孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン問題  マクロン仏大統領、首脳会談を仲介 実現可能性は不透明 イスラエルの“影の戦争”

2019-08-27 22:02:00 | イラン

(イランのジャヴァド・ザリフ外相(左)はツイッターに、ビアリッツでエマニュエル・マクロン大統領(右)やジャン=イヴ・ル・ドリアン外相(右から2番目)らと会談した様子を投稿した【826日 BBC】)

 

【マクロン仏大統領 意表を突く米・イラン仲介】

膠着状態のアメリカとイランの対立ですが、G7のマクロン仏大統領の仲介もあって、動く可能性の兆し・・・といった程度ではありますが、アメリカ・イランが会談に言及するところとなっています。

 

もちろん、可能性について言及したといったレベルの話で、どこまで現実化するかは一切不透明ですが。それでも、その類の話が全くなくて非難の応酬に明け暮れているよりはましでしょう。

 

****仏大統領 イラン制裁一部解除を米大統領に提案****

フランス南西部で開幕したG7サミット=主要7か国首脳会議の議長国、フランスのマクロン大統領はイラン情勢の緊張緩和に向けアメリカのトランプ大統領に対し、イランに対話を促すため制裁の一部を解除することを提案しました。G7サミットはフランス南西部のビアリッツで24日、開幕しました。

開幕に先立ちフランスのマクロン大統領はアメリカのトランプ大統領と昼食をとりながら首脳会談を行い、フランスの外交筋によりますと、2時間にわたってイラン情勢のほか世界貿易や南米アマゾンの森林火災などについて協議したということです。

このうちイラン情勢についてマクロン大統領はトランプ大統領に対し、イランが核合意を順守し弾道ミサイルの問題を含むより幅広い対話に応じるよう促すため、イランの原油の輸出を対象にした制裁を一定期間、解除することを提案したということです。

外交筋によりますと、これに対しトランプ大統領はイランとの対立は望まず合意を求めていると述べたということです。

首脳会談のあとトランプ大統領はツイッターに「多くのよいことが両国に起きている」と投稿しましたが、アメリカ政府はイラン情勢についてどのような協議が行われたのか明らかにしていません。

イラン情勢は今回のG7サミットの重要議題になっており、マクロン大統領の提案がイラン情勢の緊張緩和につながるか、議論の行方が注目されます。

 

イラン外相「正しい方向」と評価

イランのザリーフ外相は、この前日の23日、パリでマクロン大統領と会談したあと、フランスの通信社AFPの取材に対して、「マクロン大統領はイランのロウハニ大統領にいくつかの提案をした。まだ至らぬ部分はあるが、正しい方向に向かっていると思う」と述べ、提案の具体的な内容は明らかにしなかったものの、マクロン大統領の提案を評価する発言をしています。【825日 NHK】

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マクロン仏大統領は、このイラン問題を提起するにあたり、意表を突く形でイランのザリフ外相をフランスに招き、G7サミット開催中の同国南西部ビアリッツで、G7と並行して会談するという異例の対応をとっています。

 

****G7閉幕 仏大統領が型破りな外交手腕を発揮****

フランス南西部ビアリッツで開催された先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が26日に閉幕した。

 

恒例の首脳宣言は出さず、予告なしにザリフ・イラン外相を招くなど、マクロン仏大統領による型破りな外交手腕が際立つサミットとなった。

 

昨年はカナダでのG7サミットを途中で退席したトランプ米大統領も、今回は最後まで滞在し、各国首脳と談笑したり、握手を交わしたりする姿がみられた。

 

サミットでは毎回、世界の課題を列挙した包括的な首脳宣言が採択されてきたが、前回はトランプ氏が署名を拒否。今回ホスト役を務めたマクロン氏は、開幕前から宣言見送りの意向を示していた。

 

宣言の取りまとめに向けた各国の事前調整が不要になったことで、マクロン氏は議事進行の主導権を握り、25日にはザリフ氏を急きょ招待して周囲を驚かせた。

 

トランプ氏は26日朝、ザリフ氏招待についてはマクロン氏から事前に承認を求められ、これに応じていたと主張した。しかしマクロン氏はトランプ氏との共同会見で、同氏には事前に状況を知らせたものの、招待は自身の判断だったと説明した。招待はG7が目的ではなく、自国への招待だったとも言い添えた。(中略)

 

トランプ氏は会議を振り返り、意見の対立もなく和やかな雰囲気だったと述べて「一体感」を強調した。

 

