(カブールの美容サロンを訪れた女性(奥)にネイルを施す美容師(2017年3月23日撮影)【2017年5月31日 AFP】 タリバン政権復活となれば、こういう「小さなオアシス」も消えてしまい、女性たちはまたブルカの影に隠れてしまうのでしょう)
【アメリカ・タリバンの停戦「合意」間近】
トランプ大統領が再選に向けて、アフガニスタンからの米軍撤退を成果とすべく動いていることは7月30日ブログ“トランプ大統領 パキスタンの協力を得てアフガニスタンでの和平、大統領選前の撤退を目指す”でも取り上げました。
そうしたアメリカ側の前のめりな姿勢もあって、このところアメリカとタリバンの協議が進んでいる、あるいは合意も近いといった報道を目にします。
“米政権、アフガニスタン和平に向けタリバンとの交渉大詰め 米軍撤収に強い懸念”【8月20日 産経】
“米国とタリバンが協議再開 「戦争」終結目指し9度目”【8月23日 共同】
“タリバーン幹部「合意は近い」”【8月24日 朝日】
“米とタリバンのアフガン協議、今週中にも停戦合意か”【8月27日 ロイター】
そして今日も・・・
****米とのアフガン和平協議、合意近い=タリバン****
アフガニスタンの反政府武装勢力、タリバンは28日、同国の和平実現に向けた米政府側との交渉で合意に近づいていることを明らかにした。
18年にわたる戦闘の終結を目指し、タリバンと米政府は昨年終盤からカタールの首都ドーハで断続的に協議。駐留米軍の撤退など巡り前週から9回目の協議を行っていた。
タリバンの報道官は「わが国に朗報をもたらすことができると期待している」と述べた。米政府側のコメントは現時点で得られていない。
交渉について知る2人の関係筋は、米国の代表団を率いるハリルザド・アフガン和平担当特別代表がカブールでガニ大統領に合意内容を説明する予定だと述べた。
カブールの治安当局の高官によると、タリバンと米政府は、駐留米軍の撤退期間を14─24カ月程度とすることで合意したという。【8月28日 ロイター】
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ポンペオ米国務長官は27日、中西部インディアナ州で演説し、アフガニスタン駐留米軍について「できるだけ早急に、大規模に撤退させたい」と述べ、反政府武装勢力タリバンとの協議で早期に和平合意にこぎ着けたい考えを強調しています。【8月28日 共同より】
現在進められている交渉はアメリカとタリバンの間のものであり、アフガニスタン政府は排除されています。
“西側の外交筋によると、タリバンとアフガン政府軍との内戦停止については別個に交渉する必要があり、ノルウェーでの交渉に向けた準備が進められている。”【8月27日 ロイター】
今回協議されている合意のポイントは以下のようにも。
(【8月20日 産経】)
【米軍撤退後は内戦激化、最終的にはイスラム原理主義のタリバン政権復活か】
戦乱に明け暮れたアフガニスタンで停戦が実現するというのは、喜ばしいことです。
ただ、もろ手を挙げて喜べない、釈然としない感じもあります。
それは、米軍が撤退すればアフガニスタン政府はもたないだろう・・・今後のアフガニスタンにおいては、おそらくタリバンが主導権を握る形になるだろう・・・というのが、大方の見方だからです。
*****穴だらけのアフガン撤退合意、テロが浮き彫りにした暗黒****
アフガニスタン・カブールで発生した結婚式の自爆テロは同国が直面する暗黒の未来を浮き彫りにした。
再選のため公約を最優先するトランプ大統領は来年の選挙後までにアフガン駐留軍を何が何でも撤退させる方針で、米軍の存在が消えれば、イスラム原理主義組織タリバンと政府との和平はならず、内戦の激化やテロの多発など混乱が拡大することが確実視されるからだ。
「ホラサンのIS」が犯行声明
それにしてもすさまじい爆発だった。8月17日夜、カーブルの結婚式の披露宴で発生した自爆テロにより63人が死亡、約200人が負傷した。
