孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国外交が活路を求める欧州とアフリカ  

2020-08-28 23:26:16 | 中国

(2019年4月、北京で開かれた一帯一路国際フォーラムで、各国首脳とともに記念撮影に応じる中国の習近平主席【8月20日 GLOBE+】)

 

【欧州との関係強化狙うも、国民レベルの好感度には限界も】

前日ブログでもとりあげた米中対立が厳しさを増し、アメリカ・トランプ政権が中国包囲網を形成しようとするなかで、当然ながら中国も対抗策を講じていますが、そのひとつが欧州との関係強化です。

 

****中国、米の「対中包囲網」切り崩しへ 欧州との関係強化狙う****

中国国防省の呉謙報道官は27日の記者会見で、米中関係について「国交樹立以来の非常に厳しい複雑な局面にある」と言明した上で、「米側が絶えず挑発して問題を引き起こし、中国の主権と安全を深刻に損なっている」と批判した。米中両軍が意思疎通を保つことは非常に重要だとも指摘した。

 

南シナ海問題などで米国との対立が深まる中で、中国は欧州への働きかけを進めている。新型コロナウイルスの流行が抑制されてから初の外国訪問として訪欧中の王毅(おう・き)国務委員兼外相は経済面での協力を強調。経済関係を“武器”にして、米国が構築を目指す「対中包囲網」の切り崩しを図る考えだ。

 

王氏は現地時間26日、オランダのブロック外相とハーグで会談。中国側の発表によると、王氏は「中国が対外開放を拡大するチャンスをオランダ企業がつかむことを歓迎する」と強調した。農業や航空宇宙、バイオ医薬などの分野で協力を深めることも呼び掛けた。

 

一方で王氏は「オランダが、公平・公正で開かれた、差別のないビジネス環境を中国企業に提供することを望む」とクギを刺した。米国が呼び掛ける、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)などの排除を意識したとみられる。

 

同日に王氏と会談したオランダのルッテ首相は、米中の「デカップリング(切り離し)」について「いずれにとっても利益がなく、全く実現不可能だ」と中国の立場に同調している。【8月27日 産経】

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王毅外相は25日にはイタリア外相と会談し、関係強化を確認しています。

 

****中国・イタリア外相が会談、より緊密な関係構築を確認****

イタリアのディマイオ外相は25日、欧州歴訪を開始した中国の王毅国務委員兼外相と会談し、両国はより緊密な関係を築く必要があると述べた。中国政府に警鐘を鳴らす米国とイタリアとの関係が悪化する可能性がある。

 

ディマイオ外相は「非常に実りのある会談だった」とし、「経済・産業の観点から(われわれの)戦略的パートナーシップを再開する」方法について王外相と協議したと語った。

 

また、会談で香港を巡る問題を取り上げたとし、香港市民の権利と自由と尊重しなければならないとした。

 

中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に関する言及はなかった。

 

一方、王外相は記者団に対し、新型コロナウイルス対応での協力深化や関係強化は欧州連合(EU)と中国にとって重要と指摘。米政府との関係について、冷戦は望まないとの見方を示した。【8月26日 ロイター】

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中国国内の人権問題、台湾・香港・ウイグル・南シナ海などにおける問題は、欧州にとってはやはり「遠い」地域の話として切実さがあまり感じられないのかも。

 

そうしたことよりは、巨大な市場、膨大なチャイナマネーという面が前面に出てくるのかも。

 

中国も、そうした国家レベルの経済関係にとどまらず、国民レベルの中国に対するイメージ全般の改善も狙って、いわゆる「マスク外交」も展開しています。

 

ただ、そうした中国外交の働きかけにもかかわらず、国民感情レベルでみると、欧州においても中国のイメージはあまりよくないようです。

 

やはり、欧米において中国が信頼を得るためには、中国自身の言動・価値観を是正しないと・・・という根本的な問題があるように思われます。

 

【アフリカでは高い好感度 アフリカ重視は中国の対外関係の行き詰まりの結果という側面も】

一方、中国が毛沢東時代から重視してきたのがアフリカ外交ですが、アフリカ諸国にあっては、中国のイメージ・好感度は欧米諸国におけるそれよりは高いものがあります。

 

****中国の「マスク外交」は功を奏したか アフリカ支援強化に見える中国外交の難路****

新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大を機に、国際社会には中国への不信と警戒心を強めて距離を置こうとしている国々と、反対に中国との相互依存関係を深めている国々があるように見える。

