孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベラルーシ  政権移行を求める流れが加速 プーチン大統領に支持を強要するルカシェンコ大統領

2020-08-15 22:50:55 | 欧州情勢

(14日、ベラルーシ西部グロドノの国営化学企業で、勤務時間中に大統領選の結果に抗議する集会に参加した従業員ら【8月15日 共同】 政権の支持基盤であるはずの国営企業にも政権批判は拡大)

 

【拡大するルカシェンコ政権批判 国営企業にも】

8月10日ブログ“ベラルーシ大統領選挙 予定どおり現職圧勝の発表 広がる抗議行動 注目のロシアは勝利を「祝福」”でもとりあげた旧ソ連・ベラルーシのその後の状況。

 

大統領選挙において不正な手段で「圧勝」した(例えば、2,3割しかなかった得票を、8割あったことにするなどの捏造。あくまでも「例えば」の話ですが・・・。国際監視もなく、中央選管は政権の意のままですから何でも可能です)との疑いがもたれているルカシェンコ大統領への抗議・批判は着実に高まっています。

 

この抗議をどう切り抜けるのか、強権で鎮圧するのか、政権は耐えられるのか・・・「欧州最後の独裁者」の判断が注目されます。

 

****ベラルーシ、数千人が「人間の鎖」 選挙後の暴力に抗議****

ベラルーシで13日、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領が6選を果たした大統領選挙の結果や、選挙後に起きた警察による暴力的な取り締まりに抗議するデモが行われ、数千人が「人間の鎖」をつくった。

 

ベラルーシでは大統領選が行われた9日以降、4晩にわたり騒乱が続き、少なくとも2人が死亡、数百人が負傷したほか、7000人近くが拘束された。

 

隣国のロシアはデモについて、旧ソ連邦構成国であるベラルーシの不安定化を狙って国外で組織されたものだと主張。一方、欧州諸国は警察の暴力を批判するとともに、ルカシェンコ大統領に新たな制裁を科す構えを示している。

 

ベラルーシの首都ミンスクでは数千人が手をつなぎ、街頭を行進。多くは白い服を身にまとい、花や風船を手にしていた。現場の雰囲気はここ数日よりも平穏で、デモ隊が都心の通りを歩き、道路沿いに列をつくると、行き交う車が支持を表してクラクションを鳴らした。

 

地元メディアによると、ほかの国内6都市でも同じような人間の鎖がつくられた。一方で活動家らは、夜にさらなる抗議デモを行うよう呼び掛けている。

 

反政権派は、ルカシェンコ氏が大統領選で有力対立候補だったスベトラーナ・チハノフスカヤ氏に勝利するため不正行為におよんだと主張。チハノフスカヤ氏は選挙後、隣国リトアニアに逃れている。 【8月14日 AFP】

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ルカシェンコ大統領を厄介視していたロシア・プーチン大統領ですが、現段階では、隣国ベラルーシがウクライナの二の舞で崩壊して親欧米政権が誕生するような事態を警戒し、ルカシェンコ政権を支える姿勢のようです。

 

しかし、政権の批判は、不正選挙だけでなく、その後の抗議行動への弾圧にも高まっており、本来は政権の支持基盤であるはずの層にも拡大しています。

 

*****国営企業でスト拡大、ベラルーシ 大統領に反発****

9日のベラルーシ大統領選でルカシェンコ大統領が6選を果たしたのは不正の結果だとし、各地の国営企業で13日、ストライキなど、抗議デモへの治安機関の取り締まりに反発する動きが広がった。地元インターネットメディア「TUT・BY」などが報じた。

 

ルカシェンコ氏の支持基盤でも不信や不満が高まっていることが鮮明になった。

 

首都ミンスク郊外のジョジナ市にある大型車製造「ベルアズ」では、生産したバスがデモ鎮圧に使われるのに反対し、公正な選挙実施を求める数百人の従業員が職務を中断して集まり、企業幹部や市長と話し合った。【8月14日 共同】

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【スヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏は隣国リトアニアに】

拘束されている夫の代理で出馬し、当選後、拘束中の野党候補者を含めて改めて再選挙するという一点に主張を絞り、実質的野党統一候補の形になったスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏は現在隣国リトアニアに脱出しています。

 

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(中略)主要対立候補だったスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏(37)も11日にリトアニアに脱出した。

 

チハノフスカヤ氏は脱出について、子どもたちのために「非常に難しい決断をした」と語る動画をYouTubeに公開している。

 

政治経験のないチハノフスカヤ氏は、今年5月に政権に批判的だったブロガーの夫が出馬を禁じられ、収監された後に出馬を決めた。

 

