孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベラルーシ大統領選挙  予定どおり現職圧勝の発表 広がる抗議行動 注目のロシアは勝利を「祝福」

2020-08-10 22:38:19 | 欧州情勢

(ベラルーシの首都ミンスクで、大統領選の投票締め切り後に野党支持者らを拘束する機動隊員ら(2020年8月9日撮影)【8月10日 AFP】)

 

【予定どおりの「ルカシェンコ圧勝」 抗議行動拡大】

8月4日ブログ“ベラルーシ 有力候補排除の無風選挙が一転、「欧州最後の独裁者」を追い詰める代理出馬「主婦」”でもとりあげた、旧ソ連のベラルーシ大統領選挙、“予想されたように”強権支配を続ける「欧州最後の独裁者」の現職ルカシェンコ大統領は「圧勝」し、これを認めない人々の抗議活動で混乱が生じています。

 

****ベラルーシ大統領選、現職の6選確実 各地で抗議行動、3000人拘束か*****

旧ソ連のベラルーシで9日、任期満了に伴う大統領選が投開票され、国営メディアによると、暫定結果で現職のルカシェンコ大統領(65)が約8割の票を集め、6選を決めた。

 

ただ、各地の都市で選挙の不正を訴え、抗議する人々が治安部隊と衝突。同国の内務省によると、約3000人を拘束しており、選挙の正当性を巡り緊迫した状況が続きそうだ。

 

国営ベルタ通信によると、中央選管が10日朝に公表した暫定結果で、ルカシェンコ氏は80・23%の票を獲得。政権への抗議運動を繰り返し逮捕されたブロガーの夫の代わりに出馬し、最大の対抗馬とみられていた主婦のチハノフスカヤ氏(37)の得票率は9・9%にとどまった。投票率は84・23%だった。

 

ベラルーシでは9日の日中から大規模なインターネットの障害が起こり、首都ミンスクの中心部などで治安部隊の車両が展開。

 

独立系メディアの出口調査では、チハノフスカヤ氏が8割以上を得票したとの結果も出ていた。そのため9日夜に政府系メディアがルカシェンコ氏の当選確実を伝えると、選挙の不正を訴えるため街頭で抗議行動を始めた人々が治安部隊と衝突し、ゴム弾や閃光(せんこう)弾などが発砲された。インターネット上には人々が負傷し、血を流す様子などが投稿されており、多数の負傷者が出ている模様だ。

 

地元人権団体などによると、首都ミンスクで1人が死亡し、各地の衝突で約90人が負傷した模様だ。ベラルーシ内務省は10日未明、「警察は状況をコントロールしている」と発表。チハノフスカヤ氏は治安当局や国民に暴力行為をやめるよう呼びかける一方で、暫定結果を認めないと表明している。

 

ルカシェンコ氏は1994年の大統領就任後、政敵を弾圧する強権政治を続け、「欧州最後の独裁者」と呼ばれてきた。最近は経済の低迷や新型コロナウイルスへの対応などを巡り、国民の不満が増大。逆風にさらされる中、選挙前から他の有力候補を逮捕するなど政敵の排除を進めていた。

 

だが、政治経験のないチハノフスカヤ氏は出馬を認められ、政権に批判的な勢力を結集。7月末には首都ミンスクで6万人を超えるとみられる集会を開くなど、国民の不満を集める受け皿となっていた。

 

これに対し、ルカシェンコ氏は「(情報戦などを伴う)ハイブリッド戦が仕掛けられている」として、国外からの選挙介入の可能性に繰り返し言及。国民に結束を呼びかける一方で、選挙戦終盤にはチハノフスカヤ陣営の幹部を拘束するなど強硬姿勢を強めていた。

 

ルカシェンコ氏は過去の大統領選後も政権に批判的な勢力の拘束に踏み切り、欧米から制裁を受けた。今回も選挙の公正性に対し、欧米から懸念の声が相次いでおり、選挙結果や国内状況次第では新たな制裁を招く可能性がある。【8月10日 毎日】

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なんの根拠もない想像ですが、仮にルカシェンコ氏の実際の得票がゼロ票でも、政権の一部にすぎない選挙管理員会は「ルカシェンコ圧勝」を発表するでしょう。

 

欧州安保協力機構(OSCE)の選挙監視団の派遣も要請されずに行われていますので、いかようにも操作できます。

 

実際にどういう投票結果だったのかはわかりません。

事前の支持率ではルカシェンコ氏は3〜5%と言われるほどに不人気で、拘束された有力候補者より圧倒的に劣後していたこと、上記の“独立系メディアの出口調査では、チハノフスカヤ氏が8割以上を得票したとの結果も出ていた”との話などから、“推測”はできますが・・・

 

【注目されるロシアの対応 ルカシェンコ氏勝利を「祝福」】

チハノフスカヤ氏の主張は、「自分が大統領選に勝利したあかつきには、今獄中にいる夫たちを解放し、半年以内に今度は正式な大統領選挙を実施する」という一点に絞られており、実質的な野党統一候補になっていました。

 

予想された結果で、当然ながらチハノフスカヤ氏も選管が「チハノフスカヤ氏勝利」を発表するなどとは考えていないでしょうが、今後の展開をどのように考えているのか(政治素人のチハノフスカヤ氏本人というより、彼女を支えている陣営としてどのように考えているのか)は、よくわかりません。

