孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

米  中ロへの対立軸として民主主義サミット 中国は「中国式民主」主張 AIと親和性がいい中国統治

2021-12-06 23:31:57 | 民主主義・社会問題
(ピンクが民主主義サミット参加国・地域【ウィキペディア】 (民主主義サミットには約110の参加国・地域が参加するということで、その参加国を見ていくと、その「民主主義」に関してやや疑問に思われる国も多々。要するに中ロ包囲網・・・でしょう)

【米主導の民主主義サミット 民主主義の価値を共有する国を結集し、中ロなどに対抗】
民主主義国の盟主を自認するアメリカも当然ながら問題は多々抱えていますが、特に、トランプ前大統領が2020年米大統領選の結果の正当性に疑義を唱えたことで、その民主主義の「後退」が指摘されています。

****米国、初めて民主主義「後退国」リスト入り****
スウェーデン・ストックホルムに本部を置く政府間組織「民主主義・選挙支援国際研究所」は22日、報告書「民主主義の世界的状況」2021年版で、初めて米国を「民主主義が後退している国」に分類したことを明らかにした。「目に見える悪化」は2019年から始まったと指摘している。
 
報告書によると、世界全体では少なくとも4人に1人が「民主主義が後退している国」に住んでいる。これに「権威主義的」または「ハイブリッド型」の政権下にある国を合わせると、世界人口の3分の2人以上が該当する。
 
報告書を共同執筆したアレクサンダー・ハドソン氏はAFPに、「米国は質の高い民主主義国家で、公平な行政(汚職と予測可能な執行)の指標は2020年にさらに向上した。しかし、市民の自由や政府に対するチェック機能の指標は低下しており、これは民主主義の根本に深刻な問題があることを示している」と説明した。
 
報告書は、「歴史的な転換点は2020〜21年、ドナルド・トランプ前大統領が2020年米大統領選の結果の正当性に疑義を唱えた際に訪れた」としている。
 
ハドソン氏はさらに、黒人男性ジョージ・フロイドさんが警官に殺害された事件を受けて広がった「2020年夏の抗議デモの中で、集会・結社の自由の質が低下した」と指摘した。
 
IDEAでは、世界約160か国について過去50年間の民主主義指標に基づいて評価し、「民主主義国(後退国を含む)」「ハイブリット型政権」「権威主義的政権」の三つに分類している。

IDEAのケビン・カサスザモラ事務局長は、「信頼できる選挙結果に異議を唱える傾向が強まっていることや、(選挙への)参加を抑制しようとする動き、分極化の急激な進行などに見られるような、米国における民主主義の目に見える悪化」は「最も懸念すべき展開の一つだ」と述べている。
 
過去10年余りで、民主主義「後退国」は2倍に増加した。また、2020年には「権威主義」に傾いた国の数が、民主化した国の数を上回った。IDEAは、この傾向は2021年も続くと予想している。
 
2021年の報告書では、民主主義国は98か国で、近年最少となった。「ハイブリッド型」の国は20か国で、これにはロシア、モロッコ、トルコなどが含まれる。「権威主義的」な国は47か国で、中国、サウジアラビア、エチオピア、イランなどが入っている。
 
報告書は、民主主義の弱体化傾向について、新型コロナウイルス感染症の大流行が始まって以降「より深刻で憂慮すべきものになっている」と述べている。 【11月22日 AFP】
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そうした指摘はともかく、バイデン大統領としては、中国に対抗していくうえで、中国の専制主義・権威主義に対するアメリカなど同盟国の民主主義を前面に押し出すことで対立軸をつくり、同盟国の求心力を高めていく戦略です。

その流れにあって、アメリカは9日、10日に「民主主義サミット」をオンライン開催します。
バイデン大統領は、強権的な政治体制のもとで市民の権利が制限される権威主義の国が力を増しているのが問題だと訴え、民主主義をどう守るかを話し合おうと呼びかけています。

