孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ  「あと1か月半ほどで形勢変化」 停戦交渉を左右する米大統領選挙

2024-07-27 23:33:35 | 欧州情勢

(船上パレードで笑顔を見せるウクライナの選手たち(26日)【7月27日 読売】

【ウクライナ ここを耐えればあと1か月半ほどで戦場の形勢は変わる】
ウクライナでの戦況については、6月10日ブログ「ウクライナ  欧米は自国供与兵器でのロ領内攻撃容認 核使用を含めたロ・米・仏の“腹の探り合い”」で以下のように取り上げています。

“ひと頃のロシア軍の攻勢、ウクライナ側の劣勢(それは今でも同じですが)という状況は、欧米の支援を受けるウクライナ側の抵抗で(欧米供与兵器によるロシア領内攻撃容認も影響していると思われます。)幾分押しとどめられているというか、ロシアも動きが鈍ったようにもなっています”

状況は今も大きく変わっていません。
ロシア軍の物量を大量に注ぎ込む、そして兵士の命を顧みない攻勢は今も続いています。

“渡河作戦の拠点から撤退 ウクライナ軍、南部で苦戦”【7月17日 共同】

こうしたロシア軍について、ウクライナ側は以下のようにも。
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ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、24日に公開されたイギリスのガーディアンとのインタビューで、「戦力に関しては1対2か1対3の比率でロシアが有利だ」とし、状況は「非常に困難」だと認めました。

しかし、ロシアの成功は莫大な人的犠牲を伴っているとし、シルスキー氏は「兵士を無駄な肉弾戦に駆り立てるつもりはない」と述べたうえで、「兵士の命を守ることは我々にとって非常に重要だ」と強調しました。【7月26日 テレ朝news】
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その一方で、「ここをしのげば・・・」という思いも。

****ウクライナ司令官「ロシア軍 攻撃続ける能力は無限ではない」****
ウクライナの国家警備隊の司令官は攻勢を続けるロシア軍について、「攻撃能力は無限ではない」と述べ、ロシア側が複数の戦線で大規模な攻撃を続けられるのはこの先1か月半ほどで、ウクライナがそれを耐えれば、戦場での形勢は変わるという見方を示しました。

ウクライナではロシア軍による激しい攻撃が続いていて、国営の電力会社「ウクルエネルゴ」は北部チェルニヒウ州と北西部ジトーミル州でロシア軍の無人機による攻撃を受け、電力供給に障害が出たと26日、発表しました。

ロシア軍はミサイルや無人機でウクライナのエネルギー関連施設への攻撃を繰り返していて、ウクライナはヨーロッパからの電力の輸入を余儀なくされています。

ロシア軍による攻勢は前線でも強まっていて、ウクライナ軍は去年、奪還したとしていた南部ヘルソン州や東部ドネツク州の拠点から撤退しています。

一方で、ウクライナの国家警備隊のピブネンコ司令官は25日に掲載された地元メディアとのインタビューでロシア軍が攻勢を強めていることについて「状況は厳しい。だが敵の、攻撃を続ける能力も無限ではない」と述べました。

その上で「あと1か月半ほどでロシア軍による多方面での大規模な攻撃は止まり、その後は守勢に回ることになるだろう」と述べ、ウクライナ軍が耐えれば、戦場での形勢は変わるという見方を示しました。【7月26日 NHK】
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【ウクライナ側の反攻の動きも】
「あと1か月半ほどで・・・」というのが希望的観測なのかどうかは定かではありませんが、ウクライナ側の反攻も報じられてい米大統領選ます。

****静かに始まったウクライナ軍大攻勢、ロシアの防空レーダー基地を次々破壊****
目と耳を塞がれたロシアは、今後の航空戦で大ダメージ必至

ロシア軍は2022年2月24日、地上軍の侵攻と同時に空軍戦闘機でウクライナ軍の防空兵器を攻撃、破壊した。
ウクライナの移動可能な防空兵器は、事前にその場を離れて破壊を逃れたが、固定の防空レーダーはミサイル攻撃を受け、破壊され燃えた。

このことは、ウクライナの人々にとって極めて衝撃的なものであっただろう。私もその映像を克明に記憶している。
今では、それが逆転しつつある。

ウクライナは、大規模ではないが、ロシア国内の重要施設を突き刺すように攻撃しているのである。

ウクライナは現在、クリミア半島へは主にATACMS(Army Tactical Missile System=陸軍戦術ミサイルシステム、エイタクムス)で、ロシア領土へは比較的大型の自爆型無人機で攻撃している。