 

“今回も選挙の公正性に対し、欧米から懸念の声が相次いでおり、選挙結果や国内状況次第では新たな制裁を招く可能性がある”とのことですが、現実問題としては欧米の制裁ぐらいでは今回結果は動かないでしょう。

 

影響力があるとすればロシアでしょう。

 

ロシアは、ウクライナのように親ロシア政権が選挙の混乱で崩壊し、親欧米政権が誕生する事態は絶対に避けたいところですが、ただ、何かとロシアの意に沿わない(欧米とロシアを両天秤にかけて、利益を引き出そうともするような)ルカシェンコ氏に対してはうんざりしており、可能なら親ロシアの他の候補者にすげかえたい思いもあるでしょう。

 

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注目されるのは選挙結果を受け、不正を訴える抗議運動がどこまで広がるかだ。

 

治安当局と抗議運動の参加者の間で激しい衝突が起きれば、2014年に隣国ウクライナで親ロシア派政権が打倒されたように、ベラルーシ情勢が不安定化しかねないとの見方がある。

 

ロシア人の拘束などでベラルーシとの同盟関係が冷え込むロシアは情勢を注視している。プーチン大統領は7日にルカシェンコ氏と電話協議し、「内政の安定と大統領選の平穏な実施に関心がある」と伝えた。

 

隣国での政変を危ぶむロシアが介入に乗り出す事態になれば、欧米とロシアとの関係にも影響しそうだ。【8月9日 日経】

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ルカシェンコ大統領は選挙前からロシアの選挙干渉(親ロシアの反政権候補支援)を警戒して、ロシア傭兵拘束などで、ロシアを強くけん制してきました。

 

傭兵拘束問題に関しては、選挙前に両国間で一応の“手打ち”みたいなものはなされています。

 

****傭兵拘束「解決を確信」 ロシア・ベラルーシ首脳****

ロシア大統領府によると、プーチン大統領とベラルーシのルカシェンコ大統領が7日、電話会談した。  

 

ベラルーシ当局がロシア民間軍事会社の傭兵(ようへい)33人を拘束した問題で意見を交わし、双方は「解決を確信している」と表明した。  

 

両首脳が7月末に起きたこの問題を直接協議するのは初めて。ベラルーシは9日の大統領選を前に傭兵らがベラルーシの反政権勢力と結託して「大規模な騒乱」を企てていたと主張し、ロシアを批判していた。  

 

ベラルーシ大統領府によれば、両首脳は拘束に至った背景や責任の所在を明らかにすることで一致した。【8月7日 時事】 

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選挙結果を受けたロシアの対応についてはまだ報道は目にしていませんが、政治混乱の広がり具合をロシアが最大限の関心を持って注視しているのは間違いないでしょう。

 

選挙直前にはロシア内部で、状況分析・対応などについて協議がなされたとも。

 

****ベラルーシ大統領選控え ロシア 情勢緊迫化念頭に対応協議か****

旧ソビエトのベラルーシでは、ルカシェンコ大統領に対する国民の反発が強まるなか、9日に行われる大統領選挙の結果しだいで情勢が緊迫化する可能性もあり、ロシアのプーチン大統領は、安全保障会議を開き、ロシアとしての対応などを協議したとみられます。(中略)


ルカシェンコ大統領は5日行われたインタビューで、対立陣営について「ロシア側から大量の資金が流れている」と述べ、ロシアが選挙に介入していると批判しました。

また、ルカシェンコ大統領は、ベラルーシの治安当局が先月下旬、プーチン政権とのつながりも指摘される民間の軍事会社の武装警備員らを発見、拘束した事件についてもロシアが選挙前に情勢の不安定化をねらったものだと非難を強めています。

 

こうしたなか、プーチン大統領は7日、オンラインで安全保障会議を開き、「旧ソビエト圏の状況に重点を置いて議論したい」と述べました。

ベラルーシでルカシェンコ大統領が再選されれば、国民の抗議活動が拡大し、一気に情勢が緊迫化する可能性もあり、プーチン大統領はロシアとしての対応などを協議したとみられます。【8月8日 NHK】

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そうしたなか、プーチン大統領は“10日、ルカシェンコ氏の「再選」を早速祝福”【下記】したとか。

 

****「欧州最後の独裁者」露と再接近か ベラルーシ大統領選****

(中略)ルカシェンコ氏は近年、ベラルーシに影響力を持つロシアを牽制(けんせい)するため、長年対立してきた欧米との関係改善を模索。欧米側もベラルーシの“ロシア離れ”を支援してきた。

 

しかし今回の大統領選で、有力対抗馬の排除や抗議デモへの弾圧、開票不正の疑いをめぐり、欧米側はルカシェンコ氏を批判した。

 

一方、ベラルーシ治安当局は7月末、「大統領選の攪乱(かくらん)を図った」として露民間軍事会社(PMC)要員33人を拘束。ロシアとの緊張が高まった中、ルカシェンコ氏とプーチン露大統領は今月7日、電話会談でこの問題を協議。

 

プーチン氏は10日、ルカシェンコ氏の「再選」を早速祝福しており、ロシアへの再接近が取りざたされている。【8月10日 産経】

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ロシアとしては、政治混乱が拡大してウクライナの二の舞になるのは阻止したい・・・ということでしょうか。

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