トランプ氏の友好的な姿勢を各国首脳がどう受け止めたのか、はっきりとは分からない。しかしこれまで同氏に冷淡な視線を向けてきたメルケル独首相も、今回は笑顔を見せる場面があった。【827日 CNN】

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首脳宣言については、最終段階になって、サミットの合意内容を1ページの宣言文書にまとめる形がとられました。

(各国からの要請に応じてマクロン大統領が最後に方針転換したとの説明【時事】と、マクロン大統領自身が宣言作成にこだわったとの説明【毎日】の二通りの報道がありますが、宣言なしに自由な討議を目指していた経緯からすれば前者ではないでしょうか。ペーパーはマクロン大統領が自ら作成したようです。)

 

【トランプ大統領 「適切な状況が整えば(首脳会談に)応じる」】

マクロン大統領の手腕もさることながら、トランプ大統領も、今回は前回に比べると穏やかな対応を見せたようです。

 

マクロン大統領の提起したイランとの首脳会談についても「適切な状況が整えば応じる」と。これまでに比べると柔軟な姿勢を見せています。

 

****米イラン「状況整えば」首脳会談=トランプ氏、数週間内でも―仏提案も実現不透明****

フランスのマクロン大統領は26日、仏南西部ビアリッツでの先進7カ国首脳会議(G7サミット)閉幕後に記者会見し、トランプ米大統領とロウハニ・イラン大統領の会談を数週間以内に実現させたいと述べた。

 

マクロン氏と並んで会見に臨んだトランプ氏も「適切な状況が整えば応じる」と語った。9月下旬の国連総会に合わせた会談を想定しているとみられる。

 

米イラン首脳の直接会談が実現すれば、1979年のイラン革命後初めてとなる。一触即発の状態が続く米イラン関係の緊張緩和に向け、フランスや英独などが仲介しつつ、トランプ政権の要求を満たす「新たな核合意」を目指す方針。

 

だが、イラン側がより厳しい条件を受け入れるかは不透明で、会談が計画倒れに終わる可能性もある。

 

マクロン氏は、サミット参加国がイランの核兵器保有と地域の不安定化を許さないことで一致したと強調。「既存の核合意を大幅に改善するか、新たな合意を形成するための具体的方策を議論した」と語った。

 

条件については「詳細は言えない」と述べつつも、イランがより多くの核関連施設に査察を受け入れることなどの見返りとして、融資を含め「何らかの経済的補償」を提案。「ロウハニ師は会談に前向きな姿勢を示した」と明かし、実現に期待を寄せた。

 

一方、トランプ氏は核兵器と弾道ミサイルを禁止する長期間の合意が必要だと主張した。制裁下で不況に苦しむイランへの貸付資金については「米国は出さず、他の国々が拠出する」と強調した。

 

その上で「イランは素晴らしい可能性を秘めた国だ」と持ち上げた。マクロン氏の提案が「うまくいくような気がしている」と楽観する姿勢も示した。

 

マクロン氏は25日、イランのザリフ外相をビアリッツに招待し、参加国首脳を驚かせた。米側との電撃会談は実現しなかったが、トランプ氏は「時期尚早だと思った」と説明していた。【827日 時事】 

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北朝鮮との突然の会談を考えれば、イランとの会談もないことはないでしょう。

ただ、これも北朝鮮との会談からすれば、会談したから実質的成果がすぐに出るというものでもないでしょう。

それでも、日本にとっては、ホルムズ海峡有事の緊張状態よりはましでしょう。

 

【イラン・ロウハニ大統領は、「国益にかなうならば、会談をためらわない」 ハメネイ師の判断次第】

一方のイラン側の対応もまんざらではなさそうです。

 

****イラン大統領「国益にかなうならためらわず」 米との会談示唆****

アメリカとイランの緊張が高まる中、イランのロウハニ大統領は、「国益にかなうならば、会談をためらわない」と述べ、名指しこそしなかったものの、条件次第では、トランプ大統領との会談に臨む可能性を示唆しました。

 

イランのロウハニ大統領は、26日、首都テヘランで、経済政策について演説しました。この中で、敵対するアメリカのイランに対する経済制裁に言及した上で、「誰かとの会談を通して、この国の問題が解決され、国益にかなうならば、会談をためらわない。交渉や外交のための扉は開いている」と述べ名指しこそしなかったものの、条件次第では、トランプ大統領との会談に臨む可能性を示唆しました。