その攻撃目標は、弾薬・武器・燃料保管施設、石油輸出拠点、早期監視レーダー、衛星管制施設である。
早期監視レーダー、衛星管制施設の攻撃のことは地上戦の戦果ほど注目されてはいないが、両軍の今後の作戦を決定づけるものだ。

弾薬・武器・燃料保管施設や石油輸出拠点の破壊の狙いは明白であり、ロシアの継戦能力を破壊することである。

監視レーダーや衛星制御施設の攻撃は、特に今年になって実施されている。これらを機能停止に持ち込めば、ウクライナは航空作戦の情報を取られにくくなり、比較的自由に作戦遂行ができるようになる。(後略)【7月13日 西村金一氏 JBpress】
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****ウクライナ軍、露軍に勝機与えず 東部ドネツク州 守勢作戦で損耗強いる****
ウクライナ軍が同国東部ドネツク州で、ロシア軍の損害を徐々に拡大させている。

全体の戦局は膠着(こうちゃく)状態が続いているが、同州では占領地域を拡大して前進を図る露軍に対し、戦略的要衝を重点的に防衛する守勢作戦で露軍を消耗させている。ウクライナ側は自国軍の戦力回復を図り、将来の反撃につなげたい考えだ。(中略)

露国防省は過去1カ月間でドネツク州の集落約10カ所を制圧したと主張し、同州での優勢を誇示。露軍は兵力的に優位にあり、滑空爆弾(遠距離から目標を攻撃できる航空機投射型の爆弾)でウクライナ軍陣地を破壊しているようだ。

一方、ウクライナ軍は進軍を図る露軍の地上部隊や戦車などを火砲やドローン(無人機)で迎え撃つ戦術を展開。このため、露軍はドネツク州での前進と引き換えに、かなりの損害を出しているもようだ。

英誌エコノミストは7月、露軍では戦車の損耗が深刻化し、対露経済制裁で再生産や修理も困難になっており、今後戦力の低下が進むとする米英専門家の分析を報道。英国防省は、露軍の5、6月の1日当たりの平均死傷者数がそれぞれ1200人、1100人を超え、侵略開始後で最高水準になったと報告した。

一時停滞した欧米諸国からウクライナへの軍事支援は再び活発化しており、ウクライナに供与された米戦闘機F16も近く稼働する見通しだ。ウクライナ軍はF16で滑空爆弾の脅威を低下させて重要防衛線を維持しつつ、追加動員などで戦力を回復し、将来的な反撃の機会をうかがう構想を描いている。

こうした状況から、欧米軍事専門家の間では、少なくとも短期的に露軍がウクライナ軍の重要防衛線を突破し、決定的な勝機を得る可能性は低いとする見方が支配的だ。【7月24日 産経】
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****ロシアの兵器保管施設 ウクライナ軍の攻撃でほぼ全壊か****
ウクライナ軍が今月上旬、ロシア西部で行った無人機による攻撃について、イギリスの国防省は、衛星写真などの分析から攻撃を受けたのは兵器の保管施設で、ほぼすべてが破壊されたとして、ロシア軍の砲弾などの供給に今後、影響が出る可能性があると指摘しました。

ウクライナと国境を接するロシア西部のボロネジ州の知事は今月7日、SNSに、ウクライナ軍の無人機による攻撃で倉庫で火災が起き、爆発物に引火して爆発が起きたと投稿しました。

これについてイギリス国防省は24日、SNSで、攻撃を受けたのは広さがおよそ9平方キロメートルに及ぶ大規模な兵器の保管施設で「ほぼすべての弾薬が破壊された」と指摘しました。

SNSには攻撃の前後の衛星写真も投稿されていて、兵器の保管施設だとする建物などが全壊している様子がうかがえます。

イギリス国防省はロシアの防空能力の低下を示しているとしたうえで「すでに厳しい状況にあるロシアの補給をひっ迫させることになる」として、砲弾などの供給に今後、影響が出る可能性があると指摘しました。(後略)【7月25日 NHK】
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****ロシア軍が黒海とつながるアゾフ海からすべての艦艇を撤退 ウクライナが明らかに****
ウクライナ軍はロシア軍が黒海とつながっているアゾフ海から、すべての艦艇を撤退させたと明らかにしました。

