孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン  独立を前に激化する暴力、増加する犠牲者

2011-04-15 20:44:15 | 国際情勢

(10年5月17日 「神の抵抗軍(LRA)」によって3名の文部省官僚が殺害された南スーダン・Tambura
“flickr”より By BenedicteDesrus http://www.flickr.com/photos/benedictedesrus02/4623795330/ )

【「アトル氏は南部の人物であり、NCPとは一切関係がない」】
スーダンでは今年1月に南部の分離独立の是非を問う住民投票が行われ、98.83%という圧倒的大多数による賛成で7月に独立することが決まっていますが、当初から懸念されていたように、南部の各勢力・部族間の対立による治安悪化が報じられています。

****独立確定のスーダン南部で衝突、武装勢力襲撃で240人超死亡か****
スーダン南部の自治政府は15日、石油資源が豊富なジョングレイ州で先週発生した武装勢力による襲撃で、少なくとも211人が犠牲になったと発表した。武装勢力側も含めると、死者は240人を超える可能性があるという。
南部の軍当局は、襲撃した武装勢力は、昨年ジョングレイ州の知事選に落選し、反乱を起こしたジョージ・アトル氏を支持するグループだとしている。

スーダン南部は、分離独立の是非を問う住民投票で98.83%という圧倒的大多数による賛成で独立が確定。しかし2月に入っても南部の町マラカルで軍部隊内の暴動で50人以上が犠牲になったほか、親族によるとみられる犯行で閣僚が射殺されるなど、治安の不安定さが浮き彫りになっている。

南部自治政府の幹部は、今回の襲撃はスーダン北部によって計画されたものだとし、「北部から資金や武器の提供を受けた武装勢力が南部で活動している」と主張。一方、スーダン政府の与党である北部の国民会議党(NCP)幹部はこれを否定し、「アトル氏は南部の人物であり、NCPとは一切関係がない」と強調した。

スーダンでは1955年以降、イスラム教徒が多数を占める北部と主にキリスト教と伝統宗教が信仰される南部との間で、石油利権や民族問題をめぐり幾度も内戦となり、計約200万人が死亡。2005年に和平合意が結ばれ、住民投票の実施が決まった。【2月16日 ロイター】
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3月入っての下記報道もアトル氏支持勢力と自治政府軍の衝突と思われます。
****スーダン南部で戦闘、98人死亡の報道 選挙巡る対立****
今夏の独立が決まったスーダン南部で2月27日、自治政府軍と反乱派の間で戦闘があり、多数の死傷者が出た。反乱派側は「自治政府軍の兵士86人を殺し、こちらも12人の仲間を殺された」と主張している。ロイター通信などが報じた。
現場はジョングレイ州で、反乱派は元自治政府軍の元将軍に率いられている。元将軍は昨年4月の州知事選で、自治政府を率いる南部の与党・スーダン人民解放運動の公認をもらえず、無所属で立候補したが落選。以来、私兵を率いて自治政府に反旗を翻すようになったという。【3月2日 朝日】
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【「神の抵抗軍(LRA)」による攻撃も散発的に発生
こうした南スーダン内部の勢力間の争いに加え、ウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」による攻撃も発生しており、7月の独立に向けて治安の回復が急務となっています。

****スーダン南部、独立決定後も暴力激化 死者800人超える****
国連は13日、住民投票で独立が決まったスーダン南部で暴力が激化しており、今年にはいってからの犠牲者が800人を超えたと発表した。避難民も約9万4000人に達しているという。スーダン南部は7月の独立に向けて、治安の維持が大きな課題となった。 

スーダンでは今年1月に南部の分離独立の是非を問う住民投票が行われ、7月に独立することが決まった。住民投票はおおむね平和的に行われたが、それ以後、武力衝突が激化しており、過去1か月で避難民の数は倍増したという。
スーダン南部では武装勢力と政府軍の武力衝突のほかにも、土地や家畜をめぐる部族間の衝突、スーダン南部に主力を移したウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」による攻撃も散発的に発生している。