一方で、フランスのマクロン大統領が、トランプ大統領に対して、イランが弾道ミサイルの問題を含む幅広い対話に応じるよう促すため一定期間、イランに対する制裁を解除するよう提案したとされることについて、イランの国営テレビは26日、関係者の話として、「イラン側はミサイル開発については交渉できないとすでに回答した」と伝えました。

 

イランとしては、硬軟織り交ぜた態度を示しながら、みずからに都合の良い条件を引き出したい思惑があるものとみられます。【827日 時事】

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ただ、イラン国内向けとしては強気の姿勢を崩していません。

 

****イラン大統領、米に「最初の一歩」として制裁解除を要求****

イランのハッサン・ロウハニ大統領は27日、米国がイランに対するすべての制裁を解除することで「最初の一歩を踏み出す」よう要求した。この前日、ドナルド・トランプ米大統領は、ロウハニ大統領と会談する用意があるとの見解を示していた。

 

ロウハニ大統領はテレビで中継された演説の中で、「一歩とは制裁を引っ込めることだ。イランに対して科した、違法で、不当で、誤った制裁をすべて解除する必要がある」と述べた。 【827日 AFP】

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最終的には、最高指導者ハメネイ師の判断となります。

 

****最高指導者どう判断 イラン、米との首脳会談で*****

トランプ米大統領が2015年のイラン核合意をめぐる対立を打開するため、ロウハニ大統領との首脳会談に積極的な姿勢を示したことで、イラン指導部は米との緊張が当面は和らぐとして歓迎しているもようだ。

 

ただ、米側が求める「核・弾道ミサイル開発の停止」はイランの生命線を断つに等しい安全保障の根幹であり、和解への道筋は容易に描けないのが実情だ。

 

ロイター通信によると、ロウハニ師は公式サイトで「誰かと会談することで問題が解決されるとわかれば、ためらいはしない」と述べ、トランプ氏との会談も排除しない考えを示唆した。2人はともに9月の国連総会に出席する予定とされる。

 

しかし、イランの国政全般の決定権を握るのはロウハニ師ではなく、反米で知られる最高指導者ハメネイ師だ。同師は米側との対話は「毒」だなどと一貫して否定してきた。

 

オバマ前米政権との間で締結した核合意を離脱したトランプ政権に対する抜きがたい不信感もある。核・ミサイル開発の余地がない合意には応じず、米側とは折り合えない可能性は否定できない。(中略)

 

核、ミサイルをともに開発する余地がある限り、核爆弾の搭載可能な弾道ミサイルが製造できる可能性は残り、米の同盟国イスラエルを含む周辺の親米国家は不安に悩まされることになる。この「潜在的脅威」がイランの安全保障を支えている。

 

イランは60日ごとに核合意の履行義務を段階的に放棄すると表明しており、次の期限は9月前半に設定されている。

また、英領ジブラルタルで拿捕(だほ)されたイランのタンカーは8月中旬に解放され、イランが報復として拿捕した英タンカーをいつ解放するかにも注目が集まっている。

 

こうした問題にどう反応するかが、今後の米との対話に向けたイランの姿勢を占う試金石となりそうだ。【827日 産経】

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【イスラエル・ネタニヤフ首相が仕掛ける影の戦争

イランをめぐってもうひとつ注目される動きは、総選挙を控えたイスラエル・ネタニヤフ首相の強硬姿勢です。

イスラエルは、このところ連日シリア、イラク、レバノンのイランおよびヒズボラ関連施設への攻撃を行っています。

 

****イスラエル、3カ国で相次ぎ攻撃、イランとの影の戦争激化****

イランの同盟国であるイラク、シリア、レバノンの3カ国がこの数日、相次いで無人機やミサイルによる攻撃を受けた。イスラエルがイランとの影の戦争を激化させていると見られている。

 

レバノンのシーア派武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師が報復を誓うなど中東情勢は新たな緊張に包まれている。

 

「やられる前に殺せ」

激化したのは824日のシリア攻撃からだ。ダマスカス南東アクラバにあるシリア駐留のイラン革命防衛隊の拠点がミサイル攻撃を受け、人権監視団体によると、少なくとも5人が死亡した。死者の中に、革命防衛隊員1人とヒズボラの戦闘員2人が含まれているという。

 

