まれ、これらの記事には相互リンクが貼られていた。

最近のサーチエンジンは検索結果に表示されるブログの順位を下げる方向にあると聞いているが、それでも依然としてブログの各エントリーはサーチエンジンに認識されやすい。そしてこれらの記事にブログ間のトラックバック/相互リンクがあるため、サーチエンジンでは順位が上がりやすくなっている。その結果、選挙期間中にこれら候補者の名前を入れると、複数のブログの全く同じネガティブ情報が、検索結果の上位に表示される状態にあった。

こうしたネガティブ情報は、ときに擬似的に「客観報道」の形式をとっているものもあり、「だから、投票するのならこんなX候補ではなくY候補に入れるべき」なんて書いてあるものでなければ、事実を書いたのか嘘であるのか、あるいは個人の意見の自由の範囲で書いたのか明確にネガキャンをするつもりで書いたのかの判断を選挙期間内につけて、解決まで持っていくことは難しい。

一方、選挙期間中の候補者サイドには、今のままではこうしたネガキャンに対抗する手段はない。誰かが自分のブログに「X候補はそんなことはしていない」などと下手に反論を書こうものなら、選挙期間中の文書図画の頒布の制限に引っかかってしまう可能性がある。この点は、選挙期間中に候補者たちがネットを利用できるようになれば、ある程度は解決されるだろう。選挙期間中のネット上での中傷合戦が激しくなる可能性もあるが。

とはいえ、今回の選挙で見られたネガティブキャンペーンが、果たしてどれだけ効力を発揮したのかはよくわからない。今回の選挙では、そのようなネガキャンの憂き目にあった候補者の一人である有田芳生氏が、民主党の比例代表の候補としては、もっとも票数を集めたからである。ネガキャンが効いて票を失った結果が373,834票なのか、ネガキャンが効かなかったから373,834票なのか、どちらなのだろう?


*「博士後期課程でcomputer-mediated communicationをテーマにしていたのに、自分を『シロウト』にするとはなにを言っている?」とお叱りを受けそうだが、大きく分ければ同じCMCの範疇ではあっても、その中身においては「外科」における「整形外科」と「美容外科」の違いぐらいある。その意味でわたしはシロウトに他ならない。

*とはいえ気をつけないと、お金をたっぷりとる専門のコンサルティング会社(自称)が実は単なる天下り先のための組織であって、支払った大金のほとんどが天下り組の報酬に行ってしまって、実際の仕事の部分が安値は下請けに横流しされているだけという事態も発生しうる。最悪の場合、末端で実際にWebの制作にかかわっている孫請け・曾孫請けの会社では、最低賃金に近いのに「裁量労働」ゆえに残業代なしか時給800円相当の派遣社員が、疲きった状態で作っているのかもしれない。こうした場合に支払った高額の対価に対して実際の成果物の出来は…(以下略)


企業がウェブサイトに載せるもの ― その文化差 (3)

2010-06-05 22:48:59 | インターネット (CMC)
(本記事は、「企業がウェブサイトに載せるもの ― その文化差 (1) および (2) 」の続きです。)

■ 写真集・画像集

大手の欧米系(といってもわたしが良く見るのは英語圏なのだが)の企業のサイトには、"Photo Library" とか"Image Gallery" といったカテゴリーで、多くの写真を掲載してあるページがある。多くの場合、このタイトルのページにアップされている写真は、一般の人も一定のルールの下でダウンロードし、外部使用が可能である。

ここにアップされている写真の種類は、まずはその企業の製品や工場であるが、それだけにとどまらない。その企業で働く一般の人々、その企業が力を入れている環境保護や社会活動の様子、その企業と地域社会との関連を表す写真など、その企業に何らかのプラスのイメージを与えるようなものが注意深く選ばれている。これらの写真はわたしのような写真の素人にも、プロの写真家が撮ったでしかあり得ないとわかる、すばらしいものだ。

そしてここには、必ずと言ってよいほど役員たちの公式の写真がアップされている。その写真は、1名につき1枚のこともあり、または1名の人間につきアングルを変えた複数の写真が掲載されていたりすることもある。いずれにしろ、各人をできる限り良く見せるような写真が選ばれている。

たとえば、英豪系資源大手のBHP BillitonImage Libraryから、People Imagesを見てみよう。会長(ああ、ジャック・ナッサー)をはじめとする数名は、ジャケットの丈ぐらいまでのミディアム・ショットである。

こういうときの男性のポーズは片腕は自然におろし、もう片方はズボンのポケットに軽く手をつっこんでおくのが、自信にあふれ かつ リラックスしているように見える写真のポーズの標準らしい。

間違っても「イチジクの葉」(両手を前に組んだポーズ)とか、直立不動の「気をつけ」(腕をズボンの縫い目にそって指先までまっすぐにのばす)などの姿勢はNG。企業のディレクターにはふさわしからぬ人物との印象を与えるらしい。そう、前にも言った通り、彼らは企業の顔なのである。

このような写真を見るにつけ、彼らには「当社に関する写真が使われるのあれば、人にしろモノにしろ抽象的なイメージにしろ、とことんまでカッコよく美しいものを提示して配布して、それを使わせたい」という、意識がかなり強く働くのだろうと、ひしひしと感じる今日この頃である。ウェブサイトというのは、こういう目的のためにも非常に便利だよね。

