7年も前の話になるが、あるキャリアマネジメントに関するセミナーで、年配の男性参加者が比較的若い男性の参加者に、椅子に腰をかけるさいの注意をしていた。若い方の男性は2つボタンのシングルのビジネススーツを着ていた。年配の男性は彼に、立っているときには上のボタンだけをかけ、椅子に腰をかけるときにそれをはずすのがルールであると指導していた。
ええ? そうだったのか? わたし長年男性と一緒に仕事をしてきたのに、まったく気づかなかったよ。 わたしの目はなんたる節穴であることよ…
目を丸くして見つめるわたしと他の女性たちに、商社で長年勤め上げたあと大手人材紹介会社に出向しているというその年配の男性は、自らボタンをかけたまま座った状態と、はずした状態のシルエットを見せた。
「ほら、ボタンをかけたまま着席すると、だぶついた感じになるでしょう。」
そしてやたら感心するわれわれ女性陣に向かって、にっこりと笑った。
「男のスーツっていうのは、座っているときには背広のボタンは全部はずした状態がきれいに見えるように、仕立てられているものなんですよ。」
わたしは自分のオフィスに帰ると、同僚の男性従業員たちや来客者のスーツのボタンに注目した。よくみれば、年配者たちは確かにそうしていた。立っているときは上のボタンだけをかけた状態になっている。接客や打ち合わせでソファや椅子に腰をかける際には、すっと上のボタンをはずす。また、話が終わって椅子から立ち上がるときにスッと上のボタンをかける。そのときの動作が流れるように自然なので、ボタンを「かける」「はずす」という動作をまわりに意識させなかった。
さて、最近の若い男性のビジネススーツにはシングルの3つボタンが多い。こういう場合どうするのかと思ったら、
「日本経営協会総合研究所 【人事かわら版】新入社員研修の現場から」で説明があった。立っている状態で、真ん中のボタンだけ、あるいは上2つのボタンをかけた状態にしておき、やはり座るときは全部はずすのが基本形らしい。(この説明は、外を歩く場合、改まった場合、三つ揃いの場合も書かれているので、殿方には参考になるかもしれない。)
さて、ここで疑問なのだが、女性のスーツにボタンに関するルールというものは存在するのだろうか? 女性のスーツの形も素材も様々なので、一概に言えないのはわかっているが、テーラードの場合はどうだろう。
ルールがあるかどうかすらわからないわたしは、3つボタンや2つボタンのテーラードスーツを着て打ち合わせに出るときは、常にすべてのボタンをかけておく。きちんと感じを出したいためだ。しかしその状態で着席すると、たしかにジャケットの前の部分が少々もたついた感じになる。でも女性が人前でボタンをはずすという動作はどうなんだろう…
うーん… どうする?