その実態は、中国・ロシアへの対抗でしょう。ですから、そこには中国・ロシアは招待されていません。

こうした発想は、政治理念で世界を二分してしまい、気候変動問題などへの取り組みに悪影響が出るという意見もあります。中国は「冷戦思考の再現だ」と反発しています。

****台湾招待、同盟国トルコは除外=来月開催の民主主義サミット―***
米国務省は23日までに、オンライン形式で12月9、10の両日開かれる「民主主義サミット」の招待リストを公表した。

約110の参加国・地域に日本や欧州主要国のほか台湾が含まれる一方、バイデン政権が権威主義体制と見なす中国やロシアは招待しなかった。(中略)
 
ホワイトハウスによると、民主主義サミットは民主主義国の指導者らを集め、(1)権威主義に対する備え(2)汚職との闘い(3)人権尊重の促進―をテーマに議論を深める計画。民主主義の価値を共有する国を結集し、中ロなどに対抗する狙いがある。
 
権威主義的傾向を強めるトルコやハンガリーは北大西洋条約機構(NATO)加盟国でありながら、招待されなかった。【11月24日 時事】 
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【中国 「民主主義の実践は国によって異なり、模範はない」】
当然ながら中国・ロシアは強く反発しています。
中国の王毅国務委員兼外相はアメリカに対して「世界の指導者を気取り、各国に米国を見習うよう求めている」と批判。「一つの国の基準に基づいて線引きを行い、分裂と対立を作り出す」とも。

****「世界の指導者気取り」 中国外相、民主主義サミット巡り再び米批判****
中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相は26日、ロシア、インドの外相とオンラインで会談し、米国が12月に開催を予定している「民主主義サミット」に触れて「民主主義をかたる内政干渉には反対だ」と語った。中国外務省が発表した。
 
米政府は「民主主義サミット」に台湾を含む計110カ国・地域を招待する一方で、中ロなどを排除。中国は反発し、米国への批判を繰り返している。
 
王氏は会談で民主主義サミットについて「一国の基準で線を引き、分断と対立を作り出す」と米国を名指しで非難。「米国は世界の指導者を気取っているが、民主主義の実践は国によって異なり、模範はない」と語った。
 
王氏は24日のイランのアブドラヒアン外相とのオンライン会談でも、民主主義サミットを「イデオロギーで線引きし、陣営間の対立をあおるものだ」と批判していた。
 
中国外務省によると、バイデン米政権が外交ボイコットを検討している北京冬季五輪について、中ロ印外相の共同文書で支持を明記。イランのアブドラヒアン氏も「円満な成功を信じている」と語った。【11月27日 朝日】
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台湾を招待したことについては、中国外務省の趙立堅副報道局長は11月24日の記者会見で、「断固とした反対」を表明した上で、「台湾独立勢力と一緒に火遊びすれば、自ら身を滅ぼすだろう」と述べ、米国をけん制しています。

****ロシア、民主主義サミットに反発****
ロシアのペスコフ大統領報道官は24日、バイデン米政権が12月にオンライン形式で開く「民主主義サミット」に関し、「米国は新たな分断線をつくり、自国から見て良い国と悪い国に分けることを好んでいる」と反発した。タス通信が報じた。
 
バイデン政権はロシアをサミットに招待しなかった。ペスコフ氏は米国が民主主義に関する自国の考え方を他国に押し付け、民主主義という言葉を「私物化」しようとしていると非難した。【11月24日 時事】 
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【「中国式民主」として「全過程人民民主」とは?】
アメリカに「専制主義」などと批判される中国・習近平政権は「中国式民主」があると主張。
王毅外相は、ロシア、インドとの会談で「民主の実践は国情によって異なり、一つの型や規格しかないということはありえない」と米国を牽制しています。

そうした発想から、中国は独自の「中国式民主」として「全過程人民民主」なるものをアピールしています。アメリカの民主主義は欠陥をないがしろにしており、投票のときしか有権者の声を聞かないとも批判しています。

****中国流「民主」掲げ対抗 「一部の国の専売特許でない」 米サミットに抗議****
米国が日欧などを招いて開く民主主義サミットを前に、中国共産党政権が「民主主義は一部の国の専売特許ではない」との大々的な宣伝キャンペーンを始めた。

「全過程人民民主」という概念を掲げ、中国には自国の実情に根ざした民主主義があると主張。政治システムやイデオロギー領域でも米国の「覇権」に挑む姿勢を鮮明にしている。

