孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  ファタハとハマス、和解と統一政府樹立で基本合意

2011-04-28 23:41:02 | 国際情勢

(3月15日ガザ ファタハとハマスの和解、統一政府樹立を求める若者のデモ “flickr”より By Sniper Photo Agency http://www.flickr.com/photos/sniperphotocouk/5540011399/ )

【「対立の代償は高くついた。我々は意思をそろえて(イスラエルの)占領を終わらせる」】
パレスチナ問題の進展を阻んできた原因のひとつに、パレスチナ側における穏健派ファタハ主導の自治政府とガザ地区を実効支配するイスラム過激派組織ハマスの対立があります。自治政府のアッバス議長は、この対立のためガザ地区への影響力を行使できず、ハマスとイスラエルの対立によって和平交渉も制約されてきました。

永く分裂状態にあったヨルダン川西岸地区を統治するファタハと、ガザ地区を実効支配するハマスですが、27日、両者が和解することで基本合意したと報じられています。

****ファタハとハマス和解合意 パレスチナ、挙国一致内閣へ****
2007年から対立を続けてきたヨルダン川西岸地区を統治するパレスチナの主要組織ファタハと、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが27日、和解することで基本合意した。近く挙国一致内閣をつくり、1年後をめどに選挙を行うという。

エジプトの仲介で交渉を行った両派が27日、カイロ市内で会見し、発表した。合意では、ファタハとハマスはともに自派の政府を解体し、パレスチナ自治政府のアッバス議長のもとで実務者による暫定挙国一致内閣をつくる。議長選と、国会にあたる自治評議会選を1年以内に行うため両派で委員会をつくり、選挙の進め方などを協議する。

さらに、西岸のファタハ系組織とガザのハマス系組織で分裂している治安権限も、合同委員会をつくって協議するという。近く、ファタハを代表するアッバス議長と、ハマス政治部門の最高指導者メシャール氏がカイロで合意の調印式を開き、その後、挙国一致内閣を発足させるという。

イスラエルが封鎖を続けるガザでは政治・経済が機能不全に陥り、西岸でもアッバス議長の指導力不足が指摘されるなか、アラブ諸国の民主化要求デモに触発された若者らを中心にパレスチナ内部の対立解消を求める声が高まり、デモが起きていた。ファタハのアフマド議員団長は27日の会見で「対立の代償は高くついた。我々は意思をそろえて(イスラエルの)占領を終わらせる」と述べた。

一方、和解という枠組みはできあがったものの、これまでの交渉で両派が対立を重ねてきた治安権限や選挙などの詳細を巡っては、将来に積み残すかたちとなっており、今後も話し合いには曲折が予想される。ハマスへの警戒心が強いイスラエルや米国の反発や干渉を招く可能性もある。【4月28日 朝日】
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統一政府でパレスチナを代表する正統性をアピール
ファタハ・アッバス議長側はガザに支配権が及んでいないこと、また、議長・評議会選を9月までに実施すると発表しながらガザでは投票できない恐れがあり、パレスチナを代表する正統性が疑問視されていることなどの問題を抱えています。

ガザ地区を実効支配してきたハマスも、ガザ封鎖の出口が見えず、住民の不満は高まっており、最近その支配力に陰りが見られる事件もおきていました。
****パレスチナ:イタリア人活動家、遺体で 過激派が殺害予告****
パレスチナ自治区ガザ地区のアパートで15日未明、パレスチナ支援活動家のイタリア人男性が遺体で発見された。ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとは別のイスラム過激派組織「一神教聖戦団」を名乗るメンバーが前日、男性の殺害を予告していた。外国人の拉致・殺害事件はハマスが07年にガザを実効支配してから初めて。ハマスに反発する過激派が勢力を伸ばしていることを象徴する事件で、緊張が高まっている。(中略)

「聖戦団」はハマスと同じ原理主義者の集まりだが、日常生活では宗教的により厳格なサラフィ主義に従い、国際テロ組織アルカイダの思想と共鳴する。ガザでは、占領による生活苦を改善できないハマスへの不満を吸収する形で、複数のサラフィ主義武装集団が台頭。ハマスの力は相対的に落ちたとされ、イスラエルへのロケット弾攻撃が増えたのもこうした事情がある。ハマスは取り締まりを強化し、闘争が激化している。
パレスチナ自治区では、ヨルダン川西岸でも今月4日、パレスチナ人とユダヤ人を父母に持つ平和活動家で劇場代表の男性が射殺される事件があった。自治政府警察は、保守的なイスラム主義者による犯行の可能性もあるとみて捜査している。【4月15日 毎日】
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ファタハ、ハマス両者の事情から、和解への機運が高まったというところでしょうか。
もちろん、“激しい路線対立を続けてきた両者が、権力分担や対イスラエル政策など細部で協力できるかは不透明だ”【4月28日 毎日】というように紆余曲折はありそうです。

アッバス議長・自治政府は、イスラエルとの和平交渉が行き詰る中、今年9月に国連で被占領地(ヨルダン川西岸とガザ)を国土とする国家樹立の承認を求める戦略を進めています。
この動きは、国連加盟192カ国のうち中東や南米などを中心に100カ国以上が賛成し、承認される見通しと言われていますが、イスラエルに大きな影響力のある欧米の賛成をどれだけ得ることができるかが注目されています。
パレスチナ統一政府が樹立されれば、この動きにもはずみがつくものと思われます。

イスラエル・アメリカはハマスを警戒
イスラエルと激しく対立してきたハマスがパレスチナ自治政府に加わることについては、イスラエルは反発を強めており、イスラエル・ネタニヤフ首相は、「自治政府は、イスラエルとの和平か、ハマスとの和平か、どちらかを選ばねばならない」と自治政府を非難しています。【4月28日 毎日より】

また、アメリカもハマスの動向に懸念を示しています。
***パレスチナ:統一政府樹立合意 米国、ハマス台頭を警戒****
中東和平を後押ししている米政府は、イスラム原理主義組織ハマスの存在を警戒しながら、パレスチナ新統一政府樹立の動きを見極めようとしている。

国家安全保障会議(NSC)のビーター報道官は27日、「パレスチナ内の和解を支持はするが、ハマスは市民を標的とするテロ組織だ」と発言。「和平実現のためにパレスチナ政府は、暴力を放棄し、イスラエルの生存権を認めなければならない」と述べ、ハマスの台頭にくぎを刺した。
米政府は、ハマスが自治政府の主導権を握れば、イスラエルとの和平交渉は困難となり事態が複雑化すると懸念。穏健派ファタハのアッバス議長が引き続き実質的に統率する政府に期待している。米政府はイスラエル・パレスチナ和平の早期遂行を望み、オバマ大統領が近く中東政策を改めて発表するとの観測もある。【4月28日 毎日】
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イスラエルやアメリカのハマス警戒感はありますが、現在の分裂状態ではパレスチナ側の実効ある行動ができませんので、統一政府樹立はパレスチナ和平に向けて必要不可欠な条件であると思われます。
コメント
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