 

あくまで大雑把な分類に過ぎないが、前者の典型が欧米や豪州などの自由民主主義諸国であり、後者の典型がアフリカ諸国のように思われる。ここでは筆者が専門とするアフリカ諸国と中国のコロナ禍の関係に焦点を当ててみたい。

 

■地域で分かれる中国への感情

最初に一つの世論調査結果を見ていただきたい。米国のシンクタンク、ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が新型コロナの感染拡大前の2019年5〜10月にかけて、世界の34カ国で中国に対する見方を尋ねた世論調査の結果である。

 

調査結果からは、中国に対する見方には、地域ごとに一定の傾向があることがうかがえる。中国に「否定的(Unfavorable)」な感情を抱いている人の割合は、北米、西欧、北欧、アジア太平洋の国々で高い傾向がある。

 

一方、中国に「好意的(Favorable)」な感情を抱いている人の割合はロシア、東欧、中東、アフリカ、中南米で高い傾向がある。アフリカ3カ国で中国に好意的な回答を寄せた人々は、南アが46%、ケニアが58%、ナイジェリアに至っては70%にも達する。

 

中国に「否定的」な回答が多い国々のうち、北米、西欧、北欧の国々は中国から地理的に遠く、中国との間に領土問題は存在しない。

 

しかし、これらの国々は自由、民主主義、法の支配などの価値観の点で中国とは相いれないだろう。また、アジア太平洋諸国は中国に地理的に近く、中国の高圧的外交と軍事的脅威を身近に感じ、国によっては中国との間に領土問題を抱えている。日本や豪州は、価値観の点でも中国とは相いれないだろう。

 

一方、中国に「好意的」な回答が多いロシア、東欧、中東、アフリカ、中南米の国々では、自由や民主主義といった価値が欧米諸国ほど明確に保障されてはいない。ロシアを除けばいずれの国々も中国から地理的に遠く、中国との間に領土問題は存在しない。そして多くの国々は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に基づく中国マネーの投融資先である。

 

このように新型コロナ感染拡大以前の中国に対する国際世論は、欧米と周辺地域のアジア太平洋で厳しく、欧米を除く中国から遠い地域で寛容であった。

 

■150カ国以上に医療物資などを提供

では、そうした国際世論の傾向は、新型コロナ感染拡大を機にどう変わっただろうか。各国政府が感染対策に追われる中、中国が世界150カ国以上に医療物資などを提供する「マスク外交」を展開し、国際貢献をアピールしてきたことは周知の通りである。

 

しかし、次に見るいくつかの最新の世論調査結果は、欧米諸国においては中国の「マスク外交」が奏功せず、むしろ中国への不信と嫌悪感を高めたことを示している。

 

英国のトニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所(Tony Blair Institute for Global Change)が英米独仏の4カ国で6月4〜15日に実施した世論調査によると、中国を「悪い勢力」と見なす人の割合は英国60%、米国56%、ドイツ47%、フランス60%に達し、「良い勢力」と見なす人は英国3%、米国5%、ドイツ4%、フランス5%に過ぎなかった。「コロナ感染拡大下で中国に対する見方が悪化した」と回答した人は英国60%、米国54%、ドイツ46%、フランス55%に上った。

 

欧州外交評議会(ECFR)が4〜5月にEU加盟9カ国(デンマーク、フランス、スウェーデン、ドイツ、ポルトガル、スペイン、ポーランド、イタリア、ブルガリア)で実施した世論調査(7月20日発表)でも、「新型コロナ危機を通じて中国への見方が変わったか」との問いに、全体の48%が「悪化した」と答え、「良くなった」は12%にとどまった。国別にみると、9カ国のうち「悪化した」と「良くなった」が22%で拮抗したのは中国マネーによるインフラ開発が進む東欧のブルガリアのみで、残り8カ国はすべて「悪化した」が「良くなった」を上回っている。

 

豪州では、ローウィ研究所(Lowy Institute)が3月に実施した世論調査で、「国際社会で責任ある国として中国を信頼できるか」との質問への回答は「信頼できる」「ある程度信頼できる」を合わせて23%にとどまった。

 

2018年調査で「信頼できる」「ある程度信頼できる」が合わせて52%だったことと比べると、豪州での対中感情が急速に悪化したことが分かる。

 