事件が起きたのは午後11時ごろで、ちょうど食事が始まった時だった。1000人の招待客の1人を装った男が大きな音楽が響く中、式場の舞台近くで身に着けた爆弾を爆破させた。結婚式は少数派でシーア派教徒のハザラ人によるもので、シーア派を憎悪する犯行だった。
事件後、過激派組織「イスラム国」(IS)の分派組織「ホラサンのIS」が実行犯のパキスタン人の写真とともに、犯行声明を出した。
アフガニスタンではこのところ、テロが多発。10日前にもこの結婚式場の近く警察署前で車爆弾が爆発し65人が死亡、先月末にも、政府施設でトラック爆弾と襲撃により28人が犠牲になった。今回のテロはIS系組織の犯行だったが、前2回はタリバンのテロだった。
こうしたテロは駐留米軍撤退後のアフガニスタンの暗い未来を差し示しているかのようだ。
しかし、トランプ大統領はそうした同国の内情を意に介さず、しゃにむに米軍の撤退を推し進めようとしている。その真意は、中東などの紛争地から米部隊を撤退させるという選挙公約を実現し、その実績を誇示して再選に利用したいとの政治的な思惑があるからだ。昨年、シリアからの一方的な部隊撤退を突然表明したのも同じ理由である。
アフガニスタンには最盛期、10万人を超える米軍が駐留し、政府軍を支援し、タリバンと交戦を続けてきた。開戦から18年という「最長の戦争」により、米軍は2400人の戦死者を出し、数千億ドルの戦費を費やす結果になったが、これほどの犠牲を強いられながら、タリバンを駆逐することはできなかった。それどころか今では、国土の半分以上をタリバンに支配され、東部では「ホラサンのIS」が勢力を拡大している。
米軍は現在、約1万4000人が駐留、主に政府軍の訓練や助言の任務に就き、一部の特殊部隊は国際テロ組織アルカイダやISなどの対テロ作戦を展開している。(中略)
見捨てられたガニ政権
大統領が言うように、タリバンを「合意」の当事者として信頼できるのかと問えば、自爆テロを繰り返し、米国と敵対してきた同組織を全面的に信用できるわけがない。
「仮に合意文書に双方が調印しても、米軍が姿を消せば、容易に約束は破られるだろう。反故にされたからといって、米軍がアフガンに再び戻ってくることは考えられない」(ベイルート筋)。「合意」はあくまでも「撤退の口実」(同)にすぎない。
米ワシントン・ポストなどによると、「合意」として伝えられている内容には重要な問題が先送りされたり、タリバン側の同意が確認されないものも多い。
まず、駐留米軍の撤退に関してだが、5000人が第1陣として年内にも撤退。残りの部隊9000人は1年半かけ、来年の大統領選後までに撤退するシナリオだ。
しかし、タリバンが1年以内の全面撤退を主張しているのに対し、テロ組織の台頭を懸念する米国は小規模の対テロ部隊を残留させることを要求し、決着が付いていない。
またタリバンがアルカイダとの関係を絶縁し、テロ組織の活動を容認しないことを公式に発表するかどうかについてもあいまいなままだ。
内戦の停戦については、タリバンは米軍との停戦については同意したものの、政府軍との停戦については明確に同意していない。何よりも停戦の日程が全く固まっていない。米側はアフガニスタン人同士の協議に委ねるとの姿勢で、事実上、合意を放棄した格好だ。
米軍撤退後の内戦の和平協議はノルウェーのオスロで開催されることまでは決まっており、ガニ政権はタリバンとの交渉団15人の人選をすでに終えている。
だが、政府との交渉を一切拒否してきたタリバン側は和平協議を行うとの言質を与えているのかどうかあいまいだ。しかも、タリバンはイスラム原理主義に基づく統治を目指しており、世俗派のガニ政権とは水と油。和平協議の先行きは悲観的だ。
ガニ政権が9月28日に予定している大統領選挙についても、タリバンはあくまでも反対の姿勢で、米国もアフガニスタンの内政問題として、この問題から距離を置いている。