「ある国が民主的か否かはその国の人民が判断すべきで、国際社会が一緒に判断すべきだ。今、ある国が民主の旗を振って分裂をあおり緊張を高めている」
 
4日、中国政府が開いた記者会見で、国務院新聞弁公室トップの徐麟主任が米国を念頭に語気を強めた。3日には王毅(ワンイー)国務委員兼外相が、友好国パキスタンのクレシ外相と電話会談し「米国の目的は民主主義ではなく、覇権を守ることにある」などと対米批判を重ねた。
 
中国では外務省が2日に「何が民主で、誰が民主を定義するのか」と題する座談会を開いたほか、各地の大学やシンクタンクが同様の討論会を開催。国営メディアも民主主義についての記事やインタビューを相次ぎ掲載しており、民主主義サミットに抗議する一大キャンペーンの様相だ。
 
政府やメディア、大学なども動員した動きが、習近平(シーチンピン)指導部の強い意向を反映しているのは明らかだ。

 ■自国の政治を「全過程人民民主」
しかし、習指導部の狙いは、民主主義サミットによる「対中包囲網」の打破だけではなさそうだ。
 
中国政府は4日、「中国の民主」と題する白書を発表した。白書は「長い間、少数の国々によって民主主義の本来の意味はねじ曲げられてきた。一人一票など西側の選挙制度が民主主義の唯一の基準とされてきた」と主張。

中国が自国の現実や歴史に根ざして実践する民主主義を「全過程人民民主」と呼び、ソ連崩壊後、信じられてきた欧米型の民主主義の優位を相対化しようとする習指導部の決意を強く打ち出した。
 
「全過程人民民主」の全体像ははっきりしないが、地方レベルの直接選挙や人民代表大会など、中国では政策の立案から実施まで様々なプロセスで民主制度が機能しているとした。
 
さらに、「中国は民主主義と専政(強力な統治)の有機的な統一を堅持する」「民主主義と専政は矛盾しない。ごく少数の者をたたくのは大多数の人々を守るためであり、専政の実行は民主を守るためである」とも主張。共産党の支配を支える現在の政治システムを正当化している。
 
体制に批判的な人権派弁護士らの摘発や、香港紙「リンゴ日報」への弾圧など、中国の権威主義的な統治に対する米欧の批判はやまない。

だが、政治分断で混乱する米国を尻目に、中国側は自国の制度への自信を深めている。そうした意識が民主主義サミットを機に噴き出した形だ。

 ■白書「中国の民主」の主な内容
・各国の民主主義は各国の歴史と文化、伝統に根付いており、道筋と形態は異なる
・中国共産党の指導は全過程人民民主の根本的な保障。中国のような大国で14億人の願いを伝え、実現するには堅強な統一指導が必要
・権力乱用はいわゆる政権交代や三権分立ではなく、(人民代表大会、行政、司法、世論などの役割を合わせた)科学的な民主監視によって解決する
・よい民主とは社会の分裂や衝突をもたらすものではない【12月5日 朝日】
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****「欠陥ないがしろ」 中国が米国の民主主義を批判する報告書****
中国外務省は5日、米国の民主主義を批判する報告書を発表した。金権政治や人種差別といった問題点を列挙し、「長期間、米国は自国の民主主義制度の構造的な欠陥をないがしろにしている」と強調した。バイデン米政権が近く開く「民主主義サミット」を前に、民主主義陣営を主導する米国への対抗を強めている。

1万5千字近くに及ぶ報告書は「米国の民主状況」と題し、米国内の研究などを基に論じている。米国の民主主義制度が「金権政治」に陥り、「民衆の参政権に制約を与えている」と主張。少数のエリート層による統治が進んでいるとしたほか、大統領選の選挙人制度が問題点を抱えているなどと指摘した。

今年1月に起きた連邦議会議事堂襲撃事件や、昨年5月に米ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性が白人警官に首を圧迫されて死亡した事件などを挙げて、「米国は民主主義の優等生ではない」と非難した。

