孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イタリアに押し寄せるチュニジアからの不法移民、フランスはイタリアからの受入れを拒否

2011-04-18 21:51:44 | 国際情勢

(イタリア・ランペドゥーサ島にボートで押し寄せる北アフリカからの不法移民・難民 “flickr”より By IFRC http://www.flickr.com/photos/ifrc/5570209437/

フィンランド:民族主義右派政党大躍進
昨日の続きのような話で、欧州の移民問題について。
昨日ブログで触れた、欧州における反移民の流れを示すひとつの事例としてのフィンランドの議会選挙については、予想どおり、反移民・反EUを掲げる民族主義右派政党の「真のフィンランド人(真フィン)」が大躍進を実現しています。

****反EU政党、議席6倍増で第3党に フィンランド総選挙****
任期満了に伴うフィンランド総選挙(一院制、定数200)が17日投開票され、連立与党の一つである中道右派の国民連合が44議席を獲得し初めて第1党となった。一方、反欧州連合(EU)の姿勢を示してきた政党「真のフィンランド人(真フィン)」が現状の6倍以上の39議席を獲得し、第3党に躍進した。

選挙戦では、ポルトガルなど財政難の国をEUが救済することの是非が大きな争点となった。見直しを求める真フィンに押され、与党の中央党と国民連合、野党の社会民主党の3大政党が議席を減らす結果になった。
今後は国民連合を中心に連立交渉を始める。真フィンのソイニ党首は政権入りに意欲を示しているが、EUの救済策の扱いをめぐり難航も予想される。

国民連合党首のカタイネン財務相は選挙後の共同記者会見で「我々は問題を引き起こすのではなく、解決しないといけない」と述べ、従来の姿勢を変えるべきでないとした。これに対して真フィンのソイニ党首は「新しい政府は独自の政策を持つべきだ。ポルトガルやアイルランドの救済について再交渉すべきだ」と語った。【4月18日 朝日】
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【「人間津波の襲来」】
中東・北アフリカの民主化運動を受けて、イタリアには対岸のチュニジアから大勢の難民・不法移民が押し寄せています。
これまでは強権支配政権によって抑えられていた人の動きが“民主化”によって開放された形ではありますが、受入れ側のイタリアにとっては深刻な問題となっています。

****人のツナミ イタリア最南端の島に難民大挙****
アフリカ諸国の動乱は、これまでも地中海を渡って欧州に逃げてくる多数の難民を生み出してきたが、最近のチュニジア政変とリビア内戦により「人間津波の襲来」とさえ呼ばれるほどの難民が押し寄せている。

1988年以来、欧州に渡ろうとして、海上で遭難し溺死した難民の数は5日夜の250人の遭難者を含め1万5千人以上にもなり、人道上の問題でもある。特に、チュニジアやリビアからひと晩で小型船で到達できるイタリア最南端のランペドゥーサ島は、本来は観光を主要産業とする島にもかかわらず、3月下旬には、1週間で島民総数の4倍以上にもなる2万6千人の難民が上陸した。

もちろん、島に大量の難民を収容する施設はなく、治安・衛生上の問題も深刻化してきた。政府が海軍の艦船などで、各地のテント村へ移送を開始したが、受け入れに難色を示す自治体も多い。欧州連合は難民救助の方針だが、実際はイタリアだけに負わされているのが現状だ。今後もどのくらいの数の難民が来るか予想もつかない。
一番多い難民はチュニジア人のためベルルスコーニ首相は急遽(きゅうきょ)、チュニジアに飛び、難民送還を提案したが受け入れられなかった。わが国でも、いざ近隣諸国で動乱が起こった際の難民対策を考えるべきだと思うのだが。【4月10日 産経】
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イタリア・チュニジア両国は即時本国送還で合意しましたが、イタリア最南端のランペドゥーサ島では、本国送還に抗議した不法移民の暴動も起きています。