また、中国が最近、香港の一国二制度を破壊した事実を踏まえれば、豪州以外のアジア太平洋諸国でも、対中世論が今後好転していく可能性は極めて低いだろう。

 

では、中国から地理的に離れ、一帯一路に基づく中国マネーがふんだんに注ぎ込まれている「中国に好意的な国々」の対中世論はコロナ禍を機にどう変わるだろうか。

 

残念ながら現時点では、アフリカや中南米の国々の対中世論に関する信頼に足る調査結果を筆者は見つけ出すことができない。しかし、少なくともアフリカ諸国に関する限り、欧米やアジア太平洋諸国の状況とは異なり、コロナ禍を機に対中世論が今後急激に悪化していくとは考えにくい。

 

中国によるアフリカ支援は単なる緊急医療支援にとどまらず、債務救済や新型コロナの中国産ワクチンの優先配布など多岐にわたっており、政治レベルの関係強化にも余念がないからだ。

 

■「友人」を求めて

そうした中国のアフリカに対する取り組みの象徴は、6月17日にオンラインで開催された中国・アフリカ緊急サミットであった。

 

会議にはアフリカ諸国の首脳のほか、エチオピア出身の世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も出席し、習近平国家主席が基調演説で、医療チーム派遣や、アフリカ諸国の債務救済、ワクチンのアフリカへの優先的配布――などを約束した。

 

会議の締めくくりに、新型コロナへの中国の対応をアフリカ諸国が全面的に支持する共同声明が発表され、首脳レベルでの関係強化を確認した格好だ。

 

習主席は演説で、2020年末に満期を迎える中国政府の無利子貸し付けの返済免除と、G20の債務返済猶予イニシアチブに沿った返済猶予を約束した。

 

また、中国は会議の前に、IMFが4月13日に決定した「大災害抑制・救済基金(Catastrophe Containment and Relief Trust=CCRT)」を用いた債務救済スキームへの資金拠出も約束している。これは最貧国25カ国に6カ月分の債務返済資金を贈与するスキームで、25カ国のうち19カ国がアフリカの国々であることを考えると、実質的にはアフリカ支援の性格を有している。

 

こうしたアフリカに対する中国の手厚い支援を見ていると、表面的には貧しいアフリカの国々が中国の支援への依存を一方的に深めているようにも見えるが、それは中国・アフリカ関係の一面に過ぎないというのが筆者の考えである。

 

近隣国との領土問題等で見られる威圧的・脅迫的な外交姿勢、国内における厳しい言論弾圧、香港の一国二制度を形骸化させた抑圧的統治、メンツにこだわり過ちを認めない独善的で閉鎖的な体質――。こうした負の要素ゆえに、現在の中国は主要国(欧米)と周辺国(アジア太平洋)に「友人」がほとんどいない。先に見た数々の世論調査は、中国が直面するそうした現実を示している。

 

新型コロナ感染が拡大した3月以降、中国のメディアは、医療物資を満載した中国の貨物機がアフリカ各国の空港に到着し、人々が笑顔でこれを迎える様子を連日報道してきた。

 

あまりに稚拙で露骨なプロパガンダに筆者は失笑を禁じ得なかったが、欧米やアジア太平洋諸国の対中世論が厳しいものであることを踏まえると、中国がアフリカで援助が歓迎されている様子を大々的に喧伝し、国際場裏における「友人」の存在を示さなければならない状況に置かれていることがみえてくる。

 

アフリカ向け投資・援助の担い手である欧米諸国やインドといった国々が自国の感染対策に追われる中、国内の感染を封じ込めたかに見える中国政府は当面、積極的なアフリカ支援を続けていくだろう。

 

ただし、それには、中国の対外関係の行き詰まりの結果という意味がある。中国への不信と警戒が主要国と周辺国で強まれば強まるほど、中国は国際社会における親中派世論の形成のために、アフリカへの支援をますます強化していくと思われる。【8月20日 GLOBE+】

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中国が戦略的に重視してきたアフリカ諸国においても、下記記事が示すように、中国の進出に伴う地元社会との軋轢は多々報じられています。

 

そうした軋轢もひとつの側面ではありますが、これも下記記事にあるように(記事の趣旨はアフリカ諸国におけるミクロレベルでの「反中感情」をアピールするものですが)、中国が強行した香港国家安全維持法に関して、国連人権理事会において多数のアフリカ諸国が中国を支持しているという事実は、少なくともマクロレベルでは中国アフリカ外交が“奏功している”面を示しているように思われます。