また、アフガニスタンやイラク、シリアでの米国の軍事行動で多くの被害が出たと訴え、「米国が民主主義を無理強いしたことで、多くの国で人道的な災難をもたらした」と批判した。

米国の民主主義制度について「特有のものであり、普遍性は備えず、非の打ちどころがないものではまったくない」と強調した。(後略)【12月5日 産経】
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アメリカの(そして日本の)民主主義に多くの欠陥があるのは事実ですし、中国の指摘には妥当なものもあります。
ただ、中国の「全過程人民民主」なるものが民主主義の名に値するものかどうかは、今更ここで論じる必要もないでしょう。

「専政の実行は民主を守るため」とか「科学的な民主監視」とか・・・「なんじゃそりゃ?」という感も。

【AIが「人知」超えるとき、選挙制度に基づく民主主義は崩壊し、AIと親和性のある中国型計画経済が発展・・・との指摘も】
しかしながら、理念はともかく、中国的な専制主義がAI技術の進展と相まって、今後ますます現実面で効果を発揮する可能性を指摘する向きもあります。

****AIが「人知」超える2045年が転換点に=自由資本主義より中国型体制が有利―西原元早大総長****
国際アジア共同体学会(会長・進藤榮一筑波大名誉教授)が主催する日中シンポジウムがこのほど東京の国会議員会館で開催され、西原春夫早稲田大名誉教授・元総長(アジア平和貢献センター理事長)が講演した。

「人工知能(AI)の能力が人間の判断・能力を超えるシンギュラリティは2045年にも到来する」と指摘。AIと親和性のある中国型計画経済を発展させると強調した。

西原春夫早稲田大名誉教授・元総長の講演要旨は次の通り。

◆「21世紀・中国」をどう見るか
世界は転換期にあり、世界の大きな流れは中国を発展させる方向にある。日本のメディアは(中国の)難点ばかりを指摘するが、人類の歴史の大きな流れを報じていない。

大きな流れとは何か。人口知能(AI)の発達である。

(1)AIの能力が人間の判断を上回るシンギュラリティは2045年にも到来する。二十数年後にこの時代が実現すると、AIの人間行動の判断や予測が人間の能力を上回る。

(2)AIが発展すれば選挙制度に基づく民主主義は崩壊する。バイデン大統領が主張するような民主主義と専制主義の対立はなくなる。資本主義も社会主義も同じようなことになる。

(3)今までは国家、企業、個人の活動の成り行きや成果についての予測できなかったが、可能になる。

「人知」に限界があったためマルクスの時代にはマルクスレーニン主義の実現は不可能だった。人知に限界があったからソ連はじめ社会主義国は崩壊した。

AI時代には、自由資本主義より(膨大なデータに基づく)計画経済の方が実態を正確に把握でき、能率的で的確な予測と政策遂行が可能だ。

議会制民主主義の選挙制度が形骸化し、国民の意見・欲求や利益を反映されなくなった。選挙でしか国民の要求が分からない中、権力の濫用のほか癒着や汚職も目立っている。国民の総意を表しておらず民主主義が機能していない。

中国では1950年代の「大躍進運動」、60〜70年代の「文化大革命」、80年代末の「天安門事件」など混乱があったが、人間の知恵と能力が有限だったためである。

多くのメディアは、中国の発展過程を大きな視点に基づいて報道すべきである。新型コロナ感染問題では中国はほぼ封じ込めており、数万人の感染者を記録している欧米と対照的である。

習近平国家主席は、共産党設立100年に当たる2021年と、中華人民共和国設立100年に当たる2049年との間に社会主義の現代化を実現しようとしている。AIが人間を凌駕するシンギュラリティが実現すれば理想に近づくと見ていることは明らかだろう。【12月4日 レコードチャイナ】
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議会制民主主義の選挙制度が形骸化し、それぐらいならAIを駆使した少数者の専制統治がましかも・・・、あるいは更に進んで、全知全能のAIが政治を決定する社会もあるかも・・・という近未来ディストピアですが、あまりワクワクする話ではないです。
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