ウクライナ海軍の報道官は25日、SNSで、「アゾフ海にはもはやロシア連邦の軍艦は1隻も存在しない」と述べました。

イギリスのガーディアンによりますと、ウクライナ海軍当局者は、ここ数カ月、ロシアが併合したクリミア半島や黒海の他の地域への攻撃が成功したため、ロシア海軍は艦艇を他の場所に移転せざるを得なくなったと述べています。(後略)【7月26日 テレ朝news】
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****ウクライナ軍、ロシア占領下クリミアの航空基地にミサイル攻撃****
ウクライナ軍参謀本部は26日、ロシア占領下にあるクリミア半島西部のサキ航空基地をミサイルで攻撃したと発表した。ただ、この攻撃にどのような兵器を使用したかについては明らかにしていない。

ロシアは同航空基地をウクライナに対する長距離攻撃に使用。ウクライナ軍による今回の攻撃の発表について、ロシア国防省は今のところコメントしていない。

ウクライナ軍はここ数カ月、クリミアに対する攻撃を強化しており、クリミアのセバストポリに本拠を置くロシア黒海艦隊は戦闘可能な艦船を別の場所に移さざるを得なくなっている。【7月27日 ロイター】
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ウクライナ側は守りを固めてロシア軍の損耗を増大させつつ、ATACMSなど長距離兵器でロシア軍拠点・施設への効果的な攻撃を続けている・・・といった状況のようです。

【ウクライナ国内世論 戦争長期化で譲歩を認める声も ゼレンスキー大統領にとっては交渉の余地が出来てきたという見方も】
ただ、戦争が長期化するなかで、さすがにウクライナ国内でも停戦を求める声も増加しているようです。

****国民の32%、領土譲歩容認=1年前の3倍超に―ウクライナ世論調査****
ウクライナ国民の32%がロシアとの戦争を即座に終結させるため、領土の一部譲歩を容認していることが、キーウ(キエフ)国際社会学研究所が23日発表した5月時点の世論調査結果で分かった。前回2月時点の26%から増え、1年前の10%に比べると3倍超となった。

一方で、戦争が長引いたとしても領土の譲歩を一切認めるべきではないとの回答は55%だった。過去2年からおおむね減る傾向をたどっているが、依然として過半数を占めている。【7月24日 時事】 
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多大な犠牲を伴いつつ戦争を継続していますので、当然の流れでしょう。

こうした世論の変化はゼレンスキー大統領に停戦交渉に向けての柔軟な対応を可能にする余地を与える・・・という見方もあるようです。

****ウクライナ「領土割譲やむなし」初の3割超でゼレンスキーに和平の選択肢****
(中略)
国境線をウクライナが独立した1991年当時に戻せと主張する人が減ったことで、ゼレンスキーには、国内でほとんど反対を受けずに戦争を終結させる外交的余裕ができた、とコヴァレンコ(元ウクライナ軍人の防衛アナリスト)は話す。

「ゼレンスキー大統領はこの戦争を、親ロシア派のドンバス地方を切り離し、ウクライナを強化できるチャンスと見ているかもしれない」とコヴァレンコは述べる。

「ウクライナ社会のかなりの割合の人が、(石炭や鉄鋼など補助金食いの)重工業が多いドンバス地方(ドネツク州とルハンスク州)がウクライナの財政的な重荷になり、EU加盟やNATO加盟への道を妨害してきたことを、ためらいつつも認めている」

もっとも全体的に見れば、ウクライナ人はまだ挫けていない。KIISのアントン・フルシェツキー所長はメディア発表でこう語った。領土割譲に関する柔軟性が存在するにもかかわらず、ウクライナ人は「明らかに、いかなる条件でも和平に同意していない」と述べた。

今回の調査は、5月16日〜22日と6月20日〜25日にかけて、ウクライナ政府が支配する全地域の成人3075人を対象に行われたもので、誤差範囲は5%だ。【7月24日 Newsweek】
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合理的に考えれば、反政府的ロシア系住民の多い、経済構造的にも過去のものになりつつある東部ドンパス地方をロシアにくれてやって、ウクライナの求心力を強化するという考えもあるのでしょうが、国民感情的にそれが受け入れられるかどうかは大いに疑問です。何のための戦争、犠牲だったのか・・・という話にもなります。

【停戦交渉に決定的に重要な米大統領選挙の行方 中国の存在も】
できるだけ有利な条件で交渉に臨むためには、やはり軍事的な優勢が必要になります。
そうした意味で「あと1か月半ほどで・・・」という期待もある訳ですが、国際政治環境を考えると時間があまり残されていません。