 

また、ミクロレベルにおいても、前出ピュー・リサーチ・センター調査が示すように、アフリカ諸国における中国のイメージ・好感度はむしろ高いということの方が、日本や欧米がまず第一に認識すべき点だと思われます。

 

下記のような「軋轢」は、そのことを踏まえたうえでの「第2」の指摘でしょう。

 

****中国企業のせいで飲み水が汚染?アフリカ全土で「反中感情」が高まるウラ****

6月30日、国連人権理事会(スイス・ジュネーブ)で中国が強行した香港国家安全維持法について審議が行われ、国連加盟国の52か国が同法を支持する立場を表明した。

 

支持国はアジア、中東、欧州、中南米など各地域から満遍なくみられたが、特にアフリカが25か国とほぼ半数を占めた。  

 

アフリカ諸国で支持を表明したのは、エジプト、モロッコ、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ジブチ、赤道ギニア、エリトリア、ガボン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、レソト、モーリタニア、モザンビーク、ニジェール、シエラレオネ、ソマリア、南スーダン、スーダン、ザンビア、ジンバブエ、トーゴ、ブルンジ、コモロの25か国。“一帯一路”によって中国から多額の資金援助を受けている国が目立つ。

 

チャイナマネー頼りではあるが…

実際問題、チャイナマネーなくしてインフラ整備や近代化を進められない国々も多く、本審議の際も「支持しないと資金援助を停止される」とプレッシャーを感じた国もあったことだろう。  

 

だが、現地情勢から察するに、こういった国々からも“反一帯一路”の声が挙がっているようだ。  

 

まず、ザンビアの首都ルサカ郊外にあるマケニでは2020年5月、中国企業の中国人幹部3人が現地の従業員2人に殺害される事件が発生。具体的な犯行動機などは分かっていないが、中国人幹部から不当な雇用条件を押し付けられ、同従業員2人は以前から中国人幹部たちに強い不満を抱いていたという。  

 

国連によると、ザンビアには推定8万人の中国人が在住しているが、マケニでは多くの地元民が中国企業の不当な扱いに対して不満を募らせており、以前マケニの市長は中国企業に中国人のみの雇用は止めるべきだと主張した。

 

汚染で飲み水を得られない住民まで

中央アフリカ共和国では2019年7月、同国北西部ウハム・ペンデ州の町ボズムで金鉱採掘を行う中国企業が、採鉱によって河川が汚染されて生態系に大きな被害が出るだけでなく、住民の健康に害を及ぼす恐れがあるとして地元議会から撤退するよう要求された。  

 

地元議会はその前月、議会のメンバーが現地を調査した際、汚染によって死亡者が増加し、住民が飲み水を得られなくなっている状況を確認したという。同国でも中国企業への反発が強まっている。

 

多額の融資を受けた新空港が計画中止に

シエラレオネでは2018年2月、同国政府が新空港建設のため中国輸出入銀行から多額の融資を受け、2022年までに新空港建設を完成させる4億ドルもの契約を結んだが、翌月の大統領選で勝利したジュリアス・ビオ現大統領は急遽、その建設中止を発表した。  

 

同大統領は積み重なる債務に疑念を抱き、中国主導の新空港建設は経済的ではないと判断したとみられる。  

 

これらの3か国は、いずれも香港国家安全維持法を支持した側だ。しかし、国家としての判断と現地住民たちの声が異なることは決して珍しくなく、ミクロレベルで覗けば、さらに多く類似のケースがあることは想像に難くない。

 

自主性を求める“最後のフロンティア”

一方、2020年2月、ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領は米国のシンクタンクで講演した際、アフリカが米中競争の主戦場になることに対して強い懸念を示し、アフリカ各国の選択する自由と権利を強調。両国に対してアフリカの自主性を尊重するよう求めた。  

 

アフリカ各国では今後急激な人口増加が見込まれ、経済的には“最後のフロンティア”とも呼ばれるが、中国の影響力拡大と米中の対立の深まりを警戒する声は日に日に高まっている。  

 

そして、アフリカではブルキナファソなどのサヘル地域やモザンビークを中心に、イスラム国やアルカイダを支持するイスラム過激派の活動が近年活発化している。  

 

今後、中国が現地政府や住民の声を聞かないやり方を続けていると、“中国権益”が同過激派の標的になるリスクも一層高まることだろう。【8月16日 biz SPA! フレッシュ】

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コメント
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