スーダン南部の主要都市ジュバで会見したLise Grande国連人道調整官(スーダン担当)は、「少なくとも7つの民兵組織が存在し、共同体の中でも暴力が続いている。その上、LRAの存在もある。非常に憂慮している」と語った。
暴力の激化は2010年の統計と比較しても明らかだ。スーダン南部における暴力の犠牲者は、2010年には年間で980人程度だったが、今年はすでに3か月あまりで800人に達している。【4月14日 AFP】
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「神の抵抗軍(LRA)」については、これまでも何回か取り上げてきましたが、ウガンダだけでなく、スーダン・コンゴなどアフリカ中央部で襲撃を繰り返しています。
国際刑事裁判所(ICC)は、2005年7月、LRAの指導者、ジョセフ・コニー、オコト・オディアンボ、ドミニク・オングウェンに逮捕状を出し指名手配、この逮捕状が足かせになった部分もあって、2008年には和平交渉も失敗しています。
下記は半年前の記事ですが、情況は今も変わっていないと思われます。

****ウガンダ:神の抵抗軍が2000人殺害*****
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)報道官は17日までに、ウガンダの反政府勢力、神の抵抗軍(LRA)が中央アフリカやスーダン南部、コンゴ民主共和国(旧ザイール)で村などへの襲撃を繰り返し、2008年12月以降、2000人を殺害、2600人以上を誘拐し、40万人が家を追われたと述べた。
今年はこれまでに少なくとも344人が殺害された。襲撃件数は今年9月以降、急増しているという。英BBC放送によると、4カ国はLRA掃討に向け、合同部隊を結成することで合意した。

LRAはウガンダ北部で20年以上前に政府軍との内戦を開始。近年は拠点をコンゴ民主共和国北東部や中央アフリカ東部に移し、住民虐殺や略奪を繰り返しているとされる。コニー指導者はスーダン西部ダルフール地方に潜伏しているとの指摘もある。【10年10月18日 毎日】
毎日新聞 2010年10月18日 18時55分
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【“暴力”に対する基本認識に違い?】
LRAの所業については、“LRAの兵士たちの人の殺し方は残虐だ。死ぬまで殴いたり、重いこん棒で頭がい骨を叩き割ったり、木に縛りつけてナタで頭を切り落とすなどが常套手段だ。また彼らは、家族や隣人を殺害させるために子どもたちを誘拐。逃亡しようとした人、疲労困ぱいしたり病弱な人、LRAが用なしと決めた人びとが、誘拐された子どもたちに殺されているのだ。”“LRAは200~400人の戦闘員を擁しているほか、数百人の拉致被害者も連れているとみられている。 特に政治目標はなく、一般市民からの支持もない。兵士の補給は、子どもの拉致が主。時に成人も拉致する。拉致された人びとは途方もない残虐行為にさらされ、戦闘を強制される。”
【10年11月10日 ヒューマン・ライツ・ウォッチ】とも。

特に政治目的もなく殺りくを繰り返すLRA、南スーダンだけでなくアフリカ各地で繰り返される内戦・武力衝突・民間人虐殺・・・こうしたものを見ていると、弱肉強食のジャングルの掟がそのまま人間社会にも適用されたような、アフリカにおける“命の軽さ”“暴力の蔓延”を感じてしまいます。生命とか暴力にかんする基本的認識が他の世界とは違っているのでは・・・とも。長年の植民地支配における人権無視の風潮も影響しているのでしょう。

もちろん、そうしたネガティブなアフリカのイメージは一面的であり、経済成長とともに新しいアフリカの側面も一方で形成されているのも事実でしょうが・・・・。
南スーダン独立で、民主的な政治体制を確立し、ネガティブなイメージを払しょくしてもらいたいものですが。

コメント
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