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立ち姿で両手を前に組んだポーズは、「イチジクの葉(fig leaf)」のポジションといわれる。ヘビの誘いにのって禁断の木の実を食べて自分たちが裸であることに気がついたアダムとイブが、急に恥ずかしくなっていちじくの葉で自分たちの腰のまわりを隠したという旧約聖書の話から、局部を隠しているような立ち姿であり「自信がなさげ」な印象を与えるらしい。)さっき季節外れの柏餅を食べながら考えていたんだけれど、さすがに柏の葉じゃ前を隠すには小さすぎるかしら。かたちはちょっと似ているけど。


企業がウェブサイトに載せるもの ― その文化差 (2)

2010-05-08 19:56:00 | インターネット (CMC)
(本記事は、「企業がウェブサイトに載せるもの ― その文化差 (1)」の続きです。)

■ トップのプレゼンとスピーチ

研修で英語のビジネス・プレゼンテーションの講師を務めることがある。すると、様々な外国企業が公の場の実際のプレゼンでどのような語彙を使っているのか、どのように話を展開していくのか、どのようなスライドを使用しているのか、あるいは実際のデリバリーはどうだったのか、等を、調べたいときがある。

こういうときは、英語を母国語とする大手企業のウェブサイトを見てみる。多くの企業が、"Webcasts and Presentations" や、"Presentations" といったページを作っていて、このページからマネジメント層(この場合、必ずしも会長やCEOばかりでなく、他の役員や、場合によっては部長クラスも含む)が公の場で行ったスピーチやプレゼンテーションの内容にアクセスできるようになっている。
アクセス可能な形式は、プレゼン内容の原稿とそのプレゼンで使用したPPTスライドをPDFにしたものの場合もあるし、オーディオファイル(Podcastやその他)を通じてのものもある。Webキャストの場合は、実際のプレゼンテーションを撮影した動画(もちろん音声付)・スライド・音声のみ のいくつかを組み合わせる。

必要とあらば、プレゼンの内容は別の言語に翻訳される。たとえば英国企業のトップが中国の要人の前で英語でプレゼンを行ったのであれば、英語のほかに中国語訳のファイルもきちんとアップされる。

上場企業では、株主総会もWebキャストの対象である。まずは、株主総会の模様をLive配信し、その後オンデマンド配信で誰もが見られるようにしておく。ここでは議長を含むトップのプレゼン能力が全世界に配信される。株主総会で話者の左右にテレプロンプター(こちら側から見ると透明な下敷きに見えるやつね)が写っていたりする。そう、実際に会場にいる株主の皆様のためにも、またオンラインでモニター越しに見ている全世界の無数の人たちのためにも、アイコンタクトは大切だ。

翻って日本企業の場合は、上場企業であっても、トップのウェブからの発信量が悲しいぐらい少ない。日本企業の標準的なトップのウェブサイト上での発信といえば、まず社長(またはそれに相当する役職の人)の「ごあいさつ」だ。これはパンフレットの会社概要の「ごあいさつ」の伝統を踏襲しているように見える。それにウェブサイトならではのものとして、その社長の年頭あいさつ。それに加えてトップが交代したときの新任あいさつ、ぐらいか。

もちろん、重要な記者会見や株主総会の模様をWebキャストで配信する日本企業も、最近こそ出てきているが、まだ少数派だ。あとで内容に余計な突っ込みを入れられることを恐れて、情報開示を必要最低限にしておこうとしているかのようだ。

日本企業の場合には、言語の壁もあるだろう。英語圏の企業の場合、英語はグローバルな言語なので、彼らが自国語でしゃべれば、内容面ではともかく言語面ではそれを全世界向けの発信とすることができる。しかし、日本語でのプレゼンやスピーチの場合は、これを受けとる対象者は日本語が理解できるものだけに限られる。もし、世界に向けて発信しようとすると、いちいち翻訳が必要になる。

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余談になるが、トヨタのウェブサイトには、量は少ないながらビデオライブラリがある。これを見た限りでは、豊田章男氏は原稿(紙をめくっている様子がないので演台にテレプロンプターがついているらしい)を見ながらも、アイコンタクトをきちんととろうと顔をあげている。しかも、正面だけでなく、場合により右や左にも顔を上げている。

簡単に見えるかもしれないが、あんなふうにできるようになるには、実は訓練が必要だ。原稿を見たときに、文章をかたまりで頭に入れ、顔を聴衆に向けて頭に入っている残りをしゃべり、また原稿に目を戻す。これが意外に難しい。目を戻したときに原稿の正しい位置を確認することができずに、目が迷ってしまったりするのである。ゆえに原稿から目を離せないプレゼンターも結構いる。授業で学生にプレゼンを教えていたときは、毎年、最初のプレゼンでは、原稿の正しい位置に瞬時に戻れないプレゼンターが続出した。

こんなトラブルを防止するために、原稿には「今しゃべっている個所」を見失わないための工夫もされていたりするのだが、それでも駄目だったりする。ゆえに、原稿が事前に用意されそれを読むタイプのプレゼンでも、事前の練習が必要なのである。(で、学生たちは2回目のプレゼンからは、事前にかなり練習したらしい。)