孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中東情勢への独自対応①  トルコ、リビア調停案発表 反体制派からは批判も

2011-04-10 20:36:38 | 国際情勢

(4月3日 トルコ病院船で西部の激戦地ミスラタから東部ベンガジに運ばれた負傷者230名のひとり “flickr”より By elin2010020 http://www.flickr.com/photos/61377626@N03/5593648784/

外交的に独自の立場での存在感
NATO唯一のイスラム国という難しい立場から、当初はリビアへの軍事介入に反対したトルコですが、他の欧米諸国とは異なる立場を生かして、紛争が長期化するリビア情勢を打開すべくカダフィ政権と反体制派との調停案を発表しています。
ただ、カダフィ大佐一族への憎悪・拒否感が強い反体制派を説得するのは難しそうです。

****トルコ首相:リビア調停案を発表 政府軍の撤退など柱に****
リビア紛争で停戦のための仲介を行っているトルコのエルドアン首相は7日、首都アンカラで会見し、カダフィ政権と反体制派との調停案の骨格を発表した。
しかし調停案は、カダフィ大佐がどのような形で実権を譲るかという最大の焦点が不明確なままで、反体制派が即座に受け入れるのは難しいとみられる。

トルコのアナトリア通信によると、調停案は、(1)両者が即時停戦し、政府軍は一部の支配地域から撤退(2)人道支援物資の輸送路を確立(3)民主主義体制への移行プロセスの開始--の3本が主な柱。
トルコ政府関係者は、4日にリビア政府特使とトルコで、6日に反体制派を率いる「国民評議会」側とリビアで、それぞれ協議した。調停案の詳細は13日までに明らかにされる予定。【4月8日 毎日】
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近年、イラン追加制裁問題での仲介案や、イスラエルとシリアの交渉を仲介する試み、あるいはガザ地区への支援船派遣など、外交的に独自の立場での存在感を示し、イスラム国家にあって世俗主義をベースにした民主化が“モデル”とみなされることも多いトルコですが(エルドアン政権のイスラム志向を批判する声もトルコ国内にはありますが)、リビア紛争における欧米諸国とは一線を画した対応というのは、NATOによる空爆を頼みとする反体制派からはカダフィ政権延命に手を貸しているともとられ、批判の矢面に立つことにもなります。

反体制派:トルコからの支援拒否
****リビア:市民に強まるNATO、トルコ批判 戦闘長期化で*****
リビア反体制派が拠点を置く北東部ベンガジで、政府軍への攻撃が不十分だとして、北大西洋条約機構(NATO)への不満を訴える声が高まっている。特に、NATO加盟国ながら反体制派への武器供与に反対しているトルコへの批判が強く、反体制派を率いる「国民評議会」がトルコからの人道支援物資の受け入れを拒否する騒ぎにまで発展している。
戦闘の長期化に苦しむ反体制派は、カダフィ政権打倒のための収入源として期待していた油田も政府軍に破壊された。反政府デモが起きてから2カ月近くたっても混乱終息の展望が見えず、そのあせりが市民の怒りにつながっているようだ。

「エルドアン、我々は飢えていない!」
反体制派が連日、デモを繰り広げているベンガジ港近くの裁判所前広場では6日、エルドアン・トルコ首相からの食糧支援拒否を訴えるプラカードが掲げられた。国民評議会は5日、こうした住民の反トルコ感情を受け、トルコの人道支援船の入港を拒否したが、人々の怒りは収まっていない。
デモ参加者は取材中の記者を取り囲み、「トルコが弱腰なのは(最高指導者)カダフィと癒着しているからだ」「外交官を含め、この国に滞在するトルコ人全員を追い出せ」などと口々に訴えた。

国民評議会は6日、トルコ政府代表団とベンガジで協議した。3月にリビアへの飛行禁止空域設定に反対し、最近では反体制派への武器供与に反対しているトルコに真意をただす目的だった。国民評議会側は「NATOが空爆回数を減らしているのは(空爆に消極的な)トルコに責任がある」(ゴガ報道官)とみている。協議でトルコ側は「カダフィ体制排除を望むリビア国民を支持する」とのギュル大統領のメッセージを提示したが、評議会側はこれに満足せず、トルコ政府としてのカダフィ政権に対する正式な立場を表明するよう求めた。(後略)【4月7日 毎日】
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“「国民評議会」がトルコからの人道支援物資の受け入れを拒否”とのことですが、4月3日には西部の激戦地ミスラタから負傷者230名を乗せたトルコの病院船が反体制派拠点の東部ベンガジに入港し、市民の歓声で迎えられた・・・ということもありましたので、対トルコ感情についてはよくわからない部分もあります。(歓声は負傷者へのものであり、トルコへのものではなかったということでしょう。)
拒否されたのは、この病院船の次に、医薬品や食料品を積んでトルコからベンガジに派遣された船のようです。

微妙な舵取り
なお、当初NATOの軍事介入に反対したトルコですが、その後、容認し艦船を派遣してはいます。
****リビア:トルコが軍事介入参加 当面、監視の艦船を派遣****
トルコ国会は24日、北大西洋条約機構(NATO)によるリビアへの軍事介入にトルコ軍が加わることを承認した。当面は対リビア武器禁輸を監視する艦船の派遣にとどめ、直接的な攻撃に加わることは避ける。
NATO唯一のイスラム国という難しい立場で当初は軍事介入に反対したトルコだが、多国籍軍による空爆が一定の成果を上げた後のタイミングで参加を決定した。
アナトリア通信によると、海軍がフリゲート艦など艦船5隻と潜水艦1隻をリビア沖の地中海へ派遣。NATO加盟国の中で海上作戦への最多の参加となる。

カダフィ政権と友好関係にあったトルコはリビア国内で大型建設事業を受注し、内戦前には技術者ら約2万5000人が駐在していた。加えて中東・北アフリカの周辺国とも関係を強化しており、イスラムの同胞に銃口を向けたイメージを避ける必要があった。
一方で、NATOの一員として欧米との関係も重視。03年のイラク戦争開戦時には、国内の反戦世論に押されて米軍の駐留を拒否し、対米関係を悪化させた苦い経験がある。

トルコのエルドアン首相は21日、NATO主導の攻撃について、リビア国民の自決権尊重や、攻撃の早期終結などの条件つきで支持すると語っていた。リビアが内戦状態に陥った後もトルコは在リビア大使館が米、英、イタリア、豪州の大使館業務を代行。リビア当局に拘束された米英のジャーナリスト計5人の解放を実現した。【3月25日 毎日】
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トルコ・エルドアン政権も微妙な舵取りを行っているようです。


コメント
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