ルカシェンコ大統領にとってはここ数年で最も強力な対立候補となり、投票前には大規模な集会を開くまでに至った。

 

しかしルカシェンコ氏は、女性はベラルーシを統治できないと一蹴。チハノフスカヤ氏の支持者を、外国に操られた「ヒツジ」とやゆしていた。

 

チハノフスカヤ氏は、選挙での得票率が10%ほどとされた。その結果について不服を申し立てるため、10日に選挙管理委員会を訪れたところ、7時間にわたって拘束された。

 

その後、11日朝にはリトアニアに到着していた。

近親者によると、自陣の選挙運動責任者の解放と引き換えに、当局に付き添われて国外に出たという。

 

11日には、当局に拘束されていた10日に撮影されたとみられる動画が浮上した。その中でチハノフスカヤ氏は、支持者に「法律に従い」、抗議行動に加わらないよう求めるメッセージを、緊張した面持ちで読み上げた。【8月14日 BBC】

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【強まる欧米諸国の不正選挙・抗議行動弾圧への批判】

ルカシェンコ政権としては、素人の主婦に何ができる・・・と、高をくくっていたのでしょうが、想定外の事態進展に慌てているところでしょう。

 

抗議行動弾圧に関しては、「拷問」も報じられています。

 

****ベラルーシのデモ、警察による「拷問」の証言相次ぐ 大統領選への抗議は5日目****

大統領選挙の結果をめぐり抗議行動者と警官隊の衝突が起きている東欧ベラルーシで、拘束された市民に対する暴力の証拠が次々と上がっていると、人権擁護団体などが警告している。

 

投開票が行われた9日以降、これまでに約6700人が当局に拘束された。一部の人はすでに釈放されたものの、殴打を含む不当な扱いを受けた疑いが持ち上がっている。

 

人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは、証言からは「拷問がまん延している」ことがうかがえると指摘した。(中略)

 

「拷問部屋」

解放された抗議者がメッセージアプリ「Nextra」で共有した写真には、背中やでん部が腫れあがったりあざができている様子が写されている。警察当局の暴行によるものだとみられている。

 

アムネスティ・インターナショナルによると、拘束された人々は裸にされ、殴られたり、強姦すると脅されたりしたと証言しているという。

 

同団体の東欧・中央アジアディレクターを務めるマリー・ストラザーズ氏は、「拘束されていた人からは、収容センターが拷問部屋になっていたと聞かされた。抗議参加者は土の上に横たわるよう強制され、警官に蹴られたり警棒で殴られたりしたという」と話した。

 

BBCの取材班は、首都ミンスクにあるオクレスティナ収容センターから叫び声が上がっているのを録音している。

またAFP通信は国連の人権専門家5人からなる監視団の話として、機動隊は平和的抗議を強硬に取り締まり、過剰で不要かつ無差別な暴力を頻繁に使っていたと伝えている。

 

国連の人権専門家らは共同声明で、「ベラルーシ当局は抗議活動を速やかに解散させ、できるだけ多くの人を逮捕することにしか興味がないように思える」と述べている。(後略)【8月14日 BBC】

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ルカシェンコ政権の選挙不正疑惑、抗議行動弾圧に対し、EUなど欧米からの批判も強まっています。

 

****ベラルーシ、大統領退陣要求デモ拡大 反政権候補隣国へ****

アレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65)が6選を確実にした旧ソ連ベラルーシの大統領選をめぐり、対抗馬だったスベトラナ・チハノフスカヤ候補(37)が隣国リトアニアに逃れたことが明らかになった。選挙の不正に抗議する反政権派は治安部隊と衝突し、1人が死亡。欧米はベラルーシへの批判を強めている。

 

(中略)リトアニアは他の欧州連合(EU)加盟国とともに、候補者の拘束やデモ弾圧をめぐってベラルーシ当局を強く批判しており、同氏を保護したとみられる。陣営は「我々は合法的な手段で我々の勝利を守る」とチハノフスカヤ氏本人が不在でも抗議を続ける構えだ。

 

反政権派は10日夕から再び全国一斉に抗議デモを開始。首都ミンスクでは群衆が通りを行進し、ルカシェンコ氏の退陣を要求した。(中略)

 

治安部隊は爆音を出す閃光(せんこう)弾やゴム弾などを発射。デモ隊は街頭のゴミ収集用コンテナなどを並べたバリケードや花火などで激しく抵抗した。内務省は、デモ参加者の1人が投げようとした爆発物が手元で爆発し死亡したと発表した。多数の負傷者が出たとみられる。