タリバン側も米国との協議について、組織が一体となって賛成しているわけではない。強硬派の一部は協議を続けている指導部を“裏切者”と非難、米国との合意に従わない方針で、タリバンが内部分裂し、組織のコントロール効かなくなる恐れさえある。
トランプ政権はタリバンとの協議を進める一方で、ガニ政権を無視する傾向を強めてきた。政権当局者は「アフガンの民主主義と平和を犠牲にした撤退」と米国を批判しているが、トランプ大統領としては、「汚職にまみれたガニ政権にかまっていては、いつまでたっても撤退できない。ガニ政権を見捨てるしかない」(ベイルート筋)と腹を決めたということだろう。
だが、米軍なき後のアフガニスタンに明るい未来を想像するのは難しい。政府軍は米軍の訓練を受けたとはいえ、戦力と士気はタリバンの方が上回っている。待っているのは内戦の激化と、その後のタリバン支配という「イスラム原理主義国家」の創出だろう。18年間も介入し、結局見限った米国の責任は重い。【8月20日 WEDGED】
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米軍撤退について「後は野となれ山となれ」ということであれば、これだけ時間を要しているのが不思議なくらいです。
しかし実態は「後は野となれ山となれ」に相当近いものでしょう。あとはどれだけ体裁を整えるかといったところでしょう。
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これによりタリバンと米国が支援するアフガン政府との内戦が終わるかは不透明だ。
あるタリバン高官は「われわれはアフガン政府との戦いを続け、力で権力を握る」と述べた。
別のタリバン関係者らは、停戦合意に至れば米軍がアフガン政府への支援も止めると述べたが、米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表はこれを否定。「われわれは今も、そしてタリバンとのいかなる合意後もアフガン軍を守る」とツイートした。【8月27日 ロイター】
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「タリバンとのいかなる合意後もアフガン軍を守る」とは言っても、撤退してしまえば、二度と米軍がアフガニスタンに帰ってくることはないでしょう。
【それが国民の選択なら・・・・】
もとより、アメリカがアフガニスタンに侵攻したのはアルカイダ勢力を一掃するためで、決してアフガニスタンに民主的な政権を確立するためではありません。
アメリカがアフガン民主化に向けてもっと明確なアプローチをとっていれば・・・という感もありますが、アフガニスタン政府側にそうしたものを受け入れる余地がなかったとも言えます。
そのことからすれば、アメリカがアフガニスタン政府の行く末を案じる必要はないとも言えます。
実際には、タリバン政権復活となれば、アメリカが目的としていたテロ勢力一掃も怪しくなりますが。タリバン自身がテロ勢力です。ただ、基本的にタリバンは国内への関心のみで、アルカイダのような国外テロ活動には無関心です。まあ、トランプ政権としては、9.11のようなアメリカに害をなすような組織が拡大しなければ、タリバンだろうが何だろうが構わないということでしょう。
腐敗にまみれ、非効率なアフガニスタン政府がタリバンの攻勢の前に崩壊するのも、自業自得といえばそうでしょう。
ただ、やっとアフガニスタンで芽生え始めた「女性の権利」に代表されるような自由な市民生活の側面が再びイスラム原理主義タリバンによって潰されてしまうというのは残念です。
別に、アフガニスタン政府が女性の権利拡大に理解があった訳でもなく、むしろ後退させる傾向もありました。2014年2月10日ブログ“アフガニスタン 不十分な女性の権利保護が更に後退する懸念”
それでもイスラム原理主義政権に比べたらまだましでしょう。
それがアフガニスタン国民の選択であるというなら、致し方ないところですが。