アメリカでトランプ氏が復権すれば、ウクライナにとっての命綱であるアメリカの支援が切られる恐れがあります。

****トランプ氏、ウクライナ大統領と電話会談 「戦争終わらせる****
米共和党の大統領候補に指名されたトランプ前大統領は19日、ウクライナのゼレンスキー大統領と同日に「非常に良い」電話会談を行ったと、自らの交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」への投稿で明らかにした。

投稿で、自分が大統領になれば「世界に平和をもたらし、多くの命を奪った戦争を終わらせる」と表明。ロシアとウクライナの「双方が歩み寄ることで暴力を終わらせ、繁栄へ道を切り開く合意をまとめることができるはずだ」と述べた。

トランプ氏はこれまで、11月の大統領選で再選を果たせば来年1月の就任を待たずにウクライナでの戦争を終結させると述べてきた。

ゼレンスキー氏もX(旧ツイッター)への投稿でトランプ氏との電話会談を報告し、米国の軍事支援に謝意を表明した。戦争を終結させる取り組みには言及しなかった。

同氏は、トランプ氏との会談で共和党の大統領候補になったことに祝意を表し、先週の暗殺未遂事件を非難したと明らかにした。ウクライナの「自由と独立を守るためには、米国の超党派かつ両院議員からの支持が不可欠と指摘した」とも述べた。【7月20日 ロイター】
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ロシアはトランプ復権を待ち望んでいます。

****「兵器供与やめれば戦争終わる」露ラブロフ外相、米副大統領候補のウクライナ支援“消極姿勢”を歓迎****
ロシアのラブロフ外相は17日、アメリカの大統領選挙で共和党の副大統領候補に指名されたバンス上院議員がウクライナ支援に消極的であることを歓迎し、「兵器の供与をやめれば戦争は終わる」と述べました。

バンス氏は副大統領候補に指名後、FOXニュースの取材に「トランプ氏は、ロシアやウクライナと交渉し事態を迅速に収束させ最大の脅威である中国に集中することを約束している」と強調するなどウクライナ支援には消極的な姿勢をとり続けています。

こうした中、ロシアのラブロフ外相は17日、ニューヨークの国連本部で会見を開き、バンス氏の姿勢を歓迎した上で「ウクライナに兵器を大量に供与することをやめれば戦争は終わり、解決策を模索することができる」と述べました。

その上で、「公平で互いを尊重し合えるアメリカの指導者」であれば、ロシアは協力する用意があるとしています。【7月18日 日テレNEWS】
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もし停戦交渉ということになると、中国の存在も大きくなります。

****ウクライナ外相が中国訪問 ロシア侵略後初 王氏と停戦などを協議****
中国の王毅共産党政治局員兼外相は24日、訪中したウクライナのクレバ外相と南部の広東省広州で会談し、ロシアのウクライナ侵略を巡る停戦などについて協議した。侵略開始以降、ロシア寄りの立場を示す中国へのウクライナの高官の訪問は初めて。

中国外務省は中国がクレバ氏を招いたとしている。中国国営中央テレビ(電子版)によると、王氏は会談で、停戦などに向け「建設的役割を引き続き果たしたい」と表明。「ウクライナとロシアは最近、程度は異なるが協議を望むシグナルを発している。条件や時機はまだ熟していないが、平和に有益な努力を支持する」との強調した。

中国は5月、ウクライナ危機の政治解決を謳(うた)う独自案をブラジルと発表し、ウクライナとロシアの同意を得た国際和平会議の開催などを提案。王氏は同案について「国際社会の最大公約数を凝縮し、広範な賛同と支持を得た」と主張した。

ウクライナ外務省の発表によると、クレバ氏はロシアとの交渉には「ロシアが誠意を持って臨む用意」ができた際にウクライナも応じるとの姿勢を表明。現時点ではロシアにその準備がないと強調した。

クレバ氏は、ウクライナ主導の和平案協議のために6月に開いた「世界平和サミット」についても説明。中国はサミットを欠席している。

ウクライナを巡っては、11月の米大統領選で返り咲きを目指すトランプ前大統領が和平を目指す考えを示している。中国側はそうした動きの中で影響力を高めておこうとの思惑があるとみられる。ウクライナ側も国内で厭戦(えんせん)機運が高まりつつあることも踏まえ、中国との関係を保ち、将来の交渉でのウクライナの立場を強める考えとみられる。【7月24日 産経】
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ウクライナ・ロシア双方にとって米大統領選の行方が非常に重要・・・ということは11月の結果が出るまでは停戦交渉については大きな動きはなく、11月以降を睨んで、それまでになるべく軍事的に有利な状況をつくっておきたいという攻防が続くということでしょう。
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