イスラエル軍は一連の攻撃の中で唯一、このシリア攻撃についてのみ認める声明を発表、「革命防衛隊のコッズ隊とシーア派民兵組織のテロリストの標的を攻撃した。彼らがイスラエルに自爆ドローンの攻撃を仕掛けようとしていたからだ」と明らかにした。コッズ隊は革命防衛隊の中で海外戦略を担うエリート部隊。神出鬼没と知られるソレイマニ将軍に率いられている。

 

この直後の25日未明。今度はレバノン・ベイルートの南郊にあるヒズボラの事務所近くで無人機1機が墜落、続いてもう1機が爆発した。この攻撃でヒズボラのメディアセンターの一部が破壊された。

 

同じ日にイラク西部アンバル州でも、イラン支援のシーア派民兵組織「カタエブ・ヒズボラ」の拠点が無人機による攻撃を受け、指揮官ら2人が死亡した。

 

この一連の攻撃に先立って7月から、イラクの4カ所でシーア派民兵組織の武器庫などが標的になる攻撃が発生しており、これもイスラエルの攻撃と見られている。

 

イスラエルのネタニヤフ首相は明確には認めなかったものの、「イランはどこにいても隠れることはできない。必要な時はいつでも、彼らに対して行動を起こす」と述べ、イラン関連施設を狙った攻撃であることを示唆した。

 

同首相はその後のツイッターでも「イスラエルを抹殺しようとする奴らがいれば、やられる前に彼らを殺せ」と先制攻撃の必要性を強調した。

 

イスラエルはこれまで、シリア駐留のイラン革命防衛隊やヒズボラなどの拠点を再三攻撃してきたが、イラクまで手を伸ばし始めたことは注目に値する。

 

イスラエルによるイラク攻撃は1981年以来初めてであり、イスラエルの行動がいかに一線を超えたものであるかが分かる。戦線を拡大しても、イランの脅威の芽を徹底的に摘み取るという断固とした決意の表れともいえるだろう。

 

だが、こうしたイスラエルの強硬方針はペルシャ湾で米国とイランが対決を激化させる中、中東情勢を一段と不安定なものにするのは必至だ。

 

報復誓うヒズボラ

今後はとりわけヒズボラの動きが焦点だ。強硬なアジテイターとしても知られるヒズボラの指導者ナスララ師がベイルートのメディアセンターが攻撃を受けた25日夜、ベカー平原で演説、イスラエルによる攻撃だと非難するとともに、レバノンからイスラエルに報復すると警告したからだ。

 

同師は緊張する現状について、イスラエルによって作られた新たな段階と指摘、「レバノンとの国境に配備されているイスラエル軍に通告する。今夜からわれわれに備えて待っていろ」と恫喝した。イスラエル国民に対しても、ヒズボラが侵略を見過ごすほど寛容ではないなどと強調した。

 

ベイルートの情報筋によると、ヒズボラはイランの意を受けて、シリアの内戦でアサド政権支援のため、最盛期には2万人の戦闘員をシリアに送り込んだ。しかし、戦死者も数千人に上ったうえ、アサド政権が内戦の勝利を確定的にしたことなどから一部が撤収、シリア派遣部隊は現在、8000人程度にまで減っていると見られている。

 

だが、ヒズボラはシリア内戦の実戦で戦闘力を一段と高めたといわれており、イスラエルにとっては大きな脅威だ。シリアに拠点を築いたヒズボラはシリア、レバノン双方からイスラエルに攻撃を仕掛けることが可能になっており、戦争になれば、イスラエルは2正面作戦を強いられることになるだろう。

 

イスラエルがこうした対外的な攻撃に出ている一方で、パレスチナ自治区ガザからも先週末、3発のロケット弾がイスラエルに向け発射され、うち1発が高速道路近くに着弾、この報復としてイスラエル軍機がガザのイスラム過激派組織ハマスの拠点などを空爆した。

 

イスラエルでは917日にやり直し総選挙が実施される予定だが、選挙に向けて周辺国やハマスに対する攻撃が一段と激化する恐れがある。

 

ネタニヤフ首相が敵対勢力から国家を防衛するという強硬姿勢を示すことで、選挙を有利に運ぼうとしかねないからだ。「そうした火遊びが大戦争を招くかもしれない」(ベイルート筋)

 

米国とイランが対決するペルシャ湾だけではなく、イスラエルを取り巻く状況も緊迫の度を強めてきた。【827日 佐々木伸氏 WEDGE Infinit

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アメリカとイランの表舞台の交渉が取りざたされるなかで、イスラエルとイラン関連勢力との影の戦争が進行しており、この両者が絡み合って今後どのように展開するのか見通せません。

 

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