 

11日には「ゼネスト」を呼びかける反政権派の一部のメッセージがSNSを通じて拡散。抗議行動はさらに続く様相だ。

 

選挙戦では複数の有力候補が事前に逮捕され、期間中も反政権派の拘束が相次いだ。夫に代わって出馬したチハノフスカヤ氏が反政権派全体のシンボルになったのは、立候補を拒まれた他陣営が合流し、「不正な選挙のやり直し」に公約を絞ったからだ。

 

ジョンソン英首相は10日、「抗議弾圧は全く許すことができない」と発言。

EUは2016年に対ベラルーシ制裁を大幅緩和したが、議長国ドイツのマース外相は10日の会見で、「(制裁解除の)判断が今も有効なのか議論すべきだ」と復活の議論を求めた。ポンペオ米国務長官も同日、選挙の不公正さやデモ弾圧を厳しく非難した。

 

一方、ルカシェンコ氏が「選挙への介入」を批判したことから一時関係がギクシャクしたロシアのプーチン大統領は同氏の6選を祝福し、関係修復を印象づけた。欧米が反政権派の支援に動けば、再びロシアと欧米が旧ソ連国を間に緊張を高めることになりそうだ。

 

制裁の復活、EUが協議へ

(中略)1994年からルカシェンコ氏の強権体制が続くベラルーシに、EUは過去7年で1億7千万ユーロ(214億円)を支援。16年には政治犯釈放などを理由に大半の制裁を解除した。

 

背景にあったのは、14年の隣国ウクライナをめぐる危機だ。ロシアと欧米の対立が激化。その際、連合国家を組むロシアと一定の距離をとって欧州に接近を図ったベラルーシに対し、EU側から民主化を促す狙いだった。

 

しかし大統領選では、期日前投票で独立系監視員が数えた入場者数の1・5倍の投票者が報告されるなど不正の疑いが次々と浮上。対抗馬の女性候補スベトラナ・チハノフスカヤ氏への支持が広がったにもかかわらず、ルカシェンコ氏の得票が80%と発表され、抗議が一気に広がった。

 

反政権派は11日も各地で「ベラルーシ万歳」と叫ぶなど抗議行動を展開した。治安部隊催涙弾などで制圧を図り、国営ベルタ通信によると1千人以上が拘束された。3日間の拘束者は6千人を超えた。

 

抗議参加者1人を複数の警官が激しく殴打する映像がSNSで拡散。首都ミンスクでは警官隊が中心部を押さえ、抗議行動は住宅地など周辺地域に広がった模様だ。内外の報道陣も標的になっている。

 

同通信によると、ルカシェンコ氏は11日、「抗議しているのは前科者と通りをうろうろしている失業者だ」と話した。【8月14日 朝日】

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****EU臨時外相会合「ベラルーシ大統領選、公正ではない」…制裁へ****

欧州連合(EU)は14日、臨時の外相会合をテレビ会議形式で開き、旧ソ連構成国ベラルーシの大統領選挙は公正ではないとの認識で一致し、反政権派による抗議行動の鎮圧に携わる当局者らに制裁を科す方針を決めた。

 

(中略)EUの外相会合後に発表された声明では、「大統領選挙は自由でも公正でもない。結果は改ざんされたと考えている」などと指摘し、ベラルーシ政府に暴力的な鎮圧を停止することも求めた。【8月15日 読売】

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【「懐柔策」に転じた?ルカシェンコ政権 加速する政権移行を求める流れ】

こうした国内外の批判の高まりに危機感を持ったのか、ルカシェンコ政権も「懐柔策」に変化したような動きも。

 

****ベラルーシ、抗議デモで拘束の1000人超を釈放****

ベラルーシ当局は13日夜、大統領選の不正疑惑をめぐる一連の抗議デモで身柄を拘束したデモ参加者のうち、1000人以上を釈放した。ナタリア・コチャノワ上院議長が明らかにした。アレクサンドル・ルカシェンコ大統領が拘束の経緯について調査を命じたという。

 

これに先立ち、同国各地ではこの日、多くの市民が「人間の鎖」をつくり、大統領選の結果と警察の暴力的なデモ取り締まりに抗議していた。また、欧州連合は警察の暴力を問題視し、対ベラルーシ制裁に関する会合を14日に予定している。

 

首都ミンスク中心部では、通りに繰り出した群衆が手に花や点灯した携帯電話を掲げ、クラクションで支援を表明する車が通ると歓声を上げた。

 