****チュニジアからの不法移民、即時強制送還に抗議し暴徒化 イタリア****
イタリアの南部ランペドゥーサ島で11日、ボートで漂着したチュニジアからの不法移民が、両国政府が前週合意した即時本国送還に抗議し、暴徒化した。
ランペドゥーサ島の施設に収容されている数百人の移民の一部が「自由、自由!」などと叫んだ。移民たちがつけた火で小さなぼやも起きたが、消防隊がすぐに消火した。また施設から移民数十人が逃走した。
 
面積20平方キロのランペドゥーサ島はイタリア領だが、地理的にはイタリア本土よりも北アフリカに近い。今年に入り2万5000人以上の不法移民が漁船に乗って漂着している。これまでその大半はイタリア本土の収容所に送られている。
抗議行動にもかかわらず11日には数十人の不法移民が旅客機2機でチュニジアに送還されたが、移民たちの抗議によって、2機目の出発に遅れが出た。
両政府は7日、4月5日よりも前に漂着していた不法移民についてはイタリア側が半年間の居住許可を与える代わりに、それ以降に到着する移民は全員、チュニジアに送還するという方針で合意していた。【4月12日 AFP】
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移民という「重荷」を押し付けあう対立
チュニジアからの移民の多くは旧宗主国フランスへの入国を求めていますが、やはり移民問題で悩むフランスは受入れを拒否しています。
それなら・・・ということで、イタリア側は移民の一部に4月以降、「自由越境のパスポート」に当たる暫定滞在許可証を発行しフランスなどへの出国を事実上促す措置に出ています。
これに対し、フランス側はイタリアとの国境を一時封鎖するという対抗措置に出て、対立が激化しています。

****フランス:チュニジア移民入国阻止 伊との国境一時閉鎖****
1月のチュニジア政変後、同国からイタリアに押し寄せた移民に対し、フランス政府が17日、伊からの入国を一時禁じ、両国の対立が高まっている。チュニジア移民の多くは旧宗主国フランスへの入国を求めており、それを阻む仏に対し伊は厳重抗議した。移民という「重荷」を押し付けあう対立は今後も欧州各地に広がりそうだ。

フランス政府は17日、地中海に面した仏南部ニッツァと伊北西部のベンティミリアを結ぶ鉄道を閉鎖した。チュニジア移民60人のほか、移民受け入れに消極的な仏政府に抗議する仏伊の人権団体約300人の入国を阻むためとみられる。
これを受けフラティニ伊外相は同日、「国境閉鎖は違法で、欧州の原則に反している」と抗議した。仏政府の措置は欧州連合の25カ国間の自由越境を認めたシェンゲン協定を侵すものとみて、その釈明を求めた。これに対し仏側は「抗議団体はデモの申請をしておらず、閉鎖は治安維持のためだった」と答え、同日夕、国境を再開した。

イタリアでは移民が過去10年で20倍に増え人口の1割近くの400万人以上になり、アラブ諸国の政変で今後も急増が予想される。特にこの2月以降、チュニジアからの移民船が増え、今年すでに約2万9000人がイタリア南部に漂着し、数百人が海難で死亡している。
伊政府はチュニジアからの移民を一時的受け入れ施設で収容してきたが、仏など他の欧州諸国が移民対策に協力しないことに不満を抱き、移民の一部に4月以降、「自由越境のパスポート」に当たる暫定滞在許可証を発行し独仏などへの出国を事実上促した。マローニ伊内相は17日夜の国営放送で仏政府の措置を「不可解、乱暴かつ不正義なもの」と断じた。【4月18日 毎日】
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まさに“移民という「重荷」を押し付けあう対立”ですが、日本の“ことを荒立てない外交”からすると、イタリアにしてもフランスにしても、なかなかに大胆な対応です。
EUという共同体にあっても、利害対立がからむと理念よりも国益優先のようです。

チュニジアだけでなく、リビアの動向によっては、この問題は更に深刻化する恐れもあります。


コメント
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