内務省によると、9日以降のデモに絡む逮捕者は約6700人に上る。ユーリー・カラエフ内相は国営テレビを通じ、「たまたまデモに巻き込まれた人々が負傷したことについて、謝罪する」と述べた。 【8月14日 AFP】AFPBB News

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こうした「調査命令」「謝罪」がどれほど本気のものとして国民に受け入れられるか・・・非常に疑問です。

政権移行を目指す反ルカシェンコの流れは加速しているようにも見えます。

 

****ベラルーシで「救国戦線」結成 反体制派が政権奪取へ宣言****

9日のベラルーシ大統領選で立候補を却下された反体制派の元外交官ツェプカロ氏は12日、6選を決めたルカシェンコ大統領から政権を実力で奪取することを目的とした「救国戦線」の結成を宣言した。タス通信が報じた。

 

反政権の有力な動きに発展するかどうかは不明。ツェプカロ氏は逮捕を避けるために国外に滞在している。(後略)【8月13日 共同】

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****ベラルーシ、反体制派創設へ 政権移行目指し調整協議会****

9日のベラルーシ大統領選でルカシェンコ大統領が6選を決めた結果を認めないとしている2位の女性候補チハノフスカヤ氏は14日、法秩序回復のための緊急措置が必要だとして政権移行を目指す調整協議会を創設すると発表した。また政権側との対話に向け欧州諸国など国際社会に支援を求めた。

 

隣国リトアニアに滞在するチハノフスカヤ氏は「政権と対話する用意がある」と表明。調整協議会のメンバーにはベラルーシの市民団体代表や著名人、専門家が加わるとした。ルカシェンコ氏が対話に応じるかどうかは不明だ。【8月15日 共同】

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【“ドロ船”に乗った?ロシア 支持を求めてプーチン大統領を脅迫するルカシェンコ大統領】

こうしたなかで注目されるのがロシアの動き。

 

選挙前はロシアの選挙介入を警戒するルカシェンコ政権とロシアは傭兵拘束問題が起きるほどにギクシャクしていましたが、一応その問題は手打ちがなされています・

 

****ベラルーシ、拘束のロシア人傭兵32人を本国に送還****

ロシア検察当局は14日、ベラルーシで9日に行われた大統領選の前に情勢不安定化を画策したとして同国の当局に拘束されていたロシア人傭兵(ようへい)32人の身柄が引き渡されたと発表した。(中略)

 

ベラルーシ国家保安委員会(KGB)は、33人は民間軍事会社ワグネルの傭兵だと説明。ある高官は、テロ行為を準備していた疑いがあると述べたが、ベラルーシ政府はその後、説明を改め、大規模騒乱を画策していた容疑で刑事罰に問うとし、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領の反対派で、拘束されたベラルーシ人と行動を共にしていたとの見方を示していた。

 

ロシアはベラルーシの大統領選への介入を否定しているが、33人が拘束されたことを厳しく非難することはせず、彼らに落ち度はないと述べるにとどまっていた。(後略)【8月15日 AFP】

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ロシア人傭兵が何をしていたのか・・・定かではありませんが、こうした問題が起きたこと自体、ルカシェンコ政権とロシア・プーチン政権の確執を示しています。

 

ただ、ロシアはウクライナの二の舞を避けるため、結局ルカシェンコ支持に回っています。

プーチン大統領のこの判断が正しかったかどうか・・・

 

****ベラルーシ、ロシア首脳が会談=大統領選後の抗議拡大受け****

旧ソ連構成国ベラルーシの国営通信社ベルタによると、同国のルカシェンコ大統領は15日、大統領選の結果を受けて抗議デモが続いていることをめぐり、ロシアのプーチン大統領と電話で協議した。欧州などが選挙不正を指摘する中、ロシアが介入すれば、情勢がさらに緊迫する可能性がある。

 

ルカシェンコ氏は電話に先立ち、政府会議で「プーチン氏と話し合うために連絡を取る必要がある。(抗議デモは)ベラルーシだけの脅威ではない」と主張。ベラルーシが持ちこたえられなければ、混乱はロシアに波及すると警告した。【8月15日 時事】

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追い詰められたルカシェンコ大統領が、これまで確執もあったプーチン大統領を“脅迫”するように、一層の支持を迫る・・・という興味深い展開です。

 

いささか“ドロ船”に乗ったというか、流れに巻き込まれたような感もあるロシアですが、ルカシェンコ氏を排してベラルーシ国民の民意にゆだねるという選択ができなかった、強権支配のルカシェンコ氏に「安定」を託したところが、自国における民主主義が未熟なロシアの限界でしょう。

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